水分保持力 高レベル
記者もインターネットで調べてみると、個人の体験談や根拠が明確ではない情報が多く出回っていた。そこで脱水症状などに詳しい埼玉慈恵病院(熊谷市)の藤永剛副院長に連絡し、話を聞いた。
藤永副院長は「水分補給に適する飲料の中で、牛乳はトップクラス。ただ、水分不足による症状が出ている時は水や経口補水液が優先なので、牛乳よりも水を勧められたのでは」と見解を示した。
“トップクラス”とする理由について、藤永副院長は「体内に水分をとどめる水分保持力が非常に強い」と説明する。
水分保持力とは、体内にどれだけ水分を保てるかを示す指標(BHI)で、水を1とした値で比較する。英ラフバラ大学の研究によると、スポーツドリンクは1・1程度にとどまる一方、牛乳は経口補水液と同等の1・5前後と高く、水よりも体内にとどまりやすいことが分かっている。
「牛乳にはナトリウム、乳糖などが含まれ、体内に長くとどまりやすい。経口補水液は塩分が多いので、日常の水分補給は牛乳が最適」(藤永副院長)。ただしカロリーがあるため、過剰摂取に注意し、水を基本にすることが大切だ。
熱中症対策に有効
緊急時は適さず
「質問者のケースのように、既に水分不足による症状がある場合は、水や経口補水液を優先して摂取することが重要」と埼玉慈恵病院の藤永剛副院長は説明する。牛乳は吸収される速度が水や経口補水液と比べて遅いので、緊急時の水分補給には適さないという。
幼児は特に、1日の牛乳の摂取量にも注意がいるという。幼児は牛乳で満腹感を得やすく、食事量が減ると食物繊維の摂取量も不足し、便秘の原因や悪化につながる可能性がある。幼児の牛乳摂取量は1日400ミリリットルまでを目安とし、食事も合わせてバランスに配慮することが必要だ。
高齢者は、むしろ加齢に伴って食事量が減りやすいので「牛乳はタンパク質やカルシウムなど栄養面でも優れている。1日当たりコップ1、2杯程度を日常的に飲むことで、効率的に不足分を補いやすい」と藤永副院長は利点を話す。
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気温が上昇するこれからの季節は、どのように取り入れれば良いのか。藤永副院長は「牛乳は熱中症対策にも有効だ」と指摘する。
「水分保持力が高いのは、体内に“貯水プール”を作るようなもの」(藤永副院長)。農作業に出る30分から1時間前にコップ1杯の牛乳を飲めば、日中の暑さに備えられるという。
もちろん農作業中は小まめな水分補給が必要だ。熱中症の疑いがある場合は、水や経口補水液で速やかに水分を補給する。
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質問者に取材の結果を伝えたところ、「牛乳は水分補給に最適であると分かり、安心した。外出前に取り入れつつ、水と食事のバランスに注意し、今後の育児に生かしたい」と安堵(あんど)の様子を見せた。
高内杏奈
たかうち・あんな 2016年入社。読者の声や情報を起点にした調査報道企画「農家の特報班」を担当。山形県出身で、好きな生き物はカエル。