【おまけ】よりみち・じゅじゅさんぽ・斜め横の裏通り
【おまけ】よりみち・じゅじゅさんぽ・斜め横の裏通り
本編(第五話)のその後の放課後。高専の自習室サイドのお話です。
一昨日の『確認しました。お疲れ様』というたった十一文字の事務連絡を本気で引きずり、言われた通りに宿題をやってふて寝した最強の少年。
そんな彼を、新宿三丁目のカフェから戻ってきた親友が、最高にいい笑顔で煽り倒すおまけコメディ。
本編の大人の境界線(月9ドラマ)の裏側で繰り広げられていた、16歳たちの等身大な放課後の空気感をお楽しみください。
※本編(第五話)の地続きのギャグパート(ラノベ風)です。
※名前変換機能( #name#(さん) )に対応しております。
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「……ねえ、硝子」
机に突っ伏したまま、干からびたトカゲのような声で五条悟は呻いた。
「俺さ、一昨日#name#(さん)に送った渾身の『パスワード付きZIPファイル』のこと、まだ引きずってんだけど……」
呪術高専の自習室。
灰皿にタバコを押し付けながら、家入硝子は心底呆れたように鼻で笑った。
「あんたまだあの『十一文字の悲劇』引きずってんの? 往生際が悪いよ、ZIPファイル君」
「だってさあ!! 補助監督の胸ぐら掴んでまで必死に作ったのに、開けて秒で『確認しました。お疲れ様』って、たった十一文字だよ!?」
ガバッと跳ね起きるなり、五条は持て余した長い手足をバタバタとさせた。
「その後の『ご飯行かない?』も『勉強して寝なさい』って一蹴されるし……俺、昨日マジで一晩中、部屋で大人しく教科書広げて勉強したんだからね!? 最強の俺が、言われた通りに宿題やって寝たんだよ!?」
「ぎゃははは! 偉いじゃん、最強の高校生」
「あーあ! 今頃#name#(さん)何してんのかな……。俺のこの健気な頑張りに気づいて、今すぐ『よく出来ました、ご褒美に夜ご飯奢ってあげる』とかメールしてくれないかな……」
ガラッ、と立て付けの悪い扉が開いたのは、五条が叶わぬ妄想を口走っていたまさにその時だった。
「やあ、悟。まだ自習室で灰になっていたのかい」
「あ、傑! おかえり! 聞いてよ傑、#name#(さん)がさぁ――」
任務から戻ったばかりの夏油傑は、縋り付こうとする親友の言葉をあっさりと遮り、**空いている椅子の背もたれに上着をバサリとかけながら、**フッと意地悪な笑みを浮かべた。
「ああ、そのZIPファイルの話なら、もう本人から直接聞いてきたよ」
「はあああああ!?!? 本人って……#name#(さん)!? どこで!? なんで!?」
椅子からガタッ!!! と跳び上がり、目隠しをひん剥く五条に向かって、夏油はこれ以上ないほど涼しい顔で言い放つ。
「さっき、新宿三丁目の凄くお洒落な隠れ家カフェでね。偶然会って、二人でソファーに座ってパスタとハンバーグをシェアしながら、君のその『十一文字で自爆して凹んでる姿』を最高の肴にして、楽しいランチタイムを過ごしてきたところさ」
「お前ッ!!! 何俺のいないところで#name#(さん)と抜け駆けしてんのさ!!」
驚愕と嫉妬のあまり顔を真っ赤にして、五条は夏油の胸ぐらに掴みかかった。だが、親友は全く動じない。むしろこの状況を心の底から楽しんでいるようだった。
「しかも俺の不憫な話をランチのオカズにしたな!? #name#(さん)何て言ってた!? 俺のことカッコいいって言ってた!?」
「いや」
縋り付く五条の手を優しく、けれど冷酷に引き剥がしながら、夏油は極上の笑顔でトドメを刺した。
「『学生と社会人が夜食事なんて、家族じゃないし。ましてや相手は十六歳の高校生だから、変な誤解をさせないために中途半端に誘ったりはしない』……と、完璧な大人のルールで、君の好意を一刀両断にバッサリと切り捨てていたよ。君には少し刺激が強すぎる大人の教育だね」
『家族じゃないし』『十六歳の高校生』。
その鉄壁のパワーワードが脳天を直撃し、五条はショックのあまりその場に膝から崩れ落ちた。
「うわあああああああ!!! #name#(さん)まじで容赦ない!!! 家族じゃないしって何それ冷たすぎるよォォォ!!」
「ギャハハハハハ!!! 家族じゃないってよ、最強!! ほら、諦めて勉強しろ、十六歳の高校生!!」
「傑ずるい!! 俺も今すぐ新宿三丁目のそのソファーに跳んでいきたかった!!! 俺だって#name#(さん)とパスタ食べて、大人な会話したかったのにィィィィィ!!」
最強の呪術師が、たった一人の大人の女性に完璧に転がされている。
東京都立呪術高等専門学校。今日の放課後も、平和な喜劇が繰り広げられていた。