知られた「高級鮮魚店」、売り上げ過去最高から倒産に至った顛末
海商は1994年5月設立の企業にルーツを持ち、2008年3月に設立された。「活魚黒門」の名称で、大阪府と京都府の百貨店の地下食品売場で鮮魚店を運営。夏はハモ、冬はフグを中心に販売し、国産の天然魚にこだわった高級鮮魚店として知られていた。 14年3月以降はギフト事業が主力となり、ノドグロやタラバガニなどの高級ギフトを扱って、百貨店や大手の通販業者に販路を拡大。15年ごろからは、高齢者向け機能食品の展開を目指し、「やわらか煮魚」「やわらか焼魚」などの商品を開発した。外部機関の複数の表彰を受け、19年2月期には売上高約11億3700万円を計上した。 また、19年ごろからは、調理済みの魚介製品および製造方法などの特許を取得した。賞味期限が短く流通が限定される地方の水産加工品などを常温保存できる技術の開発も進め、「SDGs(持続可能な開発目標)」の分野でも注目され、複数の金融機関の投資ファンドから出資を受け入れていた。 コロナ禍ではギフト市場が停滞したのに加えて、百貨店の休業・時短営業で事業環境が悪化したが、その後は持ち直し、24年8月期(決算月変更)の売上高は約11億5700万円と、過去最高の売り上げを記録していた。 しかし、ギフト事業は価格転嫁が容易ではなかったほか、近時は仕入れ価格が高騰した。さらに、研究開発費や特許取得にかかる諸費用がかさみ、収益性は低調に推移。 従前からギフト事業に関する仕入れについては支払いが先行するなど資金繰りは厳しく、25年3月には取引金融機関に対して借入金の返済猶予を要請した。 ところが、再建の過程で過年度の不適切な会計処理が発覚し、社内管理体制の不備が露呈した。一部の小売店舗の閉鎖や、営業所の集約などリストラを進めていたものの、既に資金繰りは綱渡りの状態となっており、25年8月29日に事業を停止した。(帝国データバンク情報統括部)