06【コイノバイオント】




 出典【はてなブログ 妻だけど妻じゃない人との暮らし(現在非公開)】


 解説:“妻だけど妻じゃない人との暮らし”は、かつては多重人格障害と呼ばれていた精神疾患、解離性同一性障害を発症した奥さん(アキホさん)を支える旦那さん(シンタロウさん)の個人ブログです。現在は、一部ユーザーからの心無いコメントのせいで全記事が非公開設定になっています。



 2024-03-07

 ≪今更ですが。。。≫

 

 最早、僕個人の備忘録と化してきている当ブログを開設してから今日で早や三年目となりましたが、先日のみぃなぷぅさんから頂いたコメントで、ある事に気付かされました。

 

 そう言えば、アキホがアキちゃんになった日については何も書いてないな……と。


 なので、本当に今更ながら、四年前のあの日、我が家で一体何が起こったのかを、ブログ開設から三年目という、この節目を利用して語らせて頂きたいと思います。

 



 アキホがアキちゃんになったのは、朝食を食べている時でした。

 あの日は、僕が朝食を作る当番だったので、アキホの好きな黄身抜きの目玉焼きに、かじのやのしそのり納豆、焼き鮭のユズぽんおろし、ツナサラダ、豆腐とわかめと長ネギのお味噌汁を作りました。

 それらをテーブルの上に置いて、いつもの様に二人で「いただきます」と手を合わせたのですが、今にして思えば、この日は僕しか「いただきます」と言っていなかったかも知れません。

 僕はご飯を食べながら、ジムに新しく来たウェルター級の男の子の礼儀がなっていないとか、マススパだって言ってんのに本気で当てに来るからいつか誰かが怪我するとか、色々と愚痴をこぼしていたのですが、アキホの箸の進みが遅い事に気付き、「食欲無い感じ?」と訊ねました。

 するとアキホは「はぁー……」と大きな溜息で答えます。

「どうしたの?」

「別に……」

 たまにですがアキホには、その日1日、最初から最後まで何をしていても不機嫌、という日があったので、あ、もしかして今日はその日かな?と思い、僕はしばらく無言でいました。

 するとアキホがそっと箸を置いて、こう言ったんです。

「失敗したなぁ……」

「失敗?仕事で何か失敗しちゃったの?」

「……やっぱ顔だけで結婚相手選んじゃダメだね」

「えっと、どういう事?」

「何かもう、全部が思ってたのと違ったんだよ」

「全部って?」

「これ全部。こういうの全部。あーあ、なんかもう、いいかなー」

「ごめんね、あの、多分だけど、俺に怒ってるんだよね?」

「もういいや。さよなら、しんちゃん。ばいばーい」

 アキホはそう言って笑いました。

 僕がアキホに会ったのはこれが最後で、この日、この時、この瞬間から、アキホはアキちゃんになったんです。

 アキちゃんの第一声は


「おじさん誰?」

 でした。


「おじさんて。俺まだ29だよ?」

「ここどこ?え?おじさん誰なの?」

「アキホ?」

「なんで私の名前知ってんの?ていうか、ここどこ?」

「どこも何も、俺たちの家でしょ?」

「何言ってんの!マジでおじさん誰!」

「どうしちゃったのアキホ」

「おじさん誰!怖いんだけど!何で私の名前知ってんの!」

「え、シンタロウだけど」

「だから誰だよ!」

「え、アキホの旦那さん」

「旦那さん?」

 アキちゃんはそう言って、俺の事を、変な生き物を見る様な目付きでジィーっと見つめてから、ハッとした表情を浮かべて、立ち上がりました。

「おじさん!洗面所どこ!」

「ど、どうしたのアキホ」

「良いから洗面所どこ!てか鏡どこ!」

「鏡なら、玄関に姿見があるけど」

 以前にも書きましたが、最初は何かの悪い冗談だと思いました。笑えない冗談。記憶喪失ごっこ。

 僕を困惑させて、混乱させて、面白がるのが目的の戯れ。

 最初はそう思ったけど、でも、違いました。

 玄関の前の姿見を見て、泣き崩れるアキちゃんの姿を見たら、全部が“本当”なんだって分かりました。

「めっちゃおばさんになってんじゃん!なんでこんなおばさんになってんの!意味分かんないんだけど!声もめっちゃ変になってるし!何でよ!何でこんな事になってんの!」

 自分の顔と、鏡に映る顔を交互に触りながら泣き叫ぶアキちゃんの姿を見たら、胸が張り裂けそうになりました。

 僕は駆け寄って、アキちゃんを抱きしめようとしましたが「キモイんだよ!触んな!」とキレられ、この時、ああ、本当に僕の事を覚えていないんだ、と確信しました。

 アキちゃんはその場に倒れ込み、手のひらで床をバンバン叩きながら、まるで赤ん坊の様に大声で泣き続けました。

「一日だけって言ったのに!発表会の時だけって言ったのに!ユカリちゃん酷いよ!こんなのやだよ!ユカリちゃん酷いよ!酷い酷い酷い!こんなの酷いよ!」




 一応、初めてこのブログを読んでくれている人や、僕の趣味ブログの方しか読んでいない人の為に説明しますと、ユカリちゃんというのは、アキちゃんの別人格です(そんなの知ってるよー、と言う方は読み飛ばしてください!)

 アキちゃんの認識では、ユカリちゃんは小学5年の時に出会った幽霊の少女、という事になっています。

 アキちゃんにとってユカリちゃんは、どんな事でも打ち明けられる唯一無二の大親友で、暇さえあれば、いつも二人でお喋りをしていたそうです。

 ある時、アキちゃんは、小学6年生の時に、当時習っていたヒップホップのダンス発表会に出るのが、たまらなく嫌で、その事をユカリちゃんに相談したと言います。

 するとユカリちゃんは、「私が代わりに出てあげる」と、そう提案しました。

「一日だけ身体を貸してくれない?アキちゃんが踊るところ、ずっと見ていたから振り付けは完璧だよ。私、一度で良いから、みんなの前で踊ってみたいんだ。発表会の後、みんなで打ち上げに牛角行くんだよね?その前に身体は返すから。お願いアキちゃん」

 アキちゃんは、ユカリちゃんの事が大好きだったし、何より彼女の事を信じていたから、この提案を受け入れました。

 ですが、ユカリちゃんが身体を返してくれたのは、15年後でした。

 ユカリちゃんは15年もの間、アキちゃんの身体を、と言うよりも人生そのものを乗っ取って、自分がアキちゃんとして過ごしていたんです。

 アキちゃんとして学生時代を謳歌し、アキちゃんとして就職して、アキちゃんとして僕と結婚した。

 そう、僕が結婚したアキホは、ユカリちゃんなんです。

 僕はアキちゃんの別人格と結婚していたんです。

 ゾッとする話ですよね。

 以前、アキちゃんのお母さんからも「アキホは小学6年くらいから本当に人が変わった様になったんだよね。それまでは漫画とかゲームが大好きで、友達の殆どが男の子だったし、スカートとかも絶対履かなかったのに、ある日を境に、急に女の子らしい服を着だすようになって、髪も伸ばし始めて、男の子とも遊ばなくなって、漫画もゲームもやらなくなって」というお話を聞かせて頂いた事があったので、初めてアキちゃんから、ユカリちゃんの話を聞いた時は、アキちゃんの話は本当なんだ、なんて恐ろしい話なんだと本気で震えました。

 ここだけ聞くと、まるで世にも奇妙な物語の様だとも思えますが、実はこれ全部、医学的に説明が付く立派な病理現象なんです。

 人間の心には、防衛的適応という機能が備わっていて、耐え難い程の精神的苦痛や恐怖に曝されると、一部の感覚を遮断したり、それにまつわる記憶を完全に消去してしまう場合があるんです。

 そして中にはアキちゃんの様に、別の人格を作り出して、その人格に嫌な事を全て押し付けてしまう、といった防衛的適応を見せる人がいるんです。

 それがDID(※解離性同一性障害)なんです。

 辛い出来事や苦しい経験を、別人格に肩代わりさせ、その間の記憶を失ってしまうという、列記とした精神疾患なんです。

 普通は虐待や性被害に遭った人が発症するものでしょ?と思われる方もいるかも知れませんが、アキちゃんにとってダンスの発表会は、ユカリちゃんという別人格を作り出してでも回避したかった、膨大なストレスと精神的苦痛の伴う最悪のイベントだったんです。

 とは言え、アキちゃんの主治医であるE先生曰く、やはりアキちゃんの様なケースは稀で、15年もの間、主人格(アキちゃん)が別人格(ユカリちゃん)に追いやられ、人格間で情報の共有もなされないというのは極めて特殊らしいです。

 



 

 話を戻しますが、アキちゃんは玄関の前でひとしきり泣き終えると、「うちに帰る」と言い出しました。

 僕は、アキちゃんの実家は、お母さんが亡くなった時に売りに出したから、今はもう駐車場になってしまって残ってないよ、と説明したのですが、説明する順番も、説明の仕方も本当にもう全部間違えました。完全に馬鹿でした。

 アキちゃんは、「はぁ!?お母さんが死んだ!?意味分かんない嘘つくなよ!そんな訳無いじゃん!」と激怒して、その場にあった来客用のスリッパを思いっ切り投げてきました。

 僕は慌てて、アキちゃんのお母さんは、二年前にがんで亡くなった事を説明しました。

 理解も納得も出来ないといった表情を浮かべながらも、実家がもう無いという事は受け入れてくれた様でした。

 けど今度は、「家が無いんなら私のゲームとか遊戯王とか漫画とか今どこにあんの!」と怒り始めました。

「え、知らない。ごめん」

「ごめんじゃなくて!私のゲームどこ!遊戯王は!あれ私の宝物だってユカリちゃんも知ってたから絶対持ってるはずなんだけど!ミッキーの缶に入ってる奴!見た事無いの!」

「見た事無い。ごめんね」

「あああああ!もう良い!ユカリちゃんの部屋どこ!」

「えっと、ユカリちゃんの部屋って?」

「だから!もう!私の部屋!私の部屋どこ!」

「えっと、寝室はそこだけど」

 アキちゃんはドタドタと走りながら、寝室へと入っていき、部屋中のものをひっくり返しながら、遊戯王カードを探していました。

「どこだよ!絶対持てるはずなのに!どこにあんだよ!」

 そう怒鳴りながら、部屋中をしっちゃかめっちゃかにしました。

 ハネムーンでバリへ行った時に買った、二匹の猫の置物をゴミみたいに投げる姿を見たら、僕ら二人の思い出はもう、僕一人だけの思い出になっちゃったんだと思って、涙がこみ上げてきました。

 アキちゃんは、その後、壊滅的に散らかった部屋に立ち尽くしながら、「もしかしたらお父さんが私の物、全部持ってるかも知れない」と言い出しました。

「ねぇ、おじさん、お父さん今どこにいんの」

「えっと、お父さんとお母さんは、確か、アキホが中学生の時に離婚したんじゃなかったけ?」

「はぁ!?マジで意味分かんないけど。お母さんとお父さん、めっちゃ仲良しだから離婚とかするはずない。おじさん、もしかしてユカリちゃんの仲間?私の事、騙そうとしてるんでしょ?」

「その、さっきから言ってるユカリちゃんって言うのは誰なの?」

 ここで初めて、ユカリちゃんの説明をされました。

 正直、身の毛がよだつ思いでした。

 アキちゃんの話が本当なら、僕は、人の身体を乗っ取る幽霊と結婚していたって事じゃん……と、ゾッとしました。

 アキちゃんが精神科にかかるのは、この日から5日後なので、その時初めてDIDという病気を知る訳ですが、それまでの4日間は、本当に、怖かったです笑

 


 アキちゃんは、「お父さんの所に行くから送って」と言ってきかないので、仕方なく僕は同僚に、今日は仕事を休むと連絡しました。

 それから直ぐアキちゃんのお兄さんに、今お父さんがどちらにお住まいなのかを訊ねる為に連絡しました。

 お兄さんは、大手企業のベルリン支社に勤めていて、時差を考えると、向こうは深夜の1時過ぎくらいだったので、本当に気が引けました。

 お兄さんに訊かなくても、アキちゃんのスマホに、お父さんの連絡先とか無いの?って思われるかも知れませんが、アキホ(ユカリちゃん)のスマホは、顔認証とパスワードの二段構えでロックされてましたから、顔認証は突破出来ても、パスワードはユカリちゃんしか知らないので、アキちゃんには解除出来無いんです。

 それから3回程、お兄さんに電話を掛けたのですが、時間も時間ですし、案の定3回とも留守電になりました。

 「お兄さん、やっぱり出ないよー」なんて言っていると、アキちゃんは僕のスマホをジィーっと見つめ「それ本当に携帯なの?ダッサ」と言いました。

「別にダサくないよ?これiPhone XRっていう一番新しい奴だもん」

「ダサいよ。ストラップも一個も付けてないし、なんかおじさんっぽい。それに携帯は青が一番可愛いんだよ?」

「あー、青かー。XRに青あったかなー。水色はあったかも知れないけど」

 そんな会話をしている最中でした。

 お兄さんから、折り返しの電話が掛かってきました。

「電話でれんくてごめんねー。しんちゃん、どしたー?」

「あ、お兄さん、こんな時間にすみません、そちらは今、深夜とかですよね」

「ド深夜だね!(笑)1時半!(笑)でも全然起きてたから良いよ。それでどしたの、しんちゃん」 

「いや、あのですね、アキホがどうしてもお父さんに会いに行きたいと言うものですから、もしも住所をご存じでしたら教えて頂けないかなと」

「お父さんって、え、うちの親父の事?何でアイツ、親父に会いたがってんの?」

「いや、それが、あの、アキホの持ち物をお父さんが持ってるんじゃないかと言ってまして」

「何、その持ち物って」

 するとアキちゃんにスマホをひったくられました。

「もしもし!お兄ちゃん!アキホだけど!あのさー前に話したユカリちゃんっていたじゃん。その子が…………ちょっと待って、あんた本当に私のお兄ちゃん?声めっちゃおじさんなんだけど。絶対お兄ちゃんじゃないでしょ?お兄ちゃんに代わって!」

 僕はアキちゃんの肩をポンポンと叩いて、「俺が話すから、返してくれる?」と言って、スマホを返して貰いました。

「え……しんちゃん、今の、本当にアキホ?」

「はい……」

「いや、え、どうしたのアイツ?頭イカレた?」

「あー、いや、そういう訳じゃないんですけど……」

 お兄さんには、この時ユカリちゃんの事は説明しませんでした。

 人に説明出来る程、僕自身理解が追い付いていませんでしたから。

 その後、お兄さんから連絡先を教えて貰ったので、今度はお父さんに電話をする事にしました。

 けれど、何回掛けても繋がりませんでした。

 一応、住所も聞いていたので、車で片道4時間掛かりますけど、お父さんの今のお住まいがある名古屋まで行く事にしました。

 

 


 今でこそ何とも思いませんが、車内での会話に、僕は困惑しっぱなしというか、物凄い違和感を感じまくりでした笑

 助手席に座るアキホは、見た目は大人なのに、喋る内容が、本当に子供で(って言ってもアキちゃんの時間は、11歳の時点で止まっているので本当に子供なんですけど)、まるでコナン君の逆バージョンだなって思いましたね。

 遊戯王カードの話を楽しそうにいっぱい聞かせてくれました。

 カオス・エンペラー・ドラゴンとカイビャクの使者のレリーフレアを持っていたんだとか、氷帝メビウスは罠を除去出来るから強いとか、アンティーク・ギア・ゴーレムは強すぎるから禁止カードにすべきだとか、同族感染ウィルスを使う奴とは友達になれないとか、色んな事を教えてくれました。

「おじさんは遊戯王やってなかったの?」って聞かれたので「俺の学校はデュエマだったね」って言ったら「デュエマとか笑」って笑われました。

 そんな風に、遊戯王カードの話をしながら高速に入ったタイミングでした。

 突然アキちゃんが「本当にお母さん死んじゃったの?」って訊いて来たんです。

 僕は頷きました。

 するとアキちゃんは、前を向いて、そのまましばらく黙っていました。

 そして、次第に涙目になっていき、涙が一滴、頬を伝って垂れた時に、僕の方を向いて、「嘘じゃないの?」と訊いてきました。

 僕はもう一度頷きました。

「昨日までお母さん生きてたのに。なんでお母さん死んじゃうの。そんなのひどいよ」

 アキちゃんはそう言って、泣き出してしまいました。

 僕も泣きました。

 お母さんはもう亡くなっているって、2時間前に言った時は、多分、あまりにも現実味が無くて、実感が湧いて来なかったんだと思います。

 2時間経って、ようやく、悲しみがこみ上げて来たというか、お母さんにはもう会えないっていう事が理解出来たんだと思います。

 ダッシュボードを力無く、何度も、何度も、バン、バン、と叩いて「ひどいよ。ひどい。こんなのひどいよ。なんでお母さん死んじゃうの」と泣きじゃくるアキちゃんを見ていたら、何故か、お母さんのお葬式でのアキホ(ユカリちゃん)の事を思い出しました。

 アキホは、泣いていませんでした。

 今にして思えば、ちっとも悲しそうじゃありませんでした。

 僕は、誰もいない時に、きっと一人で泣いているんだろうなって、僕の前でぐらい強がらなくて良いのにって、その時は勝手にそう思い込んでいましたが、違いました。

 アキちゃんにとっては大事なお母さんでも、アキホにとっては、赤の他人だから。

 だから、アキホは泣かなかったんです。

 強がってなんかいなかったんです。

 お母さんの死が、どうでも良い事だから、アキホは、いや、ユカリちゃんは、泣いたりしなかったんです。

 ユカリちゃんのせいでお母さんの死に目にも会えなかったアキちゃんが、余りに不憫で、可哀想で、僕も涙が止まりませんでした。

 


 名古屋への道すがら、僕たちは色んな話をしました。

 アキちゃんの知識は2006年で止まっているので、2019年の世界について説明している時、僕はなんだか、自分が未来人になったかの様な、変な錯覚に陥って、少しだけですけど、優越感みたいなものがありました。

 アキちゃんが特にビックリしていたのは、SMAPが解散した事と、プレステがもうすぐ5になる事、ネットフリックスというサブスクが存在している事、そして、ハリーポッターがハーマイオニーと結婚しなかった事でした笑

「え!ハーマイオニー、ロンと結婚したの!?ええええええ!?ほんとに!?」って本気で驚いてて可愛かったです。

 あ、後、ワンピースとコナン君がまだ終わっていない事にも驚いていました。

 アキちゃんは当時、夜遅くまで頑張って起きて観ていた、桜蘭高校ホスト部というアニメの最終話がどうなったのかを、とても気にしていました。

 窓の外を眺めながら頬杖をついて、「最後、ハルヒは幸せになれたのかな」と呟いたアキちゃんの横顔は、凄く儚げで、美しくて、僕がかつて、アキホに惹かれた部分が、この子の中にもあるんだと思いました。

 



 

 愛知県に入った辺りで、お父さんから折り返しの電話があり、「どちらさん?」と訊かれたので、「あ、初めましてー。自分は、アキホさんの夫の〇〇と言います。実は~~カクカクシカジカ~~で、今そちらに向かってるんですけども」とお伝えしたら、凄く驚いていましたけど、「じゃあ、待ってるから、気を付けておいでね」と言われました。

 それから更に1時間掛けて、目的地に到着すると、立派な二階建てのお宅の前にお父さんが立たれていました。

 何と言うか、ひと昔前の言い回しになっちゃいますけど、ちょい悪オヤジといいますか、イケオジと言いますか、金のネックレスとオールバックが大変お似合いの、中々ダンディで渋い方でした。

「悪いんだけど、車、こっちに止めてくれる?そうそう、その角。悪いね」

 車を停めて、シートベルトを外すと、道中、サービスエリアで買った手土産をアキちゃんが持って、こう言いました。

「もう良いよ。私、お父さんと住むから。送ってくれてありがとね」

「えっ、いや、でも、ほら、俺もここまで来たし、一応ご挨拶しないと」

「良いから、来ないで。私、お父さんと暮らすから。シンタロウとは住めないから。じゃあね」

「あの、でも俺一応ここで待ってるから」

「別に良いよもう」

「俺待ってるから」

「……じゃあねシンタロウ」

 そう言ってアキちゃんは、車から降りて行きました。

 それから多分1時間くらい、僕は車の中で待っていたと思います。

 お父さんのお宅には、普通の自転車2台と子供用の自転車が2台あったし、それに車も2台あったのですが、その片方がステップワゴンでしたから、僕は、アキちゃんが思い描く様な結末にはならないと、思っていました。

 そして、やっぱり、アキちゃんが泣きながら戻ってきました。

 アキちゃんは何も言わないで、車に乗って、シートベルトをしました。

 僕も何も言わないで、エンジンを掛けました。

「お父さん、私と住めないって。他の人と結婚して、子供もいるからって。私もお父さんの子供なのに。昨日まで私のお父さんだったのに。もうあんな人お父さんじゃない。一生許さない、あんな奴」

 思った通り、やっぱりお父さんは、再婚されて、家庭を持っていました。




 この日、アキちゃんは一体どれくらい涙を流したんでしょうか。

 一体どれくらい傷付いて、どれくらい悲しんで、どれくらい困惑したんでしょうか。

 僕には想像する事すら出来ません。

 色んな人と出会って、色んな事を経験して、色んな喜びに触れられたはずの、15年分の人生を奪われて、子供のまま大人になってしまった、アキちゃんの気持ちは、アキちゃんの孤独は、きっと誰にも分かりません。




 僕は車を発進させる前に、アキちゃんに訊きました。

「アキちゃん、俺、君のそばにいたいんだけど、ダメかな。俺は、アキちゃんが選んだ旦那さんじゃないから、アキちゃんと一緒にいる権利は無いかも知れないけど、それでも、俺、アキちゃんと一緒にいたいんだ。アキちゃんは俺の事全然知らないし、俺もアキちゃんの事よく知らないけど、でも、俺はアキちゃんの事、もっといっぱい知りたいなって思う。アキちゃんにも、俺の事を知って欲しいって思う。これから、お互いの事、少しずつでも良いから、知っていけたら、きっと良い友達になれると思うんだけど、ダメかな」

「……ダメじゃない」

「ほんと?」

「うん。別にいいよ。友達になっても」

「ありがとうアキちゃん。俺、頑張るから。アキちゃんの親友になれる様に、俺、絶対頑張るから。約束する」

「……うん」

「……それじゃあ、帰ろっか」

「あのさ」

「なに?」

「さっきさ、サービスエリアでさ、メロンのソフトクリームの奴、売ってたじゃん」

「美味しそうだったね」

「うん。あれ食べたいんだけど」

「良いね。それじゃあ、メロンのアイス食べてから帰ろう」

「あとさ」

「うん」

「お腹減ったから、ハンバーグ食べたい」

「ハンバーグかー、良いねー。あ、そうだ!途中で一回、静岡に降りて、さわやかハンバーグ食べに行こうか!」

「何それ」

「うんまいよー、さわやかハンバーグ。頬っぺた落ちちゃうよ」



 

 その帰り道、僕らは美味しいハンバーグをお腹いっぱい食べてから、サービスエリアにも寄って、デザートに、夕張メロンのソフトクリームを食べました。

 今にして思えば、このソフトクリームを食べている時、この日初めてアキちゃんが心から笑ってくれた気がします。

 やっぱりアキちゃんは笑っている顔が一番可愛いです。

 そして僕は、アキちゃんが満面の笑みを見せてくれたあの時、心に誓ったんです。

 アキちゃんの失った15年間を取り戻してあげる事は出来ないけど、これからのもっと長い時間、楽しい素敵な思い出をいっぱい作ってあげようって。

 これからもずっと、この子が笑顔でいられる様に頑張ろうって、そう誓ったんです。

 本当に今更になってしまいましたが、これが、妻が妻じゃない人になった日であり、僕とアキちゃんが出会った日の出来事です。

 まぁ、何か色々とかっこいい事書いちゃいましたけど、以前から、このブログを読んでくれていた方ならご存じの通り、僕は未だにアキホ(ユカリちゃん)の事を引きずってるし、アキちゃんも何かの拍子にユカリちゃんに騙された事とか失われた15年間の事とかを思い出して大泣きするしで、結果としてこの日の誓いを全然守れてないんですけどね!笑

 それに、もう本当に数えきれないぐらい色んな事で喧嘩しましたからね!笑

 トマトチキンフィレオ事件ですとか!笑

 遊戯王カード爆買い事件ですとか!笑

 オンラインゲーム中毒事件!笑

 踊ってみた動画事件!笑

 スーパーカップヨーグルト事件!笑

 ヒカキン崇拝事件!笑

 お尻触ったら超絶ブチギレからの一週間ガン無視事件!爆笑

 もう本当に一々書いていったら、きりが無いくらいしょっちゅう色んな事で喧嘩もしますけど、それでも今も仲良く一緒に暮らしています!

 僕ら夫婦は、あの日、夫婦じゃなくなったけど、それでも今は最高の親友です!

 僕はアキちゃんの事が大大大好きです!

 このブログを面白いと思ってくれた方、良ければブックマークとコメントをよろしくお願いします!

 それじゃあまた次回!

 ぐっない!








 出典【Yahoo知恵袋】




 ≪Fru*********さんの質問 2020/6/15 23:36≫


 最近、娘が見えない誰かと会話をしていて気味が悪いです。


 娘はもうすぐ8歳になるのですが、ミュージカルやお芝居が大好きなので、最初は、一人で演技の練習でもしているのかな?と微笑ましく思っていたのですが、会話の内容からすると、娘は誰かを演じている訳ではなく、娘本人として喋っているんです。

 相槌の打ち方や、間の取り方、笑うタイミングや、その他の反応や仕草を見ていると、本当に誰かが目の前にいて、その人との会話を楽しんでいる様にしか見えないのです。


 それに、何の脈絡もなく、突然「パパの年収っていくらなの?」ですとか「うちって持ち家?それとも賃貸?」など、とてもじゃないですが小2の娘が興味を持つとは思えない事を聞いてくる様になりました。

 考え過ぎなのかも知れませんが、私には、その見えない誰かが娘にそれらを聞いてくる様、指示したとしか思えず、それを確かめるべく、どうしてそんな事聞くの?と尋ねたら、「ユカリちゃんが知りたがってたから」と教えてくれました。

 そこで私は更に、ユカリちゃんとは普段、どんな事をお話するの?どうしてユカリちゃんはそんな変な事を知りたがるの?と聞いたら「内緒」と言われてしまい、どうして内緒なの?と聞いたら、「今、ママの後ろで、ユカリちゃんがシィーってやってるから」と言われ、寒気がしました。

 夫にこの事を相談しても、「最近はコロナの影響で、学校にも行けてないから友達にも会えなく寂しいじゃない?だから空想上の友達を作ったんじゃないかな」等とそれらしい事を適当に言うだけで、まともに取り合ってもらえません。

 私にはどうしても、ユカリちゃんが娘のイマジナリーフレンドとは思えません。

 そして霊的な存在であっても、娘が思う様な友好的な存在とも思えません。

 母親としての直感としか言い様がありませんが、ユカリちゃんは娘に取り入って、何か娘に良からぬ事をさせたいのではないかと、そう感じるのです。

 ユカリちゃんは決して、友達などではなく、もっと恐ろしい悪意に満ちた存在の様に思えてならないのです。

 こういった場合は、やはり、お祓いなどに行くべきでしょうか?

 また、お祓いに行く場合、どういった準備が必要になるでしょうか?

 確かなお祓いをしてくれる神社仏閣や、その際の費用なども教えていただけると幸いです。

 

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