SWCC(旧昭和電線ホールディングス)は、2018年に長谷川隆代氏(現代表取締役会長・取締役会議長)が代表取締役社長に就任してからの8年間で、ROIC(投下資本利益率)が5.6%から12.3%に改善し、時価総額も約13倍に拡大した。「目標未達でも赤字さえ出なければいい」とされていた会社は、なぜ変わったのか。その改革を支えたガバナンスとROIC経営の実践について、長谷川氏に聞いた。
「赤字が出なければよし」と決別した日
――長谷川会長が社長に就任する前のSWCCは、経営や組織運営の面でどのような課題を抱えていましたか。
長谷川隆代氏(以下、敬称略) 会社はバブル崩壊やリーマンショックを経て長い低迷期にありました。「赤字さえ出なければ事業は続けてよい」という考え方が全社に染み付き、中期経営計画も未達が当たり前という状況でした。
本来であれば執行部を監督するはずの取締役会も、機能を果たしていませんでした。社内で要職を経験してきた人たちの「上がりのポスト」という色彩が強く、取締役の多くは営業や人事といった主流部門を歩んできた人たち。一方、私の出身である研究開発部門はどちらかといえば傍流と見なされ、「研究開発の人は事業のことが分からないから」と揶揄(やゆ)されることもありました。
何か意見を述べても「ご意見は承りました」と聞き流されてしまい、議論らしい議論がほとんどないまま、組織の理屈で物事が決まっていく。まさに「ザ・昭和の取締役会」でした。
――長谷川会長自身が、SWCCは変わらなければならないと強く感じたきっかけは何だったのですか。
長谷川 転機になったのは、2015年に多額の特別損失を計上したことです。特別損失というのは突然発生するものではなく、過去の投資判断の失敗が積み重なって表面化した大きな「膿」のようなものですよね。「膿」だけ取り除いても、その原因となった意思決定の在り方や組織の体質が変わらなければ、同じことを繰り返しかねません。「次に大きな損失を出したら、本当に立ち行かなくなる」。そんな強い危機感を抱きました。