袴田巌さんの冤罪事件で再審開始の決定をした元裁判官によるわかりやすい解説がありましたので掲載します
再審法案、修正拒む政府・与党
元裁判官「証拠が出なくなる可能性」
(2026年6月9日 22時26分 朝日新聞・二階堂友紀 宮島昌英 深瀬真由)
冤罪(えんざい)被害者をより早く確実に救済するため、「抜け道」のない法改正になるか――。
再審制度見直しに向けた刑事訴訟法改正案をめぐり、中道改革連合と国民民主党の担当者は9日、証拠開示ルールなど3項目の修正を求める方針で一致した。
政府・与党は拒否しており、修正が実現できるかは見通せない。
◾️袴田さん再審開始の元裁判官「人生観変わった」
衆院法務委員会ではこの日、静岡地裁の裁判長として2014年、袴田巌(いわお)さんの再審開始決定を出した村山浩昭弁護士が意見を述べた。
「袴田さんの事件を担当し、裁判官としての人生観が変わった。幾多の裁判官が関わりながら、(誤った有罪判決を)是正できずにきた。その反省をもとに再審法改正にコミットしてきた」
裁判官の経験から、最も力を入れて訴えたのは証拠開示のあり方だ。
再審の扉を開くためには、「無罪を言い渡すべき明らかな新証拠」が必要だ。政府法案では、有罪が確定した裁判で明らかにされなかった証拠について、裁判所が検察に提出を命じる制度を新設する。ただ、再審請求理由との関連性など厳しい要件がある。
これに対し村山氏は、再審に至る事件では、証拠の価値を判断できる弁護側に、幅広い証拠を直接見せるべきだと考える局面が必ずあると指摘。裁判官が関連性という要件に縛られず、裁量で開示を命じられる規定が必要だと訴えた。
法務省はこれまでの審議で、新たな提出命令制度の対象にならない証拠は、今と同じように裁判所が検察に「勧告」して提出させることができると答弁。「従来の実務運用を否定するものではない」としている。
しかし、村山氏は法的拘束力のない勧告では「検察官が抵抗する」と語り、これまで開示されてきた証拠が「出なくなる可能性が大いにある」と懸念を示した。
◾️野党の担当者、3項目の修正案
この日の委員会後、中道と国民民主の担当者らは国会内で会談し、3項目の修正案をまとめた。
証拠開示ルールをめぐり、裁判所の裁量で重要証拠について弁護側への直接開示を命じられる規定と、裁判所が検察に証拠の一覧表を交付させられる規定を求めた。
開示証拠の「目的外使用」の禁止については、政府法案の規定を削除。一律に禁じるのではなく、裁判所が内容に応じて制限をかけられる規定を提案した。衆院法務委員会に席のある参政党にも賛同を呼びかける。
政府法案に基づく証拠開示のイメージ
自民「再可決か廃案の二者択一」
今の国会では、自民党と日本維新の会の与党が衆院で3分の2を超す多数を占める。一方で参院では過半数まで4議席足りない。このため政府・与党は、国民民主の幹部らに政府法案への賛成を働きかけてきた。
だが、玉木雄一郎代表はこの日の会見で政府法案への賛否を問われ、「今の時点で賛成という状況にはない。(法案)修正や明確な答弁など、政府にさらなる対応を求めたい」と述べた。
国民民主の担当者はこの間、政府・与党に法案修正を求めて交渉してきたが、「ゼロ回答」の状態が続いている。
背景には、自民の事前審査で、政府法案が3回にわたる異例の修正を迫られたことがある。小林鷹之政調会長は法案了承後の会見で、「最大限のところまで積み上げた」と強調していた。
◾️「おごりがあった」世論を見誤った法務・検察 再審法案の攻防51日
自民執行部側の一人も「これ以上の修正はあり得ない」とし、参院で多数派を形成できなければ「再可決か廃案の二者択一だ」と突き放す。
再可決とは、参院で否決された法案について、衆院で3分の2の賛成をもって成立させる手法だ。しかし、今回の法案は、再審無罪が相次ぎ、救済の遅れが問題になったことを受け、高市早苗首相が「反省のもとに改善を行う」と表明したものだ。数の力で押し切るのはなじまない。
10日には首相も出席し、衆院法務委員会で質疑が行われる。政府・与党は今月中旬の衆院通過をめざしており、修正をめぐる攻防が続く。
https://digital.asahi.com/articles/ASV69470WV69UTIL003M.html?ptoken=01KTQC4Y4WTJQR4R1EKJS7XTK3
AD