和歌山県田辺市は16日、一般財団法人から提案を受けて検討してきた公立大学の設立構想について、事業化を見送ると表明した。この日記者会見した真砂充敏市長は、建築資材や人件費高騰の影響などもあり、初期費用が当初の想定よりも大幅に上回ったと説明。「財政運営が厳しさを増す中、未来への投資という意義を十分考慮したとしても慎重な視点が求められる。市の将来に責任を負う立場として、総合的に判断した」と話した。
大学構想を巡っては、現役の大学教授らでつくる一般財団法人「立初(たてぞめ)創成大学設立準備財団」(現在は立初教育財団に名称変更)が2024年8月、市に提案。市役所旧庁舎(田辺市新屋敷町)を活用し、文系・理系の枠にとらわれずに学ぶ「文理融合型」の四年制大学を設置したいとしていた。
市は昨年度、専門的見地から大学設置の可能性について調査・検討する事業を実施。ニーズや費用面などについて調査したほか、学識経験者や市民らからなる「高等教育機関設置等調査検討会議」も設け、検証を進めてきた。
和歌山県田辺市の公立大学構想の経緯
市が検討結果をまとめた報告書によると、旧庁舎の改修などを含む初期費用について、25年3月時点では50億円と想定していたが、今回の調査による試算では65億円へと増加。物価高騰などの社会情勢を踏まえると、事業費がさらにかさむことが懸念されるとした。
また、財源として上限20億円の活用を見込んでいた「大学・高専機能強化支援事業助成金」について、採択されたとしても上限12億1500万円となることが判明。10億円を想定していた企業版ふるさと納税寄付金は財源として不確実であり、仮に寄付金を除いた場合の市の実質負担額は、当初想定の18億5千万円から約2倍に膨らむことが分かったという。
大学設立については、地域経済の活性化や若者の進学機会の拡大、次世代の育成など期待できる効果が見いだせるものの、財政面で将来的なリスクとなる可能性が排除できず、こうした状況を総合的に勘案した結果、事業化を見送る判断をした。
真砂市長は6期目の最重要課題として人口減少対策を掲げ、その解決策の一つとして大学構想を検討してきた。今回見送る結果となったことについて一定の責任を感じているとした上で「(人口減少は)厳しい課題だが、今後とも積極的に取り組んでいきたい」と話した。
大学構想の見送りについて記者会見で説明する真砂充敏市長(16日、和歌山県田辺市役所で)