朝からソ・チャンビンがそわそわしている。
宿舎で顔を合わせたときから様子がおかしかったが、今は周囲をきょろきょろ見回して、時折僕をじっと見る。
そしてなにより、この空間がうるさくないのだ。
気にしないようにしていても視界にちらちらと入ってくる彼が気になってしまう。
一体なにかおかしなことをしてしまっただろうかと声をかけることにした。
🐧「チャンビナ」
🐖🐇「!?」
名前を呼んだだけで大袈裟なほどに肩を震わせる。
近くにいたヒョンジナやスンミナたちもなにかに気付いたようで不思議そうな顔をする。
🐧「なにかあった?チャンビナ、僕らの仲じゃん。言いにくいことでも言っていいよ」
🐖🐇「あー、それじゃあ、その……いやでも……言っていいやつか……?」
🐖🐇「……あなたの下の名前、彼女できた……?」
たっぷり時間をかけて悩んだあと、彼から出てきた一言は想像の斜め上を行っていた。
あまりの衝撃に、思わずすべての動きが止まる。
🐧「はい!?」
🦊「え、まさか!」
🐥「ヒョン彼女いるの!?」
👑「え、なになに、なんで急に?」
向こうで聞き耳を立てていたチャニヒョンが声を抑えながら爆笑している。
当然だろう、彼は僕の正体を知っているのだから、おかしくて堪らないはずだ。
ほかにも信じてるか否かに関わらず、手が止まったままのメンバーが数名。
🐧「や、え、なんで?」
🐖🐇「だってそのパーカー、レディースでしょ?昨日ヌナが着てたよ。あの店に入れる男はそういないと思うけど」
チャンビナが説明すると、いよいよ確信を持った弟たちが疑惑の目を向けてくる。
中には嫌そうな目線とか冷たい目線も混じっていて、勘弁してほしい。
🐧「ちょ、ちが……これは!」
これは、兄の妻のLéa義姉さんの妹ちゃんから貰ったものだ。
この前初めて会ったときに仲よくなって、少しばかり歌やダンスを見せてあげたら一瞬でファンになったようだった。
あまりにも可愛く懐いてくれるものだから、帰り道でおしゃれなアクセサリーを買ってあげたら想像以上に喜んでくれた。
そしてそのお礼が昨日パリから届いたのだ。
『この前はありがとうございました。
私もお礼をしたかったのですが、まだ学生のためにお金が足りません。
今は私がリメイクしたパーカーを受け取ってください。
いつか立派なデザイナーになって、あなたの下の名前さんに素敵なお洋服を贈ります』
なんて、デザイン学校の学生らしい言葉を添えて。
着てるかどうかなんて、ここにいない彼女はわからないが、今朝自然と手が伸びたのはこの服だった。
🐖🐇「な……んだ、焦ったじゃん!」
👑「あははㅋㅋㅋㅋㅋ」
🐿「凄く可愛いじゃん、その妹ちゃん」
🐖🐇「お陰で勘違いした!」
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。