総合型選抜(AO入試)の攻め方
みなさんこんにちは。現在早稲田大学に通う1年生のものです。
総合型選抜で地方の公立高校から第一志望の早稲田大学に入学しました。
受験からしばらく経ちますが、ふと世に出回る情報を見ていると、表層的な建前の話が多いと感じることがよくあります。 そこで、自分なりの感覚をもとに考えてきた本音の構造を記事にしてみました。
「個性重視」と言われて久しいこの入試ですが、合格者の経歴を覗いてみると、実態は明らかに”パターン化”しています。特に難関大ほどその傾向は顕著で、結局は「決まった実績の組み合わせ」でしかなかったりします。
しかし、世に出回る合格体験記や記事はポジショントーク的な要素が多く、「異分野×学問分野で合格! ○○オリンピックや大会が無くても受かる!」といった記事でも、よく読んでみると「でも長期留学はしてました、でも○○大会は出てました」と書いてあることが往々にしてあります。
いくら綺麗なことを書いた志望理由書を作って総合型選抜に挑もうとも、それを裏付けるパターン化された実績がなければ、そもそもその土俵に上がることすら難しくなってしまう、という現状を理解しなければいけません。
そこで、この記事では総合型選抜のリアルを感じてきた立場として、総合型選抜を構造に落とし込み、この入試方式をどう攻略すべきか、お伝えしていこうと思います。
0, 総合型選抜という土俵に上がるための基礎能力
総合型選抜は親ガチャ、環境ガチャとよく言われます。とはいえ、それ「だけ」で受かるほど簡単なものでもありません。
総合型は3層のピラミッド構造になっています。
一番のベースに親の環境・学校環境があり、その次に基礎学力+基礎3能力(後述)があり、そのうえで突出した成果や能力、があって難関を狙えるようになります。そのうち2階層目までと突出した成果の1部は、親による介入や課金によってある程度カバーが可能です。
特に重要なのは総合型に挑むための基礎的な3能力で、
・情報収集力
・自発行動力
・時間管理力
の3つは、必須な要件です。これらがないと、どんなに総合型への適性や才能があってもそれを活用しきれないので、本人のポテンシャル/親の介入/学校の支援によって必ず確保する必要があります。この記事でも3つは備わっている前提で話を進めていきます。
1,ポイント派とストーリー派
では、自分がまっさらな高校生の立場だとして、総合型選抜で良い大学に入ろうと思うのであればどうやって攻めるべきでしょうか。
まず最初の岐路として、総合型は大きく分けると2つの攻め方があると見ています。
「ポイント派」と「ストーリー派」です。
ポイント派は、パターン化された大会・プログラム・活動を攻めて着実に履歴書に書ける実績を増やし、志望理由や将来の展望の具体は後から固めていく手法です。
一方ストーリー派は、自分の中で先に軸を決めて、原体験・今の活動・将来の展望を1本の綺麗なストーリーになるように積み重ねていく手法です。
一般的に、総合型選抜の代表例としてピックアップされるのはストーリー派です。「環境問題をずっと調査し続けて合格」や「好きな○○を極めて合格」といった社会問題や身の回りの興味を探究するその手法は、まさに総合型選抜の理想形と言えるでしょう。
その影響もあり、総合型といえばこのアプローチをする学生の印象が強い方も多いかと思いますが、一方で「○○オリンピック」や「留学プログラム」といったポイント派の実績を稼いで順当に合格している人も数多く存在しています。
この2つは大学学部によっても求める人材像としてなんとなく傾向が分かれており、体感では慶應SFCや東北大はストーリー派寄り、東大や早稲田はポイント派寄り、という印象があります。
どちらを軸に受験を進めていくかはその人の適性や志望次第ですが、もし真っさらな高校生として受験を始めるのであればポイント派で攻めることをオススメします。
というのも、理由は様々ありますが特にストーリー派はリスクが高いというのがあります。
ストーリー派は基本的に、かなり狭いフィールドで戦わなければいけません。1つの分野に絞った場合、大会やプログラムといった実力を証明する手段も一気に幅が狭まりますし、「一部の大学とはすごくマッチしているけど、それ以外では微妙かもしれない」という経歴ができることもあります。
もちろん、そのまま志望している大学とマッチングできれば理想的ですが、仮に特定大学とのマッチングに失敗した場合、一気に難易度の低い大学に行かざるを得なくなることもあり得ます。本人のストーリーに合致した大学に行ける、という点では確かに望ましい形なのですが、受験戦略としてはあまり良いものとは言えません。
更にいうと、ストーリー派でついた1分野にこだわる探究活動の「癖」はなかなか消えません。よく言えば大学入学後も軸に沿って理想的なルートを歩めるのですが、悪く言うとその癖が「呪い」となり、真面目な子ほど自由な大学生活を呪縛してしまうリスクもあります。
17〜18歳頃の興味は案外簡単に移り変わりやすいもので、まだまだ沢山の分野からインプットをしていく時期です。それでも自分で決めた1つの軸を貫こうという自信がある人以外は、“総合型の理想”とされるストーリー派のルートはあまり進まない方が良いのでは、と思っています。
その点ポイント派は潰しが効きやすいので、悪く言えば打算的で薄っぺらいやり方とも言えますが、「受験でいい結果を出すこと」を目的にするうえでは最適な手法です。
そもそも受験を意識せずとも勝手に”美しい探究ストーリー”を作れる生徒は全体の1%もいません。近年の入試形態はそれを鑑みず大人の事情と併せてとにかく枠を増やしている側面があるので、制度自体の歪みと言えるでしょう。ポイントを重ねて経験していくうちに興味を増すこともあるので、自信をもってポイント派に回って良いかと思います。
2,実績の区分
最初の分け方は理解したけど、実際に総合型に向けて動き始める際に何をすればいいのか?という話ですが、これも大まかにパターン化されたやり方があります。
世の中には細かな高校生向けの探究プログラムや高校生向けの大会が溢れていますが、その中でも基本的に王道とされる大会・プログラム・活動があるので、その大枠を掴みましょう。
例えば文系を目指す場合、明らかに再現性の低い事例(芸能人など)を除けば、実績になる活動は以下のような5分野にほぼ分類できます。(筆者が文系なので今回は文系に絞ってますが、理系verもいつか書きます)
①真面目系(模擬国連、スピコン、平和大使、生徒会、部活など)
②大会系(ビジコン、ピッチ、科オリ、各種コンテストなど)
③国際系(長期/短期留学、国際系プログラムなど)
④意識高い系(NPO起業、学生団体、イベント主催、ボランティアなど)
⑤資格・研究系(簿記、人文・社会科学系研究など)
目指す学部によって方針は異なりますが、このうちいくつかの分野をピックアップして実績を語れるようになると、多くの大学学部を狙えるようになるかと思います。大半の上位層の合格者はこのうち2~3個以上を掛け合わせた実績を持っている印象です。
3,「労働所得」と「金融所得」
そして、これらの実績の中にも役割に応じて更に分類した2種類があり、実績を資産になぞらえた上でそれぞれ「労働所得型」と「金融所得型」と呼称しています。
・労働所得型は、0から積み上げて成果を得るもの。科学オリンピック系の大会やコンテスト、イベント主催や資格など。
・金融所得型は、これまでの積み上げを活用して新たな成果を得るもの。国際系プログラムや○○大使、一部大会など。
労働所得型は成果を得るまでに明確な努力が必要ですが、金融所得型は事前に労働所得型で実績を積み重ねていると、その資産を運用する形でさらなる実績を作ることができます。
つまり活動を始めたばかりの状態から金融所得(選考の伴う留学やボランティアプログラムなど)を取りに行くのは時間コストの割に採用率/達成率が低いので、最初に労働所得(大会、資格など)を得たうえで後から金融所得を取りに行くことで、これまでの実績が新たな実績を稼いでくれる構造を作ることができ、より効率的に積み上げをしていける、という訳です。
特に労働所得型は、大会や資格等に向けて明確な基準の分からない努力を自主的に続けなければいけません。一方で金融所得型は採用/決定後の活動自体はほぼ受け身でできるので、負担も少なく高2~高3にかけて大変になる受験勉強と並行させやすいです。(”比較的”負担が少ないだけなので、時間的リソース自体は結構かかります。)
4,資産の運用
少し抽象的な話が続いたので、具体例で考えてみましょう。まずは東大レベルのかなり優秀な例です。例えば、各種大会に出場し、努力の末全国大会優勝や国際大会代表といった明確な強い労働所得型の成果を得たとしましょう。
この場合、この「ポイント」の実績1つを活用して、Stanford-e-Japanプログラム(総合型上位層の金融所得型代表格)等の強い金融所得をゲットできると、既存の実績が更に1.5倍くらい強いものになり、入試に向けてより高い合格可能性で挑めます。
・高校模擬国連国際大会出場(①、労働所得型)
・途上国ボランティア(③、金融所得型)
・Stanford-e-Japanプログラム(③、金融所得型)
という経歴になったとします。
この経歴自体は東大推薦(法・後期教養)が狙えるとんでもなく強い経歴に見えます。しかしよく分解してみると、本人が主体的な努力をしているのは「模擬国連国際大会出場」の部分が主であり、このハードルを突破できれば、その後の「途上国ボランティア」や「Stanford-e-Japanプログラム」といった部分は経歴が経歴を呼び、比較的受け身で金融所得型の活動として、雪だるま式に付随していることが分かります。
さらに、先述のポイント派のように「とにかく実績稼ぎを目的に活動したい」と考えていた生徒でも、労働所得→金融所得の流れを踏襲すると自然に活動が”点”から”線”になり、後からストーリーが書きやすくなる、というのも大きなメリットです。
5,資産の作り方
とはいえ、今の事例はすでに強い実績を持っている生徒の話です。総合型のスタートラインに立った段階では、「そもそも最初の実績をどう作ろう」や、「小さい実績しかまだないけどどう増やそう」といった考えで止まっているのが殆どかと思います。そこで、新たな事例を考えてみましょう。
例えば高校1年~2年初頭にかけて学校の自主ボランティア活動の一環で
「商店街でご老人のためにイベントを開催した」
生徒がいたとします。おそらくこの経歴でも書類には記載できて、どこかに受かることはできるでしょう。
しかし、この成果だけで旧帝早慶レベルの総合型選抜や推薦入試に確実に受かりに行くのは厳しそうだ、というのは直感的に理解できるでしょうか。仮に
・商店街でご老人のためにイベントを開催した
・英検2級
・ボランティア部
という実績で総合型を受けようとした場合、地方国公立・日東駒専レベルが妥当なライン、挑戦圏でMARCHレベルになるのかと思います。
そこで、ここから実績を深めていき
・「地域の繋がりを再構築」するための学生団体(小規模)を設立(高2春~夏)
→同様のイベントを何度か開催
・マイプロジェクトアワード/ボランティアアワード/各種ビジコン等に出場(高2夏~冬)
→地方大会表彰/準決勝進出レベルまで進出
→地元新聞/ラジオの取材
・トビタテ留学JAPAN応募(高2冬~高3夏)
→採用、「優しいまちづくりを探究するために北欧留学(2週間)」
といった経歴になった場合どうでしょうか。
かなり強そうな実績に代わっていることがわかるでしょうか。
恐らくこのレベルまで引き上げるとMARCHレベルは現実的になり、早慶や旧帝も視野に入ってくるかと思います。
ここで重要なのは、実績を積む前後で本人の能力に大きな違いはないという点です。適切な動き方を知り、テンプレートに沿って動いたかに差が生まれています。個々の実績自体も難しそうに見えるかもしれませんが、よく見てみると
地域の課題を解決するための学生団体(小規模)を設立(④労働所得型)
→学生団体は自分で名乗れば作れますし、手続きも何もいりません。受験期になれば活動を停止してそのままフェードアウトする学生団体も数多くあります。
マイプロジェクトアワード/ボランティアアワード/各種ビジコン等に出場(②労働所得/金融所得型)
→各種大会は全国レベルだとかなり高いレベルが要求されますが、地方レベル・予選突破レベルの場合、相手が何を求めるか?をしっかり洞察したうえで真面目に取り組めば、予選レベルを突破すること自体は高い確率でできるかと思います。
地元新聞/ラジオの取材(金融所得型)
→学校や関係者のコネがものをいうところですが、究極自分から電話して取材依頼をすれば小規模なメディアでは快諾してくれることが多いです。
トビタテ留学JAPAN応募(③金融所得型)→文科省の留学プログラム
トビタテは金融所得型なので、ここまでの積み重ねをしっかり固めれば受かる可能性は十分あるかと思います。厳しそうであればトビタテ以外の留学プログラムという選択肢もアリです。(お金が潤沢なら)
といった形で、活動自体はそこまで再現性の低いことをしているわけではないものの、先述の課外活動②③④系+労働所得→金融所得の型に沿って動くだけで一気にレベル感を上げることができている、ということを理解頂ければと思います。
ちなみに、大会やプログラムの情報はまとめサイト等に沢山書かれていますが、玉石混交なのでしっかり見極めましょう。オススメは、合格体験記等にしれっと書かれている大会やプログラムに狙いを定めることです。
6,これはやっとけ!というもの
最後に、総合型の受験生にほぼ共通しているであろう、これはやっとけ!という点があるので簡潔にお伝えします。
・英検
特に文系向けですが、非常にお得です。よく言われていることなので言うまでもないかと思いますが、英検は労働所得型の中でもかなり再現度の高い実績で、総合型でほぼ必ず使える+一般受験にも転用できる最強の資格です。取らないという選択肢は無いです。
・なるべく高い評定平均を取る
取れるのであれば取りましょう。高校の環境によって基準が大幅に異なるのでなんとも言えませんが、4.0を超えておくと一気に出願できるラインが広がるかと思います。
・給付型奨学金を調べる(合格者)
見事総合型で合格された方、もしくは総合型にはギリギリ届かなかったものの一般受験で挽回して合格された方は、給付型奨学金(主に民間)を調べましょう。民間財団の給付型奨学金は採用者数がかなり限られていますが、選抜手法が総合型選抜とかなり似ているので、大半の受験生より明らかに有利な立場で応募ができます。
7,まとめ
・まずは基礎的な能力を確保しよう
・自分がストーリ派かポイント派かを見極めよう
・自分に合った活動や大会を見つけよう
・労働所得→金融所得の流れを目指そう
今回は受験に”勝つこと”を目的化して、少し冷淡に捉えてきました。しかし、長い人生を捉えたときに大事なことは「自分が楽しいと思えること」をやることです。というか、楽しくないことはいくら正解を知っていても継続できないと思います。
一方で、良い結果を得るためには型に沿った頑張りをしないといけないこともまた事実で、それを理解した上で努力をしていくべきかと思います。
もし何か受験生や関係者で質問等々ある方は、XのDMを開けてあるのでぜひ気軽に連絡してくださいね。


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