建築家・篠原一男の傑作「上原曲り道の住宅」の内部を初公開【2/3ページ】

緑の部屋

 階段を上がると、「緑の部屋」と呼ばれる鮮やかな緑色で塗られた2つの空間につながる。ここは子供部屋などに使われていた。壁の色が目を引くが、備え付けの棚の造形も印象的だ。独特の形状をした引き戸などに、実用性を超えた美学を追求した痕跡を見ることができる。

「緑の部屋」
「緑の部屋」。特徴的なデザインの収納棚が備え付けられている

 最上階は、白に彩られた屋根の下に広がる空間だ。階下の「緑の部屋」と同様、壁一面に特徴的な棚が備わっている。竣工当初この部屋は青色に塗られていたが、のちに志郎康の妻の意向で白く塗り替えられたという。現在は自然光の映える明るい空間だが、かつての青い壁面がつくり出していた光景は、いまとはまったく異なる様子であったに違いない。壁の一部には、塗りきれなかった下地の青がわずかに残されている。

 志郎康の息子・鈴木野々歩は次のように語る。「空間の上部に設けられた窓から、冬の朝だけ太陽の光が真四角に差し込む。ここに住んでいるときは知らなかったが、住人がいなくなって見学するいま、初めて気がついた」。住んでいるときには気づかなかった光に、住人がいなくなったいま初めて気づいたという。「住宅は芸術である」という信念のもと建築を手がけた篠原は、人が住むことによってそれは完成された作品ではなくなると考えた。窓から差す光への気づきは、「住む」者がいなくなった建物が、改めて篠原のいう芸術作品に戻っていく兆しのひとつなのかもしれない。

最上階
最上階。塗り残された青色の壁面
最上階。冬の朝はこの窓から四角い日光が差し込む

Latest News

不確実性のなかでアートはどう流通するのか。中東情勢が揺らす欧州アート界の現場

中東情勢の緊迫化やロシアによるウクライナ侵攻の長期化によって、国際物流を取り巻く環境は大きく変化している。その影響は、美術品の輸送コストや展覧会運営、さらにはアーティストの制作体制にも及び始めた。本稿では、欧州の美術品輸送会社、美術館、ギャラリー、そしてアーティスト・スタジオへの取材を通じて、アートを支えるネットワークの現在地を追った。※6月20日24時まで、すべての方に全文お読みいただけます。

文=飯田真実

ジュリアン・シャリエール《Atlas》(2026、部分) Photo credit to Mona/Jesse Hunniford Copyright the artist; VG Bild-Kunst, Bonn, Germany. Courtesy of the artist and Mona

スタジオジブリが「禅」の展覧会を企画制作。「禅とジブリ」と「白隠さんの禅」が京都市京セラ美術館で開催へ

京都市の京都市京セラ美術館で、スタジオジブリが企画制作する展覧会「禅とジブリ」(10月3日〜12月6日)、「白隠さんの禅」(12月17日〜2027年1月11日)が開催される。

© 2023 Hayao Miyazaki/Studio Ghibli

銀座凮月堂が体験型アートギャラリー「RESONANCE GALLERY」を新設。第1回企画展「『教育』— 原点から、発見へ。発見から、共振へ。—」を開催

銀座凮月堂は、自社ビルの地下2階にアートギャラリー「RESONANCE GALLERY|レゾナンス ギャラリー」を新設。同施設の第一回企画展として、「『教育』— 原点から、発見へ。発見から、共振へ。—」が開催され、オオタキヨオ、naoko shimagami、竹内紘三、團上祐志が参加する。会期は7月3日〜8月5日。

「RESONANCE△GALLERY|レゾナンス△ギャラリー」ロゴ

今週末に見たい展覧会ベスト15。日曜美術館の50年展からMr.の個展、出光真子の個展まで

今週閉幕する/開幕した展覧会のなかから、とくに注目したいものをピックアップしてお届け。なお、最新情報は各館公式サイトを参照してほしい。

「Mr.の個展:いつかある晴れた日に、きっとまた会えるでしょう。」より、《何気ない時間一君といた街角一》(2026) 撮影:編集部

吉田修一の小説『国宝』、束芋による挿絵全500点を展示。「束芋画 国宝」が銀座で開催

吉田修一の小説『国宝』の、現代美術家の束芋による挿絵の原画を集めた展覧会「束芋画 国宝」が、東京・銀座のポーラ ミュージアム アネックスで開催される。会期は7月17日〜8月30日。

Exhibition Ranking