科学研究コンテストで世界一! 高校生が語る夢

Nらじ

放送日:2026/06/05

#インタビュー#サイエンス

本や映画、イベントなどをお伝えする「みんなのエンタメ」。先月、アメリカで開かれた高校生らによる世界最大規模の科学研究コンテストで、日本代表の高校生が最高賞を受賞しました。日本代表の高校生が最高賞を受賞するのは、70年以上続く大会の歴史で初めてだということです。受賞した札幌市立札幌開成中等教育学校6年の栗林輝(くりばやし・ひかる)さん(17)にお話を伺いました。(聞き手:杉田淳ニュースデスク・柴田祐規子アナウンサー)

【出演者】
栗林:栗林輝さん(札幌開成中等教育学校6年)

研究テーマは“折りの構造”

柴田:
栗林さんは、世界67の国と地域から選ばれた1,700人を超える生徒が参加したこのコンテストで、最高賞に輝きました。

杉田:
栗林さんの研究成果とはどのようなものなのか、どんな発想から生まれたものなのか伺いましょう。栗林さん、よろしくお願いいたします。

栗林:
よろしくお願いいたします。

杉田:
最高賞受賞、おめでとうございます。

栗林:
ありがとうございます。

杉田:
まず、栗林さんの研究成果について、柴田さんにタイトルを紹介してもらいましょう。

柴田:
「マルコフ連鎖モンテカルロ法を用いたリンク機構に関する研究」。私は読み上げながら、ひとつもわかりませんでした。

杉田:
まず、この研究成果について解説してください。

栗林:
研究タイトルに専門用語が並んでいるので、少し難しいように聞こえるかもしれないのですが、実は中身自体はすごくシンプルな研究です。例えば、テントウムシが飛び立つときに広がる羽を想像してみてください。テントウムシが飛び立つ前に、硬い羽の下に柔らかくて大きな羽を小さく折り畳んで、しまっているのですけれども、飛び立つときはそれが体の倍ほどの大きさにパッと広がります。それがどのように折り畳まれていて、どのように広がるのか、そういった複雑な“折りの構造”、あるいは動きを理解するためのシミュレーションプログラムを作ったのがこの研究です。

杉田:
“折りの構造”=「折り畳む構造」ということですね。

栗林:
そうですね。タイトルにあった「リンク機構」というものは、棒や関節などを組み合わせて動く作りのことです。例えば、車のワイパーや私たちの体の関節、あるいはロボットアームのようなものを想像していただくとわかりやすいかもしれません。

柴田:
折り畳み傘も、「折り畳んでいる」わけですものね。

栗林:
はい、おっしゃるとおりです。実は暮らしのなかにたくさんある仕組みです。

杉田:
その「折り畳みの構造」の再現が可能な仕組みを考え出したということですか?

栗林:
そうですね。実は、折り紙と「リンク機構」は似た構図を持っています。全体が連動して動く、どこかを動かすと全体が連動して、畳んだり広がったりする構造を持っています。まさに、こういった折り紙や「リンク機構」の動きをシミュレーションした研究です。

杉田:
「山折りや谷折りなどの無数の組み合わせを再現可能にするプログラムを作った」という理解でよろしいですか?

栗林:
はい。例えば、ひとつの関節に2本の棒がつながっているような簡単な仕組みであれば動きがすごくわかりやすいのですけれども、それがどんどん複雑な仕組みになっていくと、いろいろな動きがあるので、さまざまな組み合わせが起こります。従来の手法は、ひとつひとつ、方程式を立てて順番に解いていくような数学的な方法を使うのですが、こういった方法では、すべての動きを見つけることは現実的に非常に難しいといわれています。

杉田:
数が多すぎるのですよね。

栗林:
そうなのです。例えば、少し話が飛びますが、先ほどの「テントウムシ」をもう一度、想像してください。自然界にはさまざまな折り紙があります。例えば自然界の柔らかい素材など、いろいろな「折り線」から生まれる複雑な動きというのは、まさに従来の方法では判断が難しく、限界になっていました。

柴田:
今回の新しさでいうと、何が評価されたのですか?

栗林:
数学的に解くのが難しいとなったときに、僕のアイデアとして、「統計力学」=物理学的な考え方というものを取りました。

柴田:
数学ではなくて、「統計力学」を取り入れたということですね。

栗林:
数学の問題を別の「定式化」をして、物理学の手法で解いてあげるというのが僕のアイデアです。それが「マルコフ連鎖モンテカルロ法」と呼ばれるものです。

杉田・柴田:
ははははは(笑)。

杉田:
そのあたりは少し難しいですね。

柴田:
これ以上聞いても、たぶん私たちはわからないと思います…。栗林さんがすごいのは、「統計力学」という発想で解いていこうというのを考えたということですね。

栗林:
はい、おっしゃるとおりです。

柴田:
研究したことが、今後、どうつながるかですよね。生かされていく分野としてどんなことが想像できるのでしょうか?

栗林:
例えば、ふだんは小さく折り畳んでおいて、災害のときなどに広げて使える緊急用の「シェルター」や宇宙開発が進んだときの「大型ソーラーセイル(帆)」、あるいは小さな血管を拡張するために体内で広げる「ステント」と呼ばれるものも、最近は折り紙で作られています。狭い空間に収納しておいて、あとで大きく展開する必要がある装置の設計などに役立つ可能性があるという評価をいただきました。

杉田:
とてもイメージが湧いてきました。

会場で感じた多くの人たちへの感謝

杉田:
日本代表の高校生が最高賞を受賞するのは初めてということですが、受賞した瞬間はどんなお気持ちでしたか?

栗林:
受賞した瞬間は本当に夢か現実かわからないような…、とても驚いた気持ちだったのですけれども、ステージ上から日本代表の友達やさまざまな人が手を振ってくれているのが見えたり、その後、家族と一緒に話したりするなかで「本当によかったな、うれしいな」という気持ちが込み上げてきました。

杉田:
世界各国から科学が大好きな高校生たちが集まっている場所だったのですよね。

栗林:
そうですね。

杉田:
その臨場感というのはどんなものだったのでしょうか?

栗林:
各国代表の科学を極めている高校生たちが一堂に会して、一緒に話したり、ディスカッションしたりする空気感でしたので、本当に刺激的で、みなさん、さまざまなおもしろい研究をされているので、僕もその場に行けてとてもよかったなと思っています。

柴田:
1日ではなくて、何日か一緒に過ごしたのですか?

栗林:
そうですね。コンテスト自体は1週間ほどのイベントでしたが、参加者は朝から夜までスケジュールがぎっしりでした。生徒は研究をまとめた自分の展示パネルブースの前に立つのですけれども、このブースの前で、審査は、審査員10人ほどが個別に訪れてきて、研究についての説明や質疑応答を15分間で行いました。

柴田:
15分で説明しなければいけないというのは、なかなか大変ですよね。

栗林:
10人の方々に順番に15分の説明をしていくので、なんというか、まるで壁打ちやボクシングをしているような気持ちになりました。審査員の方の鋭い質問に対して、精一杯、自分の考えをひねり出して説明をしたことが印象に残っています。

杉田:
そして、栗林さんの写真があるのですよね?

柴田:
会場で、プレゼン資料の前に立っている栗林さんの写真をお借りしています。帽子をかぶっていますね。これは、折り鶴ですか?

栗林:
はい。実は、折り鶴なのです。

柴田:
大きな折り鶴を帽子にしてかぶっているのですね。どうしてこの姿をしようと思ったのでしょうか?

栗林:
最初に、自分のすごく好きな折り紙というものを全身で表現したいという思いがありました。いろいろな人に折り紙の日本文化の美しさやおもしろさを実際に見てほしいなという思いから、この折り鶴の帽子を作りました。

杉田:
ご自身の研究の「折り畳み」とは、「折り紙が重なっている」ということですよね。

栗林:
折り紙の研究をしていたので、折り紙を実際に頭にも付けて表現しようという気持ちでした。

「自然は美しくておもしろい」…幼いころの経験が研究につながった

杉田:
そもそも、今回、このようなテーマの研究をしてみようと思ったきっかけは、どういうことだったのでしょうか?

栗林:
実は同じ学校の先輩で、バイオリンの美しい音色の原理を解き明かそうと、数学や物理の観点からいろいろなシミュレーションをして研究をしていた先輩がいらっしゃいました。その先輩が自身の研究をとてもおもしろく、楽しそうに語る姿を見て、純粋に「かっこいいな、将来、自分もああいうふうになってみたいな」という憧れから研究を始めました。

杉田:
なるほど。でも、なぜ「テントウムシ」だったのでしょうか?

栗林:
僕は北海道で生まれ育ってきて、幼いころから毎日、山登りやスノーボードをして過ごしてきました。

柴田:
アウトドア派だったわけですね。

栗林:
毎日ずっと、自然に触れるなかで気付いたこととして、やはり自然のメカニズム、仕組みというものはとても美しくておもしろいなと感じました。例えば、葉がつぼみの状態から広がるとき、葉は「ミウラ折り」と呼ばれる折り紙のパターンで広げたり、つぼみになったりしています。鳥を想像してみてください。実は、鳥も「リンク機構」と呼ばれる、羽が全体で連動してつながるような飛び方をしています。このように自然のなかにたくさんあるメカニズムというものに気付いて、折り紙とは、「リンク機構」=「自然のなかにある機構」ということを解き明かしていきたいと思ったのが研究テーマのきっかけです。

杉田:
そして、折り紙(のきっかけ)は…?

栗林:
おばあちゃんが折り紙がとても得意で、小さいころから一緒に折り紙をするのが大好きでした。たまに北海道大学で行われる折り紙の教室などにも参加していました。

杉田:
北海道の自然とおばあちゃんの折り紙が今回の最高賞につながったということですか?

栗林:
身近なところから研究を発展させられたなと思っています。

成果を出すまでの道のり

杉田:
最高賞を取るような研究成果を出すうえで、どんな「生みの苦しみ」があったのでしょうか? 私には想像ができないのですが…。

栗林:
実はさまざまな困難がありました。例えば、この「マルコフ連鎖モンテカルロ法」と呼ばれる手法については、大学生・大学院生が使うような手法で、最初はすごく理解に苦しみました。この手法に出会ったのは、東京で開催された学会に参加したときに、指導教員が「マルコフ連鎖モンテカルロ法」を使った研究を発表され、とてもおもしろい用途があるツールだと知って、自分もぜひ使ってみたいと思ったのがきっかけです。

柴田:
栗林さんは普通に学校の勉強もあるわけですよね。試験やクラブ活動などの時間の隙間に、みずから学会に参加したり、自分でいろいろと調べ物をしたりしてたどりついたということですか?

栗林:
本当にこの研究は、僕の「研究が好きだ」という気持ちというか、研究に対する熱意で進めてきたので、隙間時間があれば研究に時間を割いたり、空いている時間があれば研究のことを少しでも考えたりして、毎日、少しずつ進めてきました。

杉田:
「できた!」と思った瞬間というのは、どんな感じだったのですか?

栗林:
夜、ずっと寝ないで研究に取り組んでいたのですが、初めてテントウムシの結果が出たときは、もう感動で声が出ませんでした。家族が寝静まって、家の中は静かだったのですけれども、ずっと1人で感動していたことを今でも鮮明に覚えています。

柴田:
きっとご家族も先生方もドキドキしながらその様子を見守っていたのでしょうね。

栗林:
そうですね。

自然のメカニズムを将来の研究に生かしたい

杉田:
これからの目標はどんなことでしょうか?

栗林:
今回のコンテストで、いろいろな文化がある国際的な場所で研究や発表をしたり交流したりすることは、非常に刺激的で楽しいということを感じました。今後は海外の大学などに進学して、いろいろな人と切磋琢磨(せっさたくま)してコミュニケーションしていきたいなと考えています。また、ほかの虫や植物など、まだまだ解析したい自然のメカニズムはたくさんあります。この手法を使って、将来、さまざまなものを解き明かしていくのが楽しみです。

杉田:
科学はやはり人を幸せにできますよね。

栗林:
そうですね。身近な自然というところから、私たちの生活に役立つさまざまなものやシステムを作れたら、とてもいいのではないかと考えています。

柴田:
私たちもテントウムシを違った目で見られるようになったような気がします。

リスナーのみなさんからのメッセージ

柴田:
リスナーのみなさんからたくさんのメッセージが届いています。

「統計力学」、すごいですね。「統計力学」はとても難しい学問です。僕はいまだによくわかりません。それを応用して研究するとは。将来が楽しみ。ノーベル物理学賞?

17歳ですか。難しいテーマかと思いましたが、わかりやすく聞きやすかったです。若き研究者すごいな

大学の教授みたいだね。こんな人いっぱい出てくるといいけど

杉田:
時間の使い方が上手なのでしょうね。すばらしいですね。

柴田:
今回の「みんなのエンタメ」は、高校生らによる世界最大規模の科学研究コンテストで最高賞を受賞した栗林輝さんにお話を伺いました。ありがとうございました。

栗林:
ありがとうございました。


【放送】
2026/06/05 「Nらじ」

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