第7話 呪胎戴天 ー参ー
呪胎戴天編結構進みました…!
今回はほぼ宿儺回ですね。やっぱ宿儺はかっこいいし強し。
今回でついに莉音の中にいるナニカについての正体が判明しますお待たせ致しました😖🙏🏻
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「つくづく忌ま忌ましい小僧だ」
玉犬の遠吠えの後、それを合図に虎杖の体に変化が現れる。
全身に文様、そして声は低く絶対的な何かを思わせる威圧感のある声に変わった。
反射的に神之怒の柄部分を握るが、宿儺はこちらに警戒する素振りもなんなら興味も見せず周りを見渡している。
「えぇ…?」
この反応になってしまうのは許して欲しい。
いや、まさか本当に入れ替わるとは思ってなかった。
「……許可なく見るな。不愉快だ」
「え、なんかごめん。」
「いや待て。…そうか、貴様が五条莉音か」
「?え、あ、はい。」
まさかの指名…というか呪いの王に名前を覚えられている事実に驚きつつ素直に返事する。
「…ふむ。」
宿儺を顎に手を当ててこちらを見ると、頬を何故かつねられ、その後手を離さずとニタリと怪しく笑った。
「あの時はちゃんと見れてなかったからな。確かに彼奴の趣味通り面はいい。」
「?えぇと?」
「貴様の中の彼奴の話だ。さっき呼ぼうとしてただろう。」
「!やっぱり、あいつの事知ってるんだ。」
「ふん、まぁな。平安の世から知っている。」
「まさかの昔馴染みとは…」
なんてことなさげに言う宿儺にボクは思わず空いた口が塞がらない。驚きすぎて肋の痛みなど普通に吹っ飛んだ。
「……あれ、なんか…」
その時急に視界が…いや、意識が遠くなるように感じる。
フラつく足取りが何かに支えられるような感覚を最後にボクは意識を手放した。
────────
「…おや、随分積極的じゃのう。」
「黙れ。」
莉音の状態を確認した途端、片手で莉音の支えていた手を宿儺はパッと離すと距離をとる。
先程の莉音の姿のままだが、声が威圧感というかプレッシャーを感じる声色に変わり、瞳が照準模様の赤い瞳、口角が緩やかに上がった口、額には謎の紋様が浮かび上がったナニカが現れる。
「…遅い登場だな。」
「いやーすまんすまん。この餓鬼の体の主導権を奪うのはお前と違ってちと難しくてな。数百年ぶりだな、こうして顔を合わせるのは。」
莉音───ではなく莉音の中に住んだもう1つの存在、“久遠”だ。
「受肉したのか。」
「いや、憑依に近い。これまで数百年と色々な人間を器にして憑依し、寿命を搾り取っては糧にしていた。だが此奴は何故か僕の術式を使いたがらないから早く処理できない」
「相変わらず気色悪い事をしているな。」
宿儺の言葉に久遠はつまらなさそうに言うと欠伸する。
「?……怪我が治っておる。(確かこの餓鬼は反転術式を使えない筈…誰が?)」
久遠は先程莉音が負った負傷が治ってることに気づき首を傾げる。
「まさか…。」
「…。」
「宿儺。お前もたまには優しいなぁ」
「黙れ。こいつにはまだやってもらう役目がある。」
ニヨニヨと笑う久遠に宿儺はふい、と無表情で顔を逸らしたまま淡々と言う。
「ふーん、にしてもお前がそこまで気にかけるなんて珍し────」
久遠の言葉が言い終わるより先に、久遠に目掛けて呪力が飛ばされるがそれが久遠の顔に当たるより先に宿儺が手を伸ばして軽く払う。
「人の話は最後まで聞けって……あー悪い。お前の事忘れてた。」
久遠は呪力を飛ばした特級の存在に改めて目を向けると悪びれる様子も無く、片手を軽く挙げる。
「本来の目的を忘れるとこだった。おい、俺の邪魔をするなよ。したら殺す」
「分かってるさ。…どーせ僕だってすぐに身体の主導権が変わる。それまでは静かに過ごすよ」
宿儺の言葉に久遠はあっさりと答え、宿儺から距離を取った。
「…少し待て。今考えてる。」
またもや呪力を飛ばそうとした特級の肩をポンポンと叩いた宿儺はそう告げると今から自分がどう動けばいいのかを考える。
「(あちらを追った所で直前に小僧に買わられるのがオチか…。となると一番困るのは……コレだな。振り出しに戻してやる)おい。ガキ共を殺しに行くぞ。久遠も付いて来い」
「え、僕もか?」
右手の指を反転術式にて一瞬で治し、特級呪霊にそう指示する宿儺に特級呪霊は動揺するが、直ぐに攻撃に移る。
「馬鹿が。」
失っていた左手を再生し、特級呪霊が放った呪力をいとも簡単に防いでしまう。
「あ。こっちも治してしまった」
あっさりと防がれた自分の攻撃に驚く呪霊を見て宿儺は笑みを浮かべる。
「散歩は嫌か。まぁ元来呪霊は生まれた場に留まるモノだしな。良い良い。…ここで死ね。」
そう宿儺が言った次の瞬間、特級呪霊は顔を捕まれて投げられ、地面へ張り倒されていた。地面が特級呪霊の形にへこみ、コンクリートにヒビが広がる。
「ほら、頑張れ頑張れ」
声にならない声を上げる呪霊に宿儺はポケットに両手を入れ、余裕そうに笑みを浮かべて容赦なく蹴りを入れる。
そのまま宿儺の一方的な攻撃は続き、壁には四肢をもがれた特級と、その四肢が磔のようにめり込んでいた。
「我々は共に、"特級"という等級に分類されるそうだ。俺と、久遠はまだしても…虫けらがだぞ?」
特級が呪力によって手足を回復させ、再び地面に立つとニヤリと笑った。
「なんだ、嬉しそうだな。褒めてやろうか?だが呪力による治癒は人間とは違い、呪霊にとってそう難しいことではない。オマエも小僧も、呪いの何たるかを分かっていないな」
宿儺はそう言うと久遠の体を浮かばせて隣に立たせる。
「?」
「そこにいろ。」
「あ、はい。」
宿儺の指示というか命令に久遠は素直に頷く。
「…いい機会だ、教えてやる。本物の呪術というものを」
手印を両手で作り、僅かに口角を上げて宿儺は特級呪霊を見る。
「──領域展開 "伏魔御厨子"」
宿儺が低い声でそう言った途端、宿儺の領域が展開される。背後には牛の骨の山と四阿。
「これ、僕食らうくないか?」
「貴様は術式対象外に外している。」
「!優しいなぁ宿儺」
「殺すぞ。」
「怖。別にお前と殺り合う気はないけど。」
そして次の瞬間宿儺の領域は一瞬で消え、次には3枚に縦にスライスされた特級呪霊が居た。
「3枚に卸したつもりだったんだが、やっぱり弱いな、オマエ」
宿儺は特級呪霊の卸しに近づいていく。
「そうそうそれから…コレは貰っていくぞ」
宿儺は特級の胸にある穴から、するりと宿儺の指を取り出した。
宿儺の指を失った呪霊が灰のように風に乗って消滅し、同時に生得領域も消滅する。周辺は元の普通の寮へ戻った。
「お。」
その後久遠は小さく声を漏らす。
「なんだ。」
「いや、そろそろ餓鬼が目を覚ましそうだ。……また会おう、宿儺」
「はぁ?貴様はいつも自分勝手に物を進め──」
宿儺の声が終わるより先に、久遠は目を閉じる。すると額の紋様は消え、オーラも完全に消えた。
ふらりと倒れかかった莉音の体を宿儺はまた片手で受け止める。
「……ん、?」
そして次目を開いた時はいつもの莉音の瞳に戻っていた。
「え?…は?!」
「目が覚めたか。」
「す、宿儺!?いやなんで、え、どういう事…?(さっき久遠に体の主導権取られて…それで…)」
莉音は生得領域が消え、ボロッボロの寮の建物内になっていること。そして何故か自分が瓦礫の上で眠っていた事に混乱する。すぐに近くには胡座をかいた宿儺がこちらを見ていた。
いや当たり前だろ、なんでボクは呪いの王目の前に死んでないの?は?
「あの虫は俺が殺した。」
「えぇ…?」
ボクの反応など気にも留めず宿儺はボクを支えていた手を外すと、何事もなかったように立ち上がり、指をポケットの中に突っ込み、歩く。
「終わったぞ!不愉快だ!替わるのならさっさと替われ!」
少し歩いたところで上空に向かって宿儺が叫ぶ。しかし、どれだけ待っても宿儺が虎杖に戻ることはない。
「…小僧?」
「…虎杖?」
虎杖に身体の権限が変わらないことが分かった宿儺は、何かを企んだような悪い笑みを浮かべていた。
「え、あの…虎杖は…?」
「何も縛りも組まずに俺と代わった罰だ。小僧はしばらく出てこん」
宿儺の笑みに嫌な予感を覚えたボクを他所に淡々と宿儺は説明すると、ボクの方を見る。
「!」
ボクは思わず刀の柄を握りしめる。
「そう警戒するな。お前をまぁ殺しはしない。久遠の力がいつか必要になるからな」
「それってどういう……」
「莉音。こっちを向け。」
「あ?何。」
宿儺に言われて渋々顔を上げて宿儺と目を合わすと意識がグラッと揺れる。
「お前には暫し眠ってもらう。」
────────
────
伏黒side.
「!!」
生得領域が閉じた!!特級が死んだのか。
釘崎を乗せた車を見送った後、生得領域が消滅した気配に気づき、少年院の方を振り返る。後は…虎杖と莉音が戻れば…。
「ヤツなら戻らんぞ」
「…!」
「そう怯えるな。今は機嫌がいい。少し話そう。」
「!莉音!!」
宿儺に抱かえられた莉音の姿を見て、顔が険しくなる。
「安心しろ。少し眠ってるだけだ」
宿儺はそう告げると、少し離れた場所に莉音を寝かす。
「…何の縛りもなく俺を利用したツケだな。俺と替わるのに少々手こずっているようだ。…しかしまぁ、それも時間の問題だろう。そこで俺に今できることを考えた」
「?」
宿儺の言葉に眉を顰める。その瞬間、宿儺は虎杖の服を破り捨て身体の中心に手を突っ込む。
ブチブチ、と皮膚と血管や筋肉が裂かれる気味の悪いな音が辺りに響いた。その不快な音に、思わず顔を歪める。一瞬にして虎杖の胸と右手、そして滴った血が流れ地面が赤く染まる。雨のせいでどんどんと血は流れ出して、水たまりが赤に染まる。
そして虎杖の心臓を引きちぎって体の外に取り出し、未だ脈打っているそれを地面の上に投げ捨てた。
「俺は心臓なしでも生きていられるがな、小僧はそうもいかん。俺と替わることは死を意味する。更に…駄目押しだ」
ニヤリと嫌な笑みを浮かべながら、駄目押しとして先程特級呪霊から回収したのか、指を飲み込んだ。これで宿儺が取り込んだ指は3本。1本の時点であの威圧感だったのに、3本となれば勝てる見込みも見えない。それに虎杖がいつ戻るかも分からない。
「さてと…晴れて自由の身だ。もう怯えていいぞ。殺す…、特に理由は無い」
1つ分かるのは、完全にあの時と立場が逆転したこと。
「虎杖は戻ってくる。その結果自分が死んでもな。そういう奴だ」
「買い被り過ぎだな。コイツは他の人間よりも多少頑丈で鈍いだけだ。先刻もな今際の際で脅えに脅え、ゴチャゴチャと御託を並べていたぞ。それに莉音に助けてもらった始末。断言する、奴に自死する度胸は無い」
腕が治ってる…反転術式が使えるんだ。
宿儺は受肉してる。心臓なしで生きられるとはいえダメージもあるはずだ。
虎杖が戻る前に心臓を治させる。心臓を欠いた状態では俺に勝てないと思わせる。
それにこのままじゃ莉音にも危害が及ぶ可能性がある。俺が何とかしないと……できるか?特級相手ですら動けなかった俺に。
「(できるかじゃねぇ、やるんだよ!!)」