🐧「長い間、僕は自分のことが好きになれませんでした。NYで生まれ育ち、小学生のときには日本へ戻り、かと思えばすぐにアメリカとカナダを転々とし、オーストラリアで1年過ごした後、今度こそ自らの意思で韓国に落ち着きました。自分自身やアイデンティティがわからなくなって、言葉もおかしいと笑われ、光の見えない期間も長くありました。自分が自分でなくなるようで怖く、朝を待つように長い夜が続きました」
静まり返った会場に、自分の声だけが響く。
皆のお陰でもう震えはなくなって、その代わりにこの想いを言葉に乗せて届けようと、一つひとつ丁寧に紡ぐ。
🐧「以前は近しい人にも反対されました。もう辞めようと手を離しかけたこともあります。でも今、Stray Kidsのメンバーになって、こうしてステージに立って、STAYにも出会えて声を聴けて。突き飛ばすだけじゃない、笑いながら優しく背中を押してくれる人がいると知りました。自分が何者かわからなくても、そのままの僕を愛してくれる人がいる、それがどれだけ幸せなことなのか……」
ペンライトの光が、再び優しく揺れる。
精一杯の言葉を肯定するかのような光の波に、「ああやっぱり、この街が自分を強くしてくれたんだ」と思った。
🐧「メンバーとSTAYの無条件の愛のお陰で、僕はここまで来られた。この夜は短くて、すべては当たり前じゃない。そう気づかせてくれてありがとうございます。そしてこれからも皆さんがくださる愛や応援を忘れず、ますます最善を尽くします」
溢れそうになる涙を抑えて、そっと左手側にいるメンバーたちを見る。
まるでツアーのフィナーレかのような、デビュー何年目の節目かのような、そういった錯覚を起こさせる自分の言葉に恥ずかしくなるが、そうでなければ伝えられないと、覚悟を決める。
🐧「そして最後に……お母さん。僕の母は……雅。皆さんもご存知の通り、ピアニストです。情熱についてすべてを教えてくれました。多分僕はずっと、母に音楽で認めてもらいたかったのだと思います。母から逃げたくて始めたものだったけれど、音楽が好きでここまで来た。もしかしたら、僕の活動は母にとって受け入れ難いものかもしれないって思っているけど……今日、来てくれて本当に嬉しいです。お母さんのコンサートでもHellevetorのピアノアレンジをサプライズで披露してくれてありがとう」
チャニはすかさずマイクを通して説明を付け足し、「あのときは感動した」と母への感謝も述べる。
ここから一瞬のうちに見えたメンバー、リクスとヒョンジナは笑っている。
ハニとイエナは目頭を押さえながら唇を震わせていた。
🐧「まだまだたくさんの壁にぶち当たるだろうけれど、僕はまたここに戻ってきます。Stray KidsとSTAYは永遠だから」
その言葉に呼応するかのように、ライブのフィナーレを飾る曲が流れ始める。
目元がぐちゃぐちゃになりながらも、歌声だけは綺麗なものを届ける。
その音は会場の奥まで届き、やがては眠らないニューヨークの夜の街に溶けていった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。