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転売ヤーとは桁が違う!転売業者とは何か?カードショップ・玩具店に警鐘。新品BOXを転売業者に売ると危険。

池っち店長です。

今回はかなり、危険な話を取り扱います。

これを記事にすることは、僕にも一定のリスクがあります。
しかし、カードゲーム業界に警鐘を鳴らすために、記事にする必要があると判断しました。

今回の件に触れるのは一度だけです。シリーズ化しません。
また、問い合わせや質問があっても、一切対応しません。僕にとってリスクになるからです。故にコメント欄も今回はありません。

それでも、一度でも警鐘を鳴らすのは、カードゲームファンと業界の方々への恩返しのためです。

本題に入ります。

みなさんも、カードゲームの転売に関しては異常さを感じていらっしゃると思います。

SNSでは転売ヤーに対する非難が巻き起こっています。
中には逆張りで、
「転売ヤーを非難するのは値上がりしたものを買えない貧乏人」
「人が儲けているのを僻んでるだけ」

とニヒリズムに傾斜した意見もありますが、
品薄商品の買い占めによる転売に限って話すなら、存在しなくてよいものです。

これは
「買いたい人に届く前に横取りして、ほしいという気持ちを人質に金を取る行為」
であり、流通にとって不要な第三者です。

だから転売ヤーを嫌うのは、直感でも理論的にも正常な判断です。
(販売場所限定品の転売には、地方民が助かる価値があります。また、PSAなど投資目的のカードに関しては、僕は賛成派なので、分けて考えて下さい。)

今回お話するのは、今まで皆さんが見てきた個人転売ヤーなどとは比較にならない、大規模な転売組織、すなわち「転売業者」に関してです。

彼らが扱うのは、ボックス単位ではなく、何百カートンと見られる単位の、新品転売です。

彼らはそれを、
◯どこから手に入れるのか?
◯どう現金化するのか?
◯犯罪性はあるのか?

わかりやすく説明していきたいと思います。

■転売業者とは?

ここで言う転売業者とは、個人が数BOXを買ってフリマアプリで売るような存在ではありません。

カートン単位の取り扱いは当然。しかも恐らく数百カートン単位、場合によってはさらに大きな単位で、人気カードゲームの未開封BOXを扱い、カードショップや玩具店に営業をかけてくる業者のことです。

以前、僕はこうした存在を「二次流通業者」と呼ぼうと考えていました。

なぜなら、「転売業者」という言葉には強い否定的な響きがあるからです。

特定の業者を違法・悪質だと断定するつもりはありませんでしたし、実際、カードショップが市場価格で未開封BOXを仕入れて販売すること自体は、単純に違法・悪質と断定できる話ではないからです。

しかし、玩具店・カードショップ関係者からの話を調査した結果、少なくとも一部の業者については、これは中立的な「二次流通」と呼ぶより、実態としては「転売業者」と呼ぶべきものではないか、と考えるようになりました。

前置きはここまでにして、本題に入りましょう。

構造を理解して頂くために、読者の皆さんには、
「自分が、カードショップの経営者だったらどうするか?」
という立場で、シミュレーション方式でご覧いただきます。

■パターン1:「あなたは新規カードショップの経営者。一等地で予算は十分にある」VS転売業者

まず、ひとつ目のケースから説明します。

想像してください。

あなたは最近開店したカードショップの経営者です。
場所は池袋か秋葉原の一等地。資金は二億円と十分にあります。

しかし、どこの問屋さんからも新品を仕入れることができません。
ポケカもワンピも、新商品を仕入れることができないのです。

現在、新しくカードショップを作っても、問屋さんとの取引はなかなかできません。理由は、人気商品の数が足りないからです。
問屋さんとしては、昔から取引のあるお店に商品を配分しなければなりません。新規店に回す余裕がないわけです。

あなたの店は、仕方なくシングルカードを中心に営業しています。

しかし、本音を言えば、新品BOXも棚に並べたい。

そこであなたは仕方なく、個人の転売ヤーから新品未開封のボックスを買い取ったり、メルカリやヤフーオークションとにらめっこしながら、定価以上の未開封BOXを仕入れて、少しプレミア価格をつけて販売していました。
(違法性はありません)

そんなあなたの元に、ある日、営業電話がかかってきます。

「当社の在庫に、ポケモンカードの人気弾があります。
10カートン単位、120ボックスから販売できます。
1BOX税抜11,000円、税込12,100円でどうでしょうか?」

この電話をかけてきたのが、転売業者です。

さて、電話を受けたあなたはどうしますか?

ポケカの通常弾の定価は、仮に1BOX税込み6,000円だとします。
相手の提示価格は約12,000円。

明らかに定価より高い。
ぶっちゃけて言えば、転売価格です。

しかし、あなたはこう思うかもしれません。

安い!
メルカリで買うより遥かに安い!

なぜなら、その人気弾はメルカリでは15,000円以上で売れているからです。

しかも120ボックスという、まとまった数が入る!便利すぎる!

しかも、あなたの店は一等地です。
秋葉原や池袋の目立つ場所にあり、店頭で買えるとなればメルカリで買うより早くて便利。
現物を見て買う安心感もある。16,000円以上で売れるのは間違いなさそうです。
しかも観光客もバカスカ来ます。インバウンド需要を考えると、更に高く設定しても売れる。
(注釈:僕は秋葉原のまさに一等地でカードショップを経営していたので、あの周辺のお店なら、新品ボックスがこの価格感で月に数百ボックス売れることをデータとして知っています。ただ、僕が経営者の頃は、転売業者からの接触はありませんでした。)

あなたがオーナー社長なら、
「これは、120ボックスどころかもっと仕入れたい!」と思うかも知れません。
これは、商売上はかなり自然な判断です。

元々カードショップが、すでに市場に出回っている未開封BOXを、個人からプレミア価格で仕入れて販売することはよくあることです。
「最新弾、12,000円で買取り!」
などという告知を見たことがある人も多いでしょう。

もちろん、個人からの買取と、今回のような法人業者からのまとまった仕入れは、実務上同じではありません。古物として扱うのか、通常仕入れとして扱うのか、取引先確認や帳簿処理など、整理すべき点はあります。
しかし、小売店から見ると、
「正規問屋から十分な数が入らない人気商品を、市場価格で仕入れて、市場価格で販売する。」
という構造になります。

これ自体は違法とは言えません。

違和感があるとしたら、
「ここから仕入れるのは、商売の正道から外れてる気がする」
という、気持ちの問題だけと言えるでしょう。

ですが、あなたが買わなくても、どうせどこかに流通します。経営者は現実主義者でなければなりません。
そう。現実的に考えて、
「違法ではない」
「利益は確実に出る」
「来店客数も増える」

と考えると、この営業に対して前向きに対応することになると思います。

お客様にとっても、
「たまに定価販売するが、いつ行っても売り切れている店」
より、
「定価販売もするが、プレミア価格でも常に在庫がある店」
の方が、選択肢がある分、便利です。

つまり、顧客満足度はプレ値でも在庫があるお店の方が高い。
「選択肢=サービス」なのですから。

納得の行かない方もいらっしゃるかも知れません。しかし実際、
「転売業者から大量に仕入れる事は、直ちに違法とは言えない上、お客の需要はあるので、実際にカードショップが利用しているのが実情。」
なのです。

さて……それより、気になることがありますよね?

転売業者は、こんなにも大量の新品を、どこから仕入れているのか?

次のパターンを見てみましょう。

■パターン2:「あなたは20年続くカードショップの経営者。地方で経営はカツカツ」 VS転売業者

次は、逆のパターンです。

再び想像して下さい。

あなたは地方都市で、昔からカードショップを経営しています。

大きな店ではありません。
駅前の一等地でもありません。
経営はカツカツです。
けど、常連のお客様もいます。
大会も開いています。
子供の頃から通ってくれて、大人になっても顔を出してくれるお客様もいます。
カードゲームが好きだから続けてきた店です。
しかし、経営は楽ではありません。

「カードゲーム市場は好調!昨年より大幅アップ!」
などと、池っち店長のツイッター等から情報が流れては来ますが、現場では大して実感がありません。

あなたはこう思っています。
「そりゃポケカもワンピも瞬殺だし、他のTCGもだいたい売り切れるけど、入荷数は問屋さんに配分で決められてるから、昔みたいに大量仕入れもできないし、そもそも新品を売ってもそこまで利益は出ない。
15年ぐらい前の、大人も子供もシングルカードを買いに来ていた頃のほうが、まだ活気があったんじゃないか?」

と。
昔より良くなったのは、新品の値引き合戦がほぼ無くなった事です。
「値引き合戦の頃は酷かったな。」
と20年選手のあなたは思います。

ですが、昔と比べて落ち着いた雰囲気の店内を見回して、最近、昔を思い出すようになりました。

カーキン動画が毎日子供達の話題になり、デュエルスペースから「TUEEEEE!!」と叫び声が上がっていた頃……
それを懐かしく感じている自分に対し、
「カーキンさんには複雑な思いがあったけど、今思えば“時代の熱気”を表してたなぁ……」
とも思います。

とは言え「昔は儲かっていた」というわけでもない。今も昔も経営は厳しい。
老後の貯金なんてできない。
高額なPSA鑑定品を取り扱えば売上が好転するかとも考えますが、地方では高額カードの需要は少ない。
そもそも、そんな高いカードを取り扱う予算なんて無い。

むしろ、不人気在庫の処分にはいつも悩まされています。

そんなある日、あなたの店に営業電話がかかってきます。

「お店で余っている商品はありませんか?」
「売れ残っているBOXやサプライがあれば、まとめて買い取れます」
「全国に販路がありますので、不人気商品でも引き取れる場合があります」

これは、あなたにとってありがたい話です。

余っている商品を処分できる。
仕入れ金額より安く処理されて赤字になるけど、少なくとも現金化できる。
倉庫も空く。

こうした「余剰在庫の仲介業者」そのものは、昔から業界に存在していました。
余っているお店から商品を買い取り、足りないお店や別の販路へ回す。
そういう役割を果たしてきた会社です。

あなたも今まで、こうした業者のお世話になっていました。
今回の会社は初めて聞く名前です。しかし取引先の選択肢が増えるのは良いこと。あなたは余っている商品や、条件等について話します。

しばらく話しているうちに、相手はこう切り出します。

「もし可能であれば、ポケモンカードやワンピースカードの新品BOXも譲っていただけませんか?」
「定価に20%上乗せで買い取ります」
「人気商品も一緒に出していただけるなら、余っている商品も抱き合わせでまとめて引き取れます」

この申し出に、あなたは一瞬戸惑います。

ぶっちゃけて言いましょう。

ポケカやワンピのボックスを売るとき、
「これ、メルカリで定価以上で売ったほうが利益が出るよな……」
と考えたことのない小売店は、無いと思います。

それでもお店が定価で売ってきたのは、
「お客様との繋がりの為。」
が大前提としてあり、そして現実的に、
「小売店がメルカリに出店していることが発送住所などから特定されると、信用問題になる」
というリスクなどがあるからです。

そこへ来て、この申し出です。

これは余剰在庫処分の提案ではありません。
本来なら、お店に来てくれるお客様に販売するはずの新品BOXを、転売業者が定価以上で買い取ろうとしているのです。

この営業は、非常に巧妙です。
最初から、
「ポケカを高く買います」
「ワンピースカードを売ってください」
とは言わない。

まず、
「余っている商品はありませんか?」
と入ってくる。

ここまでは、普通の仲介業者に見えます。
しかしその後、小売店が心のどこかで、
「メルカリなど使わず、新品をプレミア価格で売るルートは無いだろうか…?」
と思っていた、心のスキ
を突いてくる。

常に経営の苦しい地方の店にとって、これはかなり強い誘惑です。

定価で売れば、利益は少ない。
しかし、転売業者に売れば、定価の120%で買い取ってもらえる。
仕入れ値から考えると、50%近い利益が出る。
しかも、不人気在庫まで一緒に処分できる。

20年前から考えていたこと。人気商品を扱うたびに、
「これ、プレミア価格でも売れるんじゃないか?」
と予想していた事が、メルカリの登場により、「予想ではなく確定」になってしまった現在。

個人の転売ヤーが得をしているのに、真っ当に商売をしてきた自分が、その恩恵を利用できない矛盾。

それをこの、「転売業者」が代わりにやってくれる?!

「……次に店に入ってくるポケカは50ボックス。常連さんの分のキープに20ボックス使う。店頭売りは30ボックスを予定していた。この30ボックスを……」

この業者に売っても問題ないのでは?

普通に売るより数万は利益が出ます。自分のような小さな小売店にとって、数万の純利益は生活に直結するレベルです。

さあ、あなたは、この誘惑とどう向き合いますか?

誤解の無いように書きますが、僕は小売店が転売業者に新品を売るのが悪だとはいいません。
気持ちはめちゃくちゃわかります。
カードキングダムグループを作った者として、カードショップ経営者として成功したと思われているであろう僕ですが、地方の徳島で店をやっていた頃は、何度も問屋さんに不渡りを出してしまいそうになる危機を経験し、ガチで首を括ろうとした事さえあります。
地方のカードショップの厳しさは、今でも夢に見るほどに体に染み付いています。

今も僕と話が合うのは、東京で大きなカードショップを経営している起業家社長より、地方のカードショップの店長だったりします。

だから転売業者に、定価以上で売りたい気持ちはわかる。違法とも言えないですし。

ただ僕が警鐘を鳴らすのは……その後、恐ろしい展開が待つ可能性があるからです。

■違法ではないが、信用を裏切る。

転売業者がどのように新品ボックスを仕入れているか。
後述しますが、無数のルートが考えられます。
しかし今回、その一つが見えてきました。

「カードショップや玩具店に営業電話を掛け、二次流通業者を装って懐に入った後、ポケカやワンピなどの人気商品を転売価格で仕入れる。」
というルートです。

これは、実際に行われているようです。転売業者と取引した「元店主」の証言なども、ネット上では散見されますし、実際に関係者から話を聞いたことも複数あります。

我々の想像以上に、「小売店から転売業者に流れている」と見てよいでしょう。

これは、法的には問題があるとは言えません。
しかし、信用の失われる行為です。

まず、問屋さんに対して裏切っています。
問屋さんはメーカーから、健全な流通を守る事を期待されています。

健全な流通とは、問屋さん自身が、定価以上で第三者に転売しないことや、
「ちゃんとお客様に商品を届けてくれる小売店に商品を卸すこと」
です。

流通という川の流れの常識、
「お客様に、定価で商品が届くこと」
を守るのが仕事です。だからこそ、メーカーと直接取引ができるのです。

★ミニコラム「定価はなぜ必要なのか?」

X等で時々、「プレ値がつくのが正しい。経済原理に則れば、高い値でも買う力を持つものが手に入れるのが当然」
という意見も見ますが、
「経済力を持つものが手に入れる」という考え方だけで、TCGの通常商品を語るのは乱暴です。それはごく一部の「投機商品に対して言える話」です。
投機商品と、一般に流通する定価の定められた商品は、違うものです。
TCGに何のために定価が存在するのかは、考えれば解る事です。
メーカーがTCG商品に望んでいるのは「普及」だからです。
「高くても買う人だけが残る」という状況になると、商品が死んでしまいます。
もっとも、TCGを投機商品のように扱う人が出てきたから、今のような状況があるのですが。
因みに僕は、PSA鑑定品などを投機商品として扱うのは、TCGの価値を高めるものとして、むしろ賛成です。
あれらは一旦、通常の流通で販売された後、美術品等と同じく古物になっている物なので、既に投機の対象です。
「カードには価値がある」
と示してくれるもので、カードゲーム業界に恩恵を齎していると思います。
今回の「新品の転売」の話とは全く違うので、そこは区別してご理解ください。

話を戻しましょう。

さて、このように問屋さんは、「メーカーから依頼された、定価で商品が流れる健全な流通」を守りたいと考えています。

僕の経験でも、問屋さんは「信頼」「仁義」を重んじていました。
カードキングダムでお世話になった問屋様も、ゲートルーラーを取り扱って下さった問屋様も、全て信頼を重視する企業様でした。

ですから、こちらが信頼を裏切った場合、とても厳しい対処をされる。
小売店が転売業者に商品を横流ししていることがバレたら、問屋さんは間違いなくその小売店への卸しを取りやめるでしょう。

小売店が、転売業者に新品を売ってしまうことについてですが、次に、当然ですがお客様を裏切っています。

本来ならそのお店に入る商品は、お客様が購入機会を持つものです。
しかし転売業者は、その購入機会を奪います。

結果的に流通に戻ってくるとは言え、その場合、転売業者の利益が加算されたプレミア価格での流通になります。
市場全体での、商品価格が上昇する結果につながります。

■最大の危険ポイント「一度関係すると、脅される可能性がある」!

今から書くのは、仮定の話です。
実際にこういう目にあった、そして店が潰れた……という話を聞いた事がありますが、証拠や実例をあげることはしません。

しかし、現実的にものを見ることが出来る方なら、
「ああ、これは単なる池っち店長の作り話じゃなくて、実際にあり得るな」
と理解してくださるでしょう。

では再び、20年やってきた地方のカードショップの店長さんに戻って下さい。
あなたは、
「常連の分さえ確保しておけば、お客さんを裏切ったことにはならない。」と判断して、仕入れた商品の約半分を業者に販売しました。

良心と実利の折衷案です。実際の所「悪いことをしているわけではない」とあなたは判断していました。

事実、法にも触れていませんし、客観的に見て悪い事とも断言できません。
ただ、一部の信頼を見えないところで裏切っていることと、それ以上に……とても危険な行動であったことを、あなたはこの後、思い知る事になります。

「次の弾も、当社に販売していただきたい」
転売業者から電話がかかってきました。

しかしどうも、次の弾は問屋さんからの配分数が減りそうな上、お客さんからの需要も高まっており、入ってくる分から一般販売に回せる量は確保できそうにありません。

つまり、転売業者に回せる分も無いのです。

あなたは、高く売れるという実利よりも、常連への信頼が大事だと判断し、

「今回はちょっと、御社にお売りできる分はないですね……」
と断ります。

すると転売業者は、こう返してきました。
「我々の調査では、御社の問屋さんは◯◯さんですよね。他のお店からも聞いたのですが、◯◯さんからなら今回、40ボックスぐらいはあなたの店に入るのでは?
それを全て買い取らせて下さい。」

全て?!
そんな話、今までされたことがない。

今までは「ちょっとでいいから売って下さい」という態度だったのに、突然の豹変。
あなたは嫌な予感を感じながら、受け答えます。

「いや、常連さんの分を確保したうえでないと、御社に回せる分は無いんですよ。今回はすみませんが……」

「良いんですか?御社は今まで数回、当社と取引していますよね。それを◯◯問屋様が知ったらお困りになるのでは?」

「ええっ!」

「それとも、『あの店は入荷したボックスをプレ値で転売している』とか噂が立つ方が困るかも知れませんね。今はSNSで簡単にデマが広まる時代ですから、本当に怖いですよね。」

あなたは脂汗を流しながら交渉します。最終的に転売業者は、こう言います。

「あなたのお店が潰れるのは勿論、私達にとっても手痛い損失です。お店にとってお客様の信頼を守ることが一番大切でしょう。御社とは今後も良い関係を続けていきたい。なので、今回は20ボックス都合して下さい。」

脅しともとれる話をしておいて、何を……ですが、貴方に選択肢は無いように思われました。

どうですか。

一度関係を持つと、ズルズルと引き込まれる。

いかにも……という話ですよね、これ。

マジで怖い。

■牧歌的だったカードゲーム業界故に、食い物にされる。

上記の話は、
「そうした事があって、お客様に回せる分が減り、結果的に店は潰れてしまった」
という、元店長の話を人づてに聞いたものです。

事実かどうか、断言できません。しかし僕は長年、カードショップを経営してきた経験から、実際にありそうな話だと思います。

そんな、闇金ウシジマくんの世界みたいな話が……と思われるかも知れませんが、ここで一つ、重要な事実を共有したいと思います。

カードゲーム業界は、30年近く続いてきました。
最初の頃は新しい業界として、紆余曲折はありましたが、カードゲーム世代の熱い需要を受けて、生き延びてきました。
でも、地方では、あんまり「儲かる業界」では無かった。
儲からないのになぜカードショップをやるか?それは、
「商売の素人だけど、カードゲームが好きだから、という熱意で店を作った人が多い、純朴な世界」
だったからです。

僕はフランチャイズの代表でしたから、100人以上のカードショップ経営希望者から相談を受けた経験があります。だから断言できます。
この業界は「子供と大人の中間世界」でした。

もう一度言います。他所と比べると純朴で、牧歌的な業界でした。だからこそ、僕にも楽しく経営を続けられたと思います。

そしてコロナ禍を超えた頃から、「あの頃の少年が、ある程度お金を出せる歳になった」事で、爆発的に需要が膨らみました。

規模がデカくなった。動くお金が大きくなった。

だから、そこへ、

「カードゲームなんて好きでもなんでも無い、むしろバカにさえしてるけど、金になる隙間があるなぁ」

と判断した、金儲け目的の人間が入り込んできたのは、自然な話です。

むしろ自由経済の国では、当たり前の話です。

カードゲーム、玩具業界を守ってきた人達とは、全く違う目線の人間が、ここ数年に一気に入り込んできた。

その現れが、転売ヤーであり、投機目的のユーザーであり、今回紹介している「転売業者」なのです。

つまり、わかりやすくハッキリ言うと、

「カードゲームを金目的の食い物にする人間が、ここ数年で一気に入ってきたせいで、転売価格の流通が生まれ、歪みが生じている。もう純朴な世界では無くなりつつあり、業界関係者もそうした金儲け主義の人間と戦ってきた経験が薄いので、色々とヤラれている。」

これを、ひとつの事実として共有しておきたいと思います。

■転売業者の仕入れルート・仮説

さて、
「金目的の、手段を選ばない人間がカードゲーム業界に入ってきている」
という事実を共有したうえで、

「転売業者は、他にどんな手段でカートン単位の新製品を手に入れているのか?」

を考えてみましょう。
ここから話すのは全て僕の「仮説」であり、何の証拠も実例もありません。しかし皆さんが、「ありそう」だと感じたら、かなり有り得る話だと思います。

1・小売店に行ったのと同じ方法で、問屋と関係を持つ。

先に書いた通り、僕の知る限り問屋さんは、流通の守護者です。
長い歴史と実績を持つ問屋さんは海千山千で、隙を見せない人達でしょう。
しかし、カードゲーム業界が成長するに従い、新しくできた若い流通業者には、もしかすると隙があるかも知れません。

二次流通業者を装う転売業者から、
「余っている商品はありませんか?」
と話を持ちかけられ、小売店と同じ手口で、新製品の横流しに加担させられる事が、無いとは断言できません。

この場合、一度関係してしまうと脅しに使われるのは、
「メーカーに言いますよ。」
なのでしょう……。

転売業者の営業にとっては、問屋との関係を持つことに成功するのは、小売店1店と関係を持つより、遥かに大きな金星です。
一度でも正規の流通業者と取引ができたら、ボーナスでも出るんじゃないでしょうか。

僕個人としては、ごく一部でも問屋さんが加担しているとは思いたくありませんが、転売業者が一番関係を持ちたいと考えているのはまず、問屋であることは間違いないと思います。

そして流通の末端では、既につながっている可能性を、否定できないと思います。

2・転売ヤーグループとの繋がり

「行列に並んでポケカを買えば、数千円貰える」といった短期バイトが存在することは、皆さんご存知でしょう。

このバイトたちを雇っている元締は、要するに転売ヤーグループです。
このグループ、最初はちまちまとメルカリで転売価格で販売していたと思います。

しかし、時間を掛けて販売している内に、市場価格が下落するリスクもあります。

そこで、転売業者との結びつきが生まれます。

転売ヤーグループからすれば、
「メルカリより単価は下がるが、転売業者が全部まとめて買ってくれるので、発送しなくて良いしリスクもない。」
という事になります。

この繋がりは、かなりあると思います。

3・量販店など、大手小売店の店員の弱みをつかむ。

ある量販店で、ポケカがカートン単位で売られているのが一般客に目撃され、騒ぎになったことがあります。

なぜカートンで売ったのか?という質問に対し、
「お世話になった相手に、お礼の意味があって売却した」
と答えたと聞きました。

お礼?……違和感がありませんか。

僕はこれ、
「販売員個人か、お店の関係者が何者かに弱みを握られ、カートン単位で売ることを強要されたのではないか?」
と考えています。

なぜなら、「地方の小さなカードショップ」の現実と違い、あんなデカい量販店にとって、わざわざ転売業者にカートンを売るメリットなんてほぼないので、不自然でしかないのです。

実利や、お世話になったお礼、などより、
「なにか不都合な事情があった」
と考えた方が、リアルだと思います。

今回目撃されたのは、他のお客さんのいる前で堂々と売られたものなので、色々とずさんです。

普通に考えたら、こういう取引は裏でやるはず。

つまり今回目撃されたのは、氷山の一角だと考えるのが自然ではないでしょうか。

■転売業者から「買う」と「売る」は違う。

ここをはっきり分けておきます。
転売業者から商品を仕入れて店頭で販売することと、転売業者に新品BOXを売ることは、同じではありません。

転売業者から仕入れて、プレ値で販売しているお店を非難するつもりは、僕にはありません。

なぜなら、たとえあなたの店が仕入れなくても、他で売られるだけだからです。
「全てのカードショップがスクラムを組んで、転売業者から仕入れない」
などという取り決めを作るのは、現実的ではありません。
そんな取り決めを無視したほうが儲かる構造では、従わない人が出てきて当然です。

では、メーカーが「転売業者から仕入れないでくれ」と言った場合は?
通常の問屋さんから新品を仕入れているお店にとっては、従う理由があるでしょう。
「でないと御社に卸せない」
と言われると困りますし、お互いの信頼関係も重要です。

しかし、思い出して下さい。

最初のシミュレーションでは、あなたは、
「一等地に店を出したお金持ちのカードショップ。だけど問屋さんと取引できていない」でした。

問屋さんと繋がりがない。つまり、メーカーの言うことを聞く理由がないんです。(!)

倫理的には「そこは従おうよ」と思う人がいると思いますが、現実的には従う理由がないんですよ。

そして商売は、利益という現実と、仁義と倫理が絡む世界の話なんですが、
「問屋さんとのつながりを持てなかったお店」
にとって、守るべき仁義はお客様に対してだけ、なんです。

「プレ値でも、お店に置いていたら嬉しい。」
というお客様の需要こそ、あなたが満たすべき需要であるとしたら、転売業者から仕入れるのは、選択肢として間違っているとは言いにくい。

だから、あなたのお店が、転売業者から商品を仕入れることを、僕は非難しません。
もちろん、別の意見があるのは当然だと思います。
そこは、誰とも争うつもりはありません。

一方で、転売業者に新品BOXを売る場合については、僕は反対というより、
「危険ですから、やめたほうが良いですよ」
と考えます。

その危険性については、先に書いた通りです。

転売業者に新品BOXを売ることは、単なる一回の取引では終わらない可能性があります。
ズルズルと引きずり込まれる可能性を、無視できない。
だから、絶対に安易に乗ってはいけません。

この警鐘を鳴らすのは、一回だけです。
こうした記事を書き続けたりすると、特定の組織に「継続的な敵認定」される可能性があるからです。

小売店の皆さん、どうか、心に留めおいて下さい。

■まとめ

僕は長い間小売店の経営者をやってきましたから、商売はリアルなものだと知っています。
しかしカードショップや玩具店には、それだけではない理想の共有がありました。
だから、儲けは少なくとも、楽しい仕事でもあったのです。
でなければ、儲けの一銭もでないのに、カーキン動画を何百本も作ったりしませんよ。(途中から収益システムができましたが、僕はそんな物ができるずっと前から動画を作ってましたし、動画でシングル価格が上がったからと言って、うちだけが儲かっていたわけじゃありません。)

ですが、カードゲームブームが長く続き、人気商品の市場価格が定価を大きく上回るようになったことで、短期的な利益だけを見て動く人たちが入り込んできました。

カードゲームを愛しているわけではない。
ユーザーに届けたいわけでもない。
業界を育てたいわけでもない。

ただ、商品を集めて高く売れば儲かる。

その発想で動く人たちが、業界の隙間に入り込んできた。

これを心に留めて下さい。

ここまで書いておいてなんですが、そうした人達を単純に「悪人」だと受け止めるのは、間違いです。
そんなふうに単純に考えてしまうと、問題の本質を見逃します。(仮説にあったような「脅し」が現実にあったとしたら悪質ですが)

彼らはただ単に、利益の追求者であるだけでしょう。

だから我々とはルールや価値観が違う。

単純にそれを善悪で判断せず、現実に存在する隣人として、どう対処していくのかを考える必要があります。

私、「池っち店長」は、いまもカードゲーム業界の、健やかなる発展と継続を願っています。

以上、転売業者に関する警鐘でした。

■業界各所へ提案

ユーザーの皆さんへ。
今回の記事を読んで頂き、ありがとうございます。
ユーザーの皆さんにとっては、今回の話は直接的には関係ないように見えると思います。
ですが結局のところ、こうした転売が蔓延しているカード界隈で、最終的に余計なお金を支払っているのは、皆さんです。
行列に並ぶ必要があるのも、転売業者がどこかで、正常な流通に乗る商品を中抜きして、品薄を煽っているからかも知れません。
つまり、最大の被害者はユーザーの皆さんです。

問屋様へ。
僕は問屋様は流通の守護者だと思っています。
ただ、心得違いをしている同業者がいないか、目を光らせて頂けると安心できます。

小売店様へ
これは本文で書いたので、割愛します。

メーカー様へ。
助けて下さい。
メーカーが常に問題を把握し、解決策を講じていることは理解しています。
ですが結局のところ、メーカーが大鉈を振るわないと解決しません。
もちろん、転売は、メーカーの預かり知らぬ現場で起きていることです。しかし既に、ポケカやワンピカは投機商品に成り果てていて、
「昔ながらの、あるべき流通」は事実上破壊されている
のです。
転売業者は既に、流通にガッツリ食い込んでいると見做すべきです。
これには外科手術が必要です。
1年、いや、半年でいいので、
「市場に十分行き渡る数を超えるぐらいの増産体制で商品を出荷」
して頂ければ、恐らく転売業者は干上がります。
もちろん、他の問題も発生するでしょうし、実行そのものも難しいと思いますが、転売業者を業界から切除するには、こうした施策が必要なのではないかと愚考します。

■おまけ

今回は怖い話だったので、ちょっと話題を変えて、
「玩具ブームについて僕が思うこと」
というテーマでおまけを付け足します。

ここからは池っち店長の個人的な私信のようなものなので、読んでいただく必要はありません。

私は、TCG業界含め、玩具業界に40年以上お世話になってきました。

「たまごっち」の時も第一次ガンプラブームの時もそうでしたが、過剰なブームが発生すると、この業界、
「命に関わる必需品ではないのに、みんな必死になる」
という、不思議な熱を帯びます。

これが食事や水やエネルギーなら、必死さの質が違います。玩具ブームに対する必死さは、一歩離れてみるとユーモラスにさえ見えます。

しかし、その愛は本物なのでしょう。好きなものに必死になる。そこに疑いはありません。

だからこそ、そこに歪みが生まれると、みんな怒る。
悔しい。納得できない。

色々と理不尽に思えることが、次々に起こります。

だからこそやはり、この業界はエキサイティングです。

玩具とは本来必需品ではない。遊びのためのもの。
だからこそ人間の本質を映す鏡なんじゃないか?
そう感じます。

玩具業界は、僕の愛する、いつまでも新しく、いつまでも未完成な業界です。
商いは、「飽きない」。僕にとって玩具業界こそ、「あきない」観察対象です。

今後僕は、自分の仕事の一部で名前を出さない可能性があります。
普通の人は、知名度など関係なく、実力と実績だけで仕事をします。
僕もそうした、普通の働き方もしてみたいと思うようになりました。
(実績を使うために、名前を出す場合もあります。場合によって色々です。)

だから今後もしかしたら、表からはあまり動いていないように見えるかも知れません。

だけど多分、何らかの形で玩具やカードとはつながりを持って、常に何かしていると思います。

池っち店長は、いつまで経っても、玩具の人です。

今回は長い記事を読んで頂き、本当にありがとうございました。

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