儂が小学生二年生の頃、廊下の机の上に置かれていた小さな水槽に、目視で25~30cmはありそうな大きなア力ミミガメがいた。
立派な肉付きで、甲羅の全高も高い。
濃い深緑とはいえ黒化していなかったので、また大きさから言ってもおそらく雌だったのだろう。
そいつは体がでかいのに、虫籠レベルの狭い透明なプラ水槽に入れられていて非常に可哀想だった。
方向転換など一切できない。
狭いガレージに停められた車と同じだ。
甲羅に手脚を縮めこんでじっと前を見ているだけだった。
それ故に水も多く入れられなかったのだろう、水深はひどく浅かった。
浮上もできない環境で多量の水を入れられてしまっては、窒息してしまうからな。
あれでは甲羅の形成に悪影響が出かねん。
儂はそいつが気の毒で気の毒で、誰が世話しているのかもわからないそいつに時々こっそり餌をやっていた。
警戒していたのか、腹が減っていなかったのか、餌が不味いのか、儂の眼の前では一度も喰わなかったがな。
儂はその年の秋に遠方へ転居してしまったので、その後の奴の消息は全くの不明だった。
ふとこの頃、儂の飼っているアカミミが高齢且つ大きめなこともあってか、そいつの存在を30年弱の時を超えてよく思い出すので、元在籍校へ質問メールを出すという、我ながらまた妙なことをした。
あの年に廊下の狭い水槽にいたアカミミガメはどうなりましたか。
もう死んでしまっているかもしれませんが、当時心配で。
という旨のメールだ。
すると本日早速校長先生から返事が来た。
ありがたい。
当時の教員にも亀の存在を聞いてくださったそうだ。
いたような気もするがわからないとのこと。
とはいえ、学校の生き物は天寿まで飼育し、死んだ生き物は先生と子どもたちで弔うとのことで、それを聞いて儂は安心した。
当時の先生に尋ねてもらってお手数おかけしましたと。
先の安心した旨も添えて返信した。
あいつにとっていい環境とは全く言えなかったが、あいつももう広い場所に行けたかな。
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