【積水ハウス・地面師詐欺事件の実行犯が語った真相】地主不在の内覧会でカミンスカスが演じた“なりすまし役との電話”…「寿司食べながら待っていた」詐欺現場のリアル
地主になりすまして他人の土地を売り飛ばし、カネを騙し取る──「地面師事件」と呼ばれるグループ犯罪は、ネットフリックスのドラマが大ヒットして注目された。モデルになったのは2017年、積水ハウスが五反田の一等地に佇む老舗旅館「海喜館」をめぐり、地面師たちに55億円を詐取された事件である。 【図】積水ハウス55億円詐欺事件「地面師たちの人物相関図」
ライターの河合桃子氏が取材した実行犯「カトウ」は逮捕当時、「連絡役」と報じられた男だった。その告白から事件の実態に迫る『地面師連絡役カトウ』は第32回小学館ノンフィクション大賞を受賞、6月18日に刊行予定だ。カトウが目にした地面師たちと積水ハウスのやり取りは、ドラマの鮮やかな手口とはまるで違うドタバタ劇だった──。河合氏がレポートする。【シリーズ第2回・前編】
地主役が内覧会に立ち会わなかった理由
他人の家の敷地や屋内に勝手に入り込み、所有者や関係者になりすまして売り飛ばす。それが地面師の“仕事”だ。 シリーズ第1回では、積水詐欺事件の主犯格とされる3人──相手方との交渉を担う「前周り」のカミンスカス操(逮捕当時59歳)、偽造書類の作成・手配を得意とする内田マイク(同65歳)、指示役の土井淑雄(同63歳)のもと、カトウがかかわった詐欺の“下準備”を描いた。地主になりすます“役者”の面接や偽造された書類の出来が意外なほど杜撰だったとカトウは証言したが、それは積水ハウスとの交渉が本格化してからも同様だったという。 買い手と所有者が現地を確認する「内覧会」は、契約を結ぶ上で重要な段階と言える。海喜館の地主女性・海老澤佐妃子氏は当時病気で入院しており、旅館は一時的に無人状態になっていたため、地面師たちはそこにつけこんだ。 ネットフリックスのドラマ『地面師たち』でも、地主の不在時間に勝手に敷地内に侵入して内覧会を行ない、買い手である大手企業社員たちを騙して乗り切るシーンはスリル溢れるヤマ場だった。 カトウは、地主女性の「なりすまし役」である長谷川香織(同63歳、仮名)と、交渉役のカミンスカスらの間に立って情報伝達をする「連絡役」だった。そのため、内覧会には立ち会っていない。 2017年5月19日、内覧会当日は長谷川と運転手の男と共に、新橋駅前付近に路駐した車内で待機していたという。地主役である長谷川が内覧会に立ち会っていないことには理由がある。カトウはこう説明する。 「リスク回避です。ドラマでは土地所有者の尼僧になりすました小池栄子が涙ながらに迫真の演技を見せていましたが、長谷川は詐欺の経験のない“ただのおばちゃん”だったし、そこまで期待できない。だから土井会長と小山さん(カミンスカスの旧姓)とで話し合い、ボロが出ないよう長谷川は急遽、『病院に行く』ことにしたんです」 カトウは内覧会前日、長谷川らと港区虎ノ門の弁護士事務所に向かっていた。 「本人の代わりに弁護士が内覧会に立ち会う旨を書いた委任状を作るためです。俺は車内で待機し、長谷川らが事務所に入ってやり取りをした」 もちろん委任状作成依頼を受けた弁護士は、地主が偽者だとは知らない。偽造書類で本人確認が行なわれ、委任状が作成されたようだ。そして長谷川は弁護士に、海喜館に入るための鍵も渡した。この鍵は誰が作ったものなのか? 「マイクさんの配下の者だと聞きました。旅館の正面玄関は人通りがあって目立ちすぎるから、北側の目黒川に面した勝手口の扉の鍵を破壊したそうです。そしていかにも古い感じに施した南京錠を取り付けたと。弁護士に渡したのは、その南京錠の鍵というわけです」
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