「冷泉」の読みは「れいせん」か「れいぜん」か 研究者が迫った博多の謎
福岡市博多区の町名「冷泉」の読み方は清音の「れいせん」か、濁音の「れいぜん」か-。呼称が混在する謎に、福岡アジア都市研究所(同区)の山田美里研究主査が迫った。歴史をひもとくと、元々は濁音が市民に根付いていたが、行政が使い始めた清音が広まり、現在に至ったようだ。(野村大輔) ■「れいせん」「れいぜん」表記が分かれている標識や案内板【写真】 道路標識は「冷泉(せん)町」と記載され、日本郵便の郵便番号検索サイトでも読みは「れいせん」。地域の憩いの場も「冷泉(せん)公園」なのだから清音が正式だと思ったら、周囲をよく見ると公園近くの通りは「冷泉(ぜん)通り」「冷泉(ぜん)公園通り」と濁音が並ぶ。
山田さんは、5年前に制作した町歩き地図で冷泉町を清音で表記し、地元住民に「『れいぜん』が正しい。役所の間違いだ」と教えられた。この経験が、曖昧だった呼称を深掘りするきっかけになった。 地元の古刹(こさつ)、龍宮寺は博多津の異称「冷泉津」にちなみ「冷泉(ぜん)山」と号す。1921年に開校し、98年に現在の博多小に統合されたのは「冷泉(ぜん)小」。かつて教育委員会が管轄した地域拠点も「冷泉(ぜん)公民館」。昔から住民は濁音で呼んでいたが、「多くの人が『地元のなまり』と理解してきた」と山田さんは指摘する。 □ □ 冷泉町はちょうど60年前の66年、町界町名整理で誕生した。豊臣秀吉の都市復興策「太閤町割り」に由来し、133あった町名を24に減らした市の整理事業。その当時から冷泉町は清音だったのか。
町名を巡って議論した市議会の記録に読み方の記載はなく、山田さんは同時代の資料を探った。59年刊行の住宅地図「福岡地典」は一帯を濁音の「れーぜん」と表記。冷泉山や冷泉小も念頭に、「小学校区名の『れいぜん』が冷泉町に名付けられた」と考える。 では、なぜ清音で呼ばれるようになったのか。実は、かつて博多区築港本町に清音読みの「冷泉(せん)町」があり、こちらは町界町名整理で失われた。新旧の冷泉町の距離は約1・5キロ。町名を移したわけではないが、混同した可能性はある。