セフレだと思ってたけど結局ハマってる篤寛
面倒の無い気軽なセフレだと思ってた寛見にハマってた事を気付かされる篤也、みたいな話です。
軽くですが篤也が女を抱くシーンがありますので苦手な方はご注意を〜!
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※軽くですが篤也が女を抱くシーンがあります!
業界内での交流会だか意見交換会だか知らないが、シン・陰流の当主として顔を出すように命じられて、渋々訪れた洋館。
人のざわめきの中、濃いアイメイクの女と目が合った。
長い黒髪に真っ赤なドレスの女は、俺と目が合うと笑って背中を向けた。
ざっくり開いたその背中がついて来いと誘っていると判断して、壁に預けていた体を離す。
女と距離を取りつつも、その背を追って二階へと上がる。
適当な部屋の扉を開けた女が、中を確認して俺を振り返る。上がった口角はドレスと同じ真っ赤な口紅。
側まで寄って腰を抱いて中へ入り、カギを閉める。
化粧と香水の匂いは濃いが、わりと好みの顔と体をしてる。
前回女を抱いてから少し日が開いていたから、期待から無意識に俺の口角も上がった。
女を抱きしめながら、その柔らかい体を撫で回す。
男には無いこの柔らかさを楽しみながら、アイツも最近じゃ多少胸とケツが柔らかくなったよなあと、脳裏に浮かんだ男が一人。
日車寛見。
酒の勢いで肌を重ねるようになって、それからセフレのような関係がだらだらと続いている。
普段の関係は何ら変わらないが、どちらかがその気になって誘えばヤる、それだけの関係。
男でも女でもある程度好みで後腐れ無い相手なら構わず抱くって俺とは違って、日車は根っからのゲイでバリネコだった。
俺の体を随分気に入ったみたいで、「君が居れば他は必要無いな」と頻繁にお声がかかる。
女は甘い匂いと柔らかい体を持ち、多少濡れたらすぐに突っ込めるが、面倒な事も多い。
俺の力で怪我させないようにと気を使いながらヤるのは欲に夢中になれない。
その点、男は、日車はいい。無骨な男の体ではあるが美人には違いないし、感度はいいし良い声で鳴く。
ちょっとやそっとじゃ壊れねえから思い切り腰を打ちつけて何回戦も出来るし、体位だってアレコレ試せる。
日車の機嫌次第じゃ中に出せるし、俺は日車とヤるのを気に入ってる。
とはいえ、やっぱり女には女にしかない手触りや気持ち良さなんかもあるもんで…、女とヤる事をやめる気は無かった。
あくまで俺達の関係はセフレみたいなもんで、俺から女の匂いがしても多少眉を顰めるだけで文句も言わない日車の存在は、俺には都合が良かった。
「あぁっ…!」
「っ…、う……!」
その辺の棚に女の両手を付かせて後ろから覆い被さるように振っていた腰が絶頂に震え、ゴムの中に精を吐き出した。
ずるりと抜いたモノからゴムを取り、縛ってゴミ箱へ投げ入れると、棚に上半身を預けながら息を整えてる女が振り返った。
「…もう終わり?」
「これ以上やると止められなくなるからな」
「別に止めなくてもいいのに」
不満そうに唇を尖らせる女がキスをねだっているのには気付かないフリをして、身支度を整える。
べったり口紅の付いた唇とキスするのは嫌いだ。
同様に身支度を整えてる女が、「ねえ、あなたって…」と俺の素性を知ってる素振りを見せたが、「しーっ」と人差し指を立てて黙らせた。
「俺もアンタも、誰でもいいだろ。次に会ったら初めましてでよろしく頼むぜ」
面倒な関係はごめんだ、と釘を刺せば、女は渋々頷いた。
「じゃ、お先」
女を置いて部屋を後にし、ポケットから飴を取り出して包装を解くと咥えた。
何食わぬ顔で会場へ戻ると、つい先程脳内にあった姿を見つけた。
「日車、来てたのか」
「ああ、関係者に顔を見せておけと言われてな」
持っているだけで中身の減ってない日車のグラスに、いつから居たんだと内心ひやりとした。
別にさっきの光景を見られていたからって咎められるような関係じゃないが、どうしてか後ろめたさが顔を出す。
日車がグラスを傾けてビールを飲む。逸らされた喉がぐびりと動くのを、じっと見つめる。
中途半端に解放した欲がまたぶり返してきて、腰がムズムズした。
「…なあ、今日いいか?」
顔を寄せて声を潜めると、日車はグラスに口を付けたまま黙った。
「………」
「何、今日は都合悪い?」
「いや…分かった。では俺は先に帰らせてもらおう。必要な顔合わせは終わったし」
中身が半分以上残ったグラスをテーブルに置く日車に「んじゃ俺も」と共にこの場を去ろうとして、「いや」と止められた。
「寄る所も出来たし俺の準備もあるし、君はしっかりお役目を果たしてから来てくれ」
「何で。俺だって大体の挨拶は済んだしこんなとこに用は無えんだけど」
俺の不満に唇の端で笑って、日車は「大体の時間が分かったら連絡する、後でな」とさっさと出て行ってしまった。
「何だってんだよ」
誘いに乗ったのに別行動を取らされる意味が分からなくて、苛立ちからガシガシと頭を掻いた。
場所を変えて時間を潰すのも面倒で、顔見知りと他愛無い話をして日車からの連絡を待った。
さっきの女が俺と話したそうにチラチラこっちを見ているのをうまくかわしていると、やっと日車から『準備出来た、いつでもいいぞ』と連絡がきて会場前のタクシーに乗り込んだ。
何度も訪れた日車のマンション。『鍵は空いてる』と言われたので、玄関を開けて乱雑に靴を脱ぎ捨てる。
焦らされたおかげでヤる気満々な俺は廊下にコートを脱ぎ捨て、寝室の扉を開いて…固まった。
間接照明にぼんやり照らされた日車は、女物の真っ赤なドレス姿だった。
「何ッ……!?どういうつもりだ、そりゃ…!?」
あまりの衝撃に扉を開けたままのポーズで固まってる俺を鼻を鳴らして笑い、日車は右腕を持ち上げた。
そこには口紅が握られている。
「どうもこうも、君の好みに合わせたんだが?」
「…見てたのか」
思わず舌打ちが漏れそうになる。
やはりさっきの女とシた事を見られていたのか。
薄い唇にゆっくり引かれていく赤。鏡も見ていないのでそれは大きくはみ出して歪だ。
「俺が到着した時、丁度女を追って二階へ上がる君の背中を見かけた」
今度こそ舌打ちが漏れた。
気付かなかったなんて、とんだヘマをした。
「それでご機嫌損ねたからわざわざそんな格好してんのか?…よく入るサイズがあったな」
先に帰ったのは嫌味ったらしく女と似たデザインのドレスを用意する為かと苦笑した。
「さすがに急だったからな、都合良く俺のサイズなんて見つからない。無理矢理着てるんだ」
日車がくるりと背を向けると、チャックが全然閉まってないせいで背中どころか尻の上部まで丸見えな後ろ姿が見えて喉がごくりと鳴った。
真っ白で広い背中には、俺が付けたキスマークや噛み跡が点在していた。
これを付けられるのも見られるのも俺だけだという優越感と支配欲で、股間が反応した。
「似合ってるよ」
本心だ。全然サイズが合ってなくても、大胆に見せつける背中も足元まで入ってるスリットから覗く長くて引き締まった足も、全てが俺の欲を刺激する。
腕を引いてこちらを向かせると、真っ赤な唇を拗ねたように尖らせる。
今日は何もかも、いつもと違う。こんな甘えるような表情、見せた事無いのに。
たまらなくなって唇に吸いつこうとして、日車の指がそれを邪魔した。
「ん、何」
「…いいのか?口紅が付くぞ。君、口紅の付いた唇とキスするの嫌いだったろう」
ニヤリと笑う日車の手首を捕まえて指を退かせ、「構わねえよ」とキスしようとしても、日車は顔を逸らして避ける。
「…何?今日はヤる気無えの?それかさっき気付かなかったから意地悪してんの?」
ただでさえ焦らされてるのに、これ以上焦らしてくれるな。なのに日車はクスクス笑う。
「女はダメで俺なら構わないのか?」
「…何が言いたい」
ため息を吐いて手を離した。
セックスだけの気軽な関係のはずが、この無意味なやり取りは何だと苛立ちが声に出た。
「はー…ヤル気なくなっちまったな…」
ヤル気はあるが面倒だと日車から体を離すと、ネクタイをぐいと引かれた。
「ッ、おい…」
「俺だけを見てくれ、とか、他の奴は抱かないでくれ、とか。そんな気持ちの悪い事を言うつもりは無かった。だが…」
目の前のデカい瞳が、ギラギラと燃えている。怒りと嫉妬、それに欲情に。
「女を抱いた体でシャワーも浴びずに抱かれるのはいささか…俺を軽んじていないか?」
「いや、あの…その…」
「そこまで俺を軽んじる男に足を開けない」
「ちょっと待て!」
突き放すようにトン、と胸元を押されて思わず声を荒げた。
「終わりにしたいって事か?」
「終わりも何も、俺達の間に何か始まっていたのか?」
「そ…、なあ、意地悪言うなよ。悪かったよ、もう女抱かねえから。機嫌直せよ、な?」
ぷいとそっぽを向く日車に、どうして俺はヘラヘラ笑って謝ってるんだ?別に付き合ってるわけでも無いし、こんな事言われる筋合いも無いのに。
「ひぐ…寛見、寛見ちゃん。許して、ね?」
「ちゃん付けするな」
「ごめん、寛見。すぐシャワー浴びてくるから。なんなら一緒に入るか?」
腕を組んで拒否の姿勢を取る日車に、なんとか機嫌を直してほしくてキスしようと顔を近付けるが、拒否されて益々焦る。
「シャワーは当然だ。そんな汚い体で俺に触れるな」
「分かった、すぐ入る。全身綺麗にしてくるから」
慌てて出て行こうとして、またネクタイを引かれた。
「ぐえ。何、どした?キス?」
「君は縛られるのを嫌うと思っていたから今まで言葉を飲み込んできたが、もう我慢ならない。俺が君としかシないのに、君は女も抱くのは不公平だろう、気に食わない」
「うんうん、分かった。ごめん、もうシない」
「俺だけにしろ。今後俺しか抱かないと、君は俺の物だと、声に出して誓え」
「ッ……」
即答出来なかったのは、日車のせいじゃない。
面倒な関係も大事な物も作りたくなくて、特定のパートナーなんてもう何十年も作っていない俺の問題だ。
そんな俺の及び腰も戸惑いも見透かしたように、日車はキスされるのを待つように顔を傾けて口を開いて囁いた。
「誓ってくれ…。俺はとっくに君の物だぞ、篤也」
「ッ!誓う…!もう寛見しか抱かねえ、お前しかいらねえ、俺はお前の物だからッ…!!」
キツく抱きしめて尻を揉みながら、赤い唇にむしゃぶりついた。
いつもと違うべたべたした触感と僅かな苦味を感じたが、構わず口内を荒らす。
喉の奥まで舌を突っ込んで絡めた舌を根本から吸うと、抱きしめた体が震えた。
背後のベッドに押し倒して首筋に吸いつこうとして、デカい掌で顔を押さえられた。
「ぅぐ…何だよッ!?」
見下ろすと、日車は口の周りを口紅で赤くしながら「シャワー」と一言呟いた。
きっと俺の口周りも同じように赤くなってる事だろう。
「うっ……それってさあ、」
「シャワー」
もう痛いぐらいにギンギンな股間を押し付けてどうにか免除してもらえないかと目論んだが、同じ言葉が返ってきて大人しく体を起こした。
「はい…。なあ、その服脱がないでくれよ」
「何だ、本当に気に入ったのか」
呆れたような日車に、「寛見が着てるから興奮する」と言えば、満更でもなさそうに笑った。