自宅から通いやすいところにある音楽教室で、大人の習い事としてサックスを始めたのは六年前、娘が小学六年生の二月の時だった。程なくして中学に入学した娘は吹奏楽部に入って、元からの憧れなのか父の影響かなのかは分からないが、父と同じサックスを始めた。
コロナによる緊急事態宣言が断続的に発出され、密室での楽器の練習などままならなかった時期である。そんな中でもどうにかやり方を工夫して、父は月に二回のプロのレッスンと週末の自主練に励み、娘も時間や場所の制限を受けながらも吹奏楽部の活動を週四で続けていた。
父は幼少の頃にエレクトーンを、娘は小学生の間ピアノを習っていたので二人とも楽譜は読めたし、サックスを始めた時期も数ヶ月の差でほぼ同時である。どっちが早く上手くなるかな、なんて競争する気持ちがあったりもした。いうて父にはプロのレッスンが付いていたから、最初の半年くらいは明らかに父の方が上手かったと思う。
とはいえ練習量は正義である。娘が週四で練習をしていると社会人の趣味のレベルでは付いていけない差がつき始めた。それでもまだ娘が中学の三年間は課金パワーに助けられながら追いすがっていたかなと思う。
差が決定的になったのは娘が高校に入ってからだ。吹奏楽の強豪校に入学し、吹奏楽部でサックスパートに入った娘は週六で練習を始めた。私立の吹奏楽強豪校である。各パートにプロの講師を雇っているのだ。そりゃもうメキメキ上手くなり、二年生の冬にはソロコンクールにも参加した。ここまで来たらもう上手さで競う気などさらさらない。はるか彼方に遠ざかった娘の背中を眺めながら目を細めるばかりだった。
一方の父も着々と上手くはなっていた。出せなかった音が出せるようになり、少し難しい奏法にも挑戦し、練習する課題曲のレベルも徐々に上がっていた。とはいえコロナ禍においていわゆる発表会のようなものは開催されず、ただ趣味で楽しく演奏する以外にどこかで披露するといったことなどは特になかった。
転機が訪れたのはサックスを始めて五年が過ぎた去年の夏、コロナ禍で中断していたサックスの発表会が再開されるとなった時だ。まあ大人の習い事の発表会なので参加はもちろん任意だけれども、中学生の時にエレクトーンで参加した最後の発表会以来、三十年以上ぶりの発表会に参加すると決めた。
発表会の日、完璧、ではなかったものの、大きく破綻することもなく無事に演奏を終えて、他の生徒さんの演奏を聴いていた。その途中、え?それありだったの?となったのは、父と年齢が同じくらいの女性がクラリネットを吹く娘さんとデュオで演奏していたのを見たときだった。そこで、ほうほうほう、それはそれは、ねえ、来年は…。ってなったのが今から約九ヶ月前の話。
さあやっと今日の話が書ける。今年の発表会の日程が分かったとき、真っ先に相談したのは他でもない娘である。かくかくしかじかで一緒に発表会に出てほしいんだけどどう?と水を向けると悩む間もなく快諾してくれたので、今日まで曲を選んだり、自分たちの編成に合わせて編曲したり、それぞれのパートをそれぞれで練習したりしていた。
今日は父の仕事も娘の大学も休みで、どちらも決まった予定がなかったものだから、初の合同練習を行う運びになった。実際に合わせてみて分かった楽譜の修正点を話しあったり、お互いの演奏を聴いたりしていたら、娘が「お父さんここさ、吹くときどんなこと考えてる?」とか言いだした。「グリッサンドはね…」と娘の講釈は続く。
曰く、一つ一つの音符を意識するのではなくて、歌うように吹くのだと。運指は歌の補助で良いのだそうだ。「だって音の粒を聞かせたい場面だったら音符で書くでしょ?でもここはグリッサンドだからそれとは意図が違うわけ。」先週のレッスンでサックスの先生に言われていた「グリッサンドの途中の音は聞こえすぎてはいけないんですよ。」を、違う言い方で指摘されていたのだ。
数分後、「いま出来てた!そうそう!全然変わったでしょ。」とお褒めの言葉をいただいた。本当に、ただの数分、一つのアドバイスで、突然そこが上手くなったのだ。レッスンで同じ箇所を指摘されたけど、まだどうにもなってなかったところが!
こんなに嬉しいことってあるかな?同時期に同じ楽器を始め、父よりずっとずっと上手になった娘に教わり、父が再び一歩娘に近づける瞬間って!何もかもが嬉しくて、この気持ちを書き残しておきたくて、いま増田に書いてしまった!
本番まであと三ヶ月くらい。まだまだ楽しい瞬間はいっぱいありそう!
なんだかずいぶん伸びていて気恥ずかしい。なおこの文章は全文が天然知能で書かれてます。ちゃっぴーに添削はしてもらった。
https://chatgpt.com/share/6a24c141-532c-83a6-ba90-66b441851c3e
そうなんだすごいね
大人の習い事としてセックスを始めたのかと思った
すごいね!
真面目に娘が欲しい人生だった。障害者で無職で福祉施設で虐待を受けてトラブルになってる自分とは大違いである。😟これが若さか
いいなあ すごく素敵 こんなに嬉しいことなんてそうそうないよね。 もうすぐ父の日だねえ
AIのある話だねえ
👍