狼と、星
ここら辺ずっと「トッドさん優し……ん? トッドさん……?」「トッドさん? 信じてるよ?」「おいお前やべえやつじゃねえか!!」になってました
最近ダンガンロンパにハマり、パロ書こうか迷ってます☝️
もし書くことになったら、あなたの推しから死んでいくことを覚悟してください
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『レム……俺と一緒に、女の子がいたはずだ。どうなった?』
『お、自分が捕虜って言われてすぐ気にするのが女の子? あの子らって、君にとって大事な相手ってことでいいのかな?』
『……もっぺん聞くぞ。俺と一緒にいた女の子は?』
『強情だなぁ。俺は嫌いじゃないけどさ。……無事だよ、無事。二人とも元気だ。ちょっと元気すぎるくらい元気』
『──っ、本当か!? どっちもなんて半端な答えはやめてくれ! 青い髪の子が無事ならそれでいい』
『ずいぶん薄情な答えだな!?』
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「おやおや、バッスーらしくない。まあ、それもまた新鮮で物語には必要不可欠な要素ですから、僕はいいと思いますよ」
そんなことで、セシルスが知るスバルから大きく外れるわけでもない。
何故なら、セシルスの中で、スバルは『怒りっぽくて落ち着きがないが、最後には必ず丸く収める約束破りの常習犯』という役柄を背負っているからだ。
「僕と出会った時のバッスーは子供でしたが……ふむ、やはりこの姿だと目付きが目立ちますね」
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『俺が捕虜なのは受け入れづらいが、受け入れるとして……なんでレムたちと離れ離れにされてる?』
『会いたいならあとで会わせてやるさ。お前さんが俺たちの質問に素直に答えてくれるんならな。……あの子らは今、牢に入れてる』
『牢屋!? なんでそんな真似を……ぐあ!?』
『囚われの身の自覚が足りねえ奴だな。てめえは聞かれたことに答えりゃいいんだよ!』
『ジャマル、やめろ! また気絶しちまうだろ!』
『立場がわかってねえのが腹立つんだよ。首から上が無事なら喋れる。どうせ三本折れてんなら、あと二本も……』
『──ジャマル』
『……わかったよ』
『が、ぐ……っ』
『ちっ。トッドに感謝しとけ。胸糞悪ぃ』
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「──いきなりこれって、ちょっと暴力的やない? たとえ僕でもここまでせんけど」
ハリベルの場合は、ジャマルと違いスバルの第一印象がそう悪くなかったのも大きいだろうが、折れた指を踏み付けるとは、なかなかに思い切りのいいことをする。
「帝国って怖いところやね。なあ、セーさん」
「えーそうですか? ……というより、なんですか? その呼び方。面白いのでいいですけど」
「──さっきの映像に引っ張られてしもうたわ。スーさんって呼び方も結構引っ張られとる」
「えー、僕は変わらずバッスー呼びでいきますよ! なんかその方が面白いので!」
「そっか、まあええんやない?」
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『やれやれ、悪かった。ジャマルの奴は気が立ってるんだ。水辺でお前さんらを見つけたのはジャマルの部隊だったんだが……』
『だったん、だが……?』
『そこで、お前さんの連れの子にだいぶ抵抗されたらしくてな。部隊の仲間が半壊、隊長のあいつは面目丸潰れってわけだ』
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「見た目だけなら、お姉さんはか弱い美少女だものねえ。油断するのも無理ないわあ」
メィリィがけらけらと楽しそうに笑う。
レムが「見た目だけ……?」と訝しげに言うのをメィリィはスルーし、
「──でも、足が使えないのにそんなに抵抗できるなんて、流石ラムお姉さんの妹だわあ」
と、呟いた。
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『トッド、でいいのか?』
『へえ、よく聞いてたもんだ。そうだ、トッドだよ。で、そのトッドさんから質問だ。さっきも言ったけど……』
『素直に答えたらいいんだろ。……何が聞きたいんだよ』
『まぁ、望み薄だが、聞きたいことはひとまず一個だけだよ。――お前さん、『シュドラクの民』かい?』
『……しゅどらく?』
『ほら、やっぱりだ。その反応でわかった。お前さんは無関係だってな』
『おいおい、待てよ。まだ何にも答えてないだろ。いくら何でも早合点……』
『んなことないさ。士族を聞かれて偽る奴はいない。聞き覚えがない奴もな。それで『シュドラクの民』なんて言われても、誰も信じやしない』
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「────」
ラインハルトが、トッドの笑顔を凝視しながら、違和感に眉を顰める。
穏やかで、暴力的な素振りを見せない。スバルが心を許すのも納得ができる青年だ。だが、
「──勘だけど、彼は……」
◇◇◇
「──シュドラク……」
ロズワールが、そう小さく呟いて、
「──ああ、なるほど」
誰に言うでもなく、そう声が漏れた。
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『お前さんの荷物を漁ったら出てきたナイフ、あれはどこで手に入れたもんだ?』
『────』
『どうした?』
『――。あのナイフは俺の家のもんだよ。家宝だ』
『そうなのか? おいおい、それじゃ、お前さんちょっとしたもんじゃないか』
『え?』
『だって、剣狼の国紋が入ったナイフだ。聞いた話だと、ああいうのは皇帝から臣下が直接賜るもんだって。ってことは、お前さんも名誉の家系ってことだろ?』
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「──庇ったのか」
あのナツキ・スバルのことだ。
「話したら彼奴の身に危険が……」だのなんだのと考えていたのだろう。
状況からして、ナツキ・スバルがアベルをシュドラクの民と勘違いしても不思議はない。
「……合点がいった」
「え、じゃあアベルくんって王族なのか!?」
「そうですよ、バッスーのお父様! 閣下はヴォラキア帝国の……」
「ベラベラと話すなセシルス。ナツキ・スバルを少しは見習え」
「見習う……まあ確かに、閣下に蹴りかかるバッスーの度胸は見習いたいですけど……」
「そこではない」
「えっ、昴そんなことを……!?」
セシルスの横で菜穂子が慌てたような顔をするものだから、アベルは頭が痛くなった。
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『レム!』
『──っ、あなたは』
『ああ、よかった! 何もされてないか? どこも痛く……へぶっ!』
『ちょっ、いきなりなんですか!?』
『いや、悪ぃ……お、怯えさせるつもり、は……』
『怯えたりしません! 馬鹿にしないでください。……鼻や歯は大丈夫でしたか?』
『え!? 心配してくれたの?』
『は? 違いますけど?』
『はいはい、感動のご対面なのはわかったけど、ちょっとすれ違ってるじゃんか。さて、それでええと、君はレムさんってことでいいのかな?』
『――。さあ、どうでしょうか』
『おいおい、困ったな。強情にも限度があるだろうに』
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「そこもレムの可愛いところよ。他人に簡単に名乗らない慎重さも、レムの魅力だもの」
ラムがそう言って鼻を鳴らし、平たい胸を張る。
「──それにしてもこの男、怪しいわね。あまりレムに近づかないで欲しいわ」
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『数日後に補給隊が近くの町に向かう。その補給隊と一緒に陣地を出れば、余計な騒ぎを起こさずに済むだろうさ』
『なるほど、補給隊か。じゃあ、しばらくは厄介になってもいい……のか?』
『いいんじゃないか? そんなにすぐに戦況は動かないだろうし……ただ、ジャマルの奴には近付かない方がいいぞ。また靴を食わされたくなかったらな』
『それは骨身に染みてるよ。……レムも、その方針でいいか?』
『しかし、お前さんたちは変わった関係だねえ。どういう二人なんだ?』
『あー、風来坊か旅人だと思ってくれ。レムは俺の大切な子で、もう一人の一緒にいたのは知らない子だ』
『まだそんなことを言って……』
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「ああ、スバルくん……! そうですね、スバルくんからしたら、あの子と私を近づけたくないのは当然で……でも、レムは……」
レムが、過去と今の間で板挟みになる。
それをオットーは静かに見据え、
「──ナツキさん……なるべく、目立たないようにしてくださいね」
目立てば、それだけ命の危機が増える。
それが、オットーは心配だった。
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『そう言えば、あいつはレムと一緒に檻に入ってないんだな。どこいったんだ?』
『――。あの子なら、治療のために連れていかれました。川に飛び込む無謀をしたときにどこかで額を切ったみたいで』
『治療……治療? 治療って言ったのか!?』
『な、なんですか。そうです、治療です。それとも、あなたが嫌いなあの子には、傷の治療を受けさせるのも嫌だって言うんですか?』
『それも間違ってねぇが、問題はもっと別のとこだ。おい、トッドさん! ルイの奴はどこで治療を受けてる? どのテントだ!?』
『治療を受けてるなら、赤い旗のかかった天幕だ。でも、急にどうした?』
『どうもこうもねぇ、全員死ぬぞ!』
『なんだ? とにかく、追いかけるが……』
『いってください。止めないと、無茶をしそうです』
『なんで俺が言われなきゃいけないんだか……』
『……なんなんですか。あの人はずっと、私を振り回して』
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「──ベティーが近くにいない時にあまり無茶をするんじゃないのよ。あの……大罪司教の近くに行くのも、ベティーは心配かしら」
「分かりますわ。スバル様も、今は警戒していますが……スバル様は、お人好しですから」
自分に危害を加える人間にすら、暖かい感情を向けるのは、長所とも言えるが、どちらかといえば短所だ。
「──あんまり、ベティーの心に負担をかけるんじゃないのよ。いくらスバルでも、ベティーだって厳しいことを言う時はあるかしら」
それが、いつ来るのかは分からないが。
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『悪い! ここに、金髪の恐ろしいガキが――』
『あーうーあー!!』
『うわ、左手ついたのか? それは、うわぁ、きつい……けど、見たとこ、この子も普通そうじゃないか。額の傷も手当てしてもらって』
『く、ぁ……そ、そうか。頭の治療って、そういう……』
『こんなに懐いてる子を知らない子扱いして、大切にしてる子には冷たく当たられてる。……よくわからないけど、お前さん、大変みたいだな』
『……それは否定しねぇよ。俺ぐらい大変な目に遭う奴はあんまりいない』
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「──昴……」
菜穂子が、表情を暗く落とす。
ルイがなぜこんなにも昴に懐いているのかは知らないが、昴にとってそれは、あまり嬉しくないことに違いない。
どうせなら、レムといい関係を築ければよかったのだが。
「今更言っても仕方がないものねぇ。それに、レムちゃんだって、言い方が酷いだけで、本当はわかってくれてるはずだもの」
レムがそこまで性格の悪い子だとは思わない。
だから、菜穂子はレムを信じている。
「──頑張って、早くエミリアちゃんの元に……昴」
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『しかし、あれだな。こんなとき、治癒魔法でもあればバーッと傷も治せるのに』
『お? これまた贅沢なことを言うもんだ。治癒魔法なんてそうお目にかかれるもんか』
『――。やっぱり、そうだった?』
『そりゃな。火やら風やら起こすのと同じ感覚で、傷も病気も治せるなんてなったら便利だろうよ。お前さんの左手だって、あっという間に治ったろうさ』
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「──そうなんだ……エミリアちゃんとかレムちゃんとかガーフィールくんが使えてたから、みんな使えるのかと思っちゃった」
菜穂子が不思議そうに呟けば、
「そもそも魔法にも適性がありますからね。バッスーは陰魔法特化みたいですけど」
「エミリアちゃんは? どの魔法が得意なの?」
「え、えっと……私は、微精霊に頼ることが多いんですけど、大体は火属性……です」
「火……氷なのに?」
「えっと、火は温度を操るもので、氷は……」
菜穂子との会話に慣れていないのか、エミリアが焦ったような顔で受け答えをする。
「眠くなってきました! 魔法とか僕の専門外なので!」
「うん、やったら静かにしてよか」
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『けど、そうなると檻の中の嬢ちゃんも旅の連れ合いってことだろ? それなのに、なんでお前さんはあんな噛みつかれてるんだ?』
『……不慮の事故、かな。前はかなり以心伝心の仲だったんだが、今はちょっと色々あって完全に一方通行なんだ。長い目で見てほしい』
『俺はいいけど、お前さんは相当辛そうだな……。しかし、そうなると』
『あー?』
『さすがに、お前さんたちの娘って歳じゃないよな。どういう関係なんだ?』
『何度も言ってるだろ、知らない子だよ。でも、碌な奴じゃないのは確か』
『塩っ辛い対応だこと。……けど、檻の嬢ちゃんはこの子を気にしてたみたいだぜ?』
『それが厄介なんだよ……』
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「──ふむ、バッスーの諦めの悪さは本当に素晴らしいですね! 僕がバッスーの指を折ったとしてもバッスーは僕に変わらず接しそうですし!」
スバルは基本的に悪い部分よりいい部分を見て評価することが多い。
それに、スバルは自己評価が低いせいで、自分に加えられた危害は減点になりにくいのだ。
「いやあ、それにしても塩対応バッスーはなんだか新鮮な気持ちですね! 僕の知っているバッスーはいつも……」
「スバルくんマウントを取らないでください。全てのスバルくんはレムが知ります」
「おや? 随分と様変わりして……怒っておりますか?」
「いえ?」
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『さて、ひとまず傷の手当ても済んだし……さっそくだが、雑用を頼んでいいか?』
『陣地用の備蓄品だ。あれこれ必要だからと集められてるんだが、どうにも細々とした片付けが苦手でね。そこで、整理整頓が得意なお前さんの出番ってわけだ』
『……俺、整理整頓が得意だなんて言ったっけ?』
『いんや? けど、得意だといいなぁと思ったんだよ。あと、仮に得意じゃなくても、助けてもらった感謝で頑張ってくれるに違いないって』
『……いい性格してるな、トッドさん……一日二日じゃ終わらなそうだな……』
『なあに、補給隊の竜車が出るまでに片付いてくれたらいいさ。ははは』
『ははは……これも今日の稼ぎのため、レムを連れてエミリアたんの下へ戻るため……』
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「でも、昴は片付けるの得意よねぇ。私はあんまり得意じゃないから、羨ましかったわ」
「昴は細々した作業が得意だったからなぁ。日曜大工とかもよくやってたしな」
「日曜大工……? なんですかそれ!」
夫婦の会話にセシルスがひょこっと割って入る。
菜穂子はセシルスが入ってきた分少し隙間を開け、
「なんて言えばいいのかしら……? 簡単な大工、かな?」
「あー! それはバッスー得意そうです! 僕はそういうのは苦手……というより、華々しくないのでやりませんが!」
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『……それで、暗くなるまでずっと天幕の片付けをしていたんですか』
『……今度はどうしてあなたが舌打ちするんですか。この子はこんなにあなたに懐いているのに、そこまで非情になれる理由がわかりません』
『こいつが、俺の仕事を片っ端から邪魔するんだよ。人がせっかく片付けても、あとからあとから崩して散らかしやがる。おかげでちっとも進まねぇ』
『何もわからないんですから、仕方ないじゃありませんか』
『何もわからないのはレムも同じだろ。でも、レムはそんなことしない。以上、証明終了! QED!』
『またわけのわからないことを言って!』
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「──暖簾に腕押しだな。悪循環でしかない」
アベルが、頬杖をつきながらぽつりと呟く。
レムの怒りの原因が、スバルがルイを見捨てたことにある以上、スバルが歩み寄らなければ解決しないが、それをスバルに求めるのはあまりに酷だ。
「わけのわからないことを言っているのはいつものことだがな。発言の九割に意味が無い」
「えー? 九割はさすがに多くないです?」
「貴様は十割だ」
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『これは?』
『食事だそうです。陣地の方々に配られていたので、私がもらっておきました。……少しずつでも、移動の練習をしなくてはいけませんから。……早く受け取ってくれませんか。手が疲れます』
『わ、わかったわかった。えっと、レムはもう食べたのか?』
『は? なんでこの子が食べてないのに、私が先に食べるんですか。そんな身勝手な真似ができるはずないでしょう』
『エミリアたんとかベア子が作る飯とどっこいだな……』
『何をブツブツと……ぁ』
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「ベティーのご飯はもっと美味しそうなのよ!」
スバルの発言にベアトリスがぷりぷりと怒る。
遠くからメィリィが「美味しそう……?」と疑問符を浮かべるのが見えたが。
「──それに、エミリアよりかはマシだと思うのよ」
「でも、スバルは私のお料理美味しいって食べてくれるわよ?」
「──無理してるんだと思いますよ、って、言ってもいいやつですか? これ」
「──やめた方がよろしいですわ」
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『どうした? まさか、ちゃんと俺の顔を見たのが初めてだとか悲しいこと言うなよ?』
『そんなことは、ありませんけど……あの、涙が』
『涙?』
『……涙が、流れています。気付いていないんですか?』
『あれ、俺、泣いてる?』
『な、泣いています。どうしたんですか? 指の、ケガが……?』
『……お前と、こうして喋って、飯を食ってる。それが、嬉しかったんだ。……わ、悪い、全然わかんないよな。変なこと言ってる。気持ち悪いって思っても当然だと思う。……でも、本音なんだ。ずっと、お前とまたこうして、何でもない時間を過ごしたかったんだ』
『……私は、あなたが何を言っているのかわかりません。でも、あなたが涙を流すのを、笑おうとは思いません。不気味とは……思いますが、気持ち悪いとまでは』
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「──そう、泣くんじゃないわ。レムの前で」
ラムが、少しだけ瞳を細めてつぶやく。
言葉の鋭さとは裏腹に、とても優しい声色だったが。
「レムと話せて嬉しいなんて、当たり前のことよ。ラムは、毎日それを噛み締めているわ」
「姉様……私も、姉様と過ごす毎日が幸せです」
「流石ね、レム」
「何が流石なんですかねえ?」
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『レムは俺の体臭……この言い方だとかなり嫌だが、俺の臭いのことばっかり言うが、そいつだって似たような臭いがしてるだろ。それは無視するのかよ』
『――? 何を言ってるんですか。あなたとこの子を一緒にしないであげてください』
『……へ?』
『ですから、この子からあなたと同じ臭いなんてしていませんよ。苦し紛れに、おかしなことを言い出さないでください』
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「──なんや、大罪司教やのにその、おかしな匂い? っての、せえへんの?」
幼児退行が関係しているとしか考えられないが、
「おかしなカラクリやなあ。可哀想なスーさん」
「ハリベルさん、なんかバッスーに甘くないです?」
「──多分、さっきの記憶のせいやろなあ。いい子やなあって思うて」
「確かにバッスーはいい子ですけどー……僕の方がいい子じゃないですか?」
「それはない」
バッサリと切り捨てられ、セシルスが「えー」と不満げに喚く。
が、本当にそれはない。
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『──うお!? あんたは……ジャマルって、そう呼ばれて……がぁっ!?』
『ジャマルさん、だ。連れの女共々、躾のなってやがらねえ奴だな、オイ』
『あーうー!』
『ああ?』
『おい、子どもだぞ!』
『ガキだからなんだってんだ? 大体、聞いた話じゃ、てめえはこのガキにはやけに冷たく当たってるってな? それがいきなり宗旨替えか?』
『ちが……そいつを刺激しすぎると、あんたの方が後悔することになるぞ』
『言うに事欠いてくだらねえ。もっとマシな言い訳を作れよ』
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「──スバル!」
ジャマルと呼ばれる男が、スバルの横顔に蹴りを入れる。
「──あの子を庇うのを見たら、やっぱりスバルはスバルなんだなって思えたわ。でも、ジャマルさん? は、酷いと思うの。ここまでするなんて、少し乱暴すぎるんじゃないかしら」
エミリアが、憤りを露わにして拳を握る。
「ねえっ、そう思うでしょ!? レム!」
「ええ、その通りです。スバルくんはあの子を庇って……本当に優しいです。それに比べて、なんなんですか彼は。眼帯だってダサいです。悪趣味です」
レムが薄青色の瞳を細め、危うくツノが生えそうなレベルで怒りを滲ませる。
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『──おい、そこで何してる?』
『ちっ』
『用もないのにこっちに向かったって聞いてきてみたら、やっぱりお前さんか』
『トッドか。やけに過保護じゃねえか。帝都所縁の短剣がそんなにお気に入りか? こんな腰抜けに媚び売ってまで、よ』
『……ジャマル』
『やめだ、これに懲りたら、俺の目の届く範囲じゃ足下に気を付けるんだな。また、今みたいにすっ転んでも知らんぜ? はははは』
『ああ、クソ……痛ぇな……。あの野郎、女の腐った奴みたいな性根しやがって。やることが陰湿なんだよ……』
『お前さん、平気か? ジャマルに絡まれて災難だったな』
『俺はいい。それより、レムの方を……』
『あの嬢ちゃんなら、炊事を手伝ってるよ。椅子に座らせておけば手際はいい。ジャマルも、人目があるとこでは何もしない……はずだ』
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「──忌々しい方ですね。記憶さえあれば……あんな方、スバルくんに近づけなかったのに」
「落ち着いてよねえ、お姉さん。お姉さんが勝てても、お兄さんがひとりのときに狙われるだけだわあ」
「──分かってますよ。あの人が傷つかないように……レムは、レムに出来ることをするだけです」
レムが拳を握り、やる気いっぱいに息を吐く。
「──まずは……ここから出て、スバルくんに会う。これは、譲れませんね」
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『昼までどうしてた? なんか苦労はなかったか?』
『特にはありません。足のことも気遣っていただきましたし……私がお手伝いしたことなんて、ちょっとした炊事のことだけです。それも教わりながらですし』
『教わりながら……こう、体が覚えてたりとかは?』
『……それを期待していなかったと言えば、嘘になります』
『レム……』
『あれこれと試してみれば、何かしら手に馴染むものがあるかもしれないと思っていました。でも、そんなの都合が良すぎましたね。……どうしてあなたの方が辛そうな顔をするんです』
『どうしてって、それは……』
『――。あなたは、以前の私を知っている。それはわかります。疑うまでもない。ただ、あなたに何度、『レム』と呼びかけられても、それが私の名前であると受け入れることができません。それは何を言われても、でしょう』
『あ……』
『もしかしたら、この子が話してくれるなら別かもしれませんが』
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「──そんな奇跡が起きるほど、甘いもんじゃないもんなあ」
ハリベルが低く、小さく呟く。
『暴食』による被害はそんな甘く都合のいいものではない。
「にしても不憫やけどね」
スバルがルイを恨む気持ちは正当なものだが、レムはスバルよりもルイを信じている。
それが、可哀想でならない。
「まあ、記憶ないんやからしゃあないけど」
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『なんだなんだ、しかめっ面して。湿っぽい食卓じゃないか』
『実際の森の攻略はどれぐらいから始めるんだ?』
『他の陣地の展開が済んだら、一斉に取り掛かるって話だな。森は大きいし深い。一日かけても進める量はたかが知れてるが……』
『そうか。まぁ、サクサクと進めるわけにもいかないよな。森の中に何があるかわからないし、でかい魔獣もうろついてるような場所だ』
『──魔獣? 今、魔獣って言ったのか? あの森に魔獣がいるって?』
『いや、えっと、そう言ったけど……俺、なんか変なこと言った?』
『それはそうだろ。魔獣なんて、そうそう出くわすもんじゃない。魔獣大国のルグニカならともかく、王国との国境線でもないところなんだぞ。冗談じゃ、ないのか。おい、嬢ちゃん。答えてくれ。嬢ちゃんも、魔獣を見たのか? このバドハイムの密林で』
『その魔獣、というのが何なのか私には判然としませんが……それが、緑色の大きな生き物のことでしたら、見ました』
『頭に角は?』
『角ですか? ……確か、白くて歪なものが』
『どんな魔獣だった? 姿かたちは?』
『へ、蛇だ。でかい蛇。十メートル近くある、どでかい奴が一匹』
『一匹、一匹か……クソ、このでかい森だと本当に一匹かわからんじゃないか。だが、嘘をついてる風でもない。事情が変わった! 貴重な情報だった。それがなきゃヤバいことになってたかもしれん。助かった』
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「──やはりこの方は、記憶の有無に関係なく、あまり好きになれない方です」
レムに比べれば随分愛想がよく、立ち回りも要領もいい。
だが、心の奥深いところが冷えているのか、違和感は常に存在している。
「──スバル、くん」
レムが、不意に記憶を呼び起こす。
すると、ものすごく嫌な事実に気がついてしまった。
それは、記憶の混濁を起こしているレムには、すぐに気づくことの出来ない類のもので──
「──スバルくん」
◇◇◇
「──昴!」
賢一が、声を張り上げる。
何故なら──
「──シュドラクの民が森に住んでるなら、森を焼くための口実になるじゃねえか……!」
そう、すぐに察しがついてしまったから。
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『――。あの方たちが気掛かりなんですか?』
『……え? あ、ああ、そんな感じ。いや、我ながら恩人相手に不義理な真似をしてるって自覚はあるからさ。魔獣の話も不用意だったかもだし』
『──恩人、ですか』
『あの、トッドさんでしたか。……私は、あまりいい印象を抱いていません』
『恩を感じないとは言いません。感謝はもちろんしています。ただ……』
『ただ?』
『──相手の名前を聞こうとしない人を、信用するのは難しいと思います』
『た、たまたまじゃないか? レムだって、俺のことを名前で呼んじゃ――』
『──ナツキ・スバルでしょう。知っていて呼ばないのと、最初から知ろうとしていないのとでは意味が違うと思います。ただ、それだけですよ』
────────────────────
「──反論の余地がないのよ。あの男は……あの、男は?」
ベアトリスが頭を押さえ、痛みをこらえるように顔をしかめる。
それは、記憶が開く、この空間で幾度も味わったものだった。
「──スバル……」
ベアトリスが、下唇を噛んで、瞳を細く伏せる。
「スバルを殺したりしたら、絶対に許さないかしら」
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『──おい、起きろ起きろ。いつまで寝てんだ、お前さんよ』
『――? なんだか、変な臭いがしませんか?』
『悪い悪い、距離があるから大丈夫だと思ったんだが、鼻がいいとわかるよな。けど、決まったことはさっさとやらないと据わりが悪いだろ?』
『魔獣が潜んでるとなると、いったいどれだけこっち側に被害が出るか知れたもんじゃない。そう主張したら、指揮してるズィクル二将もわかってくれたよ。お前さんがくれた情報のおかげで、味方の被害が出ないで済んだ。大助かりさ』
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「──え、っ」
菜穂子が、瞳を見開いて、息を詰まらせる。
「──言いたいことは分かる、けど……でも、ここまで、しなくても……」
森が焼け焦げる。
それは、シュドラクの民と呼ばれる人たちの命に危険が迫っていることを意味していて。
「──仕方ないかも、しれないけど……」
分かっている。
トッドはただ、仕事をしただけだ。
責められるのも、おかしい。
「でも、本当にそれでいいの……?」
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『あなたが、悪いわけじゃない……それは、わかってます。でも、触らないで、ください』
『──ぉ?』
『うーっ!! うあ、あーあー!!』
『──っ、うるせぇな! 今、大変なんだよ! お前に構ってる暇は』
『……背中?』
『──矢羽根』
『きゃああああ――っ!』
『あー、うあー!』
『誰か! 誰かきてください! ……こんな、こんなの、大丈夫ですよ! だって、こんな浅い、矢傷くらいで……っ』
『──っ、まさか、毒?』
『──ダメ! 待って! 待ってください。待って……待ってぇ……っ』
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「──通りで、記憶と違う、はずだ」
アベルが顔を顰め、記憶の違和感に舌を鳴らす。
「このような空間に軟禁されるのみならず、記憶にまで細工をされているとはな」
遠い未来が思い出せない。
思い出せるのは、時系列に沿ったことだけ。
「──ナツキ・スバル」
スクリーンが暗転するのを、苛立ち混じりに見つめていた。
◇◇◇
「──っ! スバル──っ!」
エミリアが、声を高く張り上げて瞳を見開く。
「──あの女の子は……シュドラクの、子……?」
エミリアの手のひらが、真っ白になるまで握られる。
「──スバル……レム……」