トランスジェンダーの仮設自治会長 社会は生きやすくなりましたか?
編集委員・石橋英昭
優さん(63)の人生をがらりと変えた、12年半前の出来事。
校舎3階の廊下は、凍えるほど寒かった。宮城県東松島市のこの小学校は、海から約5キロ離れている。それでも水は校庭まで来た。
ハンドバッグだけを持ち、コートにブーツ姿で逃げてきて、ひと晩。教室の中には30人ほどがいて、毛布にくるまったり、食べ物を分け合ったりしていた。でも優さんだけが、中に入らない。
教室にいた若い女性が、声をかけてきた。
「ねえ、こんな所にいないで入ろうよ」「ところで、男?女?どっちなの?」
教室に迎えられ、低い声でトランスジェンダーだということを明かした。
「戸籍上は男性です。でもこうなんです」
誰かが言った。
「こんな状況で、どっちでもいいよね」
避難者名簿に名前を書くのを、優さんはためらった。
「誰にも知られず消えたい」 住民票も抹消
ずっとひっそり暮らしてきて…
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