大通寺から神奈川県立金沢文庫に寄託された文書、源平合戦期の歴史的史料群と判明

翻刻が行われた「隆政書状」(神奈川県立金沢文庫提供)

神奈川県立金沢文庫(横浜市金沢区)が、大阪市天王寺区の大通寺から寄託されている文書について、源平合戦(治承・寿永の乱)が行われた平安時代末期の歴史的史料群であることが分かった。文書には「印仏」と呼ばれる仏像などのスタンプが押され、判読が困難な中、東京大学史料編纂所などと研究グループを作り、令和6年度から2年間かけて調査などを実施。同期の貴族、藤原実清ゆかりの文書であることを解明した。文書には、同期に活躍した源義仲も登場し、貴重な1次史料として期待されている。

今回、古文書の文字を読み解く「翻刻」が行われたのは、大通寺に所蔵されている国指定重要文化財「木造阿弥陀如来立像」(高さ約1メートル)の内部に収められていた81通の文書。平成22年から、県立金沢文庫に寄託されていた。

翻刻の作業は、東京大学史料編纂所などと作った研究グループで、令和6年度と7年度に進められた。大きな障壁となったのは、文書の片面または両面に「印仏」と呼ばれる仏像などのスタンプが無数に押されていたことだった。

中世では、人が亡くなった時に保管していた手紙などに印仏を押すなどして像内に収納する習慣があったという。県立金沢文庫学芸員の貫井裕恵さんは「亡くなった人を悼む追善の儀礼だった」と説明する。今回の文書では、筆跡と印仏がともに黒色で重なり、成分も同じことなどから判読を難解にさせていた。

翻刻の作業では、人工知能(AI)を用いた画像処理技術で印仏を除去し、文字を読めるようにする取り組みにも挑戦するなど、試行錯誤が繰り返された。そこで見えてきたのが、大半が平安時代末期の貴族、藤原実清に関わる文書であること。そのため、木造阿弥陀如来立像は藤原実清の供養が目的だった可能性が高いという。

文書では、鳥羽天皇の皇女で藤原実清が仕えた八条院暲子内親王に関する記述が多くみられるといい、平安時代末期の社会を考える上で重要な文書群に位置付けられる。藤原実清自筆の文書のほか、「隆政書状」と呼ばれる文書では、鎌倉幕府を開いた源頼朝のいとこで木曽義仲の名でも知られる源義仲や源行家が登場している。

貫井さんは「源平合戦期の1次史料がこれだけの分量出てきたのはすごいこと。一級の史料で、源義仲の動向がうかがえる文書の存在価値は大きい」と意義を語る。研究成果は、「『金沢文庫研究』356号」に発表した。

文書は現在、県立金沢文庫にて公開されており、一般の人でも観覧することができる。月曜休館。(小川寛太)

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