「国債発行総額増やさず対応」 首相、市場の信認獲得に腐心 令和8年度補正予算

参院本会議で令和8年度補正予算を成立させ、起立、一礼する高市早苗首相(右)や閣僚ら。給付付き税額控除についての決断も迫る=6月5日、参院本会議場(春名中撮影)

5日成立した令和8年度補正予算で、高市早苗首相は財政規律に配慮する姿勢をにじませた。財源は全額を借金である赤字国債で賄うが「発行総額は増やさない」と強調し、財政の悪化を懸念する金融市場を牽制。「日本売り」による「悪い金利上昇」や円安進行に、なんとかして歯止めをかけたい狙いが透ける。

発行量は差し引きゼロ

8年度補正の一般会計総額は3兆1135億円で、財源は赤字国債の発行で捻出する。首相は「発行総額を増やさずに対応でき、国債市場に影響を与えることなく実行可能だ」と強調する。

財務省によると、7年度の国債発行は税収の上振れなどで計画より3兆円程度圧縮できる見込み。赤字国債を発行しても、市場に出回る量は差し引きで変わらないというロジックだ。

気がかりなのは、長期金利の動向だ。昨年10月の政権発足時は1・6%台だったが、5日は2・6%超。長期金利の過度な上昇は企業や家計の資金調達コスト増を通じ景気の下押し圧力になりかねない。国債の利払い費が急増して財政が逼迫する恐れもある。

最近の長期金利の動きは、経済成長による「良い金利上昇」だけでは説明しきれない。首相が補正予算編成を視野に入れると表明した5月半ばに終値が日本相互証券の記録が残る平成10年12月以降で最高の2・8%まで上昇したのは、財政悪化懸念からの国債売りによる悪い金利上昇の側面が強かった。

日本売りは円にも波及

中東危機に伴う原油価格高騰が続く中、日本売りは円相場にも波及し、5日夕時点で1ドル=160円近辺の安値に沈む。ある政府関係者は「首相はマーケットの動きに相当敏感になっているようだ」と話す。

もっとも、今回の補正で国の借金が増えることに変わりはない。首相が掲げる消費税減税の財源探しは手つかずで、政権の「責任ある積極財政」の予算措置の議論もこれからだ。首相が市場の信認を得るのに腐心する局面は当面続きそうだ。(中村智隆)

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