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オールイン【篤寛篤】/Novel by じゃこめし

オールイン【篤寛篤】

1,614 character(s)3 mins

領域に囚われた日車と日下部がポーカーで自分の命を賭けるみたいな短い話です

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「カジノを模した領域か…本当に術式という物は多岐に渡るな。面白い」

こんな状況だというのに、俺は口角が上がるのを止められなかった。

「笑う余裕があるとは、頼りになることで」

日下部の皮肉には、笑って「すまない」と返す。
まんまと二人揃って捕らわれた領域はカジノを模した物で、目の前の若い術師はカードをシャッフルしながら楽しそうに笑う。

「面白いだろ?ゲームを自分で選べないのは不便だけどね。長々と説明するのは好きじゃないから、簡潔に、一度だけ。チップは一枚が一歳。アンタらの手元には、年齢の分だけチップが配られてる。チップが無くなれば“ゲームオーバー”。俺から自分の年齢分勝ち取ればここから出られるし、欲しがってる情報とやらもくれてやるよ」

二人の目の前に積まれた数十枚のチップを見下ろす。

「なるほど」

「そっちの飴咥えたおじさんと違って、アンタはこういうの得意そう」

「うるせえよ」

三十六年の人生の中でポーカーフェイスと揶揄された事は何度かあるが、果たしてそれが実際のポーカーに有利に運ぶとは思えない。

「ヒントをあげるよ。俺、ダラダラちまちま勝負するのは嫌いなんだ。だからゲームが長引けばプレイヤーの勝率は下がるようになってる」

「何だそりゃ。お前に有利すぎねえか」

にこりと笑う彼に日下部はそう吐き捨てたが、さっきの会話も合わせて俺はある可能性に思い至る。

「一ついいか」

「何?」

「俺が彼の分のチップを賭ける事は可能か?それで勝利した場合、二人ともこの領域から解放されるか」

「何?おい、日車?」

「…いいよ。その時は二人とも出してあげるよ」

「日下部」

「あん?」

日下部の目を真っ直ぐ見つめて問う。

「君、俺に何枚預けられる?」

「全部」

即答されて、前に居る彼が意外そうに眉を上げた。

「へえ、随分そっちの人を信頼してるんだね。じゃあ始めるよ」

彼がカードを配り始めると、日下部が彼には聞こえないよう小さな声で「何か策でもあんのか」と確認してきた。

「ああ。文字通りの賭けだが」

「一か八かかよ…」

領域がポーカー単体ではなくカジノである事、勝負が長引く事を嫌う口ぶりから、彼は勝ちに拘るより早い決着を好むと推察した。

「勝算はある」

配られたカードを確認する。三のワンペア。

「一枚チェンジ」

一枚交換すると、手元には三と十のツーペアが出来上がった。

「さて。分かってると思うけど、フォールドは無い」

「ああ…オールインだ」

手元のチップを、全て場に滑らせる。

「はは。本気?」

信じられないと笑う彼に、「ショーダウンといこうか」と崩れたチップの上にカードを広げる。
同じように場に置かれた彼のカードは……役なし。
自分の予想は当たっていた。
ほう、と息を吐いて背もたれに体を預けると、反対に日下部が身を乗り出した。

「まじか!?ツーペアで!?」

「おじさんのツレ、イカれてんね。普通気付いても中々出来ないよ。もし違ってたら一発アウトだよ?」

「どういう意味だ」

俺と彼のカードを見比べていた日下部が怪訝な顔をした。

「彼は最初に教えてくれただろう。ゲームが長引けばプレイヤーの勝率は下がるようになっていると。…裏を返せば、最初のゲームは勝率が高いという事だ」

「ちゃんと教えてあげてんのに、意外と気付く奴は少ないんだよね。…でも、気付いたからってオールインする?違ってたら二人とも死んでたのに」

「その時は地獄で日下部に謝るさ」

溶けるように消えていく領域を眺めながら言うと、彼は「地獄なんだ」と笑った。
元居た地下の裏カジノに戻ると、彼が「それで何が知りたいの」と椅子に深く腰掛けた。
壁にもたれかかりながら、こちらの欲しい情報を引き出している日下部の背を見つめて、小さく呟いた。

「地獄行きさ、俺も日下部も」

Comments

  • 小夜双☆スカィWeb
    May 15th
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