本項では、光の位相速度や群速度、その性質について解説します。
位相速度(英:phase velocity)とは、正弦波の波形の山や谷が伝搬する速さのことを言います。
図1に、時刻
位相速度
波数
正弦波は周期
電磁気学では、光は電場と磁場が垂直に振動する横波として記述されます。図2に、x軸上で電場と磁場が振動する様子を図示します。
図2に示すように、光は電場と磁場が正弦波として伝わる波であり、式(1)の位相速度が定義されます。
屈折率
真空中では、屈折率
一方、物質中を伝搬する光の位相速度は、物質の屈折率
よく知られているように、ガラスのような透明な物質では、可視光の領域で波長が長いほど屈折率が小さいという性質があります。
したがって、ガラス中を伝搬する可視光は、波長が長いほど、位相速度
群速度(英:group velocity) とは、振動数の異なる波が重なった波束が進行する速さのことをいいます。
波の波数を
波数
波数
上式から、波数が
この2式を足し合わせた合成波
この合成波の式(3)をグラフにしたものを以下の図1に示します。
図中の青線が式(1)の合成波
群速度とは、この包絡線が伝搬する速度を表しています。(3)式の包絡線の伝わる群速度
真空中では、角周波数と波数には
この場合、位相速度
また、このときの群速度を
光が物質中を伝搬する場合、物質の屈折率
つまり、位相速度
分散のある物質中では、
また、別の計算式として群速度
ガラスなどの透明な物質は、可視光の波長域では角周波数
したがって、正常分散の領域では
位相速度と群速度の違いは、位相速度は 『ある1つの周波数の波の位相が伝わる速さ』を表し、群速度は 『複数の周波数からなる波の束(包絡線)が進む速度』を表している点にあります。
厳密には、位相速度は波の始まりや終わりが存在しない無限に連続する正弦波の位相の伝わる速さを意味します。
この理想的な正弦波は、一定の山と谷が繰り返されるだけなので、エネルギーを伝達することができず、信号として情報を伝えることはできません。
一方、群速度は異なる周波数を持った正弦波が重ね合わさった波束が伝わる速度を表します。
波束は、複数の波が重なり干渉することで、振動のエネルギーの強い部分と弱い部分が存在します。つまり、波束は光の信号として情報を送ることができます。
そのため、群速度はエネルギー(信号)が伝搬する速度と考えることができます。
例えば、光ファイバーを伝わる信号は、パルス(光の波束)の状態で伝送されます。パルスによって信号が伝わる速さは群速度により表されます。
・江馬一弘『光物理学の基礎 -物質中の光の振る舞い』株式会社朝倉書店,2010年11月25日,7章 光パルスの伝搬(pp.143~154)発行