正面玄関ガラス扉に掲示がある(著者撮影、2024年)
「断固たる処置」=暴力的制裁か
碑文谷一家は2024年夏、闇バイト強盗事件が首都圏で頻発した際に初めて、今回のメッセージと同様、闇バイトによる強盗事件に関する告知文を掲示した。2度目はその半年後で、ストーカー犯罪の撲滅を掲げた。3度目の今回で特徴的なのは、「断固たる処置」に「施設に送致されようとも」という一文が加えられた点だ。
「送致」は逮捕された容疑者が、検察に送られる際(送検)に使われる警察用語である。強盗事件を起こして塀の中に送られ、社会から隔絶されても、「断固たる処置を取る」という警告だろう。
恫喝ではないというエクスキューズのためか、内容をはっきりと書かず、どうとでも解釈できるぼかした表現になってはいるが、暴力団の「断固たる処置」は暴力的制裁としか考えられない。碑文谷一家が最初にメッセージを掲げた際には、日本最大の暴力団である山口組が呼応し、闇バイトへの関与を禁じる通達を出した。暴力団はアウトロー社会のエスタブリッシュメントである。悪人に対しては相応の抑止力になったはずだ。因果関係ははっきりしないが、以降、闇バイト強盗事件は沈静化した。
とはいえ刑務所の警備は厳重だ。その中で意図的に傷害・殺人事件を起こせるのだろうか? 抗争事件の報復が、塀の中で実行された例は本当にある。2001年、東京の四ツ木斎場で起きた住吉会幹部射殺事件の実行犯だった稲川会組員は刑務所内で襲撃され、うち1人が自殺に追い込まれた。ナイフやチャカは手に入らないし、厳重なチェックがあるとはいえ、工場でキリなどを盗むことは出来るらしい。筆記用具だって目をえぐる程度の暴力事件は起こせる。
こうした事故を防ぐため、娑婆で抗争が勃発すると、対立組織組員の居住エリアや工場は分離される。だが暴力団のマフィア化が進行しつつある現在、表面上は組織に属さぬ隠れ組員が増えており、刑務所側がどれだけ抑止策を講じても突破される可能性はあるだろう。
また長期刑を務めて出所した暴力団員から、服役した刑務所で凶悪事件の犯人と接触・会話した経験を聞くことはよくあった。接触の機会さえあれば危害を加えられるはずだ。刑務所の実際を知れば、初回よりも極めて過激な恫喝になっていることが分かる。ただの脅し文句ではないのだ。