3年で10倍、マーラータン専門店が出店ラッシュ 痺れる辛さブーム 中国文化が浸透か

麻辣湯(Review提供)

中国・四川発祥のスープ料理「麻辣湯(マーラータン)」専門店の出店ラッシュが止まらない。データ会社によると、国内市場で昨年の新規開業数が3年前の約10倍に急増。「痺(しび)れる辛さが癖になる」と若い女性を中心に人気が高く、今も各店前で行列が絶えない。専門家は流行の要因について「日本への中国文化の浸透が背景にある」といい、「中華ジャンルとして定着しつつあるのではないか」と分析する。

5月中旬の昼どき、JR天王寺駅(大阪市)に直結した商業施設「天王寺MIO」内の麻辣湯専門店「七宝麻辣湯」前には、数メートルに及ぶ長蛇の列ができていた。並んでいる多くが若い女性で楽しげな声が弾んだ。

友人とともにランチに訪れた大阪府岸和田市の主婦、前田彩乃さん(25)は数年前から麻辣湯の痺れるような辛さに魅了されているといい、この日は、スープの辛さを辛めの「5辛」にし、パクチーや白木耳(しろきくらげ)、魚卵団子、春雨の一種「ブンモジャ」などを具材に選んで食べた。

その魅力について「唐辛子の辛さと花椒(ホアジャオ)の痺れで舌がピリピリする感じが癖になる」といい、「スープを飲んだ後、体がぽかぽかしてデトックス(体内の毒素の排出)できた気分になれる」と笑顔を見せた。

各地の麻辣湯専門店前では連日、行列ができている=大阪市内

オーダー独特

麻辣湯は、中国・四川が発祥のスープ料理で、唐辛子などの辛さと花椒の痺れが特徴。多くの店では、数十種類のスパイスが入った薬膳スープで、客自身が選んだ麺と具材を店が煮込んだ上で提供する。

注文システムには特徴がある。最初に店内の冷蔵ケースから野菜や肉、海鮮など好みのトッピングを好きな分だけボウルに取る。店員に辛さと麺の種類を伝え、注文が完了する。七宝麻辣湯では、スープと春雨の基本メニューの料金620円に、トッピングする好みの具材1グラム3・1円を加算した合計額を支払う。トッピングの量に応じて異なるが、一杯あたり1500円程度。

四川料理の魅力を発信する団体「麻辣連盟」(東京)によると、もともと麻辣湯は、「麻辣燙」として中国・四川で生まれ、同国の東北地方で辛さを牛乳や豆乳でマイルドにして食された東北麻辣燙が中国全土で人気に火がつき、韓国に伝わった。その後、日本で七宝麻辣湯が薬膳を使った麻辣湯を売り出しブームになったという。

同連盟総裁の中川正道氏は「中国で流行したものが韓国を経て日本に伝わるというおもしろい食文化の広がりをみせている。四川の麻辣燙とは少し異なる料理とはいえ、四川料理が広まるのはうれしい」と歓迎する。

韓流に代わり

データ会社「Review(リビュー)」(大阪市)によると、全国における令和4年の麻辣湯専門店の新規開業数は21件だったが、7年は225件と10倍以上に増加。8年も1~3月までの3カ月で112件に上り、昨年の出店ラッシュの勢いが続いている。

リビューの担当者によると、昨年は中華ジャンルの新規開業数のうち麻辣湯専門店が約2割を占め、外食市場で存在感を高めているとし、「客が具材を選べるカスタマイズ性が時代のスタイルにも合っており一過性のブームではなくなりつつあるのでは」と分析する。

若者文化に詳しい芝浦工業大デザイン工学部の原田曜平教授(若者論)は、麻辣湯の人気の背景についてここ数年続く「中国大陸ブーム」があるとみる。中国の格安ファッションブランド「シーイン(SHEIN)」や人気キャラクター「ラブブ」など、中国のカルチャーが日本の若者の間で浸透し、原田教授は「韓流に代わり、若者の間で中国トレンドが主流になっている」と指摘。麻辣湯人気の要因として、具材や麺を自由に選べる「カスタマイズ性」や「ヘルシー志向」に加え、中国のインフルエンサーらによるSNSの影響も大きいとし、当初の女子大生らから中高生、中年層へ客層が広がっており、「(外食市場で)定着し始めているといえる」と話している。

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