『スバル、本の中で何があったか話すのよ。一人で抱え込んでいても仕方ないかしら。ちゃんと話して、一緒に考える。……それが、ベティーたちの強みなのよ』
『手短にいく。『死者の書』でレイドの記憶を見るのは失敗した。邪魔が入ったんだ。『死者の書』はオド・ラグナって存在の足下に繋がってて、そこで面倒な奴と遭遇した。――『暴食』の大罪司教、ルイ・アルネブが俺たちに宣戦布告してきやがった』
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「──あぁ、また……! でも、今度こそ……」
エミリアが整った顔を苦悶の表情に歪め、祈るようにその形の整った胸の前で白く長い手を結ぶ。それをベアトリスはちらりと見遣り、
「──覚えがないのよ。こんな会話……」
ぎゅう、と苦しい音が鳴る。ベアトリスはその可愛い顔を似つかわしくない表情に染めたまま、動かなくなる。
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『ユリウス! お前にも仕事がある! 『暴食』の方はこっちで何とかする。お前にとっても因縁の相手だ。ぶっ飛ばしたい気持ちは重々承知だが……』
『だが、なんだ? この場で、『暴食』以上に優先する相手など……』
『──レイドが降りてくる。あいつの横槍が入っちまったら全部がおじゃんだ。それを、止める役割がいる』
『──レイド・アストレアは、お前にしか任せられない。さっきも言った通りだ』
『……私が勝たねば計算が狂う、だったね。まったく、度し難い殺し文句だ』
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「またこの人は……」
はぁ、とため息を吐いて、オットーは困ったような顔をする。
スバルはいつも、変なところで相手の心の柔らかい部分に突き刺さる言葉を使う。本人にそのつもりがないのが幸いなのか、そうでないのかはわからないが。
「──そこがいいところなんですけどねえ」
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『──バルス! 起きたのね!』
『ラム!』
『起きるのが遅い! レムのことを任せるわ! 傷付けたり、変な触り方をしたら許さないから死ぬ気で守りなさい。ラムは――』
『待て待て待て、色々早い! 話はわかるが、落ち着け! お前は……』
『『暴食』の大罪司教がきてる! エミリア様が応戦しているけど、分が悪いわ。すぐにでもラムが戻らないと、手遅れになる!』
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「──今回もダメなのね」
態とらしい流し目を虚空へ向け、ラムは感情の見えない顔をして足を組む。
「ラムは、一瞬でもエミリア様のことを忘れていたもの。それに、バルスとこんな会話していないわ」
未来がわかるだけで、気の持ちようは違う。だからと言って、全部を割り切れるわけではない。
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『さっき、お前は言ったな。信用を裏切らないでくれって。俺も同じことをお前に頼む。レムを頼んだ。この子は、『ナツキ・スバル』にとって欠かせない子だ』
『──妙な言い方をする。君だって、ナツキ・スバルのはずだろうに』
『……お前にはちょっとだけ、俺の気持ちがわかるかもって信用もあるんだぜ』
『ナツキくん、まさか君は――』
『──頼んだぜ』
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「──ほんま、不器用な子やわ」
アナスタシアが頬杖をつき、柔らかい頬が瞳を細くさせる。
「そないな言い方せんでもええのにねえ」
その細かい心の機微は、当人ですら完全に把握することの叶わないレベルのものだ。他人のアナスタシアは、恐らく半分理解できれば十分という程度だろう。
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『何故、きたの、バルス。レムは……』
『レムは、自分に構うよりやることをやれってよ! 本の中で説教された!』
『──っ! レムに? どういうことなの?』
『レムは戦って、取り戻してこいとよ。だから、俺も一緒にいくぜ!』
『はっはァ! なになに、戻ってきちゃったんだ、姉様! やだ、男前! なんでなんで姉様ってばそうカッコいいの? ホント、姉様は素敵ですッ!』
『──煩わしい。殺してやるわ、大罪司教』
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「──要点を掻い摘んで説明はしているわね。仕方がないから、許してやるわ」
尊大で不遜な態度をとりながらも、その実物事を正しく見ている。
ラムはそういう女だ。
「悪いのは、すべてこの下衆だもの」
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『どうだい! 何ならもう一回、あの感動を繰り返そうか! ここから始めようよ、お兄さんッ! 一から、いいや……ぜ』
『──えいやぁ!!』
『ぶがんっ!?』
『……え、勝った?』
『やったわ!』
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「ベアトリスの陰魔法で体重をすごーく軽くしてるのね。すごい……でも」
エミリアが瞳を伏せ、声のトーンを落とす。これは、きっと上手くいっていない。エミリアの覚えている記憶が、それを懸命に訴えているのだ。
「──悔やんで、何かが変わるわけじゃないけど」
それでも、悔しさに下唇を噛み、後悔に苛まれるくらいは、許して欲しい。
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『──ユリウスが、苦戦してやがるな。これ、相手はやっぱりレイドか?』
『スバル? いったい、何を言っているのよ。どこを見て、何を?』
『どこを見てって、何言ってんだよ、ベアトリス。そりゃぁ……』
『なんだ、これ? みんなが、どこで何してるのかがわかる。見える?』
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「──っ! これ! レグルスの!?」
エミリアがぴょんと跳ね、紫紺の瞳を丸く見開く。
「使う人間が違うと、こうも変わるものかしら。さすがスバルなのよ」
「うん、本当にすごい……レグルスはあんなに性格が悪かったのに!」
「能力云々と言うより人格の話になってきましたけど……まあ、僕も賛成ですよ」
「あんッなクソ野郎の能力がこんなんになるッとはなァ」
「すごく嫌われてるのねえ?」
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『──これ、誰だ?』
『ベアトリス!』
『──っ! ミーニャ!!』
『どういう、ことなんだ。お前…… ──お前なのか、シャウラ!!』
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「──シャウラちゃん……!」
菜穂子が目つきの鋭い瞳を見開き、驚きのままに小さく息を漏らす。
「どうしてそんな格好に……それに、でも……あの攻撃は、シャウラちゃんのだもの、ね」
確信せざるを得ない。美しい見た目が恐ろしい風貌に変わっていようと、あれはシャウラなのだと。
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『頭下げてるのよ! 直撃されたらヤバいかしら! ぐ、マズいのよ……! このままだと、すぐにこっちのマナが尽きるかしら……!』
『──さっきから、人の頭の上でビュンビュン危ないじゃない! スバルたちを狙って……弱いものいじめなんて卑怯よ!』
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「──間違ってはないけど……その言い方、スバルきゅんの小さい心が傷つかない?」
「スバルの心は小さくはないが、受け流しているところを見るに傷ついてもいないのだろう。それか、傷つく余裕もないのかもしれない」
「……そうかもネ。この状況で傷ついたとか言ってらんないか」
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『メィリィは、今も、バルコニーで魔獣を押しとどめてくれてる……』
『あの娘は、シャウラに襲われてないってことになるのよ』
『その通り。シャウラがああなったのは、メィリィと別れたあと。いずれにせよ、メィリィにシャウラは手出ししてない……』
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「シャウラ! うそ、シャウラがもしかしてスバルを……ううん、あれはシャウラの意思じゃないはず、だから……」
エミリアが狼狽え、何とか受け止められるように心を整える。
「──スバル……」
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『頼むから、レイドの首は刎ねてきたって言ってくれ……』
『事実と異なる報告をするのは、騎士として非常に苦しい選択だ』
『……もはや、それが答えになってるかしら』
『はン! 女共が揃ってお出迎えたぁわかってンじゃねえか、オメエ。ちっとばかし遊ンでやって、退屈してきたとこだったンだ。オメエらでオレの相手すっか、あン?』
『……最悪の展開ね』
『あなた……どうして、この階にいるの? あそこから出られないはずなんじゃ……』
『おいおい、笑わせンなよ、激マブ。オレはいきてえとこにいって、斬りてえもンを斬って、抱きてえ女を抱く。他人のしきたりなンぞに従ってやるかよ』
『……どこまでも規格外な奴なのよ』
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「ほんまに最悪なんやけど。エミリアさんはこれ嫌やなかったん? うちやったら普通に嘔吐くわ」
「嫌だったわよ? なんだかすごーく身勝手だし、それに言ってることがあんまり良くないって私でも分かるもの。多分、ラムもスバルもベアトリスもみんな嫌がってたわ」
「──天才は嫌われやすいとは言うけどなあ……これは単純に性根の問題やね」
「うん、そうだと思う。スバルもすごーく嫌がってたの。ずっとうげーって顔してたし」
そう口にした瞬間、エミリアの胸の内に言葉にできない感情が拡がっていく。だが、無粋の極みながら、その思いに言葉を当て嵌めるとするなら、
「──スバル……」
会いたい、と。
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『──スバル、その件について、私から朗報と悲報がある』
『じゃあ、朗報から先に聞かせてくれ』
『君が不安視している、姿の見えない『暴食』の大罪司教の片割れだが、彼を警戒する必要はない。そのことは私が保証しよう』
『――? 根拠はわからねぇが、確かに朗報だ。じゃあ、悲報ってのは?』
『『暴食』の大罪司教、ロイ・アルファルドはそこにいる』
『……あ?』
『目の前にいる、初代『剣聖』レイド・アストレア。――彼が、ロイ・アルファルドだ』
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「えっ、どういうことなの? 少し分からないわ……」
菜穂子が頬に手を当て、首を傾げる。ユリウスの言葉の意味が分からない。噛み砕いて、何とか理解したいのだけど。
「──ええと、つまり……」
「──『暴食』がレイドの記憶を食べて、逆に肉体を奪われた……ってとこか」
「なるほど、そういうことなのね。……理解しても、よく分からないけど」
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『まさか、ユリウス……』
『ああ、おそらく、君の想像で正しいだろう。先ほどは、私の言い方が悪かった。訂正しよう。――目の前の彼、その肉体はロイ・アルファルドのものだ。だが、その精神は違う』
『──精神』
『ロイ・アルファルドは、レイド・アストレアの『記憶』を喰らい、その『記憶』に自らの精神の主導権を奪われた。故に彼は制限なく、二層へ下りて、ここへきている』
『『記憶』に引きずられて、本来の自分を見失ったってことかしら』
『もっと単純に、自我の強い方が勝ち残ったということでしょう。――自分本位という意味では、右に出るものがいなさそうだもの』
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「その通りではあるけーぇれど……そこまではっきり言えてしまうラムの胆力にも私は驚いているとも」
「お褒めに預かり光栄です、ロズワール様。ラムはいつでも物事をはっきりとお伝え致します」
「多分だけど褒めてないのよ」
「実際に褒められたかどうかよりも、ラムがどう捉えたかをラムは重要視します」
「本当に驚いたかしら。お前はすごい……頭かしら」
「ベアトリス様、発言には気をつけてください」
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『──ええと、一つだけ聞いてもいい?』
『お?』
『あなたは……レイドは生き返ったのよね? それで、あの場所からも出られるようになって、それはすごーくおめでとうなんだけど』
『ああ、あンがとよ。これで、オメエともちゃンとした場所にしけ込めンぜ、激マブ。今夜の酌しろよ、オメエ。それ以外のことは……あー、おいおい仕込ンでやっから』
『――? お出かけに誘ってくれてるの? でも、私、『でーと』はパックとスバルとしかしたことないから、ごめんなさい。あと、自由になれたのに、私たちの邪魔をするのはやめてくれないの? もしかしたら知らないかもしれないけど、私たち、今、すごーく忙しくて……』
『言わせンなよ、激マブ。オレぁここで起きてっことはほとんど把握してンぜ。なンせ、この体のチビガキが妙に物知りでいやがる。――あぁ、気に入らねえな』
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「こッの野郎……! エミリアッ様になに言ってやがんだァ!?」
「そうですよ、ナツキさんですらまだなのに」
「大きな声でそんなことを言うんじゃないのよ! 淑女がいるということを忘れるんじゃないかしら!」
「──汚らわしい」
「なんや賑やかやねえ。防衛反応やろか」
「ちょっとみんな静かにしてよ、声が聞こえないわ」
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『──そう。どいてくれないんなら、仕方ないわ。ごめんね』
『はン! さすが、話が早ぇぜ、激マブ! けど、オメエ、わかってンのか? オメエの『試験』は終わってンだぜ?』
『それなら! みんなのことも合格にして!』
『オイオイ、どういう理屈で言ってンだよ。そうしてやる理由がねえだろ』
『お願いするから!』
『おねだりに可愛げがねえよ。とりあえず服脱げ、オメエ』
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「いいえ、可愛げはあるわ。恐ろしいくらいの物量も、可愛く見えるほどの力量差だもの」
「そうよね。だから……え、ラム?」
「何でしょうか」
ラムはその可愛い顔に無表情を貼り付けたままシラを切る。ふてぶてしいというべきか、胆力が凄まじいと言うべきか。
だが、
「──仲間割れはもうないでしょうから、死因となるなら、レイド・アストレアか……」
そう、言いかけて瞑目する。考えても考えなくても見なくてはならないのだから、仕方のないことだった。
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『──ちっ、面倒な奴がきちまった』
『す、スバル……』
『ベアトリス、大丈夫だ。とにかく、まだ何も方策は見つかっちゃいないが、大丈夫なんだ。まだ、挽回が……』
『違うかしら、違うのよ! ――くるかしら』
『くる? ──まさか』
『だから、言ったじゃねえか。面倒な奴がきちまったってな』
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「──嫉妬、の」
メィリィの鈴を転がすような声が震えながらそう紡ぐ。アナスタシアも顔を顰め、スクリーンを睨みつけている。
「──魔女……」
誰が言ったのか分からないが、誰もが心に浮かべたであろう単語が空間を反芻する。
そして、
「──昴!」
お膳立てされた状況に、ようやく理解と予測が追いついた。
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『──失敗した』
『――愛してる』
『──オメエ、何眠てえこと考えてンだ、オイ』
『──嘘だろ』
『目ン玉かっぽじってよく見ろ。何が嘘だ、オメエ。オメエ、目ぇ開けてンのかよ。開けてよく見ろ、オメエ。オレの何が嘘だ』
『お前も、絶対にぶっ倒すぜ。――俺の知ってる、『最優』の騎士が』
『そこはオメエ、最後までちゃンとオメエでかっこつけろよ、稚魚』
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「──スバル!」
エミリアの声と、ユリウスの声が重なり、美しい音を奏でる。だが、その声色は悲痛で、美麗とは言い難い想いが乗っていた。
「魔女、どうして……ルイが、スバルの死に戻りを知ったから……?」
記憶の共有がまずかったのか。エミリアには、分からない。
が、
「また──」
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『お師様? 大丈夫ッスか? お師様、聞いてるッスか? あーしとお師様以外の人たちも、面倒なことに巻き込まれてるっぽいッスけど……あーし、お師様のためにできることあるッスか?』
『ああ、そうだな。……俺のためにできること、か』
『はいッス。あーし、お師様のお願いなら、たとえ火の中水の中、大瀑布にだって元気よくフライアウェーイ! ッス』
『シャウラ、お前は俺の言うことなら何でも聞くのか?』
『もちのろんッス! お師様のお願いなら何でも聞くッス! お師様のおねだりなら、ちょっと過激なことでも聞いちゃうッスよ。あ、あ、あ、もしかしてお師様、あーしのダイナマイツバディについに我慢の限界ッスか? それで、他の人たちと遠ざけて二人きりになったッスか? もう、このこのこの! お師様ったら――』
『──シャウラ。……お前、俺が死ねって言ったら、死んでくれるのか?』
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「──昴……」
賢一が顔を顰め、悲痛な表情を浮かべる。
シャウラの空気に合わない底抜けの明るさと、昴の悩み藻掻くような顔が、その歪さを描き出している。
「──シャウラちゃんと、大サソリはイコールだな」
だが、昴は知ろうとしている。
その、先を。
「──次で、終わりにしてくれよ……」
疲弊していくのは、肉体だけではない。