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腐向け)二人は青い春の中/Novel by 疾風

腐向け)二人は青い春の中

9,087 character(s)18 mins

先日、ツイッターでお題が出たので書いてみた、ヴラロビ、腐向けだけどR-18でないはず(゚д゚) 表紙絵は笹塚さんが作ってくれました、ありがとー笹塚さん! さすがのセンス!!!

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 ロビンフッドが周囲を偵察する、その動きは手慣れたものだ。
 その背をヴラド三世は静かに観察する、王侯貴族らしい風情で。
 見上げる空は青く澄み渡り、森と思われる周囲の葉は薄く色付き、小さな花も揺れている。
 平和な風景のようで、しかし、異質だと、サーヴァントの感覚が囁く。
「やっぱ、非現実世界っすわ」
 戻ってきたロビンフッドは両手にそれぞれ葉を持ち、ヴラド三世に差し出した。
 形の違うそれぞれの葉は、同じように半分に裂けられている。
「葉が違えば匂いも違うってもんですが、コレは同じ匂いなんすよ。で、こっち葉は――」
 足元の葉を引き抜き、差し出す。
「違う匂い。木の葉、地の葉、それぞれ匂いが違うが、木の葉は同じ匂いってなれば、ここは非現実世界。擬似的空間の可能性が高いっすね」
 ヴラド三世は差し出された三種の葉を受取り、鼻を鳴らす。
「ならばここはカルデアの――シュミレーターか?」
 ヴラド三世の疑問にロビンフッドはわずかに思考する。
「コッチの記憶にあるのは、カルデアの割り当て部屋で寝転がって眼を瞑った、オタクは?」
 その質問にヴラド三世は眼を瞑り、しばし考える。
「カルデアの自室にてレース糸を魔力で作り、編み始めたー-だ」
「なんでそんな事をしてるんすか?」
 ロビンフッドの呆れたような声に、ヴラド三世は真面目に答える。
「貴様の夜着用だ」
「そんな恐ろしいモノを作ろうとしなくて良いっすから!!」
 ロビンフッドの叫びに驚いたように青い鳥がフードから飛び出す。
「マスターに使いましょうよ! それかマシュの嬢ちゃんに!」
 懇願するような叫びにヴラド三世は鷹揚に頷く。
「三人分を編むとしよう」
「何故にその結論!?」
 ロビンフッドの呆れた叫びに対し、ヴラド三世は涼しい顔だ。
「色も柄も違いで作るのであれば、問題なかろう。貴様は春の色としよう」
「それはそれでアルんすけど。いや、今はそんな話をしている場合じゃないっすね」
 ロビンフッドは頭を振り、気分を立て直す。
「現状としては双方、カルデアのマスターと契約しているって記憶が一致しているのが大事っすよ、異常状態だとそれも認識できない事が多々あるっすから」
「貴様が余の情人である記憶を失うと?」
 怒気を孕んだヴラド三世の声に、ロビンフッドは思わず頭を抱える。
「失うってよりも封じられるってやつっすよ、まあ、マスターがエイヤってどうにかしてくれるので最終的に帳尻が合いますから、オタクは気にしないでくださいや」
 ヴラド三世の怒気が気配にも混ざり始め、青い鳥は慌ててロビンフッドのフードに避難する。
「それより、マスターですよ、マスター。契約は維持されてるってのに、魔力供給がされてませんから、あっちの非常事態にコッチが巻き込まれたって考えるべきでしょう」
 ロビンフッドの言葉に、ヴラド三世の意識と怒気が周囲に向けられる。
「いかに心が強きマスターであろうと、その身は脆弱、早急に保護せねば」
 悠然とした態度が変わり、焦りが浮かぶ。
「そっすね、コッチは魔力供給が無くてもどうにか出来ますけど、オタクはちょい動くだけで消耗しますし、手早く合流を目指すって方針でヨロシ?」
「所在がわかるのか?」
 確認の言葉にロビンフッドは腕を組み、眼を閉じ、しばし考える。
「確信は無いっすけど、なんとなーくってのは……で、良いです?」
 その言葉にヴラド三世は頷き、手に槍を生み出す動きをする――が、その手をロビンフッドが止めた。
「武器が無いと不安ってのは判るっすけど、魔力を消耗するので止めた方が良いっすよ」
「余に無手で戦えと――?」
 ヴラド三世の機嫌が直下降するが、ロビンフッドは気にしない――よくある事だからだ。
「オタク、オレより敵が気づくのが早いって言うんすか?」
「それからでも遅くない、確かに」
 ヴラド三世は鷹揚に頷くと、槍を生み出すのを止める。
「んじゃ、幸運頼りっすけど、こっちかなーって方向に行きますか」
 ロビンフッドの歩みに2歩遅れ、ヴラド三世が続く。
 取りあえずの目標はマスターとの合流だ。

     ●

 周囲を確認しつつ歩くロビンフッドが、がっくりと肩を落とした。
 春の森と表現できそうな風情がある風景だが、森を知る二人にはただただ異質な空間にしか見えない。
「あー、これ、完全に擬似空間っすわー。擬似空間を生み出す系のナンカにマスターが捕まったって方向っすかねー」
 ロビンフッドの言葉に、ヴラド三世が怒気を強める。
「カルデアから誘拐されたのか?」
「どーでしょうかねー、夢で捕まり、起きなかったとかも過去に実例があるっすし――夢を見ないはずのサーヴァントが夢でマスターに会ったとか言ってましたし……」
「あの者は災禍にすら好かれるからな」
 呆れたようで、しかし、怒気を含む声がヴラド三世の苛立ちを示す。
「で、仲間に引き込むと、今頃、誑しこんでると良いんですけど、誑し込まれたのが暴走して捕まったとかだと悲劇っすからねー」
 ロビンフッドは軽口を叩きながらも周囲に対する警戒を怠らない。
「んー、なんか居るっすね」
「情報を持つ者か?」
「どうでしょう」
 ロビンフッドの歩みが止まり、ヴラド三世はその横に立つ。
「森の木々が途切れた先、なんか居るっすね、ちょい見てみますわ」
 その言葉と同時にロビンフッドの姿が消えた。
 宝具『貌の無い王』の効果だ。
 残されたヴラド三世はただ立ち、帰還を待つ。
 その耳に木々が風に揺れる音が届くが、一定の周期で音が繰り返されている事に気づけば、注意を向けるべき物は別だろうーーと、ヴラド三世は身動きひとつせず、音と気配を探る。
「戻ったっすよ」
 先に声があり、姿が現れると同時にロビンフッドの気配が現れる。
「敵か?」
「敵っすねー、オートマタでしたわ、判る範囲で30体くらいですかね」
「糧にはならぬか」
 ヴラド三世の言葉にロビンフッドが苦笑いを浮かべる。
「動力を奪えばまぁ、それなりに?」
「心臓や血ほどの魔力は無いぞ」
 訝しげな声にロビンフッドはにやりと笑う。
「森に罠を仕掛けて、嵌めて、半壊した所で動力を奪えば、オタクの消費魔力より奪う方が上回りますし、そう、お膳立てしますって」
「ならば任せようぞ」
「任せれましょう」
 鷹揚に頷くヴラド三世に対し、ロビンフッドはお道化た仕種で礼をする。
「んじゃ、ちょっくら仕掛けてきますわ」
 その声には自信が満ちていた。

     ●

 ロビンフッドは己が仕掛けた罠が予定通りの効果を発揮したことに、機嫌を良くしていた。
 マスターの事がとても心配だが、戦闘ができない状態で合流するなど、プライドが許さない。
 単独行動が可能な己一人ならば、魔力を多少浪費しようとも、できる限りのスピードで合流を目指すのだが、バーサーカーのヴラド三世が同行しているとなると話は別だ。
 強力な戦力であるのと引き換えに、魔力効率が非常に悪いのがバーサーカーだ。
 いざと言う時に魔力不足で戦闘が出来ない、なんて状況に陥らないように気を配る必要がある。
 バーサーカーに魔力効率を考えた行動をする、そんな理性的な行動を求めるのは間違いなのだから。
 すっかり長くなったカルデアでの生活が、戦闘経験がそれを教えてくれた。
 だからこそ、口元にスプーンを運ぶかのように、糧となる敵を与える。
 森に仕掛けた罠にオートマタは嵌り破損する、が、それは致命傷ではない。その為、オートマタは追うのを止めない。
 しかし、破損は破損だ。
 動きが鈍る。
 ヴラド三世の槍を躱せぬほどに。
 槍が振るわれる度に、オートマタは粉砕され、その動力である魔力がヴラド三世の糧となる。
 ロビンフッドの調整と誘導により、ヴラド三世が相対するのは常に一体だ。
 ならば、負けるどころか、怪我を負う事すらない。
 ただただ槍が振るわれ、オートマタが残骸と化し飛び散る。
 そして、突然の静寂、すべての敵が残骸と化したのだ。
「物足りぬ」
 憮然とした声が静かな森に広がる。
「マスターに合流するまでは仕方が無いっすよ、安全一番って事で」
 ロビンフッドの言葉にヴラド三世は仕方が無いとばかりに槍を消す。
「んー、オートマタっすね、悪趣味なほど」
 残骸を確認する横にヴラド三世が立つ。
「では、倫敦を模したか?」
「そうであり、そうでなし、って感じでして」
 手にした残骸の中、壊れた歯車を手にし、素材を確認する。
 遠い記憶『座』に置き去りにした記憶が刺激されるのを感じ、唾棄したくなるが堪える。
「ならばこの地は何を模したのだ」
「地球を――」
 立ち上がり、壊れた歯車を残骸に投げ当てれば、金属と違う音が鳴る。
「ま、オタクは気にせず、敵を屠ってくださいな、その先にマスターが居るのは間違いないっすから」
「良かろう」
 ヴラド三世はバーサーカーらしい思考で、世界に対する疑問を切り捨てる。
 その潔さが、今のロビンフッドには好ましかった。
「森を抜けると草原があり、入り口っぽい門と塀があるんで、とりあえず、そこを突破しましょうや」
「隠密行動ではないのか?」
 ヴラド三世の問いに、笑って答える。
「何もかもご破算にするなら、派手に戦うってのも大事っすよ」
「なるほど」
 ヴラド三世もにやりと笑う。
 
     ●

 ヴラド三世は先にある背を眺めながら、足を進める。
 弓兵であるロビンフッドは本来は後衛、背に守るべき存在だが、現在の役割は斥候だ。
 故に、前に立つ事を許している。
 身を隠す場も無い草原だが、敵は既に屠り、前方に見える門には動く物は無い。
 その草原に小さな花が風に揺れるが、花の香りは無い。
 春色の青空が広がり、平和な風景であるが、風に揺れる草葉の音は異質だ。
 何もかもが異質の世界にある、門となれば――
「門番が居らぬはあり得ぬな」
「ですねぇ、ま、ある程度の距離に近づいたら出現するんじゃないっすか? 前方と背後に」
 ロビンフッドの声に確信が聞こえる。
「ほう、それは面白い」
「そんなオタク、魔力は大丈夫っすか?」
「足りぬな」
 ロビンフッドの足が止まり、顔がこちらを向く。
「効率悪いっすねぇ、後、8歩で敵が沸くような気がするんすけど」
「汝は足りるのか?」
「ま、それなり」
 そう言いながら、左手がマントの襟元を緩めるのが見えた。
 細い体と同じように細い首が晒される。
「補充します?」
「うむ」
 足を進め、ロビンフッドの背後に立てば、ロビンフッドは首を傾げ、さらに晒す。
「んじゃ、どうぞ」
 慣れた仕草で差し出された首は白く、だが、健康的な成人男性らしい張りがある。
 そこに牙を立て、血を啜れば魔力を――戦う力を得る事ができる。
 腕を押さえるように身体を抱き、首に舌を這わせれば――違和感があった。
 舐めれば味が記憶通りであり、髪の匂いを嗅げば記憶通りだ、だが――何かが違う。
「あ、ちょ、やるなら思いっきりよくっていつも言ってるじゃないっすか」
 首筋をゆっくりと舐めれば抱きしめる身体が震える、快楽に耐えるように。それは記憶通り。
 手を伸ばし、胸元に指を這わせれば、より、身体が震える。
「な、なに、敵陣目前でやってるんすか?」
 指に得る感触は記憶通り。
 そのまま肌を撫でながら乳首に触れれば、ロビンフッドが暴れだす。
「ちょ、ちょっと、な、何をするんすか?」
 その身体を無理やり押さえつけながら首を舐めれば、やはり違和感がある。
 声も動きも記憶のまま、だが、味と匂いが違う。
「味と匂いが違う」
「は? 何を言ってるんですか、こんな事をしながら」
 乳首を爪先で捻れば、艶っぽい声を上げる。
 その声は記憶の通りである事に安堵する。
「先ほどの葉だ、匂いが違うと――」
「あ、え? ああ、え? オレも違うんすか?」
「うむ」
 ロビンフッドが暴れるのを止めた、が、やんわりと手を取られ、肌から引き離す動きをする。
 確認ができたが故に、その動きに合わせ、服の中から手を引き抜く。
「オタクも違うか試して良いっすか?」
「よかろう」
 身体を押さえつけていた腕を緩めれば、その身体が反転し、目前に顔が現れる。
「んじゃ、さっそく」
 戸惑いも無く唇が重ねられ、舌が入る。
 その舌を舐めれば、やはり違和感があった。
「んー? んん?」
 腕の中のロビンフッドは唸りながら、しかし、常より熱心に舌を絡め舐める。
 その動きに合わせるように舐め、絡めれば、触覚は変わらぬ感触を得た。
 そして、唾液よりロビンフッドの魔力が与えられる。
 常よりも濃く感じる魔力に、思わず啜る。
「んー、んん、んっ」
 離れようとする動きが気に入らず、頭を押させ、舌を絡め魔力を啜る。
「んんん!!」
 背中を叩かれるが、まだ魔力が足りぬ。
 それ故に、ロビンフッドの咥内に舌を伸ばし、舐め、啜れば叩く力が緩まった。
 いつもと違う味ではあるが、魔力に変わりはない。
 その事に安堵し、啜れば、腕の中の身体から力が抜けた。
 舌を抜き、唇を離せば、熱と涙に潤む眼があった。
「こっちの魔力を全部抜くつもりっすか?」
「余が戦えば良かろう」
「斥候も出来ないってのはダメでしょうが」
「ふむ……では、敵より魔力を得るとしよう」
「そーしてくださいや、それより、味っすね」
 ロビンフッドが息を吐き、呼吸を整えるのを待つ。
「確かに味が変っすね、ちょいボケてるって感じで」
「理由は判るか?」
 その問いに眉間に皺を作り考える。
 思わずその皺を指先で撫で、伸ばせば、擽ったそうに笑う。
「なにするんすか、旦那。ま、たぶんっすけど、夢を見てる状態なんじゃないっすか?」
「夢か」
「そ、身体はカルデアにあって、マスターの夢に引きずられて疑似空間に出現したとか、そんな感じで」
「では、夢から覚めれば味が戻るのだな」
「多分、とりあえず、こっちの魔力を奪って充実したって事で、さっさと敵を召喚するっすね」
 先ほどまで情熱的に口づけをしていたと言うのに、腕の中の情人は戦いに意識を向ける。
 その意思が心地良い。
「良かろう」
 抱擁を解き、槍を呼び出す。
「んじゃ、デブ鳥、Go!」
 ロビンフッドの言葉に、抗議の囀りをしながらも、青い鳥が飛び立つ。
 手の指し示す方に飛び、急上昇したと同時に門に巨大な影が出現した。
「おっと、キメラっすね」
 その言葉が聞こえると同時に背後に出現した存在に槍を振るえば、手ごたえがあった。
「GUYAAAAAAA」
 門に出現したと同じキメラが背後にあった。
 顔面より血を流しながら後退り、しかし、眼に殺意が籠るのが判る。
「良き距離だ」
 背を預け、キメラに槍を向ける。
「そうっすね、んじゃ、ぼちぼち始めますか」
 戦闘の開始は、いつも通り唐突だった。

     ●
     
 ロビンフッドは弓を構え、正面のキメラを観察する。
 背のキメラはヴラド三世が相対していえるのであれば、気にする必要はまったくない。
 安心して背を任せる事ができる。
 それより正面のキメラだ。
「距離は充分っと」
 キメラの突進力は脅威だが、ドラゴンのように地面を揺さぶる訳ではない、接近されなければ脅威ではないのだ。
 何より『突進する』とはつまり、狙いやすいと言うことでもある。
「そらよっと!」
 手早く連射、獅子の両目と山羊の両目を潰せば、咆哮が空気を震わす。
「GUGYAAAAAAAA」
 獅子の手が射抜く矢を払い落とそうとし、山羊の頭は狂ったように左右に揺れる。
 尾の蛇が威嚇するように口を開けた。
「寝てな!」
 真っ赤な口を目掛け、矢を射れば喉奥まで貫いたようだ。
 蛇の頭が狂ったようにのたうつ。
「GUGYAAAAAAAA」
 背後からも同じような咆哮が聞こえた。
 前からも後ろからも殺意が降り注ぐが、注視するのは前方だけで充分だ。
「ふっ!」
 狂ったように揺れる山羊の鼻に矢を射るのは、ちょいと骨が折れるがちょいとだ。
 射抜けば驚いたように首が上がり、喉を射抜くのに丁度良い。
 だから、山羊の喉をハリネズミに変えた。
「GUGYAAAAAAAA」
 盲目の獅子が吼え、喉奥を射抜かれた蛇が殺気で染まる眼でこちらを見た。
 キメラが駆け出す、蛇の誘導で。
 怒り狂い、駆け引きをする余裕も無く、ただ真っ直ぐと。
「皐月の王、参る……」
 呟き、矢を射る。狙うは獅子の眉間から脳だ。
 放つ矢は望み通りの軌道を飛び、獅子の眉間を貫き、頭部を粉砕した。
「GUGYAAAAAAAAAAAAA」
 獅子の断末魔の叫びは天に吼えるように頭を上げて発された。
 ならば当然、その喉にありったけの矢を射る。
 突進する足が縺れ、崩れ、キメラの足が止まり、動かなくなる。
 びたんびんたんと尾である蛇の頭が身体を叩くのを地面に縫い付ければ、キメラの動きは完全に止まった。
「ま、こんなもんでしょ」
 完全停止を確認し、背後へと視線を向けた。
 
     ●
 
 ヴラド三世は目前のキメラを観察する。
 獅子の顔から血を流し、距離をとるように後ずさるが、互いの攻撃圏なのは変わりない。
 流れる血に魔力を感じ、喉の渇きを覚える。
「馳走に預かるとしよう」
 ぶわりと血が猛り、活力が身を包む。
「絶叫せよ」
 踏み込み、槍を振るえば山羊の頭が消し飛んだ。
 一瞬遅れ、血が周囲に降り注ぐ。
「GUGYAAAAAAAA」
 獅子が怒りの咆哮を上げ、その咆哮に周囲に飛び散る血と魔力に己の血が猛る。
「血を求める」
 返す刃、獅子を狙うかのような軌道をしつつ、刃を跳ね上げ、奥へと伸ばせば尾の蛇に届く。
 狙い違わず、蛇の口が上下に裂け、血が飛び散る。
「クク!」
 満ちる血の匂いと魔力に嗤いが零れ落ちる。
 槍を引き戻しつつ、振り回せば獅子の顔が削げ落ちた。
 獅子はこちらを狙い右手を上げていたが、その手も削げ落ち、血と魔力が周囲に広がる。
 勢いに任せ、一歩、ロビンフッドの背に近寄る。
「さあ、串刺しの時間だよ――」
 地面に槍を突き刺せば、魔力が槍と化し、キメラへと突き刺さる。
 吼える口すら失ったキメラはただただ、身体を震わし、魔力の槍で串刺しとなった。
「幾千幾万の血を流し、そして余に捧げよ」
 その言葉に従い、血は魔力と化し身体へと吸収された。
「まずまずだな」
 戦闘前よりは身体に魔力が満ちたのを感じ、満足の笑みが浮かんだ。
 
    ●
    
 振り返ったロビンフッドは血塗れのキメラを見て、思わず頭を抱えた。
「血の匂いが凄いんすけど」
「すぐに消えうせようぞ、余に捧げられる故」
 ヴラド三世はそ知らぬ顔で槍を消す。
「ま、そーなんすけどねぇ」
「魔力は満ちた」
 そう言いながら振り返ったヴラド三世は、戦闘の高揚で眼の端が赤くなり普段以上の色気を振り撒く。
「あー、あっちもいきます?」
 ロビンフッドは思わず誤魔化すように、ハリネズミの如く矢で射られたキメラを指差す。
「馳走に預かるとしよう」
 ヴラド三世は心持ち軽い足取りでもう一体のキメラへと近寄る。
 機嫌良くキメラへ触れれば、その魔力はヴラド三世へ移り、糧となった。
 その背を追うロビンフッドはそのまま通り過ぎ、門に近寄ると、青い鳥が肩へと戻った。
 焦るように囀る青い鳥にロビンフッドは頷く。
「あっちにマスターが居たって事っすね、デブ鳥」
 青い鳥が抗議の囀りをする、デブ鳥と呼ばれるのは不服なようだ。
「ならば急ぐぞ」
 ヴラド三世が駆け出す。
「あいよ」
 ロビンフッドはその背を追い、越し、先へと急ぐ。
 門を越えればそこは白亜の宮殿のようであった。
「おおっと、これはこれは」
 ロビンフッドの声に焦りがあり、ヴラド三世の眉間に皺が寄る。
「マスターの危機か?」
「急いだ方が良いっすね、多分あっちっすよ」
 ロビンフッドの足が速くなる。
「こっちがマスターを回収するんでオタクが攻撃でよろしく」
「よかろう」
 駆ける先、喧騒が耳に届く。
「んじゃ、お先!」
 ロビンフッドの足がより速くなり、引き離されるがその背をヴラド三世が見失う事は無い。
 その背が開かれた扉へと飛び込んだ、喧騒がより大きく聞こえる。
「マスター!」
 ロビンフッドの声をヴラド三世が聞き落とす事は無い。
「ロビン! その娘は攻撃しちゃダメ!」
 マスターの声にヴラド三世は安堵と怒りを感じる。
「オタク、懲りずにまた変なの拾ったんすか!」
 ヴラド三世が飛び込んだ先では、捜し求めていたマスターが居た。
 マスターの血の匂いを感じ、狂気が満ちる。
「余のマスターに血を流させたか!」
 ヴラド三世は真っ赤に染まる視界の中、鮮やかな緑がマスターを守るのを認識した。
「ヴラド公! ターゲットはアレ!」
 マスターの叫びと同時にヴラド三世はマスターの魔力を感じた。
「では、世界に呪わしき我が名を吼え立てよう」
 ヴラド三世は一直線に駆ける、忌まわしき敵を滅ぼす為に。
 
    ●
 
 ロビンフッドはマスターを確保したと同時に魔力の供給を感じた。
「とりあえず詳しい話は後でって事で、アレを倒せば良いんすね?」
 確認の問いにマスターは少し考え、隣の少女を見た。
「かな?」
「そうです、センパイ」
 隣の少女――の姿を持つ、サーヴァントにロビンフッドは溜息をついた。
 二人ともボロボロで怪我もある。
 問い詰めるのは戦闘の後で構わないだろう。
「んじゃ、怪我人は大人しくしててくださいな」
 ローブを脱ぎマスターにかければ、少女は図々しくその中に潜り込む。
「任せました」
「ロビン、勝って!」
 マスターの声援に思わず笑う。
「ほいほい。んじゃ、ぼちぼち始めますか」
 ヴラド三世の背を追う。
「公が前衛、オレが後方支援で、勝ちを拾えないとか無いっすよ」
 そんな呟きが空に溶ける。
 
 とりあえず、合流が出来た、謎を解くのは、この戦闘が終わってからだ。
 
 Fin

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