クトゥルフ釣りゲーこと『DREDGE』の拡張DLC第2弾『The Iron Rig』を購入&プレイしました。
↑第1弾のDLC感想はこれ。
今回はDLCを入れるとタイトル画面が自動的に「COMPLETE EDITION」となり、すべてが始まった場所:ブラックストーン島の夕暮れが映る。
無印版タイトル画面、朝焼けのグレートマローの灯台と対を成すような構図に、「本当にこれで終わりなんだなあ」と一抹の寂しさを覚えます。
もっと永遠に続いてくれていいんですよ……。
ストーリークリア&追加魚図鑑コンプまでのプレイ時間は9時間。
本編のストーリークリア時間が10時間だったことを考えると、DLCとしては満足のいくボリュームかな。
ツイストランドとデビルズ・スパインの間にいつの間にか建築されていた掘削櫓:アイアン・リグ。
そこに船を走らせるとアイアンヘイブン社の社員や主任科学者と邂逅し、物資の提供を頼まれる。
で、納品を行うと汚染物質による海上汚染が進み、そこに新たな奇形種が湧くという流れ。
重油のような汚染物質に触れるとたちまち空は赤くなり、より不気味な化け物が襲いかかってくる。
このおどろおどろしい雰囲気の追加は、クトゥルフ・ホラーとして正当派だなと思います。
それに海上汚染って人間がやったことなのに人間では収拾が付けられない、取り返せない過ちという印象がすごく強い。
こんなにも暑くなってから地球温暖化、オゾン層の消失に喘ぐ今の日本の夏にぴったりだよ。
星の資源を食いつぶしながら滅びに向かうのはやはり人間なのだと、アイロン・リグの太い柱に近づく度に思い知らされるね。
追加された魚の数も69種と多く、今まで奇形種の無かった外来種や貝類にもすべて奇形種が存在するように。
ストーリーパートを終わらせた後、ちまちまと図鑑埋めしていく作業が毎度のことながら本~~~当に楽しくて!
センスのいいデザインと解説文が読めると分かっているから頑張ってコンプする気になれる。
クトゥルフ釣りゲーという唯一無二のゲームジャンルの中で、この「奇形」にこだわり抜いてくれたことが嬉しかったです。
個人的にお気に入りなのが、以下の新種。
【クラッチング・ノーチラス】
古代の嵐を生き延びてきた、忘れ去られた船乗りの手。今、ついに上陸を果たす。
ノーチラス(オウム貝)の奇形種。
この「船乗り」っていうのは、フランスのSF作家ジュール・ヴェルヌの小説『海底二万里』に出てくる潜水艦:ノーチラス号のクルー、もしくはネモ船長なんだろうな。
オウム貝から取られた船の名が、小説を経由して新たにまた貝の名になる。
その循環めいたところが好きです。
【アクシスマトロン】
口の中にある口。部屋の中にある部屋のように。婦人(マトロン)の抱擁は死を招く。
タリモンストゥルムの奇形種。
このタリモンストゥルムというのは古生代の海に生息していた古生物で、もちろん現存はしていない。
前述したノーチラスも約5億年前のオルドビス紀からいたそうだし、今回追加された魚達は海底の割れ目から蘇った古生物、というテーマなのかも。
「マトロンの抱擁は死を招く」という一文が洒落ていて素敵。
【形あるものの始祖】
大洪水に呑まれた理想。永劫の鎧によって守られたる者。
シーラカンスの奇形種。
本編の感想でも私はシーラカンスの説明文「過ぎ去った年月に打ちのめされた古代の巨魚。その瞳はゆっくりと旋回し、悲しげにあなたを見つめる」を好きだと挙げており、DLCでその続きが来たのにテンションが上がりました。
当時の私は「長い年月を生きながらえることは不幸であり、哀しみであると表現しているところがお気に入り」と言っているけど、この奇形種の説明文を知るとよりそれを強く実感します。
大洪水っていうのは旧約聖書『創世記』、ノアの方舟の洪水のことだと思うんだよね。
主が洪水で滅ぼすと決めた、堕落した命が永劫の鎧を纏ってまだ生きてる。
理想ではなくなった理想が歪んだまま息をしている姿は、やはり苦しみだと私は思います。
【苦悶を眠る鮫】
悪夢を探求する者。目覚めゆく深海の中で死を夢見る者。
オンデンザメの奇形種。
オンデンザメの解説文にある「400年を超えて生きることもある」に対するアンサーが「目覚めゆく深海の中で死を夢見る者」なのがたまらない!
私にとって対フィクションにおける死生観は、死は救済で、その救済の光から逸れた者にあるのは苦しみなんです。
生まれ落ちたのは罪、生き残ることは罰。
400年生きる魚でさえもそう感じていて欲しい、と願望を押し付ける心は浅ましくありつつ、でもこういう人間の感情をベースに組み立てているのがクトゥルフ・ホラーだとも思うよ。
長引く苦痛、囚われ続ける闇が怖いだけなんです。死ではなく。
でも何より良かったのは図鑑のラストナンバー、#230の新種ですよ!
DLCの展開は今作で終わりだと明言されているので、実質この230番が『DREDGE』という釣りゲームの締めになる。
その最後を飾るに相応しい釣果で、私はこれを釣り上げた時に心底感激しました。
「このゲームの制作者陣はやっぱり分かってるわ!外さない!」って、switchを放り投げながら唸りましたもん。
本編の時点でもすごく良かった結末に、新たなる終わりを書き足した、本当に素晴らしいものを見せてもらいました。
DLCの展開と共に広がる『DREDGE』の世界を追えた幸せを、この先ずっと忘れません。
以下、ストーリーと230番新種のネタバレ感想。
ネタバレ感想
科学者のクエストが最後まで終わった後、アイロン・リグの真下で「奇形の餌」を撒き続けると釣れる#230:???。
この230番が釣れた瞬間の衝撃は凄まじかったです。
さ、さっき狂って海に飛んだ科学者じゃん……。
描かれているアングルが違うので分かりづらいけど、主人公が魚を渡し続けた結果、深淵の闇に呑まれて異形化した科学者で間違いないはず。
その説明文も正気度が低下した状態の船倉内でなら読める。
【深みのもの】
黒き深淵の奥底では、大いなる虚ろから古の血が滲み出している。
そして悍ましい腐敗が世界の境界を侵食し続けているのだ。「それ」は次々と宿主を代えながら、身をよじり、のたうち回り、今や暗雲に覆われた≪天≫へと向かっていく。
寄生されたかりそめの肉体は、真の≪深淵≫に晒され――助かる術はない。
230番を釣り上げた時のサイズは1.90m。
この大柄な人間というサイズ感にも背筋をゾッとさせるものがあります。
彼が求める魚を渡す度、科学者がおかしくなっていくのも描かれてはいたんですよ。
(相変わらずこのゲームのキャラデザは正常ではない老人の姿を描くのが上手い)
だからこの男の行末もろくなものではないんだろうな、と。
でもまさかその結末が、主人公に釣られて終わりだとは思わなかったな~~!
230番は魚屋にも売れず、腐ることもない。
この「売れない」という仕掛けも上手いと思うよ。
230番は魚ではないからだろうし、こんなのを旅商人達に引き取らせる訳にもいかないし。
だからずっと手元にあり続ける。
主人公が捨てるか、化物に襲われて海に落としでもしない限り、永遠に。
『DREDGE』における船倉&保管庫の空きスペースってかなり貴重な資源なんですよ。
そこを半永久的に塞いでまで手元に置き続ける過ちを、これから主人公はどう見つめていくんだろう。
主人公、そして話を進めたプレイヤーに咎があるような終わり方を選んだ制作陣のセンスに脱帽です。
↓本編感想