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消費期限切れパンを仙台市が配布―消費期限と賞味期限、3人に1人は逆の意味で記憶、消費者庁調査

株式会社office3.11代表取締役
パンの消費期限表示の一例(筆者撮影)

消費期限切れのパンを生活保護受給者に配布

2026年6月12日、毎日新聞が、消費期限に関わる事案を報じた。宮城県仙台市の福祉事務所職員が2026年5月、消費期限が過ぎたパンを生活保護受給者の男性に提供していたことが判明した(1)。職員は消費期限が過ぎていることを認識していたが、受給者の男性が同意したとして、そのまま手渡していた。

仙台市は2026年5月25日、フードバンクから、10個入り1袋のパンを受け取り、翌26日に仙台市太白区保健福祉センターで男性に支給した。職員は消費期限が1日経過していることを男性に伝えたが、男性は同意してパンを持ち帰った。翌27日、男性から市に対して、支給された日にパンを食べたところ、数時間後に腹痛や下痢の症状が発生したとの連絡があった。

市の担当者は、11日の毎日新聞の取材に対し、「本来は廃棄が望ましかったが、本人に説明して同意を得ており、不適切ではない」と説明した。一方、厚生労働省は「望ましいことではない」との見解を示している。

賞味期限はおいしさのめやすであり、期限が過ぎた後も、すぐ食べられなくなるわけではない。だが、消費期限は安全性を担保する期限であり、性質がまったく異なる。仙台市の職員が「説明して同意を得れば問題ない」と判断したとのことだが、消費期限と賞味期限の違いをきちんと理解できていただろうか。

結局、仙台市は12日の取材で「消費期限切れのパンを渡したのは不適切だった」と、考えを一転させた。

賞味期限と消費期限の違い。消費期限は時間経過とともに品質が急激に劣化する(ピンクの点線)。一方、賞味期限はおいしさのめやすであり、過ぎてもすぐに品質が劣化するわけではない(消費者庁資料をもとにoffice3.11作成)
賞味期限と消費期限の違い。消費期限は時間経過とともに品質が急激に劣化する(ピンクの点線)。一方、賞味期限はおいしさのめやすであり、過ぎてもすぐに品質が劣化するわけではない(消費者庁資料をもとにoffice3.11作成)

カリフォルニア州では期限表示を2つに統一

2026年7月1日、米国カリフォルニア州では、新たな法律「AB 660」が施行される(3)。市販食品には「quality date(品質に関する期限)」または「safety date(安全性に関する期限)」のいずれかを統一表記することが義務づけられ、「sell by(販売期限)」表示は禁止となる。

カリフォルニア州の知事、ギャビン・ニューサム氏が2024年9月28日に署名したこの法律は、消費者の混乱を軽減し、食品ロスの廃棄を減らすことを目的としている。

米国内には50種類以上の期限表示があるといわれ(6)、消費者の混乱が食品ロスの一因となっている。

カリフォルニア州食料農業局公式サイトより
カリフォルニア州食料農業局公式サイトより

「知っている」つもりと実際の行動は別

日本では、2026年5月21日、消費者庁が食品表示に関する調査報告書を発表した(4)。6,050人を対象とした、期限表示を含めた食品表示に関する意識調査だ。

たとえば「消費期限と賞味期限の違いを知っていますか」という問いに対し、3,025人のうち「はい」と答えた人は78.7%。約8割が「知っている」と答えた。

2026年5月21日、消費者庁が発表した食品表示に関する調査報告書より
2026年5月21日、消費者庁が発表した食品表示に関する調査報告書より



次いで、「消費期限」と「賞味期限」それぞれに当てはまるものを以下の3つの選択肢から選んでほしい、という質問があった。

  • 表示されている「保存の方法」に従って保存されていれば、品質に問題が生じない期限である。
  • 表示されている「保存の方法」に従って保存されていれば、腐敗、変敗(におい等の劣化)等がなく安全性に問題が生じない期限である。
  • わからない。

正解は、消費期限=2(安全性)、賞味期限=1(品質)だ。

消費期限について正しく「安全性に関する期限」と答えられたのは53.7%。賞味期限について正しく「品質に関する期限」と答えられたのは54.5%

どちらも正答率はほぼ半数だった。「知っている」と答えた78.7%と、「正しく説明できる」54.5%の間には、20ポイント以上の開きがある。

「知っている」と言いながら、実際には意味を逆に覚えていた人、あいまいにしか把握していなかった人が相当数いることになる。

2026年5月21日、消費者庁が発表した食品表示に関する調査報告書より
2026年5月21日、消費者庁が発表した食品表示に関する調査報告書より

消費期限と賞味期限の意味を逆に覚えている人が3割以上いる

消費期限については、正解を選んだ人が53.7%だった一方、誤って「品質に関する期限」と答えた人が36.4%いた。つまり、3人に1人以上が、消費期限と賞味期限の意味を逆に覚えていたことになる。

賞味期限についても同様で、正解を選んだ54.5%に対し、誤って「安全性に関する期限」と答えた人が35.7%いた。

「わからない」と答えた人は消費期限・賞味期限ともに約10%。つまり「わからない」と自覚している人よりも、間違えて覚えている人のほうが3倍以上多いのだ。

「わからない」人は情報を求めるかもしれないが、「間違えて覚えている」人は、自分が誤っていることに気づくことができない。

年代・性別で際立つ差

調査結果を年代別に見てみると、高齢層ほど理解度が高い傾向が確認された。

消費期限について「知っている」と答えた割合は、70代以上男性で88.1%、70代以上女性で88.5%と最も高く、対して40代男性は67.7%と全体で最も低かった。

正答率についても同様の傾向が見られた。30〜50代の男女での正答率は低かった。30〜50代は、食品の購入や調理を担う世代だが、彼らの理解が不十分であることは、家庭や店頭で食品ロスが発生することにつながるのではないだろうか。

女性は男性に比べて正しく理解している割合が若干高く、若い世代でも、女性のほうがやや高い傾向があった。

賞味期限・消費期限は食品購入時に最も参考にする表示

調査では、食品購入時に参考にする表示についても聞いている。

「消費期限又は賞味期限」を「いつも参考にしている」または「ときどき参考にしている」と答えた割合は83.3%で、原材料名(67.9%)、保存方法(71.2%)、添加物(53.0%)を大きく上回り、全表示項目の中で最も高かった。

2026年5月21日、消費者庁が発表した食品表示に関する調査報告書より
2026年5月21日、消費者庁が発表した食品表示に関する調査報告書より

「消費期限」と「賞味期限」は、消費者が食品を選ぶ際に最も参考にしている情報だ。だが、実際には、表示の意味を誤解している人が30%以上いる。

「賞味期限が過ぎたら食べてはいけない」と誤解している人は、まだじゅうぶん食べられる食品を捨ててしまう。コンビニやスーパーの店頭では、商品棚の奥に手を延ばし、ずっと先の日付の商品を奥からとっていく。

このような行為が積み重なれば、家庭から出る食品ロスだけでなく、事業者から出る食品ロスの量にも影響する。

環境省の推計によると、日本の食品ロスは464万トン。そのうち家庭系は年間約233万トン(2023年度)と、全体の半数にのぼる(5)。

賞味期限を過剰に恐れる一方で、消費期限のリスクを甘く見れば、「消費期限が過ぎても問題ない」と誤解し、仙台市の事案のように、安全性のリスクが生まれる。

「とやま食ロスゼロ作戦」公式サイトより  https://foodlosszero.jp/business
「とやま食ロスゼロ作戦」公式サイトより  https://foodlosszero.jp/business

カリフォルニア州の法律AB 660が示す方向性

前述のように、カリフォルニア州AB 660は2026年7月1日に施行され、2種類の期限表示に統一される。

AB 660を共同提案したカリフォルニア州の団体「Californians Against Waste」によれば、米国では50種類以上の異なる表現の日付ラベルが使用されており、消費者の混乱と食品廃棄を招いていると報告している(6)(7)。

米国の「sell by(販売期限)」は小売企業が在庫管理するための期限表示であり、消費者に直接関係するものではない。にもかかわらず、パッケージに記載されることで、消費者がその日付を賞味期限や消費期限と誤解し、問題ない食品が廃棄されるケースがある。

日本独自の商慣習という観点では、「販売期限」に相当する表示は原則として商品パッケージに表示しない。だが、食品業界の商慣習である「3分の1ルール」に「販売期限」や「納品期限」は存在しており、年間1200億円のロスを生んでいた。2012年ごろから政府と食品業界により緩和されつつあるものの、今でも数百億円単位のロスは生じている。

「消費期限」と「賞味期限」の意味をあらためて整理する

ここで改めて整理しておきたい。

消費期限とは、定められた方法で保存した場合に、腐敗や変敗などの品質劣化が生じず、安全性に問題がないと認められる期限だ。おにぎり・弁当・サンドイッチ・生クリームのケーキなど、傷みやすい食品に表示される。期限を過ぎたら食べない方がよい。

賞味期限とは、定められた方法で保存した場合に、品質が保たれると認められる期限だ。スナック菓子・カップ麺・缶詰など、比較的長持ちする食品に表示される。期限を過ぎても直ちに食べられなくなるわけではないが、風味や品質は低下しうる。

どちらも「未開封の状態で、記載された保存方法に従って保存した場合」の期限である。開封後は無効となるので、できるだけ早く食べることが求められる。

「知っている」から「理解する」、さらに「行動する」へ

今回の調査結果から、ただなんとなく「知っている」だけでは十分ではないことがわかった。「知っている」と思い込んでいても、「消費期限」と「賞味期限」の意味を逆に取り違えている場合も30%以上あった。

冒頭の仙台市の事案は、報道からは行政が消費期限の意味を理解していたかどうかまではわからない。だが、当初「問題ない」としていたものの、一日経って「不適切だった」と発言を一転させている。消費期限が持つ意味の重さが、現場に十分共有されていたかどうかは、あらためて問われるべきだろう。

正しく理解すること。

理解したことを日々の行動につなげること。それにより、食品ロスも減る。

食品価格には廃棄コストが織り込まれているので、食品の無駄が減れば、食品価格も今より下げられる可能性がある。

参考情報


1)生活保護受給者に消費期限切れのパン 仙台市、認識の上で提供(毎日新聞、2026/6/12)

2)消費期限切れパン巡り 仙台市「提供は不適切」一転して認める(毎日新聞、2026/6/12)


3)Food Date Labeling (California Department of Food and Agriculture)

4)消費者庁「令和7年度食品表示に関する消費者意向調査 報告書」(令和8年3月、調査委託:消費者庁食品表示課、調査受託:株式会社イード、調査期間:2026年1月20日〜1月27日、対象:全国15歳以上 n=6,050)

5)我が国の食品ロスの発生量の推計値(令和5年度)の公表について

6)AB660(California Against Waste)

7)Confusion of food-date label with food safety — implications for food waste( Debasmita Patra, et.al., Current Opinion in Food Science, Volume48, December 2022)

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ありがとうございます。
株式会社office3.11代表取締役

奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン、海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長歴任。3.11食料支援で廃棄に衝撃を受け誕生日を冠した(株)office3.11設立。食品ロス削減推進法成立に協力した。著書『私たちは何を捨てているのか』『食料危機』『あるものでまかなう生活』『賞味期限のウソ』『捨てないパン屋の挑戦』『SDGs時代の食べ方』等、13冊(累計16万部)。食品ロスを全国的に注目させたとして食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018/食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞など受賞

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