[篤寛]そんなことは分かっている。
2024/02/19:修正済。
べろちゅー程度。
これ→novel/21523574 の続き。シリーズとして纏めてあります。
カウンセリングで激昂する寛とそれを宥めようとする篤のお話。寛は泣いたり激昂したりしないと言う方はバックお願いします。
※ カウンセリングには人によって向き不向きがあり、尚且つ自分に合う合わないの、力量だけではないカウンセラーの人選もありますm(_ _)m※
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日車はイラついていた。
日下部と家入に説得されて高専の最寄駅に近い病院へ向かい、カウンセリングだと言われて椅子に座った時、いや、そもそも日下部に病気だと言われた時からそう言ったものはあった。
自分は病気ではない。
そんな思いから、カウンセラーに話をしていき、その冷静な顔で穏やかな口調をもって頷かれ「貴方の言うことは最もですね」と分かったような口の聞き方をされ、更には「辛かったですね」と言われて、限界が来て日車は音を立てて椅子から立ち上がり、その部屋から出てその場から去った。
会計やら説明やら謝罪やらして後から小走りで追いかけてくる日下部は今日自分を心配して着いてきてくれたのだが、今は取り敢えず誰とも話したくない。
心の底にしまってある汚い澱を無理やり掬い上げられ目の前に突きつけられたような、酷く不快で吐き気すら催すものに日車は支配されていた。
だから自分に追いついて「大丈夫か」と聞いてきた日下部にも日車は「放っておいてくれ」と手を振り払ったし、歩調を合わせて付いてきてくれる日下部にも苛立ちを隠せない。
大体、日下部も日下部だ。
巻き込まれたからと言って、あんな言葉を仮にも促されたとはいえ同じものを示したのだ。
それなのに自分を病気扱いするとは何事か。
日車は目の前が見えなくなっていて、日下部が何度詫びても聞き入れず、それ以前にその詫びすら耳に入っていなかった。
ただひたすらに胸糞が悪い。
腹が立って仕方ない。
このムカムカをどうしたら昇華できるのか。
とそこまで考え、ふと日下部がいるではないかとさも妙案とばかりに日車は漸く日下部と目を合わせる。
そこになホッと安堵したような顔があり、目の奥は心配で満ちていて、…そこに吐き気がしていっそ吐いたら楽になるかとまで日車は思った。
楽になりたい。
解放されたい。
もう嫌だ。
何もかも忘れたい。
そう思った時には日車はもはや頭の中は真っ白で、何も考えられず、日下部の手首を掴み、ちょうど駅前とあって頃合いの良いホテルを見繕って日下部の慌てる声も聞かずに入って行った。
日下部はチェックインの最中は文句は言わずに従っていたが、部屋に入るなり立場を逆転させて、日車をとにかく冷静にさせるためにソファに座らせ、自分はその目の前で立ったまま腰に手を当て会話する姿勢を見せる。
日車としては昂った身体と頭をさっさと処理したいと精神が悲鳴を上げているのに、日下部はどことなく悲痛な顔をして喉で唸る日車の目をじっと見つめたままだ。
日車は身じろぎしてから視線を逸らし、また日下部と視線を合わせて今度は強く睨みつける。
「カウンセリングは私には合わない」
「なら他んとこ行けば良い」
「私は……!!!」
「そこで俺にキレても仕方ねぇだろ。あの家入が医者勧めるってくらいだ。かなりヤベェってことだぞ?」
「…私は病気ではない」
「そう思いたい気持ちもわかるが……」
「君に何が分かる!!!」
「俺の妹の息子が、タケルが交通事故で死んだ時妹がな」
日車が目を見開くと、日下部は小さく笑って「俺は何も出来なかった」と自嘲気味に笑った。
それに日車は息を飲んでから眉間に皺を寄せ、「すまない」と眉尻を下げる。
それはまるで飼い主に叱られた犬のようで、日下部は「仕方ねぇなぁ」と笑ってくしゃくしゃっと日車の整えられた髪の毛を崩す。
「だからさ。…まぁ、どうしようもない時には付き合うが、なんつうか、その前段階のさ出来る限りのことはしときたいんだわ、俺としては」
「なら、カウンセリングよりも良い方法がある。…分かるだろう? 日下部」
日車が手を伸ばして自分の服を脱がせようとしてくるのに、日下部は待ったをかける。
「なぁ、日車。妹もさ、向精神薬とかは飲んでんのよ。お前もそういうの必要じゃねぇかなって思ったんだが……」
「いや、君の方が良い」
「はぁ〜〜〜……」
日車が俯き、「すまない」と小さな声で呟く。
それに日下部は、ガリッと飴を齧って日車の顎を上げ、口付けることで応えた。
日車は目を見開き、そして目を閉じてじっと静かに日下部の動向を他の器官で伺う。
日下部のチョコレート味の舌が唇を舐め、門歯をノックしたので迎え入れ、舌を絡ませ合い、啜りあった。
そういえば今日はバレンタインか。
日車の脳裏にそんなことが浮かぶ。
はふ、と日車が呼吸の為に口を開くときには、日車の頬には静かに涙の雫が流れていた。
それを日下部は舐め取り、「この続きはまたな」と笑う。
日車は次があること、また、日下部に見捨てられていないことに安堵して、安心して日下部の胸の中に入りトクトクという心臓の音を聞きながら目を閉じたのだった。
翌日、高専の医務室にて日下部と共に日車は家入にことの次第を話し、その流れで日車のお目付役として日車と同等もしくは上級の任務に行く時は日下部が同行することを伊地知宛に伝えた。
そのことと、日下部が同行している際日車が行きと帰り両方とも日下部にもたれて車内で眠るので、補助監督の間には二人がそういう仲であるという認識が出来上がっていったのだったが、まだ二人はそのことを知る由もない。
※キャプションにも書きましたが、カウンセリングには人によって向き不向きがあり、尚且つ自分に合う合わないの、力量だけではないカウンセラーの人選もありますm(_ _)m※