第8話「冒険者たち」

「おおーい、姉御! 来てくれ!」

「はやくはやくー!」


 ひぇぇえ?!

 な、なになに!?


「なんなのー?」


 突然現れた同じ顔をした双子の男二人に、弓にボウガンにと向けられて、思わずホールドアップ両手をあげた状態になる。


「どうしたんだい? こっちは負傷者がいるんだから、あんまし先に──……って、なんだこりゃ?」


 次いでガサガサと倒木をかき分けてやってきたのは、男二人よりも頭一つ突き抜けた、ビキニアーマーを着た巨漢の女戦士であった。

 その背後には、片足を引きずった少年もいる。


「──ひーん。何だか知らないけど助けてー」


 よ、良かった。

 女の人がいた……。コイツ等強盗かと思ったよー。


「ん? なんだ、コイツ喋ったぞ?」

「なに? モンスターじゃ……」


 あーん?!


「誰がモンスターか!」

「「むむ!」」


 ひぇ!

 ……さ、さーせん。


 失礼なことを言う双子を睨むと、武器をもったまま殺気を向けられて思わず縮みあがる。


「おいおい、待ちな! そっち・・・は魔物じゃないよ! よく見ろ、人だよ」


「え? 人……?」

「あ、ほんとだ──ゴブリンかと」


 女の人に静止されてようやくこっちに気づいたのか、弓にボウガンを下してくれた。

 しかし、何なのいきなり?


 つーか、誰がゴブリンか、殺すぞ!


「いや、驚いたね……まさか、こんな山奥に人と出会うなんてね」

「こ、こっちも驚いてますよ」


 まさかいきなり武器を向けられるなんて予想だにしていなかったもん。


「……よっと」


 とりあえず、話にならないとまずいので、砲塔から降りる。

 すると、その様子を呆気に取られて見ている男たち。


「な、なによ?」


「ホントだ。人間だ。……アイアンタートルに乗ったゴブリンの変種かと思ったぜ」

「しかも、子供だぞ」


 子供…………あ、私?!


「いや、20代なんですけど」

「え?」「うそ」


 いや、嘘つくかい!

 鯖読みしたくないから『20代』で通してるけどね!


「こらこら、女の子に失礼なこと言うんじゃないよ。すまないね、ウチのもんが」

「いーえー」


 チハたんから降りてきた私に軽く謝罪するのは、色々おっきな女の人。


「はは、そう怒るなって。コイツ等もデリカシーはないが悪気はないのさ」

「そーですか」


 まー、若く見られて悪い気はしない。


「──で、お前さん、何者だい? ここでなにを?」


 え?

 何って言うか…………。


「な、なんでしょうね?」

「は?」


 ……いや、だって。


 こっちが聞きたいくらいだよー。

 気が付いたら、この山に捨てられてたんだもん。


「ふーん? 理由わけありかい? 荷車一台に、女の子が一人。普通じゃないね」

「はぁ、まぁ。そんな感じです」


 そりゃ誰にだって理由わけはあるさ。

 そんで、私にはわけ理由しかねーわ。


 そして、それを正直にいっても、多分、余計にわけがわからんと思うのよねー。


「ま、そういうことなら詳しいことは聞かないよ。それが冒険者の流儀ってもんだ」


 ほっ。

 よかった。詳細聞かれたらどうしようかと思ったよー。

 それに、この人達って、


「あー、やっぱり冒険者さんなんですね」


 恰好からしてそうじゃないかとは思ったけど。

 ファンタジー世界の定番だし。


「そりゃそうさ。ここは魔の山脈だよ?……それよりも、アンタ。一人でガルダを仕留めるとは大した腕だね? うちにスカウトしたいくらいだよ──わははは!」

「は、はは……」


 一人っていうか、一台かな。

 ま、どっちでもいいや。


「おっと、名乗るのを忘れてたね。アタシの名はドミトリ。冒険者クラン『赤い旋風』のリーダーをしてる。よろしくな」

「あ。どーも。長瀬かおりです。長いに、川の瀬の…………なんでもないです、ただの長瀬です」


 何言ってんだ私。


「ん? ナガセな。──よろしく」


 そう言ってゴッツい手で私の手を握ってブンブンと大きく振るドミトリさん。

 最初の印象はちょっと怖かったけど、悪い人ではなさそうだ。


「……それで、紹介ついでなんだが、ちょっと頼みがあるんだけど、いいかい?」

「え? はぁ、私でできることなら」


 いきなりなんだろ?

 初対面だし、ちょっと身構えちゃうなー。


「なに、そんな難しいことじゃない。……そのガルダだが、譲ってもらえないか?」

「え?……これを?」


 死体だよ?


「あぁ、見ての通り困窮しててね。ちょっとでも精のつくものが食べたいのさ」


 はい?

 精がつくものって……。


「ええーーーー?! た、食べるんですか?!」


 これを?!

 そのまま??


「え、ええっとー……」


 ──チラリッ。


 見るからに不味そうなデカい鳥。


 ぶっちゃけ、打ち捨てていくつもりだったから、あげてもいいんだけど──うーん。


 これ、食べるのぉ?


「あ! なにも、もちろんただでとは言わないさ。皮や骨なんかの素材は持って行ってもらっていいし、こっちは肉だけでいい。それを道中見つけたものと交換させてくれないか。……なーに、相場より高くは買わせてもらうつもりだよ」

「なるほどー」


 ふむ。

 これは渡りに船かもしれない。


 ちょうど町までの案内も欲しかったし、お金や魔石も欲しかったんだよね。


「わかりました。お譲りします」

「おぉ、本当かい。助かるよ──代わりにこちらが出せるものは、」


 そう言って鞄をガサガサと漁りだしたドミトリさんであったが、それを押しとどめる。


「まぁまぁ、それよりも皆さん、困窮してらっしゃるんですよね?」

「え? あぁ、まーね。恥ずかしい話、三日ほど、ろくに食べてない」


 グーギュルルル……。


 そういうなり、4人全員が腹を鳴らす。

 ……なるほど、だからあんなに急いで来たわけか。


「ならよかった。ガルダのお肉よりもいい物をあげるのでそれと交換でどうでしょうか?」

「え?」


 うん。


 どうせなら、うんと恩を売っておこう。

 少なくとも、ガルダの肉よりは喜んでもらえるはずだ。


「というわけで、ちょっとどいててくださーい」

「お、おい。何をするつもり──って、うぉぉおおい?」



  はい、ドーーーーーーーーン!!



「な、

 「な、

  「な、

   「「「「なんじゃこりゃーーーーー!」」」」


 わっはっは。

 ガソリンスタンドであーーーーる!


「まぁまぁ、さぁさぁ、皆さん。どうぞこちらに」


 腰を抜かさんばかりに驚いているドミトリさん以下をスタンドの中に案内する。


 いや、誘っといてなんだけど、

 すげー違和感しかないね!


 馴染みのガソリンスタンドに、ファンタジー装備の男女がぞろぞろと──うーん、SNSにアップしたいね。


 まぁ、AIって言われておしまいか。


「ほ、ほぇー。いきなり要塞が出現したよ」


 呆けた顔のドミトリさん。


「要塞っていうか、私のジョブです。まぁ、その辺でくつろいでてください」

「寛ぐも何も──こんなジョブ、聞いたこと……あ、ソファーふっかふか」


 案内した先の、事務室にある来客用ソファーに感動しているドミトリさん。

 それ、本社に無理言って買って貰ったんだよねー。いいでしょー。


 その他の男どもも、照明の明るさに驚いていたり、

 空調完備の内部の快適さに感動していたり、

 ウォーターサーバーから出る冷たい水に目をむいていたりと大忙しだ。


「さて、お腹が空いているということですが、何食べます?」


「え? 何って……肉でいいよ」

「俺も」

「俺も」

「僕も」


 皆で肉かー。

 まぁいいか。


 えっと、肉、肉。あ、これかな。


「それじゃ、これをどーぞ」


 ピー♪

 ガコンッ。


 軽快な音とともに出てきたのだ、ホットスナック自販機のチキンナゲットだ。

 すでに熱々なので、すぐ食べられます。

 そして、なんとお値段300円で5個個入りだよ。あと、フライドチキンも追加しておく。


 合計、4人前で2400円なり~。


「ええ? も、もう?!」

「うわ、あったかい!」

「それにこれってスパイスか?!」


 ガブッ。


「や、やわらかーい♪」


 さっそくかぶりついた少年が顔をほころばせている。


「マジか! どれ、アタシも──……っっ」

「「ッ?!」」


 負けじとかぶりついたドミトリさん以下も目を大きく見開くと、次の瞬間、ハゲタカのようにガツガツを食いつくしていく。


「う、うめっぇえ!」

「しょっぺー!」

「脂がぁ!」

「ジューシー!」


 わはははは!

 そうだろうそうだろう。


 それ以降は、全員、ホットスナックをガツガツ食うのに夢中で一言も発することなく、ほどなくして指を口周りをベッタベタにしてついにしゃがみこんでしまうのであった。


 高速のパーキングよったら、ついつい買っちゃう魅力があるよね!!


 なので、彼女等の気持ちはよーーーーく分かる。

 というわけで、餌付け開始じゃー!!

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