テーマ少子化と日本経済
政府は子育て世帯に月1~3万円を配る児童手当を拡充してきました。現金給付は少子化に歯止めをかけるために有効なのでしょうか。経済学者50人に聞きました。
Q.
日本の出生率を引き上げるには、児童手当など子育て世帯への現金給付が優先順位の高い政策だ
集計結果・個別の意見
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単なる現金給付は出生時期の一時的な前倒しをもたらすにすぎず、出生数の根本的な底上げにつながらない。フランスの少子化対策では、認可保育園など保育インフラの整備と、産後の早期職場復帰を支える制度設計を通じて、「女性が働き続けることを当然とする」社会意識を醸成した。一時的な金銭的支援よりも、こうした社会規範の変革こそが政策の根幹に据えられるべきだ。
現金給付によって出生率が改善したという事例はほとんどありません。両立支援策のほうが効果があった実証例があります(必ず効果があるわけではありませんが)し就業率も上がるので費用対効果で優れています。
今のような給付水準で、子どもを持つかどうかという大きな判断が変わるとは考えにくい。少子化には、未婚化や雇用不安、長時間労働、保育の不足、住宅費の高さなど多くの要因がある。問題は子育て費用だけではなく、結婚や出産の前提となる生活の安定や、仕事と育児を両立できる見通しが持ちにくいことだと思う。現金給付だけで動く問題ではない。
現金給付の効果が少ないことは各国で行われてきた政策の結果を見ると明らかである。出生率が高くなる要因にもっと直接的に働きかけようとする政策の方が優先されるべきだ。たとえば、結婚の増加につながるような政策的介入や、男性の家事・育児時間を増やすのが合理的になるような政策など。
これまでの実証研究では、効果が高くはないが、無効でもない。現金より直接親をサポートするサービスの充実のほうがよいのではないか。
子育て世帯への現金給付は、子育てに伴う経済的負担を軽減する政策という点で重要である。一方で、出生率の低下は経済的要因のみならず多様な要因に起因しているため、現金給付の拡充が直ちに出生率の上昇につながるとは限らない。
通説では、現金給付は出産のタイミングを変化させ一時的に出生率を上げるが、永続的な効果はない。子育ては途中でやめることのできない長期の投資であり、その間の生活水準に不安があると出産への障害になる。すべての費用に比較するとわずかな初期の給付金額では、出産の意思決定に大きな影響は与えられない。
『第16回出生動向基本調査』(2021年)では、18~34歳の未婚女性の86.9%が将来子どもを持つことを希望していて、未婚女性の理想のライフコースでは「両立コース」が最多である。重要なのは、結婚・出産により女性が賃金、キャリア継続性、昇進機会を失うリスクが大きいことである。女性の賃金上昇、長時間労働是正、出産後もキャリアを失わない雇用慣行、男女がともに育児を担える働き方の整備を優先すべきである。
現金給付政策が出世率を増加させるとの研究報告はあるものの,政策の効果はかなり限定的なものであると推定されている.構造的要因(例えば父親の育児参加など)が是正されることがなければ「焼石に水」だと思う.
現金給付は子育て世帯支援として重要だが、山口慎太郎氏の論文(Quantitative Economics 2019)や諸外国の実証研究でも示されるように、出生率引き上げの効果は限定的で、少子化対策としての優先順位は高くない。
少子化の最大の原因は結婚しない若い人が増えているからで、子育て世帯への現金給付はあまり効果がない。
男性の育休取得の促進、労働時間の弾力化、教育費用の抑制など子育てに係る環境の改善が優先ではないか。そもそも子育て世帯の雇用状況や実質所得が改善しない限り、将来不安も解消されない。
最近の出生率関係の研究を展望した論文では、保育所の利用や父親の協力姿勢、それを良しとする社会的規範およびそれを可能にする柔軟な労働市場といった要因が出生率の改善に重要であると述べられている。児童手当のような現金給付は子育ての直接費用を軽減するため、もちろんある程度の効果はあると思われるが、それよりも子育てのためにあきらめなければならないことを費用とみなした機会費用の軽減が重要ではないか。
現金給付は子育ての経済的問題を多少は緩和するかもしれないが、現在の政策規模では出生率への大きな効果は期待しにくい。少子化の背景には、育児と家事の時間的負担が女性に偏りすぎていて、子育てとキャリア形成の両立が難しい現状がある。男性の育児参加、長時間労働の是正、保育サービスの充実など、男女ともに子供を育てながらキャリアを継続できる環境整備の優先度が高いと思う。
児童手当などの現金給付は出生率を一定程度押し上げる効果が確認されていますが、その効果は限定的。少子化の背景には、未婚化・晩婚化、若年層の所得不安、長時間労働、育児と仕事の両立の難しさなど複数の要因がある。出生率の改善には、現金給付に加え、保育サービスや働き方改革を含む総合的な支援が重要です。
女性が高学歴化し労働市場での機会が拡大する中で,日本では仕事と家庭の両立を支える環境整備が不十分なため,結婚・出産の機会費用が高い。現金給付の効果はその額にもよるが,通常,給付はこの機会費用の一部しか補填できず,費用をより高く見積もる女性の意思決定を大きく変えることはできない。また,現金給付は子供一人当たりの教育費の上乗せに使われる可能性もあり,子供の人数の増加につながるとは限らない。
日本では出生の大半が婚姻内出生であり、少子化の重要な要因の一つは未婚化にある。新婚者への住宅供与拡充や親族からの生前贈与の促進、婚活やマッチングアプリを通じた結婚促進策など、結婚して家庭を築くことを希望する人々が結婚しやすい環境を整えることを優先すべきである。子育て支援金の財源を医療保険料に上乗せして集めることは、勤労世帯の負担を増加させるため、その費用対効果について慎重な検証が必要である。
子育て世帯への現金給付は家計支援として一定の意義を持つが、出生率の向上という観点からみると優先順位は必ずしも高くない。むしろ出産時に発生する医療費や住居費、保育サービスへのアクセスなど、子どもを持つ際に直面する具体的な負担や不確実性を軽減する政策の方が効果的である。限られた財源の下では、広範な現金給付よりも、出産・育児に伴う実費負担を直接引き下げる施策を優先すべきである。
国内外の実証研究によると、現金給付は多大なコストに比べ、出生率引き上げの効果が限定的または短期的だと考えられる。日本においては、結婚支援やワークライフバランスの支援に加えて、家庭内ジェンダー分業の平準化や、子育てを担う人に生じる長期的な経済社会的ペナルティを軽減する政策が有用だろう。また、ひとり親家庭や再婚家庭、外国人家庭を含む多様な家族のあり方を考慮した子育て支援の政策も極めて重要である。
確かに子育て世代への現金給付は必要だ。だが、それがすべてではない。質の高い保育所のように現物給付も重要だ。政府はその量的拡大に注力してきたが、両親が安心して子供を預けるには、その質を高める必要がある。女性が「仕事か、子育てか」と二者択一を迫られない環境整備も必要で、例えば産休後に元の職場に正社員かつ元の職位で復帰することを企業は保証すべきだ。女性の生涯所得は大きく伸び、子育てコストを十分に賄える。
日本では、正規雇用の男性が夜寝ている時間以外の多くを会社に使い、家事や育児に回せる時間が1日1時間未満になりがちであり、逆に女性はその数倍を費やしている。その結果、母親は実質的に一人で子育てするような状況に置かれる。子育てという大きな人生のプロジェクトをパートナーと共有できなければ、子どもを持つのは楽しくなさそうだと感じても自然で、この構造を変えずにお金だけを出しても効果は限られる。
所得が制約となって子供が持てない既婚世帯への現金給付は、出生率引き上げに一定の成果を生み出すと思われるが、結婚促進策や、産休や育休制度導入などの社会構造改革も重要であり、どの施策の優先順位をどのくらい高くするかは、エビデンスに基づき判断していくべきである。
前問と同じく、「今後の日本の現金給付」が「今後の日本の出生率」にどう影響するかを、過去の日本や他国の経験・データに基づいて判断することは難しい。既存研究は重要な手がかりになるが、その知見を今後の日本にどの程度当てはめられるかは不明である。また現金給付の効果は、対象範囲や給付水準などの制度設計や他の関連施策との組み合わせにも左右されうる。そのため、単体の政策としての優先順位を議論することは難しい。
他にどのような政策が考慮されているのか知らないので、優先順位はつけにくい。
子育て世代への現金給付も重要だと思うが、優先順位が高いかはよく分からない。
現金給付も重要だが、それよりも出産・子育てによる女性の所得減少の影響の方が大きい。そうした出産・子育てのペナルティをなくすような環境整備が重要ではないか。
児童手当など金銭的な支援策は子育て世帯にとって意味がある政策である。他方で、出生率を引き上げられるかは、定かではない。
現在の日本社会で子どもを産み、育て、高等教育を施すには、機会費用を含めて多額の費用が必要とされる。子どもが成長して将来経済社会に貢献するようになることを考えれば、その費用の一部を社会が負担することには合理性がある。もっとも現金給付の効果には限界があり、子育て中の親が働く職場環境の改善、住環境の改善、子育て世帯への労働サービスの支援等、多面的な施策が必要と考える。
現金給付は子の貧困軽減の点で正当化されるが、実証研究では出生率への効果は小さく、単独での大幅な改善は見込めない。日本の出生減は婚姻率低下(男性の経済的不安定)と女性の機会費用も大事な要因と考える。優先すべきは機会費用を直接下げる保育・育児休業、長時間労働の是正、家事・育児の男女分担の是正であり、現金給付はこれらを補完する一要素と位置づけるのが妥当である。
「子育て世帯への現金給付が優先順位の高い政策」かどうかを判断するには、現金給付政策の出生率への因果効果を分析し、その他の政策(例えば育休や保育の拡充)の費用対効果を比較すべきだが、それを遂行するのに十分なエビデンスがあるのか知りかねるので、「どちらともいえない」とする。
児童手当などの現金給付は、出生率を引き上げうるし、教育投資を増やすなどして子供の質も上げうるが、「出生率を引き上げるための優先政策」と見るにはエビデンスが弱い。子育てには金銭的制約も大きいが、同時に、時間的制約も大きいので、保育・学童・サマーキャンプ、育休・柔軟な働き方など、子育て時間に対する支援も必要。
子育て世帯への現金給付が出生率に与える効果については,理論・実証の両面で多くの研究の蓄積があり,山口(2021)でも詳しく整理されている.既往研究によれば,現金給付には一定の効果が確認されるものの単独での効果は限定的である.特に日本の文脈では,社会全体として子どもを生むこと・育てることの幸福感・満足感を高める一方で,その心理的・金銭的コストを下げる政策の優先度が高いと考えられる.
最低限そうした現金給付は必要だよねという話で、効果が十分だというわけではない。
子育て世代への現金給付は家計の経済的負担を軽減し、出生率を一定程度押し上げる可能性があるが、その効果は一般に限定的である。社会全体で出生率を高めるためには、産休・育休制度やより一般的には女性(あるいは男性も)の労働市場への柔軟な参加、教育費用の削減、その他子育てに対する自治体や地域によるサポートなど、長い目で見て子どもを産み育てることについてのコストが下がることがまずは必要なように思われる。
現金給付は重要だが十分条件ではない。フランスなど手厚い家族給付を行う国でも出生率は人口置換水準を下回っている。日本では出生が法律婚に強く依存しており、結婚率の低下が出生率低下に直結している。保育や働き方改革に加え、事実婚や同性カップルを含む多様な家族が子どもを持ち育てられる制度環境の整備を検討すべきである。
現金給付も重要であるが,施設サービスを通じた現物給付も重要であろう.また,子育て世帯の居住地や世帯属性が異なると,世帯が直面する制約も異なると考えられるため,それぞれの政策効果も変化すると考えるのが自然である.その意味では,一律の現金給付のみを優先すべきかについては判断が難しく,地域特性や世帯特性に応じた政策の組み合わせが重要と思われる.
長い人生のなか、一時的な給付であれば、意味がない。また、給付で財政赤字が拡大すれば、それを負担するのは、結局、子育て世代である。
他に有効な対応策がすぐには思いつかない。一方で、これに伴う財政環境の悪化は、将来に備えた若年世帯の貯蓄動機を高めるため、マイナスの影響をもたらす可能性。
それらの対策は短期的・場当たり的な対策であり、本質的に有効な政策ではないと思う。ただし、短期的な対策として、一定の効果はあるかもしれない。
現金給付には子育ての経済的負担を直接軽減する効果があり、特に所得の低い世帯では出生率を押し上げる効果も期待できる。ただし、国内外の研究を見ると、その効果は限定的であることが多く、少子化対策の決定打とは言い難い。保育サービスや働き方改革など、子どもを持つ「機会費用」を下げる政策との組み合わせが重要。
異なる政策の間に明確な優先順位をつけられるほどのエビデンスが質量ともに存在していないため、現金給付の優先順位が高いとは言えない。
日本だけでなく各国が様々な少子化対策を行ってきましたが、決定打は見つかっていません。そこで、結果的に少子化を止められなくても後悔が残らず、「あの政策をやってよかった」と思える施策を優先すべきと考えます。例えば本来は就業意欲があった女性が育児負担のためにあきらめているとしたら、希望通りに仕事と子育てを両立できるように支援するのは、仮に少子化対策にならなくても、よい政策だと思います。
日本の現金給付の影響について門外漢のため、どちらともいえないとしました。なお、2026年6月3日の日本経済新聞では、合計特殊出生率は10年連続減少していると報じられていますが、現金給付の効果が無いからのか、それとも現金給付が下支えしているからなのか(現金給付が無ければさらに下回るのか)は定かではなく、その解釈には注意が必要と考えます。
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少子化と日本経済
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