Yahoo!ニュース

狙われたのは大企業ではなく、豆腐店だった~本当の被害はカード停止・再発行まで迫られるすべての利用者~ #エキスパートトピ

神戸大学 特命教授/名誉教授
コラムの内容を基に生成AIによってイラストを作成

企業や自治体、医療機関などに対する不正アクセスによる情報漏えいは、もはや珍しいニュースではない。しかし今回、佐賀県武雄市の豆腐製造販売会社「佐嘉平川屋」で発生した情報漏えい事案は、一般的な漏えい事故とは性質が大きく異なる。地方の中小企業が運営するオンラインショップから、顧客の個人情報だけでなくクレジットカード番号やセキュリティコードまで流出し、一部では既に不正利用が確認されているからだ。この事案は、全国に存在する無数の中小規模ECサイトが同様の危険にさらされていることを示す警鐘でもある。

ココがポイント

武雄市の佐嘉平川屋に不正アクセス クレジットカード情報5783人分流出か
出典:佐賀新聞 2026/6/15(月)

駿河屋、不正アクセスによるサイバー攻撃で個人情報漏洩 クレジットカード決済を一時停止
出典:合同会社ロケットボーイズ - セキュリティ 情報漏洩のニュースサイト セキュリティ対策Labの運営とBtoB マーケティング コンサル 支援 2025/8/11(月)

エキスパートの補足・見解

武雄市は決して知名度の高い都市ではなく、そこでで営業する豆腐製造販売業者となれば、限られた人しか知らないだろう。しかしそのオンラインショップには3万人以上の会員が登録し、過去1年間だけでも約5,800人がクレジットカード決済を利用していた。これは地方の一企業にとどまらず、全国各地に存在する数多くの中小規模ECサイトにも共通する状況である。

今回特に深刻なのは、氏名や住所、生年月日という基本情報だけでなく、カード番号、有効期限、セキュリティコードまで漏えいし、既に不正利用が確認されている点だ。これは漏えいの「可能性」ではなく、犯罪者による悪意ある情報窃取が行われたことを意味する。

漏えいした情報の内容や期間から考えると、フォームジャッキングやWebスキミングと呼ばれる手法によって、ECサイトの決済画面に不正なコードが埋め込まれた可能性が高い。この攻撃は利用者だけでなく運営者も気付きにくく、長期間放置されることが少なくない。被害対象となった利用者は、現時点で不正利用がなくても速やかにカードを停止・再発行すべきである。公共料金やサブスクリプション契約の変更手続きも必要となり、その負担自体が深刻な被害と言えるだろう。

  • 14
  • 16
  • 5
ありがとうございます。
神戸大学 特命教授/名誉教授

(★連絡先は公式サイトに★) 1989年大阪大学大学院工学研究科博士後期課程通信工学専攻修了、工学博士。愛媛大助教授、徳島大工学部教授を経て、2005年神戸大学大学院工学研究科教授(~2024年)。近畿大学情報学研究所サイバーセキュリティ部門部門長、客員教授。情報セキュリティ大学院大学客員教授。情報通信工学、特にサイバーセキュリティ、情報理論、暗号理論等の研究、教育に従事。内閣府等各種政府系委員会の座長、委員を歴任。2018年情報化促進貢献個人表彰経済産業大臣賞受賞。 2019年総務省情報通信功績賞受賞。2020年情報セキュリティ文化賞受賞。2024年総務大臣表彰。電子情報通信学会フェロー。

森井昌克の最近の記事

あわせて読みたい記事