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モンスターペアレントにご用心/Novel by 凍護@コメント嬉しい

モンスターペアレントにご用心

3,710 character(s)7 mins

槍弓とエミヤ(殺)の話、FGO時空/エミヤとエミヤの親子が再会してクーフーリンがモンペに脅される、礼装が実体化していたりする私カルデア設定注意/たくさんのブクマや評価、スタンプ本当にありがとうございます!!

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マスターの少年が召喚した新たなサーヴァントは、まるで血塗れたように赤いフードを被り物々しく顔を包帯で覆い隠した男。
「また汚れ仕事か、…まぁいいいつものことさ」
皮肉げな言葉とともに、通常とは異なる雰囲気で召喚の間に降り立ったその姿。
かつて冬木の地で見覚えのあるマスターの少年やその他参加していた者達が久しぶりと声をかけるところから一歩引いて、たまたま召喚を見に来ていたアーチャー・エミヤは目をこぼれんばかりに開き、震える唇が無意識に開く。
「…じ、いさ…」


「じゃあ新しい仲間に乾杯!!」
ところ変わってカルデアの食堂ではささやかながら新しく来たアサシンのエミヤの歓迎会が開かれていた。酒や食料は同じ日本サーヴァントのよしみとして有力なスポンサーに協力してもらい、人理修復の戦いのつかの間の休息を各々が謳歌していた。

カルデアのサーヴァントすべてが集結しガヤガヤと男女の声が入り乱れて賑やかな食堂で、つまみや簡単な料理を作り終えたアーチャーは静かにエプロンを外し、台所からそっと気配を消して立ち去ろうとした。
あと1歩で食堂の扉へ手がかかるといったところで、不意に後ろから君と呼び止められる。その声の音にしばらく背を向けていたアーチャーは、観念したように振り向き予想通りこの宴の主役であるアサシンの姿に苦々しい表情を浮かべた。
アーチャーの表情に少し戸惑った雰囲気を出したアサシンは、一瞬躊躇うもおもむろに赤いフードを取り口を覆い隠す包帯も下げる。
フードの下から出てきたくすんだ白髪、そして包帯の下の焼け果てた大地のような乾いた浅黒い肌の色はアーチャーの方が若干色が明るいもののやはり似ている。
ほぼ同じ赤い色のコートを羽織、素顔で対峙した2人は他人というにはあまりに似すぎていた。
やはり…と納得する胸中をさとらせないよう平静を装おうとしているアーチャーへ、対峙してみて改めてアーチャーの方が自らよりも背が高いことに気づきついふっと笑ってしまったアサシンは、もう1歩近づきながら顔を上げ同じ名前を持つサーヴァントへ口を開いた。
「君がエミヤ。シロウ…なんだね?」
アサシンの低い声にアーチャーの記憶は殴りつけられたかのようにぐらりと揺れる。
かつて聞いていた声、かつて見た姿、かつて共にあった存在…それは正しく確認するまでもない。
このアサシンは『その人』であり、アサシンも自分が『あの者』だと気づいている。
賑やかな食堂でまるで時が止まったように空間を異にしている2人、アーチャーの答えを待つアサシンは、はぁと息を吐いたアーチャーの表情を読ませない鋼色の瞳に声を飲み込むしかなかった。
「あいにくだが真名は忘れてしまった。貴方の言うシロウという存在なら、ここにいる」
ここにいると言ってちょうどマスターから与えられて行動を共にしていた礼装『投影魔術』の首根っこをつかんで差し出したアーチャーは、身代わりとして差し出す今の使い主へなんでさ!と声を上げる礼装とまだなにか言いたげなアサシンに背を向けて食堂をあとにした。


しばらく歩いていると食堂の喧騒も小さくなり、無機質な白い廊下は冷たいほどの沈黙に満ちていた。
深いため息をついたアーチャーは磨きあげられた廊下の白い壁にぼんやりと映る自らの顔を見て、なんて顔だと自嘲すると頭を乱暴にかく。
らしくなく感情を表に出しているアーチャーの後ろから、対峙した新入りとの姿を見て後を追ってきたランサー・クーフーリンが呆れた顔を隠しもしないで声をかける。
「おい、ひねくれ屋。なんでわざわざあんな嘘つく必要があるんだよ」
続いて食堂を出てくる気配を感じていたアーチャーは、驚くこともなくランサーの方へ振り向くと露骨に迷惑そうなオーラを発しながら侮蔑へ唇を歪めた。
「…やれやれ、君はずいぶんとおせっかいなのだな。それとも狗には他所の事情というものを理解する頭が欠如しているのか」
「テメェが狗狗言い出した時はな、俺を挑発したい時と話をそらしたい時だって決まってるんだよ。見え透いた手使いやがって、答えろよ、何故あのサーヴァントに嘘をつく?」
あっさり狙いを看破されて多少面食らったアーチャーは、ランサーの鋭い瞳に言い逃れは出来ないと察し、皮肉屋の仮面を外して吐き捨てるように言った。
「…言えるわけがないだろう、私があの衛宮士郎だと?悪い冗談だ、今の私は…汚れた掃除屋の他ならない」
もはや聞きなれたアーチャーの言葉に肩をすくめたランサーはそのまま無造作に肩を組むと、至近距離に迫った苦く歪められた顔を横目に見た。自らの選択を後悔していないが、それでもついてまわる自責の念によってアーチャーの自己評価が考えられないほど低くなっているのは知っている。
そしてアーチャーが眩しいと感じる者達へはさらにそれが顕著となり、これまでランサー自身もこの評価の低さによって想いがろくに伝わらず苦労した経験がある。
「んなこたぁわかってる。だがあのサーヴァントも同じ代行者なんだろ?お得意の言い訳を並べる前に、互いに会いたがっていることを忘れてんじゃねぇよ」
「彼と私に深いつながりがあることを知っているんだな。ならなおさら言い出せやしないと何故わからない。私は願いの本質からねじ曲がり、摩耗するだけの部品と成り下がった。どの面を下げて会えと?…人を救うことを何よりも喜び、尊く思っていた彼に『私は貴方に憧れてこうなりました』なんて…言えやしないだろう」
やれやれと首を振ったランサーはアーチャーの言う通りおせっかいなところは否めなくとも、この自虐癖のせいで見逃してはならないものを見逃そうとしている愚かさに口を出さずにはいられない。
なによりもランサーはどうしようもなくアーチャーに惚れている。惚れたものが苦しんでいるのならそれを助けるのも恋人の役目だ。

「そういうもんかねぇ、ぐだぐだ考えねぇで言っちまえばいいんだ。それでこじれたら、その時はその時で考えればいい。少なくともこの生殺し状態よりはマシだと思うがね」
「…そう考えられる君が羨ましい、私にはとても…出来やしない」
「へぇへぇお前のめんどくせぇところは知ってるよ、だがなせめてこのおかしな戦いが終わるまでに言ってやれ、こんな機会二度とないぜ」
ランサーに言われることに思うことはあるのか、アーチャーはそれ以上反論をせずに黙った。


また静けさが戻ってきた廊下でランサーは珍しく大人しいアーチャーを盗み見、もしかしてこれはちょっとしたチャンスでは?とこみ上げる気持ちを感じていた。
元は話を打ち切って逃げられないよう捕まえたつもりだったが、アーチャーとここまで至近距離でいられるのもなかなか…いやかなり珍しい。アーチャーも今は思うことで忙しいのか、皮肉もなりを潜めされるがままでいる。
さらに今は宴が開かれている真っ最中、これから少なくとも二、三時間は邪魔者もないだろう。
恋人を慰めるのが役目なら、こんなチャンスにムラムラきてしまうのも仕方ないことだとついさっきまで流れていたシリアスなムードをそっちのけにしてクーフーリンの空いていた手がイタズラにアーチャーの腰へ回る。
それでも咎める様子のないアーチャーへ、これは行ける!と勝機を見出したランサーはするすると男性らしく鍛え上げられながらもどこか官能的にくびれた腰の感触を手のひらで余すことなく味わい、あの堅物が気を取られている今ニヤけてしまう口をこらえる。
「にしてもあのサーヴァントを見る限り、お前の正体を察しながらそれでも話したがっていたように見えるぜ。もしかしたら今も様子伺ってるんじゃ…」
瞬間ランサーはハッと息をつまらせ腰に回していた手を止める。その視線の先、アーチャーからは見えないような絶妙な位置に身を隠しこちらへ銃口を向けているアサシンと、ランサーはバッチリ目が合ってしまったのだ。
背中に吹き出す汗を感じながらランサーは身構えることも出来ない、それは卓越した戦闘能力が自動的に1ミリでも不穏な動きをすれば撃たれると判断したからだろう。
こちらに気づいたことを知ったアサシンは静かに人差し指を自らの唇に当て、静かにしろとランサーへアピールをすると、鈍色に輝く銃を可愛い可愛い息子のような存在へ無体を働こうとしていた害虫へ構え直した。
「どうした?ランサー」
「いや、別に…」
気にかけてるどころじゃない、きっちりしっかり見守ってるじゃねぇか!!
不自然に固まってダラダラと汗をかき始めたランサーへ首をかしげたアーチャーは、ふと自分の腰にまで回っていた手に気づくと瞬時にランサーが何をしようとしていたか察して強引に肩の手を外し体を離す。
すっかりいつもの調子を取り戻し服の乱れを直したアーチャーが歩いていってしまうのを見ながら、とんだモンスターペアレントがついてしまった愛しき背中をランサーは寂しく見送るのだった。

Comments

  • 鴉八丸
    November 28, 2022
  • 1
    September 28, 2016
  • 悠香
    September 24, 2016
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