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そういうとこだぞ[前編]/Novel by とまと

そういうとこだぞ[前編]

10,659 character(s)21 mins

【注意書き】

■某掲示板の甚爾/髙羽/日車が高専の同期だった世界線を参考にしたIFストーリーです
真面目にこの御三方が好きだったので、神スレありがとうございました
■掲示板の内容を参考にしたり、自分の解釈を突っ込んで居います
■腐界隈の人間が書いて居るため、苦手な方はご注意いを
■術式などしっかりと理解していない点がある為、ツッコミ所が多々あるかと思います。ノリで凌いでください。
■髙羽さんにギャグ要素ありません。
■甚爾と日車は未だ不仲です

□甚爾さんの過去とキャラクターを捏造しています。
□更に日車さんの過去とキャラクターを捏造しました。

→なんでも許せる方向け( .. )

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0.side甚爾

「今回ご対応頂くのは、Y県の山中にある廃病院になります。」

男の補助監督が運転する黒いセダンに乗り、目的地に移動する。
後部座席に俺と髙羽、助手席に日車の配置で車に乗り込み補助監督から詳細を聞く。

「外向き4階建ての建物になりますが、地下を含めて5階分のフロアがあります。病院に居る呪霊は全て下級クラスとの事ですが数が多い為、祓い終わりまで時間は掛かるかと思います。」

労力だけ使う面倒な任務と言う印象で、さっさと終わらせてしまいたいと言うのが素直な感想だ。

「1つお聞きしてもよろしいですか。」
「何でしょうか。」
「夜蛾先生はこの事をご存知ですか?」
「はい、生徒さんが討伐任務に赴く事は承知して頂いています。」
「……分かりました、ありがとうございます。」
「何故その様な事を?」
「夜蛾先生は本日京都校へ出張の為、私達は構内で指示された課題を実施する予定でしたので、一応確認です。課題が終わっていないと責められても不本意なので。」
「1級術師の方々が他の任務で全員出払って居て他に人が居らず……勉学に励まれてる中、お力添え頂き助かります。」

日車と補助監督の会話を聞きながら何か違和感を感じつつ、隣で寝こけて居る髙羽の鼻を摘んだ。

「(課題なんざ終わってる奴が良く言うぜ。)」

今朝、任務の依頼がくる前の事を思いだす。


1.
昨日、夜蛾センが翌日は京都の姉妹校へ出張だかで、課題を翌朝迄に用意しておくから今日はソレを実施しろと言っていた。課題の内容は、髙羽と日車の会話を聞くに、数学や物理とかの様だ。

朝、俺と髙羽が登校した時には既に課題を始めていた日車。
髙羽は授業の開始と共に手を付け始めた。自分が出来る範囲はなんとかと粘っていたが…

「ちょ…分からん、ギブ!ヒロミちゃん、助けて!!」

課題が箸棒の様で日車に泣きついていた。髙羽は根が真面目な為か、なんとか指示された事はやり遂げ様とする。
そして、日車が課題を終わらせたのを見計らって声を掛けたのも、髙羽なりの気遣いだろう。

「どこが分からないんだ?」
「ありがとう!この問題からなんだけど…」

泣きつきが成功し、嬉しそうに机を近づけて分からない問題を指す。

「使う公式間違えてる。」
「まじか…。てか、どの問題になんの公式使えば良いか何て分からないし。」

半ば投げやりになる髙羽。

「基本的に教科書を確認しながら、進めれば範囲的に分かる筈なんだが…今、教科書のどの範囲を問われているか分かるか。」
「んー、ここ、22ページ。」
「正解。問題をよく読んで、何を問われていて、答を導く為にどの様な条件が提示されてるかを確認する。答えと提示条件に当てはまる公式を使って解く。」
「そうすると…問題文で求められてるのが…」

問題と教科書を交互に確認し、整理し直した条件に当てはる公式が分かったのか、教科書を1部に指を指す。

「正解。」
「よし、それなら…。」

今度は、教科書の公式に条件なる数字をあてはめ、問題を解いていく。

「できた!」
「解けるじゃないか。」
「いや、ヒロミちゃんのおかけだし。」

どうやら、1つは解けた様だ。

「公式は丸暗記しようとするのではなくて、その公式が何を意味しているのか理解する。学んだ公式が何故成立するかを理解して置けば、公式の意味や使い方が分からなくなり難い。」
「……。」
「数学の公式は、1つの公式から派生させて別の公式を導き出せるものもあるから、基礎的な公式だけでも覚えて置くといい。簡単な所だと…例えば、速さを求める公式や、三角関数とか。」

おい、髙羽の脳内爆発しかけてるぞ。

「おそらく、問題文や公式を1つの塊として捉えているのと、本当に解けるのかと言う先入観から、問題がしっかり読めていないんじゃないかと思う。」
「んー、確かに問題を読む前から諦めにはいってるかも。」
「それだと、問題文を正しく捉えられない可能性がある。」
「ごもっともですぅ。」

そう言って髙羽は机に顔を伏せる。どうやら図星の様だ。

「髙羽は普段雑そうに見えるが細かい所も気を使えるし、取り組みに対しても努力出来る。もう少し細分化して捉えて、自分なりの解き方のコツやルールが見つけられれば、数学に限らずどんな事でも出来る様になるだろ。」

そう言って、伏せてた髙羽の頭に手を乗せて軽くぽんぽんと叩く。
髙羽はいきなり伏せていた顔を起こすと、さっきまで頭にのせていた日車の右手の手首をとった。咄嗟の髙羽の行動に驚く日車。

「ヒロミちゃん!そーゆーところですよ!!」
「すまない、触られるの不快だったか?」
「違う!そうじゃないし、そっちじゃないし、不快じゃない!!」
「ん?とりあえず、進めよう。」

少しだけ耳を赤くして騒ぐ髙羽と、意味が分からないとばかりに次の問題に取り組みさせようとする日車。

ガラガラと教室の扉が開き、補助監督と新藤とか言う呪術師が教室に入ってきたのは、それから1時間程した後だった。

「1年の生徒3名に、呪霊の討伐依頼がございます。」

因みに俺は課題に関しては、1問も解いていない。


2.
「着きました、こちらです。」

時刻は14時半。ようやく目的地である廃病院に到着した。
周囲は草木が生い茂り、正に心霊スポットよろしく雰囲気のある建物だ。

「では帳を…「いや、帳は私の方で掛けます。」

声を遮り、日車が補助監督の動きを制す。

「……分かりました。では、終了しましたらご連絡ください。」

そう言った補助監督を背に、病院に向かう。

「よし、行くぞ皆の者!!」
「さっきまで爆睡してた奴が何言ってやがる。」
「……。」

髙羽の尻をシバキつつ、病院の入口まで向かう。痛い!と涙目になっているが、眠気覚ましには丁度いいだろう。
入り口まで到着すると、日車が人差し指と中指を立てて印を組み、聞き慣れた短い詠唱を行う。

「闇より出でて闇より黒く、その穢れを禊ぎ祓え。」

直後、黒いドーム状の影が病院全体を包む。

「すげー、いつ間に帳降ろせる様になったの!?」
「夜蛾先生と前回任務に出た時だな。」
「マジで、すげぇ!!」

帳は一定の呪力があれば、誰でも学ぶことは出来る。が、誰でも扱える術ではない。向き不向きがあり、習得に時間が掛かるので後回しにしたり、諦めている術師も少なくない。

影が地面に降り切る直前、俺達をここまで連れてきた補助監督と目が合った。冷めている様な視線だった。

病院に入り、呪霊退治の取っ掛かりは順調だった。
武器庫呪霊から扱い易い刀型の呪具を取り出し、俺は片っ端から切り刻み、髙羽は相手が球状の呪霊が複数体居ると知るや、今の間に野球のユニフォームを着て手にしたバットで千本ノックと言い呪霊を打ち、日車は手にした木槌(ガベルと言うらしい)のサイズを大小変化させコンスタントに呪霊を叩いていた。

「1階は片付いたな。」
「本当に数が多いだけじゃねーか。疲れるだけだわ。」

上下に分かれる階段を目の前にし、少し足を止める。

「手分けるか、パチ屋行く時間が無くなる。」
「マジで言ってる!?普通に病院とか怖いんだけど…お化け出そうで。」
「さっきまでバコスコ呪霊殴ってた奴が何言ってんだよ。しかも、建物入る時ノリノリだったじゃねーか。」
「呪霊とお化けは別物よ!?廃病院なんて、雰囲気怖いに決まってるでしょ!!みんなで行こうよ!!」
「俺は地下に行く。2人は上の階を任せた。」
「えー俺の話聞いてたヒロミちゃん…ってもう降りてるし…。」

階段を下りる日車は足を止めず暗闇へと移動して行った。
髙羽と顔を見合わせ、日車が向かった逆側の上へのと昇る階段に目を向ける。

「とーじ、腕組んでっていい?」
「俺は男とイチャつく趣味はねぇ。てか、何気に階数余ってる範囲の方押し付けられてんの気づいてんのか。」
「とーじが2階分で、俺とヒロミちゃんが1階ずつの割り当てでしょ?」
「裏切者め…離れろ。」

俺の腕を掴んでいた髙羽の手を振りほどいて、階段を上る。ごめんと誠意のこもっていない謝罪の言葉をかけながら、髙羽は後ろから着いてきた。
ずっと引っ付かれているのも面倒なので、そのまま髙羽は屋上へ回り、俺は2階から攻めて行くことを指示して別れた。

廃病院はそれなり大きな総合総合病院だった様で各階のフロアが広い。どうやら1階と2階は診察室や治療室の様だ。
2階に上がり、1階とさほど変わらないレイアウトの中、再度襲ってくる呪霊を刻む。
フロアの半分程進むと、気配が先ほどと変わってきていた。空気が更に淀み、重苦しい雰囲気になり、進むべき方向が狂わせる様だ。昼間といえど帳が降りているため、建物の中は暗い。

「(俺には通用しねーげとな。そう言うの。)」

フロアの奥から禍々しい気配がこちらへ進んで来る。

「お。多少やりごたえがありそうなやつが出てきたな。」

大きな塊にいくつも顔が付いている自分の倍以上もある呪霊だ。少なく見積もっても、1級クラスはあるだろう。相手を前に恐怖心は微塵も感じなかった。
奴が俺を感知し、細い管の様な物を此方に向けて放ってくる。その管を1本1本丁寧に切り刻むと、奴はその管の量を増やし俺を捉えようとする。
呪霊から伸びる管の全て切り落とし、相手が怯んだ隙をついて真っ二つにする。

「攻撃が単調過ぎ。やり応え無ぇ。」

先程の呪霊の気配が散ったのを確認する。気配だけ一丁前で大した事の事の無い奴だったなと思い返しながら、まだ半分以上あるフロアを眺めため息が出る。
果たして昨日、マジべカスに貯金してきた金を下ろしに行く時間を確保出来るだろうか。
トップスピードで移動してしまえばさっさと終わるだろうが、そこまでやる気を出したくない。ましてや、あの2人の分もご丁寧に仕事する義理もない。
できれば利子も回収する時間も欲しいと、とりあえず湧き上がる呪霊ザコを払いながら、更に奥へと足を進めるのだった。


4.
おかしい…

3階に上がると、先程まで大量に湧き出てきた呪霊が出てこなくなった。同じペースで進んでいれば、そろそろ降りてくる髙羽と合流しても良いはずだ。

「ふーん…。」

可能性があるとすれば3つ。状況が変わったと過程として、想定を立てる。

あの大量の呪霊は撒き餌で、この病院に術師を呼び寄せるのが目的とする。
1、病院自体が呪霊化しており、術師を吸収して大量の呪力を確保する
2、1級~特級レベルの呪霊が潜んでおり、術師を1人ずつ殺そうと狙っている。始めの雑魚呪霊は体力の消耗と、術師のレベル把握が目的
3、パターン2で呪霊ではなく、呪詛師が潜んでる

武器庫呪霊に今まで使っていた刀を戻し、‪”‬游雲‪”‬を取り出す。

俺の場合、1のパターンは考える必要がない。髙羽や日車はともかく呪力が無い俺を取り込んでも意味が無いからだ。現状と想定を擦り合わせる。

その時、車内での会話の違和感を思いだした。

『夜蛾先生はこの事をご存知ですか?』
『はい、生徒さんが討伐任務に赴く事は承知して頂いています。』
『……分かりました、ありがとうございます。』

本当に、今回の任務が正確に夜蛾に伝えられているのか…?
思えばおかしいと感じる点はあった。課題が面倒で何も言わなかったが、入学して1ヶ月足らずの生徒を担任の不在時に任務につかせるだろか。
夜蛾センも基本的に数ヶ月は、生徒だけで行かせる事は無いと言っていなかったか。

『夜蛾先生は本日京都校へ出張の為、私達は構内で指示された課題を実施する予定でしたので、一応確認です。課題が終わっていないと責められても不本意なので。』
『1級術師の方々が他の任務で全員出払って居て他に人が居らず……勉学に励まれてる中、お力添え頂き助かります。』

下級クラスの呪霊退治なら、1級呪術師の力なんて要らねぇ筈だ。
どうしてあの補助監督は、1級と明確に術師の階級を答えた?

突然、ピースが揃って行く。目の前には、何処に何のピースをはめれば良いか、答えが意図的に用意されている様に思考が纏まって行く。

『では帳を…『いや、帳は私の方で掛けます。』

帳の基本的な用途は、‪”‬視覚効果‪”‬で、呪術師の行動が外部には認識されない暗幕の様な役目だ。そしてもう一つは‪”‬術式効果‪”‬、結界内への出入りの制限…

帳が掛かり終わる直前の補助監督の目…

「ちっ…、」

始めからこの任務は仕組まれいたのだと、1つの回答に辿り着く。
そして、それにいち早く気づいたのが日車だ。帳を自身で降ろしたのも、あの補助監督に帳を任せて、何らかの縛りを掛けさせる可能性を無くす必要があったからだ。
そして日車も帳に縛りを掛けてる。想定するに外部からの術者の侵入禁止。ここは山ん中であくまで俺たちの対応場所は建物内…、視覚効果じゃなく、術式効果に全振りしてる可能性が高い。

そして、先程立てた3つのパターンを思い返す。
1番考えられる最悪な想定は、考建物内に特級レベルの呪霊か呪詛師…もしくはその双方が居ると言う事だ。

そして、日車が補助監督を疑いはしても、俺や髙羽にその可能性を話さず黙っていた理由…おそらく、補助監督…術師側が俺達・・を陥れる根拠までたどり着けなかったからだ。
普通なら補助監督は高専側で味方だ、疑う必要は無い。

「……。」

確実に原因は俺だ。

禪院家において、呪力の無い人間は人として扱われることは無い。

『禪院家に非ずんば呪術師に非ず、呪術師に非ずんば人に非ず』

恐らく高専に預けられた際、直毘人ジジイはともかく他のヤツらから、俺の扱いについて"在学中に死んでも構わない‪”‬と言う様な指示があったのは容易に想像できる。

高専に入学して1ヶ月も経っていない。別に長い付き合いでも無いし、思い入れもない。ただ巻き込んで死なれたら今後の人生、尾を引きそうだ。

上の階に向かって游雲を放ち、4階へと登る道をこじ開けた。

Comments

  • 飛幽
    May 5th
  • 小夜双☆スカィWeb
    September 5, 2024
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