米イラン戦闘終結で合意、19日署名へ トランプ氏「ホルムズを開放」
【エビアン(仏東部)=甲原潤之介、ドバイ=浜岳彦】トランプ米大統領は米東部時間14日、イランと戦闘終結で合意したとSNSで発表した。ホルムズ海峡の通航が再開し石油供給が回復するとの期待から日経平均株価は上昇、原油価格は下落した。
トランプ氏は「ホルムズ海峡の通航料なしの開放と、米海軍による封鎖の即時解除を承認する。世界の船はエンジンを始動し、石油を流そう」と書き込んだ。
19日に合意を正式に締結すると明言し、署名をもってホルムズ海峡は開くとの認識を示した。「合意は地域全体に平和と安全をもたらす」と強調した。「多くの大統領がイランとの和平構築を試みたが、みな失敗に終わった。この地域のリーダーたちは初めて真の平和の実現を手助けできる大統領をみつけた」と成果を誇った。
イランメディアは15日、イランの最高安全保障委員会が米国との覚書の文言を最終決定したと報じた。
合意内容によるとレバノンを含む全ての前線での戦闘が即時かつ恒久的に終了し、イランに対する海上封鎖が解除されるという。
国際原油指標のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)先物は日本時間15日朝、一時前週末比6%安の1バレル80ドル近辺と、3月10日以来の安値をつけた。北海ブレント原油先物も同83ドル台と前週末から4%下落した。東京株式市場で日経平均株価は大幅に上昇した。
フランスのマクロン大統領は14日にX(旧ツイッター)で、15日から仏東部エビアンで始まる主要7カ国首脳会議(G7サミット)で米国とイランの合意について議論するとした。エジプトなど中東諸国も招く。「この合意の影響、レバノン支援、ホルムズ海峡の開放、イランの核開発と弾道ミサイルについての合意」が議題になると説明した。
パキスタンのシャリフ首相は15日、SNSに「米国とイランの間で合意に達した。レバノンを含むすべての戦線における軍事作戦の即時かつ永久的な終了を宣言した」と投稿した。19日にスイスで署名式を開くという。
シャリフ氏は「合意が成立したことを受け仲介国は今週、一連の会合を調整する。これらの会合は技術的な協議や署名式の土台を築くためのものだ」とも述べた。
米国とイランは13日時点で、合意に近づいているとの認識を示していた。ホルムズ海峡の扱いやイランの核開発問題、イランへの経済的見返りを巡り認識のずれがみられたが、簡易な「覚書」で戦闘終結を優先する方針に双方が傾いていた。
14日に入り、イスラエルが親イラン組織ヒズボラに報復するとしてレバノンの首都ベイルートを攻撃した。レバノンでの戦闘停止を合意の条件としていたイランは態度を硬化させた。
合意を急ぐトランプ氏は急いで火消しに走った。SNSで「イランとの合意が極めて近い特別な日に起こるべきではなかった」と書き込んだ。イスラエルが受けた攻撃について「非常に小規模だ。誰も負傷したり殺されたりしていない」と記し、報復の正当性を認めなかった。
米ニュースサイト、アクシオスによると、トランプ氏はイスラエルのネタニヤフ首相に電話し「なぜクソみたいな攻撃をしないといけなかったんだ。すごく頭にきている」と罵倒した。
イランのガリバフ国会議長はイスラエルのレバノン攻撃後、SNSに「(米国が)義務を果たす意志や能力がなければ、この道を歩み続けると語ることはできない」と投稿し、合意に慎重姿勢を示していた。
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。
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(更新)- 上野泰也マーケットコンシェルジュ代表ひとこと解説
トランプ大統領はSNSに「世界の船よ、エンジンを始動せよ。原油を流通させよ!(筆者訳)」と投稿した。米・イラン協議が妥結しそうだということを材料に、12日の米原油WTI先物は一時1バレル=83.20ドルまで下げていた。合意内容と今後の展開にもよるが、今後80ドルを割る場面があるとしても、原油関連設備修復の必要性などもあり、軍事作戦開始前の60ドル近辺までは、少なくとも当面は下がらないのではないか。原油を輸入している日欧などへのエネルギー分野からの物価上昇圧力は、程度は軽減されるものの、継続すると見込まれる。米国内では、ガソリン小売価格のピークからの下落が、消費マインドをやや好転させている。
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(更新) - 前嶋和弘上智大学総合グローバル学部 教授ひとこと解説
大きな節目だが不透明な今後。建国250年記念の7月4日というトランプ側のゴールを見すえた腹の探り合いはもう少し続きそうです。イスラエルが どう出るか。
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(更新) - 今村卓丸紅 執行役員 丸紅経済研究所社長・CSO補佐分析・考察
仲介を続けたパキスタンとカタールを称えたいと思います。核問題、ホルムズ海峡、凍結資産の解除という問題での米国とイランの立場の違いは大きく、双方が強気で膠着。しかし互いに戦争の負担が限度に迫っていました。米国は戦争不支持が60%前後に達し、石油メジャーは原油備蓄が危機的水準に減ったとトランプ政権に警告。イランは逆封鎖で石油収入が激減、生産削減も強いられ危機的状況。そこへ仲介国がタイムリーに働きかけ協議が動いたのでは。 とはいえイスラエルの妨害、イランのホルムズ海峡関連のサービス料徴収への執着、先送りされた核問題での双方の距離など、懸念材料は多くが残存。合意締結後も注視が必要だと思います。
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(更新) - 窪田真之楽天証券 チーフ・ストラテジストひとこと解説
核開発・ホルムズ通航料・レバノン情勢などで米国イスラエル・イランが完全合意できる可能性はきわめて低い。それでも戦争状態はいったん終わると思われる。 近年、戦争の出口として、包括的な「和平条約」の締結は極めて困難となっている。代わって定着しているのが、政治的妥協を棚上げした「軍事的休戦(凍結)」である。この形態は、当事国間に恒久的な緊張を残す一方、大規模な破壊活動を抑制する。イラン戦争も、そうした終結(一時凍結)を目指して交渉が進んでいるものと思われる。 「和平条約なき休戦」の最も代表的な例は、朝鮮戦争である。1953年に締結されたのは「休戦協定」であり、法的には現在も戦争状態が継続している。
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(更新) - 植木安弘上智大学名誉教授ひとこと解説
現時点でまだ覚書の内容は公表されていないが、これまでに予想された内容になっているようだ。署名は6月19日にジュネーブで行われるとのことで、その時点から次の段階の交渉が始まる。期間は60日だが、その間にイランの核問題や制裁解除などの核心に至る問題が交渉の対象となる。レバノンでの停戦も合意に入っているとされているが、イスラエルは覚書の当事者ではないためヒズボラへの攻撃を停止するかどうかが懸念材料となる。米国はイスラエルに停戦を遵守するよう圧力をかけているようだ。第二段階での交渉はかなり難航すると思われる。米国はイランの平和的核利用は認める可能性があるが、濃縮されたウランがどう扱われるか注目される。
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(更新) - 尾河真樹ソニーフィナンシャルグループ執行役員 チーフアナリストひとこと解説
この報道を受けて、為替は160円台半ばから、159円台後半まで小幅に下落しました。これまでの「有事のドル買い」に加え、「原油価格の上昇→日本の期待インフレ率上昇→実質金利低下→円安」の傾向がありましたが、これが反転するとの見方が広がったことが背景にあります。もし本当に和平合意が成立するなら、2月末のイラン攻撃開始前の水準、155~156円程度までの調整はありそうです。一方、足下のドル高は「有事」なだけでなく、米経済指標の強さからFRBの利上げ観測が浮上しつつあることが要因なので、市場が再び「米利下げ」を期待するようにならない限り、155円を大きく下回るドル安・円高は期待し辛いとみています。
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(更新) - 渡部恒雄笹川平和財団 上席フェロー今後の展望
米国とイランが戦闘終結19日に合意文書に署名をする段階まで至ったことは、まずは良い知らせです。その段階にまでいけば、少なくとも、これまでの熱い戦争から「冷たい戦争」の段階に移り、これまでの軍事攻撃の応酬がエスカレーションを招くリスクが少なくなるからです。ただしレバノンでのイスラエルとヒズボラの戦闘は、引き続き、交渉中断へのリスクとなるでしょう。60日間の停戦期間内にイランの核施設をめぐり合意できるのかも楽観はできません。ただしイラン側は勝利を主張してはいますが、米国の逆封鎖を早く解きたいという経済の事情もあるのでしょう。そうであれば、今後の交渉の進展についてもそれなりに希望を持てます。
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