2024/02/01:篤視点加筆。[篤寛]出張・居酒屋あつや。・14[現パロ]
2024/02/01:二頁目に篤視点加筆しました。
加筆分はコメント下さった方との会話で生まれたものですm(_ _)m
食べてるだけー。裁判でストレス溜まって疲れ切った寛の元に篤が来て……なお話。
尚、実在の人物事件団体とは無関係ですし裁判などの事柄は全くの出鱈目ですので間に受けないでくださいm(_ _)m!!!
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疲れた……。
日車は部下の清水の大きなため息混じりの欠伸を聞きながら、ここずっと抱えていた案件を振り返る。
始め予定していた通りに進んだ一審だったが、途中で被告、つまりは自分たちが弁護する側の人間がストレスからか我慢の限界を迎えたらしく、検察側が並べる証拠を聞いている最中にヒステリックに泣き出して喚き出してその場は閉廷になったのだ。
その後裁判官での話し合いが行われ、日車たちは精神鑑定と裁判のやり直しを求めたが、被告側自らがそれらを拒否して、自らの罪を認める言葉を吐いた。
それにより急遽流れが変わり、日車と清水の血の滲むような努力は全て無駄になり、被告は有罪が決まって相応の罰金と実刑判決が下された。
この事件で日車側に悪かったのは、被告はとある界隈では有名で、かつ今回の事件ではその名を使って卑劣な手口を使った。
その為中々にマスメディアと人の目を集め、弁護する側の人格も問われる非常にやりづらく精神的に方々で追い詰められる事案になった。
何せテレビや新聞や週刊誌の、トップとはいかないまでも細々とした記事に採用されるほどには注目された事件だ。
要らぬ恨みも買うし人目も気になるし、胃に穴が空きそうな全く協力してくれない被告との面接でも疲れが溜まりに溜まった案件だった。
「あー!!! 疲れた!!! 飲みに行きましょう日車さん!!!」
「いやだ。私は帰って寝る」
「嘘だ! きっと優しい恋人に慰めてもらうんでしょう?! 私の恋人が美味しいお酒とおつまみなのわかってるくせに〜!!!」
とまあ、こんなやり取りを清水としつつ、事務所の戸締りをした日車は清水と別れ、今夜は苦い酒になるななどと家路を行く。
あの店に行くには時間が過ぎているし、こんな格好悪い自分を見せたくないという矜持が働いたのだ。
嫌われたくない。
清水が聞いたら頭が噴火しそうなことを思いつつ、日車は侘しい気持ちのまま家に着き玄関の鍵を開けようとしのだが、そこで異変に気づいた。
何故、灯が付いているんだ?
一瞬消し忘れたかと思って鍵を開けようとしたら空いている。
まさか空き巣かとそーっと中へ入ると、よく空調が効かされ、キッチンからガサゴソと音がした。
取り敢えず鞄をそっと置き、直ぐに写真で証拠と警察への連絡が取れるよう携帯を片手に、玄関の隅に置いてある修学旅行で買った木刀を構えてキッチンへ近づく。
何やら鼻歌混じりに良い香りがしてくるのは何故だ? と思いつつそっと伺えば、そこには予想外の人物がいた。
日下部だ。
「…日下部さん?」
「おお! おかえり! 日車さん! 疲れてるだろ? 風呂沸かしてあるから先入っちゃって!」
「いや、あの、…何故君がここに?」
「いや、…だって合鍵貰ったってことは、いつでも来ていいってことだろ?」
「そ……うだが……」
「ほら! さっさとしねぇと料理が出来ちまう! 入って入って!」
日車はああだのはあだの呆気に取られたまま取り急ぎ風呂へ行き、「ゆっくりあったまれよ!」との言葉に従い三十分ほど湯船に浸かって充分温まってから風呂から出た。
そして良い匂いに惹かれてリビングダイニングへ向かうと、もうテーブルの上にはまるであの店のように泡と本体が三対七の冷えたビールとずらっと並べられた料理、それに水がグラスに一杯用意してある。
どこから出したのか、いつも店で見るような小鉢に盛られた卵サラダは目に好ましく、見るからに美味そうで、早く食べてと言っていた。無論他の料理もだ。
「日下部さん……」
「ん〜〜〜? あ、今日は俺も一緒に食って良いか?」
「あ、ああ。それは勿論だが……。…何故急に?」
「ん? …ま、なんとなく、だな」
「…そうか、なんとなくか」
ここずっと碌なことが無かった。
あの店にも通えず、二転三転する被告の言葉に足も目も酷使して、それに心もすり減っていて、なのに恋しい人には全然会えなくて、一人で時間のある時を見つけては急いでコンビニ弁当を侘しい気持ちでかき込んでいた。
日車の口元が自然と弛んでいく。
「んじゃま、いただきます!」
「…いただきます」
先ずは水を一杯飲み干す。
風呂の後は水分補給が欠かせない。
風呂の後の冷えたビールは美味いが、先ずは水を飲んでおきたい。
次いで卵サラダだ。
ざく切りのゆで卵とマカロニやきゅうりやトマトをマヨネーズで和えて塩胡椒で味を整えてあり、美味い。
次にビールを飲みながら、春菊の和物をいただく。
春菊の天ぷらは春菊の香りが苦手でも食べられるようになっているとのことで、確かに香りが油で抑えられていた。
春菊は味噌汁に入れても美味いそうだ。
今度是非とも作ってくれと日車はさりげなく今度を頼み込む。
日下部は笑って快諾してくれた。
その笑顔にホッと人心地着く。
次にキャベツとにんじんの千切りが山とつまれた上にドンと乗っかったトンカツをいただいた。
ザクッという小気味いい衣の音と共に、ジュワッと口の中に肉の旨みが溢れる。
それほど油っぽくないのは、そういう部位を選んだからと、卵を衣に混ぜたからザクザク食感が増したのだろうと言われた。
肉にも味付けをしてあり、細かく切れ目が入れてあるそうで、味がしっかりしている。
キャベツの千切りはシャキシャキして新鮮で、たまにチェーン店で食べる弁当のものと違い瑞々しいのに水っぽくない。
にんじんの千切りを食べた時は思わずそのキャロットグラッセにしたような甘さに驚いて、これは何故こんなに甘いのかと日下部を日車は問いただしてしまったほどだ。それほど舌に甘かった。
味噌汁は白菜と油揚げが入っていて、白菜がくてくてでとろりと甘く、胡麻油で揚げた油揚げの香ばしさと油に良くあっていてまたホッと息が溢れて、白米と一緒にかき込む。
そこにエビチリと家だからだろう、店では一杯だけのビールがまた追加されて、日車は大いに喜んだ。
もう疲れも吹き飛んで、口元は緩みっぱなしだ。
それを、日下部は自分も料理を平らげながら、嬉しそうに見ていたのだった。
食べ終わり皿洗いをしてシンクの片付けを済ますと、日下部が隣に自然とひっついてきた日車に声をかけて、冷凍庫を確認させた。
「ここに大体一週間分の食べるもの入れてあるから、時間がない時に解凍して食べてくれ。んで〜〜〜っと、エビチリは大量に作ったから明日も食べられるし、冷凍して保存してくれてもいい。やり方なら教える。まあ、店に来てくれんのが一番良いが、なんだ、その、…ま、好きにしてくれ」
「ああ、すまない」
「そこはありがとうだろ」
「フ、ありがとう、日下部さん」
「おう。んでよ、店来らんない時は、いつでもよ、前みたいに昼間でも朝でも鍵使って入ってくれて良いからな?」
「良いのか」
「あんたなんの為に俺がわざわざ小っ恥ずかしい思いして鍵渡したと思ってんだ」
「フフ、私をその美味い料理で太らせてどうする?」
「俺は釣っ魚には餌やって太らせる質なんでな」
「太らせてどうするつもりだ?」
「…はぁーっ。あんたな、ソレ、俺だけにしとけよ?」
「ソレ、とは?」
「…あぁ、もぅ……。〜〜〜知らん!」
頭をガリガリと掻きながら煩悶する日下部を見ながら、エビチリはニンニクが入っているから牛乳を飲んでから食べるとして、…清水にもお裾分けしてやるか? などとニヤリ笑う、なんとも肩の力がホッと抜けた日車と、要らぬ恥をかきつつもやはりこちらも久方ぶりに顔が見られてホッとしていた日下部がいたのだった。
翌日、日車は弁当持参で弁護士事務所へ現れ、部下の清水に問いただされたが、エビチリをお裾分けしたら「今夜のおつまみゲット!」と大いに喜ばれ、なんとか追求を流れたという。
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