津久井やまゆり園事件10年
音楽は多様、共生のメッセージ発信 横浜セブンスアベニュー・椙江茂起さん
社会 | 神奈川新聞 | 2026年6月7日(日) 05:00
障害者19人が殺され、職員2人を含む26人が重軽傷を負った「津久井やまゆり園事件」から7月で10年を迎える。「共生社会」の実現がうたわれてはきたが、社会は差別と偏見にあふれ、排外主義が強まる。違いを超え、むしろ豊かさと受け止め、全ての人が尊重し合う-。理想を現実にするために、私たちに何ができるか。実践する人たちの言葉と行動から一緒に考えたい。
椙江茂起さん(67)=横浜市中区=は老舗のライブハウス「横浜セブンスアベニュー」(同区)を運営する。「音楽は多様で、互いに認め合うことが共生につながる」と話す一方、差別や排外主義と結び付く危険性も危惧する。(聞き手・松島 佳子)
ライブハウスには、沖縄民謡を演奏する男女のデュオ、モンゴルの音楽を普及しているミュージシャン、英国の民謡に影響を受けたギタリストら、さまざまな人たちが集まります。ミュージシャンが千人いれば、音楽も千通りあります。音楽は多様で、互いに認め合うことが「共生」だと思っています。
音楽には違いを超える力があります。私が大学生だった時、故松原みきさんの曲「真夜中のドア~Stay With Me」がヒットしました。それから40年以上たった2020年、インドネシアの歌手がカバーしたことをきっかけにインドネシアでも都市部の若者を中心に人気を得ました。両国は言葉も文化も異なります。ですが、自分の学生時代に流行した曲が今、インドネシアで支持されています。「つながれるものがある」とうれしくなりました。
大衆音楽、ファシズムと共通点も
一方で音楽は、その時の政治や経済、社会の空気に知らず知らずのうちに影響を受けます。戦前は軍歌などの勇ましい歌が流行しました。国民を戦争に動員するには戦争を正当化する必要があり、主義主張だけでなく、あらゆる文化的なものも使わなければ正当化できなかった。その筆頭として、大衆を鼓舞するような音楽が必要になったのでしょう。
大衆音楽は、人々を熱狂させ、勢力を拡大する力を持っているという点で、ファシズムと共通点があると思います。
昨年9月、「NO MORE 日本人ファースト」と銘打った音楽ライブを開催しました。きっかけは常連客で、横浜市内の小学校に勤務する教諭から聞いた出来事でした。外国にルーツのある児童が半数近くを占める同校で、給食の時間に、日本人の女児が突然、「日本人ファースト」と言いながら、外国籍の友人のおかずを取り上げたそうです。
その2カ月前に投開票された参院選で参政党が掲げたスローガンによって、子どもたちの間にも外国籍を蔑視する空気が入り込み、差別意識が根付いてしまうのではないか、と恐ろしさを感じました。
ライブハウスは大衆音楽を育て、世に出してきました。だからこそ、差別や排外主義を許さず、共生のメッセージを発信し続ける必要があると思っています。
=随時掲載
◆津久井やまゆり園事件 相模原市緑区の神奈川県立知的障害者施設「津久井やまゆり園」で2016年7月26日未明、元職員の植松聖死刑囚が入所者19人を殺害、職員2人を含む26人に重軽傷を負わせた。20年に死刑判決が確定。最高裁は25年10月、再審請求を認めない判断をした。
時代の正体 極右政党に抗う「日本人ファースト」にNO!横浜の老舗ライブハウスで反差別の音楽ライブ
社会| 神奈川新聞| 2025年9月21日(日) 05:00
津久井やまゆり園事件10年津久井やまゆり園事件、7月25日に追悼式開催 障害福祉考えるイベントも
政治・行政| 神奈川新聞| 2026年5月29日(金) 21:00
津久井やまゆり園事件10年植松死刑囚の印象は「普通の青年」 園長が相模原市職員へ講演、自責の念も
社会| 神奈川新聞| 2026年5月23日(土) 06:40
連載「津久井やまゆり園事件10年」まとめ差別生む社会構造、事件の矮小化…いつまで続くのか 有識者らが警鐘
社会| 神奈川新聞| 2026年1月15日(木) 17:00