あなたなんて知らない
パーフェクトレムが消え、9章ほとんど消えましたが、随所にあった伏線やパーフェクトレム導入についてはそのまま行きます!
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『……えい、ゆう』
『そうだ。そうだよ、レム。俺は、お前の英雄だ。ずっと、お前を……』
『────』
『レム?』
『──ぅ』
『なんだ? 焦らなくていい。レム、俺に何を……』
『いったい、あなたの目的はなんですか。私に何をするつもりなんです! 英雄なんて、いきなり……それに、レムって誰のことですか? 答えてください!』
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「──! スバルくんの首を……! 何をやっているんですかレムは! スバルくんは、友好的に接してくれているのに……!」
レムが、スクリーンの中で暴挙に出る自分に恨めしそうに怒鳴る。
記憶喪失により混乱していると言い訳したいが、それを差し引いても余りある蛮行だ。
スバルがレムを見限らずに守り続けてくれたことが、奇跡だと感じるほどに。
「本当に、スバルくんは優しい方です。過去の私を、殴りたいですが」
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『喋らないなら、喋りたくなるまで続けるだけです。長引いても意味はありませんよ。さあ、答えてください。あなたの目的は……』
『あーうー!』
『──きゃあ!?』
『うー! ううぅー!』
『な、なんですか、あなたは……やめてください! 今、それどころじゃ……』
『お前! レムから離れろ、この野郎!』
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「これはこれは、なかなか大胆な行動に出ましたね! 確かにバッスーの顔は凶悪ですが、いきなり首を絞めにかかるとは……思い切りがいいですね!」
セシルスがそんな風にあっけらかんと言い放つのを、レムは苛立ち混じりに睨み、
「──この時は、混乱しててどうかしてたんです。色々、信用出来ない要素が積み重なってて……スバルくんの顔でこんな暴挙に出たんじゃありませんから」
レムが声を低くしてそう言うのをセシルスは「なるほど!」と聞き流した。
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『あうー! うー、ううぅー!』
『クソ、なんだこいつ……! ジタバタと……ええい、大人しくしろ! レム、無事か!? 何ともないか!?』
『な、何ともありません。むしろ、あなたの方こそ、さっきから何度も……』
『まさか、立てないのか?』
『い、いえ、そんなはずは……こんな、こんなの……っ』
『長いこと寝てたから、足腰が弱って? いや、でもさっき俺を引きずり倒した腕力は、寝たきりだった人間のもんじゃなかった。──まさか、姉様が戦った影響のフィードバックか?』
『……俺のせいだ』
『あなたのせいって……あなたが、私に何かしたんですか!?』
『いや、それは言葉の綾なんだけど……』
『そもそも! あなたは誰で、私は誰なんですか!?』
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「クルシュさんと同じ……」
エミリアが、スクリーンの中で癇癪を起こすように怒鳴るレムを見つめてそう呟く。
自分が誰なのか、今のレムは分かっていない。
まっさらの、何も知らない状態なのだ。
「それって、すごーく大変。私も、そんなことになったら、スバルに名前とか、いろいろなことを聞かなきゃいけなくなるもの」
◇◇◇
「──レムの心労は想像に難く無いですけれど……スバル様の心労は、それ以上ですわね」
レムのことをどれだけ大切に思っていたか、フレデリカも少しだけだが知っている。
だからこそ、こんな言い方をされて、スバルが傷つかないわけがないと思う。
「──どちらが悪いわけでもありませんけれど」
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『レムだよ。それが、お前の名前だ』
『正直なこと言って、俺も何が起きたのかはっきりとはわかってない。ただ、俺たちは一緒にいた仲間とはぐれて、どこかわからない場所にいる。それがヤバいことだってのは、お前にもわかってもらえるだろ?』
『それは……』
『すぐの助けは期待できない。俺たちはどうにかして、ここから助かるために行動しなくちゃいけないんだ。だから……』
『だから、なんですか? 私に何をしろと? 足もろくに動かない、私に』
『こんなこと言うとまた怪しまれると思うんだけど、いてくれるだけでいい。お前が呼吸して、喋って、その目で周りを見ててくれるなら、それだけでいいんだ』
『――? 危険がないか、目で見て知らせろという意味ですか?』
『ちょっと違う。けど、それでもいいんだ。頼むから、この場は俺を信じてくれないか? 命に代えても……いや、命に代えたら意味がねぇから、命懸けで俺がお前を守る。必ずだ。だから』
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「────」
ラムは黙って、スクリーンを見つめる。
叶うなら、スバルにはもう少し頭のいい立ち回り方をして欲しかったものだが、この状態のスバルにそれを求めるのも酷な話だ。
ラムだって、この瞬間に立ち会えていたなら多少取り乱していたと思うから。
それに、レムの警戒心は高く、スバルを信用する気は微塵もない。
この状態で信頼関係を築けと言うのは、なかなかに高難易度だ。
「──それにしても、バルスは役に立たないわね。もう少しまともに喋ったらどうなの」
「違います、姉様。スバルくんは精一杯伝えてくれています。私の、心持ちの問題ですから……」
「──そう。レムがそう思っていても、ラムはやはりバルスが悪いと思うわ」
「姉様……!」
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『あの子を、助けないんですか?』
『……複雑なんだよ。あいつとは同じ場所にいたけど、仲間ってわけじゃないんだ。むしろ、仲間とは真逆の立場。放置しても、心は痛まない。あいつは置いていく。……足手まといどころか、危険要素は連れ歩けない』
『そう、ですか』
『ああ、そうだ。俺だって、目覚めがいいとは言えないけど……』
『──やっぱり、虚ろでも、自分を信じて正解だったみたいです』
『──が』
『耳障りのいいことを言って私を誘い、挙句に女の子は見捨てる。そんな相手に、どうして信じろなんて言われて信じられるんですか。ふざけないでください』
『そんな邪悪な臭いを漂わせて、何も企んでないだなんて白々しいですよ!』
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「──正解、か」
アベルが、レムの言葉にその美しく形の整った瞳を細め、隣に座るハリベルにギリギリ聞こえるくらいの声量で呟く。
「閣下、どうかしましたか?」
「隣に来るな。席へ戻れ」
「えー、もう飽きてきました」
「──ナツキ・スバルが仮死状態で、それを解放させるために見ているという話だったであろう。聞いてなかったのか」
「はい、なんか聞いてなかったです」
「──なら、せめて大人しくしていろ……」
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『──ッ、レム!?』
『──レム! 出てきてくれ! 頼む! 俺が悪かった!』
『レム――! どこだ! 返事してくれ! 頼むから、俺の傍から離れないでくれ!!』
『レム――! 返事してくれーっ! お願いだ、俺が悪かった!』
『れ──』
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瞬間、弓矢のようなものが、スバルの身体を貫く。
「スバル──!」
ベアトリスが、その瞳を大きく見開いて叫ぶ。
レムの仕業ではない。
仮にレムが殺したいほどスバルを嫌っていたなら、あのまま絞め殺しているだろう。
それに、ルイを連れて、足が不自由な状態で弓矢を入手し、スバルを狙撃できる場所まで移動するのは無理だ。
「そのはず、なのよ。そう思いたいかしら」
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『死ん、だ……のか』
『クソ、最悪だ……』
『──レムを見つけ出す』
『それに、俺を殺した奴がいる。……さすがに、あの弓矢がレムの攻撃ってことはないはずだ』
『──コル・レオニス』
『……ダメだ、反応がない。よっぽど遠くにいかれたか、そうでなけりゃ、レムが俺のことを味方だと思ってないから、か?』
『クソ、ちくしょう……なんでなんだよ……! せっかく、せっかくレムが起きてくれたのに、どうして俺はレムと……』
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「森の中……ここは違う国なのよね? だったら、戦争中で、被弾しちゃったとか……?」
菜穂子が小さく呟く。
すると、
「鋭い考察ですねお母様! ここはヴォラキア帝国、僕と閣下のいる国です!」
「閣下……あ、奥にいるアベルくん? のこと?」
「アベルくん! いい響きですね! バッスーの面影がある!」
「────」
セシルスと菜穂子のやり取りにアベルが顔を顰めたのは、言うまでもない。
「そして、争いが原因ではないと思います! この周辺はどちらかと言うと──」
「言うと?」
「──それは見て確認しましょう! ほら見てください! バッスーが早くも迷子に」
「昴──!」
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『せめて、ナイフかそれっぽいものが見つかれば――』
『──ほう、刃が欲しいか。それはずいぶんと間のいいところへ現れたな』
『その、数少ない例外をここで引くか? ……俺はどんだけ運がねぇんだよ』
『たわけ。誰が喋っていいと言った。心して、言動の一つ一つを選ぶことだ。貴様の命がこちらの……俺の手の中であることを失念するな』
『口を閉じながら、あれこれと智慧を巡らせていると見える。だが、命を捨てて反撃を試みるでもなし。……ふむ』
『この辺りでは見ない格好だな。バドハイムの気候に適しているとも思えん。手足も白い……地元のものではない』
『俺は……うおっ』
『黙れ。誰が口を開いていいと言った。次に俺の機嫌を損ねるなら、首と胴が離れたあとでも喋れるか試してみるがいい』
『腰の鞭も、森で使うには不便極まりない。腕や足もそれなりに鍛えているが、狼の列に並べるほどでもないな。……貴様、俺を追ってきたわけではなさそうだ』
『────』
『何を黙っている。弁明しないなら、ここで死ぬか?』
『ええ!? 今度はいいのかよ!? めちゃくちゃじゃねぇか!』
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「──なかなか、波乱万丈ねえ、お兄さん」
「休む暇もなくこれだからねーぇ。スバルくんの引きの悪さには驚かされるとも」
「──ナツキさんは、悪運だけは強いですからね」
ロズワールには目を合わせず、メィリィに向かってオットーは話す。
「そうよね、でも、ここでアベルに会えたのはらっきーだったと思うの。アベルに会えたから、スバルと無事に再会できたんだもの」
「ね」とアベルに向かってエミリアは笑いかける。
「────」
「閣下? お嬢さんに話しかけられてますよ? 閣下ー?」
「──黙れ」
「もしかしたら体調が悪いんじゃない? アベルくん、横になりたいなら席空けるけど……」
「──静かにしていろナツキ・スバルの母……」
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『──ゆっくりと振り返れ。おかしな真似をすれば』
『首を刎ねるって?』
『いいや、手足を落とし、心の臓を抉り、貴様の目の前で焼き尽くす』
『邪悪すぎる脅迫!』
『なんだ? その間抜けな面構えは』
『間抜けな面ならともかく、面構えは生まれついてのもんだから悪口じゃねぇか……なんだも何も、あんたの風貌見たらこうなっても仕方ないだろ』
『勝手なことを。俺も貴様の顔を見て、改めて刺客か疑い直しているところだ』
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「ナツキくんの顔は刺客言うより……なんやろ、反抗期の子供みたいやない?」
「アナスタシア様……」
「ちゃう?」
「違くはないと思うけど……スバルって子供っぽいもの」
「エミリア様……」
フォローの入る様子がない会話に、ユリウスは溜息をつき──
「──スバル」
そう、名を呼んだ。
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『寝床は囮だ。そこから少し離れたあそこで息を潜めていた。貴様がこそこそとやってくるのも最初から見えていたぞ。滑稽であったな』
『警戒してる姿って、傍から見るとめっちゃ間抜けだからな……って、そんなことはいいんだよ! あんた、剣を下ろしたってことは……』
『貴様は追手ではない。理由も意図もまるでわからぬが、正しく迷い人であろう。ならば俺がそれを声高に糾弾する理由はない。刃で思い知らせる必要も、な』
『って、落ち着いてる場合じゃねぇんだ。なぁ、質問ばっかりで悪いんだが、青い髪の女の子を見てないか? この辺りではぐれちまったんだ』
『青い髪? いいや、見ていない。むしろ、この場所へ足を運んで、最初に見かけたのが貴様の面よ。どうしてくれる』
『どうもしねぇよ!? どうもしねぇけど……クソ、ここも空振りか。なぁ、もしかしてなんだけど、俺の人探しを手伝ってくれたりは……』
『────』
『ですよね……』
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「警戒することも、傍から見た印象も、恥ずべきことではないよ、スバル。それに、警戒しないよりはした方がいい」
「まァ、そりゃァそうッだよなァ。大将は人より警戒心が薄ェから」
「そうだね。そこもスバルの美点ではあるけれど……美点がいつでも長所だとは限らないからね」
いつもの癖で、腰元に手が動く。
「──今は、無駄なことだね」
ラインハルトは、静かに手のひらを頬に当てた。
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『待て。この森ではぐれたとあれば、そうそう合流などできるものではあるまい。自分が生き残ることを優先するのが最善と思うが?』
『――。悪いが、そうはいかねぇ。それこそ、俺の命より大事な子なんだよ。何としてでも必ず合流する。いいや、連れ帰らなくちゃならねぇ』
『命より、とはな。歌女の吟遊でもなしに、実際に聞けば空言としか思えぬ。思えぬが、面白いのは貴様の目だ。嘘偽りを述べる目ではない。実際に自分の命と天秤にかけられればわからんが、少なくとも、この場で欺瞞を並べたわけではないらしい』
『だったら……だったらなんだってんだよ? 俺の言ってることが本当なら、それで』
『──それで多少は興が乗る。俺が、知恵を貸してやろう』
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「命より、なんて……真面目に言うとんやろうな。ほんまにおもろい子やね」
ハリベルが、煙管をふかしながらそう呟く。
閉鎖空間で煙を出すなんて、どうかしている。
「──こんなとこで吸う……?」
そうフェリスが言うのが、聞こえた。
「あれ? でも、空気が綺麗なままだわ」
「不思議パワー……ご都合主義というものでは? バッスーがよく話してましたよ! 漫画やアニメによくある、理論や都合の整合性がない……」
「もうよい、そこを掘り下げるな」
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『鞭の一本で立ち向かえる森ではあるまい。せいぜい、うまく使うがいい』
『そりゃすげぇありがたいけど……いいのか? 俺は何にも返せてねぇぞ』
『構わぬ。たまには俺も施しがしたいだけだ。それとも、そのナイフで俺から荷物の類を一切合切奪ってみるか?』
『──俺の名前はナツキ・スバル。こいつは間違いなく、あんたへの借りだ。受けた恩は必ず返すよ。不義理な真似はしない』
『俺は元の草原に戻るためにここを通るけど、あんたはあんまりここを使わない方がいいぞ。中におっかない狩人がいる。遠くから弓で仕留めにくるから、命がいくつあっても足りないと思う。どっかいくなら、この森は迂回推奨だ』
『――。なるほど。わかった。留め置こう』
『ああ、そうしてくれ。――またな!』
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「──全く、人の良い方ですな。スバル殿」
ナイフだけでは、正直心許ないが、いくらスバルでもそう命の危機に何度も──
「──立ち会いそうなのが、恐ろしいところですな」
◇◇◇
「ナイフ……なるべく使うような事態になって欲しくねぇけどなぁ」
賢一が悩むように顎に手を当て、「うーん」と唸る。
そして、
「──頑張りすぎるなよ、昴」
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『ようやく、尻尾を掴んだぞ、レム……!』
『見つけた! これなら――』
『い、今のは、まさか……』
『──罠?』
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「いやあ、バッスーの諦めと目つきの悪さには驚かされますね!」
「一言余計です」
「そこがバッスーのいいところでもありますが……今回は悪く出ていそうな気も……」
そこまで言って、アベルに口元を押えられ、セシルスの声は遮断される。
「閣下ー?」
「──黙れ、頭が痛い」