高2自殺訴訟、いじめ一部認定も遺族「法律の壁実感」 長崎地裁判決
長崎市で2017年に中高一貫の私立海星高校2年の男子生徒(当時16)が自殺したのは、学校がいじめ対策を怠ったからだとして両親が計約3200万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が8日、長崎地裁であった。松永晋介裁判長(村上典子裁判長代読)はいじめに対する学校の責任を認め計330万円の支払いを命じた。一方、自殺との因果関係は否定した。
裁判の主な争点はいじめの有無と、それが自殺の原因と言えるか否かだった。
判決は生徒が書き残したノートの詳しい記述を重視。中学3年時におなかの鳴る音をからかわれたことや、それを気にして間食のため閉じこもった小部屋の扉を無理やり開けられそうになったことをいじめと認定した。
学校の担任教諭はこうした状況に「気づけなかった」としていたが、判決は学校のいじめ防止の取り組みを問題視。対策が周知徹底されていなかったことなどをあげ、小部屋に閉じこもるという「相当異様な状況」を把握できなかったのは取り組みが講じられていなかったことが原因だと断じた。
一方、高校進学後はいじめは存在せず、中学3年時のいじめが直ちに自殺につながるようなものではないとも指摘。高校進学時に生徒が葛藤を抱えていたことなどを考慮した上で、「生徒を取り巻く様々な複雑な要因が相互に作用し合って自殺に至った」と判断した。
生徒の自殺をめぐっては、学校側が弁護士や臨床心理士ら5人の第三者委員会を設置。第三者委は生徒が書き残したノートや遺書に基づき2018年11月、報告書をまとめた。
報告書では男子生徒が学校でおなかの鳴る音をからかわれたことなどを「いじめ」と認め「自死の主たる要因であることは間違いない」とも記述。しかし学校側は「論理的飛躍などさまざまな問題がある」などとして受け入れない姿勢を表明し、両親が2022年11月、損害賠償を求め提訴していた。
母親「息子の尊厳守られてない」
「うれしい反面、まだ納得いかないのが正直な気持ち」
生徒の父親(59)は判決後の会見でそう複雑な胸の内を語った。学校側の事後対応などについて主張が認められず「残念で法律の壁を実感した」とも話した。
毎年4月の命日には、両親で息子が最期を迎えた公園を訪れ献花している。「判決後にまた訪れて(訴訟で)勝ったと報告したい」と考えていた。
会見に同席した母親(54)は、「いじめの行為を認めてくれたことは(男子生徒に)良い報告ができる」としつつ「息子の尊厳が決して守られたとは思っていない。必ずあなたの尊厳を守るからと伝えたい」と話した。
息子が命を絶って9年。母親は「無念さを晴らしたい思いがここまで支えてきた。いじめで苦しんでいる人が救われるような社会になってほしい」と語気を強めた。
一方、学校を運営する海星学園は理事長名で「これまでの主張が一定認められた」などとするコメントを発表。学園側に責任があるとされたものについては「判決内容を精査し、今後の対応を検討する」とした。
第三者委と司法で異なる判断
裁判では、学校側がいじめ防止対策推進法に基づいて設置した第三者委員会が出した報告書が判決でどう判断されるかが一つの注目点だった。
第三者委は「中学3年の時から高校進学後にかけて、いじめがあった」と認定。そのうえで「自死の主たる要因であることは間違いない」とも結論づけた。
しかし判決がいじめと認めたのは中学3年時のものにとどまり、高校進学時は認めなかった。生徒が高校に進学してからは中学時と違い、クラス内に「からかったり、からかわれたりする状況にはなかった」と認定した。
原告の代理人弁護士は「第三者委の報告書と司法判断が異なることは、散見されている。証拠構造も違うし、判断者も違うので、結論が異なることは仕方ないことだと思っている」と語った。
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