左胸を火傷(心臓が焦げ付く臭いがした)(槍弓)
UBW放送おめでとう!
追記:0時に投稿したくて、物凄く急いで仕上げてしまったw
書き始めたのがそもそも一時間前だから仕方ないね!
再びFateに戻ってまいりました!祝!UBW放送おめでとうございます!!
というわけで、五次では一番好きな槍弓でお祝いを…
アニメでもちょうど初対面だったし、調度いいよね!
こっちはもうなんか、平和ボケしちゃってるけどw
舞台設定考えてなかったけど、ホロウかな?もうご自由に想像していただければ…
お察しの通り、相互片思いが大好きです。でもまぁ、弓が槍に敵うわけないけどな!
また気が向いた時にぼちぼち書いていこうと思います~
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左胸を火傷(心臓が焦げ付く臭いがした)
「――人が突然変わるのって、一体何でだと思う…?」
麗らかな午後、柔らかな日差し、穏やかな温度、微温湯に浸かったかのような脆弱な平穏。おおよそ、そんなものとは無縁だったはずで。
今の不可思議なその状況を、まるで当たり前と感じるようになったのはいつだったか。血生臭い戦場から、かけ離れた歪な日常。
「…急に何だ。変わる、といっても様々な変わり様があるから、一概にこうとは言えんだろう」
「あー…」
似つかわしくない眩い日差しを受けて、彼はまるで作業のように洗濯物を畳む。その不釣り合いな場面も見慣れてしまった。
その横で、別段何をするでもなく。赤い外套を脱ぎ棄てて、ラフな私服に包む彼をまじまじと観察する。そうして出てきた、先ほどの言葉。
「突然――綺麗になるのって、何でだろうなァ…」
何てことはない昼下がり。ガキ共は学び舎へ、今この衛宮邸にはアーチャーと俺しかいない。けれど、刃を合わせるわけでもない。
まるで主婦のように黙々と洗濯物を畳み続ける彼の横に居座る。いつもなら、憎たらしいまでの嫌味の応酬でもしていたかもしれない。
だが天候のせいか、彼は酷く穏やかだ。作業の合間に、こちらに意識をちらりと向けて。無視せず、元来のお人好しっぷりを醸し出し。
だからこちらも、変なちょっかいをかけるのを躊躇われる。ふと思った疑問を口にすれば、彼は受け流すでもなく。小さな微笑みすら浮かべてくれた。
「君がそんな事に気付かないとは珍しい」
「あ…?」
どきりと、一瞬鼓動が高鳴る。いつもは敵を、それこそ言葉通り射抜くことしかない弓兵の眼が。穏やかに俺を映しているという事実。
動揺したのを悟られないよう、至って平然と返せば。やはり彼は、馬鹿にした風でもなく。するりと、当然のように真理を音に乗せる。
「そんなもの――その人物が、恋をしたから…という事実で、一気に解決するとは思わんかね…?」
「――あぁ、なるほど…俺とした事が、見落としていた」
それこそが回答だと。すとん、胸に落ちた。腑に落ちた、当然だ。そんな感覚は、久々過ぎて忘れていたのだ。なんて呆気ない答え。
当然だ、そんなもの。間違いない。唯一無二の真実。人は恋をすれば変わる。美しく、綺麗に変化する。そんなこと、とうの昔に知っていたはずなのに。
「セイバーが美しくなったのは、衛宮士郎に恋をしたから。キャスターが美しくなったのは、そのマスターに恋をしたか――ッ、」
「――…ッ、」
淡々と事実を紡ぐ彼の言葉は、そうして塞がれる。穏やかだった会話は一瞬にして霧散。彼の両腕を衝動のまま掴み、視界を反転させる。
押し倒すというよりは、尋問するような檻。平和ボケしていたわけではない。だが、不意を突けたのは彼の油断あってこそだろう。
それだけ、この平和に溺れていたのかもしれない。もしくは、自分を少しくらいは信頼してくれていたか…だが今は、それこそどうだっていい。
「誰だ」
「っ、は?」
「テメェ――誰を思ってやがる」
「な、んのことだね…?それよりも、これは一体どういうこ」
ぎらりと光る眼が、アーチャーを射抜いた。思わず言葉を失う程の眼力を、今の自分は発しているかもしれない。殺気にも似たような、視線を。
真紅の瞳は、それこそ心臓を穿つように真っ直ぐ注がれる。その状況に、わけが分からないとアーチャーは狼狽えるばかりで。
「テメェだ、テメェ…今もそうだ。いつからだ。んな穏やかに笑うようになりやがって…一段と魂が綺麗になりやがって…つまりは、そういうことだろ」
「は、はぁ!?し、支離滅裂で理解できん…!もっと端的に話せ!」
奥歯を噛みしめて、しらばっくれるつもりかと睨み付ける。両手を塞ぐ力が強くなり、思わず傷痕を残してしまいそうだった。
傷付けたいわけじゃない、あぁでも傷痕は残したいかもしれない。既にその心臓に、消えない傷痕を残していることを槍兵は知らない。
本能の赴くまま、ごちゃごちゃ考えるのは性に合わない。思ったままを、衝動的に。まるで獲物に噛みつくように、咆える。
「誰を思って、んな綺麗になりやがったんだよ、アーチャー…!!」
今にも食いつかんばかりの勢いで、吐き出されたのは。なんて甘い言葉。心臓を溶かしてしまうかのような、甘い告白。
だって、気付いてしまったのだ。彼がいつからか、急に綺麗になったこと。ずっとずっと、目で追ってきたから、分かってしまうのだ。
以前は、いけ好かない奴だと思っていた。皮肉屋で、現実主義で、いつも難しい顔をしていて。追っている内に、惹かれるようになったのはいつからか。
だから分かるのだ。以前とは違うこと、彼が変わったこと。ずっとずっと、見ていた自分だから分かる。だからこそ、憎くて堪らないのだ。
「俺以外の、一体誰を思ってそんな顔をしやがるんだ…!」
「――…」
らしくない、醜い嫉妬だ。まだ自分の物にしたわけでもないのに。だが決めたのだ。この美しく歪な在り方の魂を、大切にすると決めたから。
見つめ合い、そうして暫しの無言。殺気に近い視線を向けられて、わけが分からないだろう。だが、その時、弓兵は――
「――フ」
ありえない事に、微笑んだのだ。その笑顔に、ぎょっと目を見開いてしまう。呼吸を忘れてしまうほどの衝撃だった。
だってその笑みは、大胆不敵でありながら、なんともまぁ…はにかむような、満足したような。酷く満ち足りて、幸福そのものの笑みだったから。
「――…、…」
「戦闘中でもあるまいに、君のそんな必死な姿は、稀に見る珍しさだな…くくっ」
「…るせぇ、てめぇ相手に、こちとら余裕なんかねぇんだ」
彼は分かっていない。まるで理解していない。自分がこんな、厄介な英霊を虜にしているという事実に。あぁそうだ、俺は彼に、溺れている。
告げてはいないけれど、何度正面から告げようと。彼は理解しないし、納得もしないだろう。だから、じわじわ包囲していく算段だった。
長期戦だということはとっくに覚悟済み。だがそれが、まさか横恋慕になるだなんて。そんなみっともない様になるとは、思ってもみなかった。
「…君のその眼からしても、明らかなのか?…私の変化は」
「あぁ、明らかだ。悔しいくらいに――相手を殺したくなるくらいには」
「それは止めてくれたまえ。いくら私でも、守り切れるかどうか分からない」
「ッ」
笑みはなんて穏やか。押し倒され、拘束されているというのに。抵抗すらしない。それだけ、その相手に心を許しているというのか。
ぎり、奥歯を噛みしめる。相手は誰だ、嬢ちゃんか、それとも騎士王か…両手を握る力が強まる。その痛みにすら、彼は息を零し微笑んで。
「――ならば、いい」
「あ?」
「君に、その変化を分かってもらえたのなら…それで十分だ」
「…おい、喧嘩売ってんのか、テメェ」
「いや?素直な感想だ」
さらり、珍しく素直にそんな事を言うものだから。毒気が抜かれてしまった。大きく深い溜息を吐いて、脱力して覆い被さる。
ある意味今は、役得な体勢だ。だがそれに、喜ぶことすらできやしない。だが今は、悔しいことに対抗策が見当たらない。
「…テメェが誰を、どんだけ思おうとな…俺は諦めねぇぞ。生憎、他人に譲ってやるような生温さは皆無だ。厄介なのに惚れられたと思って諦めな」
「…それこそ、君が諦めたまえ。私はそんな…君が欲しがるような、美しいものではない」
「自虐は聞く耳持たねぇぞ。俺が美しいと思ったことに、意義は認めねぇよ」
正面切って、真っ直ぐに思いを言葉にしたことはないけれど。彼はもう分かっている。察しているだろう。そして、気付かないふりをしている。
受け入れることもせず、拒否することもせず。その優しさが、命取りだといつか知ればいい。この好意がそんな生温いものでないと、身を以って知れ。
呆れたように溜息を零すのは、今度は弓兵の方だった。自分が抵抗しない理由を、この槍兵は分かっているのだろうかと。そんな事を思いながら。
(…そう、これでいい)
心中でこっそり、息を吐く。思いは、一方通行でいい。どうせこの瞬間も、座に戻るまでの儚い一時だ。ならば願いは、叶わなくていい。
彼が今だけでも、覚えていてくれれば。私が変わった事、気付いてくれたのなら。それ以上の幸福はないだろう。それだけで、十分過ぎるくらい幸せだ。
(私が綺麗になったとするならば、それはそう――君のせいだ、ランサー)
告げる事のない思いを、胸中にひっそりと締まって、微笑む。そうしてすぐに、弓兵はいつもの姿を取り戻すだろう。
いつまでひっついているのだ、と容赦ない蹴りを食らわせて、くだらない喧嘩になるまで。そう時間は必要ない。不意にこちらが突いてやればいい。
さて、いつまでこの体勢を甘受していいものかと。少しばかり瞳を瞑って溺れてしまう前に、彼は息を吸う。そしていつもの、皮肉な彼に戻るのだ。