今月、タイの警察に拘束された30代の日本人が、カンボジアを拠点とする特殊詐欺事件で、かけ子にうその電話をかけるよう指示した疑いがあるとして、警察は16日、日本に移送中の航空機内で組織犯罪処罰法違反の疑いで逮捕しました。拠点の維持費を出資するなどオーナーのような立場だったということで、警察は詳しく調べることにしています。
カンボジア北西部の都市、ポイペトを拠点とする特殊詐欺事件では、現地で詐欺の電話をかけるかけ子をしていたとして、日本人の男女29人が去年8月、愛知県警に逮捕されました。
警察は、この事件の指示役がいるとみて捜査を進めたところ、今月、タイの警察に拘束された佐々木裕介容疑者(38)がうその電話をかけるようかけ子に指示し、現金をだまし取った疑いがあるとして、組織犯罪処罰法違反の疑いで逮捕状を取りました。
そして16日、タイから日本に移送中の航空機内で逮捕しました。
航空機は午後5時半ごろ、羽田空港に到着し、警察は今後、詳しいいきさつを調べることにしています。
捜査関係者によりますと、容疑者はタイに滞在しながら、ポイペトの拠点の維持費を出資したり、かけ子の報酬を取り決めたりするオーナーのような立場だったということです。
警察は、詳しいいきさつを調べることにしています。
カンボジア詐欺拠点の実態は
【拠点には警備員や猛獣】
詐欺の拠点があったカンボジア北西部のポイペトは、大規模なカジノ施設やホテルが立ち並ぶ、タイとの国境に近い都市です。拠点はポイペトの中心部から離れた郊外にあり、建ち並ぶ複数の建物は塀で囲まれていました。捜査関係者によりますと、入り口には銃で武装した警備員がいて、日本人の「かけ子」を監視していて、ライオンやトラ、ワニといった猛獣を見たと一部の容疑者が証言しているということです。拠点の中には、コンビニやスーパー、診療所、それに床屋やネイルサロンなどもあり、詐欺の報酬を自由に使うことができたといいます。拠点には日本人の「かけ子」以外にも、インド人や韓国人などを含む数百人から1000人ほどがいて、詐欺に関与していたという証言もあるということです。
【29人の生活実態とは】
愛知県警に逮捕された29人の「かけ子」には、備え付けの家具がある個人部屋が用意され、起床や就寝の時間も決められていたといいます。「事務所」と呼ばれる部屋で、マニュアルを暗記させられた上で、警察官役や通信会社役など役割ごとのグループに分けられて電話をかけていた疑いがあるということです。
【中国人らの管理者】
拠点では、中国人らが詐欺の電話や生活にいたるまで管理していたといいます。だまし取った金額や件数を毎日、グループトークで共有して競わせていたほか、詐欺の実績が悪かったり、指示に従わなかったりした場合は暴力を振るっていたということです。
元かけ子「容疑者はA先生」
ポイペトの拠点でかけ子をしていた男性がNHKの取材に応じ、佐々木容疑者について、「『A先生』と呼ばれ、組織のトップだと聞いていた」と証言しました。
【“A先生”とは】
東海地方に住む30代の男性はリクルーターから指示され、日本の空港を出発して現地に渡航しました。
男性はかけ子としてポイペトでの詐欺に関与したとして、去年8月に逮捕され、その後、不起訴になりました。
男性によりますと、容疑者は「A先生」と呼ばれ、29人のかけ子のグループのトップだと、リクルーターから聞かされていたということです。
男性は「僕らのトップは『A先生』で、日本人だと聞いていた。施設の建屋を建てたり、部屋を改装したりする金はA先生から出ていると聞いていた。リクルーターからも“本当にすごい人だからお前は太刀打ちできない”と言われていた」と証言しました。
【“A先生”からの激励】
男性は、日本を出る前、リクルーターからの指示で、秘匿性の高い通信アプリ「テレグラム」をインストールすると、「A先生」という名前のアカウントとアイコンが画面に表示されたといいます。
リクルーターからあいさつをするように言われ、電話をかけたところ、「頑張ってね」と激励されたということです。
男性は「テレグラムに出てきたのが『A先生』だった。本名を名乗って挨拶したら、『A先生』だと名乗った。“聞いてる、聞いてる。頑張ってね。偽名作っておいてね”と言われた。1分に満たない会話で話したのは1度だけだった」と話していました。
【かけ子とA先生の接点】
男性によりますと、現地にいた、かけ子のほとんどは容疑者と会ったことはなく、男性も直接会う機会はなかったということです。
また、摘発を逃れるために容疑者が現地の警察官に賄賂を払っているという話を耳にしたといいます。
男性は「『A先生』を実際に見たことがある人は限られていて、末端の俺らは会ったこともなかった。これでは生活できないから報酬を増やしてほしいとか、拠点から出たいなどといった交渉は『A先生』と仲のよいかけ子だけができたようだ」と話していました。
「周囲に気づかれないままカンボジアに送られている」
家庭や学校に居場所がない若者が集まる新宿 歌舞伎町の「トー横」と呼ばれるエリアに、日常的に出入りしていた男性がNHKの取材に応じ、周囲に気づかれないまま、若者がかけ子としてカンボジアに送られている実態があると証言しました。
男性によりますと、去年の春から夏にかけて、「トー横」に出入りする若い世代の複数の友人と急に連絡が取れなくなったということです。
その後、友人がカンボジアに行ったという話を知人から聞いたということです。
このうちの1人はポイペトの拠点で、かけ子をしたとして去年、愛知県警に逮捕されました。
男性は「いなくなったときは自殺したのではないかと心配になったが、結果的にカンボジアに送られていると聞いた。消息を絶つ数日前まではずっと広場に居座って、ほぼ野宿みたいな感じで、ずっとお金に困っていた。カンボジアは治安があまり良くないと聞いていたので、逮捕されたと聞いた時は、生きて戻ってこれたと思い、ほっとした」と証言しました。
【つつもたせのような手口も】
また、男性は、いわゆる、つつもたせのような手口で、海外の詐欺拠点に行かなければならない状況に追い込まれるケースがあったと証言しました。
男性の友人が少女とホテルに入った後、別の人物から、示談金名目で100万円を超える現金を支払うよう要求されたということです。
その友人は、責任を取れなどと言われ、みずから、カンボジアに向かったといいます。
トー横に出入りする若者がカンボジアに行ったまま音信不通になっているという話を耳にすることもあるということで、男性は「トー横の広場にいたとき、知らない人物から名刺を渡され、『お金に困っている人がいたら連絡してくれないか』と言われたことがあった。若者をかけ子として現地に送ることは絶対にやめてほしい」と話していました。
あわせて読みたい
日銀 利上げ決定 政策金利1%程度に “物価上昇リスクに対応”
6月16日 19:18
【詳しく】利上げで暮らしへの影響は?金利どこまで上がる?
6月16日 19:16
株価 一時7万円を初めて突破 利上げ想定内との見方も後押しに
6月16日 19:05
アイス値上げでカルテルか 公取委が大手メーカー6社立ち入り
6月16日 17:55
金子国交相「ペルシャ湾内の日本関係船舶1隻に損傷確認」
6月16日 11:23
SFTS患者数 過去最多を上回るペースで増加 マダニ対策の徹底を
6月16日 17:10
米とイランの戦闘終結に向けた覚書 19日に署名式 新たな協議へ
6月16日 19:05
サッカーW杯 初戦引き分けの日本が調整再開 久保は病院で検査
6月16日 15:39
FIFAワールドカップ2026【NHK特設サイト】
大谷翔平が最多得票 大リーグオールスターファン投票中間結果
6月16日 7:56