「私は生徒たちみんなが好きだよ?」
「そうではなくてですね…」
昼下がりのシャーレ、仕事がキリのいいところまで終わり紅茶片手に休憩を楽しんでいると、今日の当番のユウカに突然そんな事を聞かれた。
「あー、恋愛的にってこと?」
「そうです、軽くでいいので教えていただけませんか」
「うーん、ちょっとね…」
「ダメなんですか?」
思わせぶり、と言われても普通に接しているだけなんだけど…
とはいえ、いかに高潔で生徒想いの先生であっても人間だ。これだけ可愛い子たちの中で生活していれば好きな子ぐらいいる。
しかしこんな事を言っては先生失格ではないか。
そのようなことを丁寧に説明した。が
「いえ、そんな事はどうでもいいんです」
「いや、良くないよ!?」
「私含めて先生のことは皆、尊敬してますし今更そんな事言っても問題ありませんよ。
「でも私に好かれているとかあんまり嬉しくないんじゃ…」
「嬉しいですよ!結構先生のこと好きな子も多いんですからね!」
「う、うん」
「ということで教えてもらいましょうか!さあ!」
身体が触れるぐらいまで近くに距離を詰めながら聞かれる。
く、最早これまで。仕方ないこうなったら白状するしかない…か
それに、ここで言ってしまってもそれを知るのはユウカだけだろうし、ユウカが話すとしてもノアぐらい…最悪ゲーム部までで済むだろうし別にいいか。
なお、この考えは甘いと言わざるを得なかったと後に先生は語った。
というのもシャーレには当然のように盗聴器が仕掛けられているからだ。
しかもエンジニア部だけなどという事は当然なく、ペンの中や目覚まし時計の中、ペロロ様のぬいぐるみの中などありとあらゆるものの中にほとんどの学園の部活が盗聴器を仕込んでいるためプライベートはないも同然である。
ちなみにユウカがこんな質問をするきっかけも他生徒からの圧力である。(ユウカ自身の興味もある)
そんな条件のシャーレで先生の好きな子の暴露が行われようものならそれが何を引き起こすかは火を見るよりも明らかだった。
「えーっとね、まず知っておいてほしいんだけど私っていろんな好きがあるタイプの人間なんだよ」
「いろんなタイプですか?」
「そう、例えば見た目が好みなのはーとか付き合うならーとか結婚するならーって感じ」
「なるほど…ではまず見た目が好みな方を教えてください。」
この瞬間、シャーレのみならず盗聴器越しにこの会話を聞いている全員が手を止めて固唾をのんで見守った。
「んー、ホシノかな」
「ホシノさん、ですか?」
「うん、あの小柄で眠たげな感じが可愛いしオッドアイがすごく綺麗。でも一番好きなのは戦闘中に盾を構えながらショットガン連射して前線を押し上げる姿がかっこよすぎて死ぬ。尊い」
オタク特有の早口での発言にちょっとユウカは引いた。
ちなみにシャーレの近くで喜びを表すかのようなショットガンの乱射を検知したアロナだったが、彼女は賢いので先生には通知しなかった。
「で、では他のタイプを教えてください」
「女友達として、というのは」
「いいと思いますよ」
まさか女友達のタイプに変な理由付けみたいなのはないだろうと思ったユウカだったが、その考えの甘さを思い知らされることになった。
「やっぱりアルちゃんかな。」
「陸八魔さんですか、それはどのような理由で…」
「やっぱりアウトローを気取ってるけど根はいい子なところかな。だから気に入らない依頼は受けないし以来じゃなくても友達のピンチに駆けつけるそのカッコ良さ!でもこれはめでるだけとか付き合ったりしたら隠れちゃうから友達の距離感がいいんだよね。てかぶっちゃけアルちゃんと居酒屋で飲みながらだべりたい。それで酔った私を呆れながらシャーレまで運んできてベッドに放りこんだ後に微笑みながらおやすみなさい、先生って言ってほしい。てか言ってくれないとやだ」
「うわ。先生が壊れた」
「断じて壊れてないよ」
この発言の直後、ブラックマーケット付近からシャーレに向かって便利屋の面々がくることをモモトークの通知で知ったアロナだったが、先生が気持ち悪い発言に気分を害したので黙っていることにした。
「じゃ、じゃあ付き合いたいタイプ…ていうか人になってますよね?」
「ま、いいでしょ。どうせ私とユウカしかいないんだし」
「まあ、そうですね。はい。で誰なんですか先生?」
「ミカ」
「え?」
「ミカかな」
「えっと…理由を聞いても?」
自分じゃなかったことでテンションが大きく下がったユウカだったが一応最後まで聞かねばならないので聞く。むしろ依頼でも無いのになぜ他の女の好きな所を聞かねばならないのか。
「長くなるけどいい?」
「長くなるというのはどの位ですか?」
「そうだねぇ、2時間ぐらい話そうかな」
「長すぎます。もっと縮めてください」
「1時間?」
「5分以内です」
「しょうがないなぁ」
「じゃあ語らせてもらうけどまず第一に顔がいい。ミカ可愛すぎでしょそれにスタイルもいいしあの顔とスタイルであんなに天真爛漫なの好き。それに頭の回転が早くて考えなしだけどおバカじゃないから手のかかる子だけど私の言いたいことを理解してくれるから好き。しかもお姫様にあこがれているのに本人はか弱いお姫様じゃないの最高でしょこれもう私のお姫様ってことでいいよね?でも一番は…」
「一番は?」
「愛が重い所あれだけ重い愛を向けられたら凄く嬉しいな。私誰かと付き合ってもホントに愛されてるのかすぐ不安になるからあれだけの愛を向けられたら多分ズブズブの共依存になる気がする、てかなりたい。好きだよミカ」
「うぅ…おぇっ」
「ユウカ?大丈夫?」
「大丈夫です…はい。私は…大丈夫ですから」
(覚悟はしていましたけど他の女への愛を目の前で好きな人が語っているのは心に来ますね。…事前にゲームで特訓していなければ精神崩壊していたかもしれません)
先生のミカへの発言が終わった直後、トリニティから轟音と共にミカが飛び出していった事が連絡されたがアロナはその連絡をナイナイしてしまった。これも先生の性癖暴露がなせる業だろう。
「じゃあ、最後…結婚したい人を…教えてください…」
「うん、じゃあ手短に言うね。」
そういうと先生は真っ直ぐユウカを見た。
「ユウカ、結婚してくれ」
「……ふぇ」
「なんだかんだ結局ユウカの隣が一番落ち着くんだよね。だから結婚するならユウカかな…ユウカ?」
返事がないことに疑問を持った先生が顔を覗き込むと幸せそうな顔で気絶していた。よく見るとヘイローも消えている。
「ふむ。気絶してしまったか」
ふと、時計を見るともう休憩は終わりにする時間になっていた。仕事に戻ろうと書類に目を落とした瞬間。アリスがドアを開けて入ってきた。
「先生!アリスはどうなんですか!」
「どうって…」
「先生はさっき、ユウカに求婚してました。ゲームでは選ばれなかった方のヒロインはどうなったか描かれてません。ですので選ばれなかったヒロインのアリスはどうなるんですか!?」
よく見るとアリスは涙目になっている。
なのでそっと抱きしめて耳元で囁いた。
「アリスはね、娘だよ。」
「娘…ですか?」
「そう、大事な大事な娘だよ」
「!…はい!アリスは先生の娘です!」
これで夫婦になった先生とユウカと娘のアリスで仲良く暮らしましたというのが一般的なゲームだが、先生もアリスも大事なことを見逃していた。
一つ、選ばれなかったヒロインはアリス一人どころではなかったこと。
二つ、ここまでの発言は盗聴されまくってもはや生放送状態と化していたことだ。
今現在、ゲヘナ風紀委員会の面々を始め、選ばれなかったヒロインたちが魔王軍と化して今まさにシャーレに向かって進軍しつつあるが、あきれ果てたアロナによって連絡は遮断され勇者アリスたちはその侵攻に気づかない。
先生たちは無事に生き残ることができるのだろうか?頑張れユウカ、頑張れアリス、頑張れ先生。
O☆BA☆K☆