ヘルシーでいるために――米津玄師が向き合う「内側からの解体」#アジア文化最前線
配信
今J-POPが世界で注目されている。米グラミー賞運営団体は世界的トレンド予測の筆頭にJ-POPを挙げた。その立役者が、米津玄師だ。劇場版『チェンソーマン レゼ篇』の主題歌「IRIS OUT」は、米ビルボードのグローバルチャートに日本語楽曲として史上最高の5位にランクイン。日本版グラミー賞とも称される「MUSIC AWARDS JAPAN 2026」では6冠を達成したばかりだ。本人としてもJ-POP隆盛についての実感が日に日に大きくなっているという。(取材・文:照沼健太/撮影:山谷佑介/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
海外からの反響を通して得た「J-POPの実感」
「もちろん『チェンソーマン』や『ヒロアカ』といった作品の力を大きく借りてのことですが、『こんなにたくさんの人たちが、言語が通じなくても楽しんでくれているんだ』と。その実感が大きくなっている感じはありますね」 先日、TVアニメ『僕のヒーローアカデミア』第2期オープニングテーマ「ピースサイン」がアメリカレコード協会からゴールド認定を得たばかり。これはTVアニメ『チェンソーマン』オープニング・テーマ「KICK BACK」のゴールド・プラチナ認定に続く、米津3度目の達成だ。ただし「J-POP」について、複雑な気持ちもあるという。 「ずっと『私がやっているのはJ-POPです』ということを言い続けてきたんですよね。でも『なんでそんなにJ-POPって言ってたんだろう?』と改めて思い返すと、最初は結構『逆張り』だったなと」
話は少年時代にさかのぼる。徳島県出身の米津玄師は、小学校高学年から中学生になるころにかけて音楽が好きになった。 「新しい音楽と出会うために子どものころの自分が取れる手段は、主にテレビかインターネットだった。でも、当時のネットには今みたいにいろんな音楽が転がっておらず、まだ狭い世界だった。だから能動的に探そうと思ったらテレビで出会うしかなかった。それで、毎週欠かさず歌番組のチャートを100位とかから聴いていたんです。そのうちに『これはよく作られている素晴らしいポップスだ』とか、あるいは『これはすぐさまチャートからいなくなるな』みたいにだんだんわかるようになってきて。そんな中でミュージシャンを志すようになって、東京に出てきました」 「いろんなミュージシャンとか音楽業界の人と話していくと、全然わかってない人が多かったんですよね。ポップスを見下す空気感みたいなものがすごく蔓延していて、そういうのが嫌だった。そこに対する『逆張り』みたいな気持ちがあったのは、否定しないでおこうと思います。『私がやりたいのはJ-POPです』とあえて言うことによって、周囲を牽制する、威嚇するみたいなところが若いころにはありましたね。いつからか気がついたころには、牽制や威嚇が剥がれて、ごく自然な自己認識になっていました」
- 132
- 63
- 23