ポケットに入れていた携帯が着信音を鳴らすと共に揺れる
「はい、もしもし?元気にしてたかい?七海....あぁわかったすぐ向かうよ」
───
──
─
「順平、高専に来いよ。バカみてぇに強い先生とか、頼りになる仲間がいっぱいいるんだ、皆で協力すれば順平の母ちゃんを呪った奴もきっと見つかる、必ず報いを受けさせてやる...一緒に戦お...う...誰だ?」
学校には似つかわしくないツギハギ顔の男が階段の上から一段一段ゆっくり踏み締めるように歩く
「初めましてだね、宿儺の器」
「待って真人さん!!」
真人が左腕を変形させると虎杖悠仁に向かって身体を変形させ拘束する
「逃げろ順平!!コイツとどんな関係かは知らん!!けど今は逃げてくれ!!頼む!!」
「虎杖君落ち着いて!!真人さんは悪い人じゃ──悪い...人...」
真人が順平に触れようとした時、イカ型呪霊が二人の間を通り抜け真人の変形した腕を貫通する
「間に合ったかな?」
「夏油先生!何でココに!?」
「私は先生じゃないよ、七海から連絡を貰っていてね、未確認の特級呪霊、それもツギハギの呪霊を確認したと。それで来てみれば報告に無い帳が降ろされていたから少々強引に入らせてもらった」
七海の報告によれば触れた相手を変形させる能力と聞く、一発でも触れられたらアウトと考えた方がいいか
「チッ...余計な邪魔が入ったか」
やはりこの呪霊も意思疎通可能か...
「君、名前は?」
「あ...その...吉野順平です」
「では吉野くん、ここは危ないから何処か安全な場所に...そうだねぇ、七海の元へ行くのが1番かな...虎杖君、彼の案内頼めるかい?」
「押忍!」
「行かせるかよッ!」
「いいや、押し通らせて貰うよ」
右手をかざし呪霊を出す、足止めに最適の術式持ち呪霊だ。これで虎杖君達が逃げれるだけの時間は作れるはず
私の呪霊が術式を発動すると途端にツギハギ顔の呪霊が足から崩れ落ちる
「落ちたと錯覚しただろう?端から見れば君が勝手にひっくり返っただけなんだけどね」
動揺してる隙に畳み掛けるように百足呪霊をぶつける
「ここは少し狭い、もっと広い所に移動しようか...君に拒否権は無いけどね」
呪霊操術 極ノ番 うずまき
低級呪霊をミニうずまきの代償にツギハギ顔呪霊を校庭へと吹き飛ばす
「そう簡単には近付かせて貰えないか...なら...お”ぇっ」
身体の中にストックしていたのだろうか、縮小された改造人間が嘔吐と共に現界する
あれが家入が言っていた改造人間か...
「袈裟の男を殺せ」
男の命令を受けた改造人間が私に向かって直進する
「...せめて私が君達を人として、人間として終わらせてあげよう」
ありふれた呪具を武器庫呪霊から取り出し、苦しまないよう全て一撃で殺す。
「出してすぐ殺すなんてあんた、人の心とか無い系?」
「私はあの人達を正しい場所へと送ったに過ぎない」
「正しい場所?人間ってのは殺すことをそんな大層な屁理屈並べて正当化しようとしてんの?オッエー、気色悪──」
私の右拳が頬を捉えた瞬間、呪力が寸分違わず衝撃へ重なった。空間が黒く歪み稲妻にも似た黒い奔流が炸裂し、衝撃は何倍にも膨れ上がった。ツギハギ顔呪霊の顔面が陥没し、身体が砲弾のように吹き飛ぶ。
その一撃は、偶然が生んだ奇跡。
──黒閃だった
そして1度黒閃を決めた術師はスポーツにおけるゾーン状態に入る。普段意識的に行っている呪力の操作が呼吸するかのように自然と行われる。
二撃、三撃と続いて黒閃の打撃を撃ち込み夏油傑のポテンシャルは120%にまで上り詰める
だが相手もただでは転ばない、自分の死というインスピレーションを糧に領域展開という上澄みへの道を切り開いていた
「今なら出来るよね領域展開」
自閉円頓裹
口の中で掌印を組むとは、自分の身体は無制限に変形可能なのか
「流石の君でもゲームオーバーなんじゃない?」
「今際の際で領域展開を会得したか...ならばこちらも...来い、漏瑚」
「領域展開」
蓋棺鉄囲山
「チートすぎだろ...ッ!!」
「他の”特級”に比べたら私は大した事ないが、コレでも私は日本に数少ない”特級術師”だからね。君には悪いが取り込ませてもらうよ”彼”の為にもね...」
そう、私はツギハギ呪霊の情報を聞いた時に一つある考えが浮かんでいた、この呪霊の術式なら”天与呪縛”で苦しんでいる彼を治してあげられるのでは無いかと。
彼の為にも、君は絶対に取り込ませて貰うよ。
だから徹底的に君の心を折る
「更に駄目押しの特級仮想怨霊...玉藻の前」
死に際に辿り着いた領域展開、並の術師では何も出来ずに殺されていただろう。だが呪霊の目の前に居る男は数少ない特級の内の1人、そして誰よりも己に向き合い努力してきた術師である。
故に夏油傑は負けない
「ぁ...あぁッ!....あぁああぁあ!!!!」
「君はどんな”味”がするんだろうね」
ツギハギ顔呪霊が最後に見た顔は怒りでも無く、絶望でも無く、目の前のご馳走が待ちきれない子供の様な顔だった