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さよならは言わせない/Novel by 春風

さよならは言わせない

4,644 character(s)9 mins

レイドの声優気になって寝れん

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『──っ』
『おっと、危ねぇ。――俺の代わりに落っこちるなよ。さあ、話をしようぜ。――俺を殺した責任、取ってもらうからな』
『……俺を殺した責任って、また変なこと言い出すのねえ、お兄さん。ひょっとして、記憶をなくした拍子に他にも色々と抜け落ちちゃったのかもしれないわあ。そうじゃなきゃ、こんな誤解したりしないはずだものお』
『誤解?』
『ええ、そうでしょお? ――わたしがお兄さんを殺そうとするなんて、ひどい誤解だわあ』

​───────​───────​──────

「──ほんとに、乙女が必死に誤魔化してる言葉を掘り返すなんてひどい話だわあ。この映像を流してる人は、女心がわかってないわねえ」

「そうね。でも、この話し合いがあったからこそスバルとメィリィはちゃんと仲直りができたんだし、それでいいと思うの」

「お姉さんみたいに簡単な考え方ができる頭の人ばっかりだったらいいんだけどねえ」

「? 簡単?」

​───────​───────​──────

『疑われるなんて心外よお。だって、本当にわたしがお兄さんたちを殺そうとするなら、こんな塔の中より砂丘の方が簡単にできたはずじゃなあい? ああ、お兄さんは覚えてないんだから、わからないかもしれないけどお』
『そうだな。確かにおかしな話だ。前々から俺たちを殺そうとしてたってんなら、そうするチャンスはいくらでもあった。でも、お前はそうしなかった』
『でしょお? だったら……』
『けど、俺を殺そうって動機が、今朝になって急に生えてきたんなら話は別だ。今朝ってより、昨日の夜からの連鎖反応って方が正解か?』

​───────​───────​──────

「──疑ってなかったけど、思ってたよりもずっとめちゃくちゃな目にあった後にこんなことが言えてたのよねえ、お兄さん。わたしちょっと引いちゃうわあ」

「スバルの優しさは長所でもあり短所でもあるのよ。ただ、ベティーはスバルのそういうところを褒めて伸ばしていきたいと思っているかしら」

「わたしも。スバルのこういうところはすごーくいいと思うわ」

「……全く、やりにくいわあ」

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『もしかして、わたしって嵌められたのかしらあ?』
『嵌めた、ってのはどういう意味でだ?』
『試したんじゃないのお? 記憶をなくしただなんて嘘をついて、わたしがお兄さんを突き落とそうとするかどうか……味方に不穏分子がいるなら、炙り出すのが定石だものお。塔について、わたしの利用価値もなくなったしい? ……切り捨てるには、もってこいの頃合いだものお。それで、いったいどうやってわたしの始末をつけるのかしらあ? せっかくだし、意趣返しにここから突き落としてみる? 悪い動物ちゃんも一緒にいない今ならあ、わたしなんかお兄さん一人でも簡単に始末できるわよお?』
『勘違いするなよ、メィリィ。俺の記憶喪失はお前を騙すための嘘なんかじゃない。本当の話だから、普通に深刻だ』
『それはそれで、やっぱりどうなのおって感じだけど……結局、お兄さんはどうしたいのかしらあ? 仕返しは手応えがないと実感が湧かないって思ってるのお?』

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 オットーがやや複雑な感情を表情に滲ませる。が、当人がその感情に適切な言葉を見つけることが叶わず、黙ってスクリーンに目を向けたままだ。

 それを横目に見ていたラムはその可憐さと美しさが融合したような顔を徐に揺らし、スクリーンに目を戻す。

「──仕返し、ね。もしそんなことをしてしまうような輩だったなら、ラムの綺麗な手が血まみれになっていたかもしれないわ。レムも、きっとそんなやつは好きにならなかったわよ」

 記憶の中で朧気に存在する愛しい妹。隣の椅子に残っていた温もりはもう消え、ラムの中で焦燥と感傷が滾る。

「──帝国」

 記憶が、だんだんと蘇ってきている。

​───────​───────​──────

『あんまり、長引く殺し方はオススメしないわあ。わたしが苦しみたくないのもあるけどお、お兄さんって隠し事するの下手そう……』
『――俺は、お前を殺すつもりも、傷付けるつもりもない。このあとも、明日からも、これまでと同じ付き合い方をしていくつもりだ』
『……は?』
『幸い、お前の犯行は未然に防がれたから、当事者の俺たちが内緒にしとけば何も起きてなかったことにできる。ただ回避するだけだと、お前が違う手段で俺を殺そうって考えるだけかもしれなかったから、ちゃんと犯行現場を押さえる必要はあったけどな。それが悪趣味ってんなら否定はできねぇ。悪い』
『ぁ……な、何を……』
『でもまぁ、今回のことでわかってくれたろ? 俺をどうにかしようとするのは、お前にとっても結構リスキーだ。それでもってんなら、あれだ。せめてちゃんと話し合おう。不満があれば、俺もできるだけ耳を……』
『不満? 不満って……不満なら、今、この状況がそうだわあ! 信じられない! 信じられない、信じられない、信じられないわあ……今、わたしが何をしようとしたのか、お兄さんはわかってないのよお! そうじゃなかったら変だわあ。そうじゃなかったら……』

​───────​───────​──────

「──何をしようとしたのかわかった上でこの決断だ。変、なんて言葉じゃ足りないくらいだーぁね」

「お前にだけは変だなんて言われたくないのよ。スバルはちょっと考え方と許す範囲と価値観がおかしいだけかしら」

「それはだいぶおかしくないかーぁな?」

「ベアトリス様、バルスはいつでも変です」

「やかましいのよ!」

​───────​───────​──────

『お前の、突発的な衝動だよ。お前は、殺人が癖になってるだけだ。物事を解決するための選択肢に、他の要因が浮かばないだけだ。それは、お前のせいじゃない』

『──エルザ・グランヒルテ』
『──っ』
『それが、お前が俺を殺そうとした理由だろ?』

『お前が、自分の感情を持て余してるのはわかってる。でも、その答えはたぶん、ここですぐに出せるようなもんじゃない。だからこの場は俺に預けろ。悪いようにはしない。少なくとも、悪くならないように俺は努力する。お前も、そうしたいと思ってくれるなら』
『……信じ、られないわあ。お兄さんの、口先だけなら何とでも言えるものお』

​───────​───────​──────

「──こう言えるんやから、ナツキくんはほんますごいわ。うちやったら、こんなふうに言えるかは……うん、わからんね」

「うーん、私はどうかな……許してあげたいけど、痛い死に方をしたら許してあげられないかも」

 結局、その時になってみなければ分からないが。

「単純に、許すとか許さないとか、スバルはそんな話がしたいんじゃないわよね。もっと、深くて意味のあるお話」

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『俺の口先が信じられないって言われると、わりとそこは反省だ。どうも、昨日までの俺は約束破りの常習犯だったらしいんでな。だから』
『だから?』
『俺とお前の約束じゃなくて、俺たちとお前の約束にしよう』
『――ん、大丈夫。私もちゃんと聞いてたから、約束の証人よ』
『お姉さん……聞いて、いたの?』
『スバルに、立ち会ってほしいってお願いされたの。……メィリィが危なくなったら止めてほしいって、そう言われて』
『わたしが、危なくなったら……? お兄さんが、じゃなくて……?』
『ええ、メィリィが危なくなったら。それでよかったのよね、スバル』
『――。ああ、そう。それだけがちょっと、本気で不安要素で』

​───────​───────​──────

「──メィリィちゃんのことより、自分のことを心配してあげなきゃダメじゃない、昴。……ほんとに、昴は……優しくて、不器用で……少しでも目を離したら、心配になっちゃうわ」

 菜穂子は目を伏せ、慈しむように頬を緩める。心配も不安もあるが、エミリアが昴を心から守ろうと思ってくれているなら、少しだけ、心を落ち着かせられる。何より、

「どうせ守ってもらうなら、好きな人の方が──うん。私もこの言葉、すごくいいと思う」

​───────​───────​──────

『聞いて、メィリィ。スバルの言ったこと、私は信じてる。メィリィがそれを信じられないっていうんなら、一緒にスバルのことをジーっと見てたらいいわ。それで、もし約束を破るようなら、私が一緒に怒ってあげる』
『お兄さんを、見張る……? そんなのって、変だわあ。おかしいじゃない。お兄さんとお姉さんが見張るのは、わたしの、はずで……』
『もし、メィリィが悪さをしようとするなら、それはスバルがメィリィとの約束を破ったとき。だったら、見張るのはスバルが約束を守ってくれるかどうか。順番通り、よね?』

『俺は、お前が途中下車するのを許さない。お前がいくつなのか、詳しいことはわからないけど……俺がお前ぐらいのとき、俺は周りの大人に散々助けてもらったよ。だから、俺はお前が嫌がってもお前を助けようとする。どうしたらいいのかわからないって、周りの手を拒むにはお前はまだラブリーすぎるよ』

​───────​───────​──────

「──あぁ、そうだな……何もかも投げ出すには手足が短すぎるし、刻んだ皺が浅すぎる。そんな状態のやつを放っておくなんて、ダメだよなぁ」

「────」

 賢一が呟いた言葉に、エミリアは紫紺の瞳を見開いて、そのあと、安堵したかのように緩やかに笑う。

「──ちゃんと思い出して、ちゃんと出会って……今度こそ、スバルを一人きりになんてしないんだから」

 この空間の外にいるかもしれない彼は、今何をしているのか。
 エミリアには分からないけれど、早く会いたい。
 それだけが、原動力になる。

​───────​───────​──────

『お願いだから、スバルを……私たちを信じて、メィリィ。この砂の塔は、あなたが大きな何かを決めるには、狭すぎる場所だもの。ここから出て、もっと広い場所で、答えを出して。私たちも、すごーく頑張るから』
『エルザの、こと……忘れたく、ないわあ』
『ああ、いいよ。好きな人のことを忘れる必要なんかない。ただ、まぁ……好きな人でも、やり方だけは真似しないでほしいかな』

​───────​───────​──────

「良かった、やっとここまで来たわ! 良かったわね、メィリィ!」

「お姉さん……! いきなり抱きつくのは苦しいからやめて欲しいわあ……!」

「──あっ、ごめんなさい。でも、やっと……スバルとメィリィがギスギスしなくて済むと思ったら、嬉しくなっちゃって」

「どこまで見ても、現実でのわたしとお兄さんの関係は変わらないじゃないのお」

「でも、映像の中でも嫌な雰囲気は嫌なの。どうせなら、スバルがにこにこしてる時がいいじゃない? ねえ、ベアトリスもそう思うでしょう?」

「この流れで意見を求められると少し困るのよ……」

「えっ、どうして?」

 そんな風にエミリアたちが騒ぐのを、スピーカーは静かに見つめていた。

Comments

  • レイラ
    Apr 4th
  • 春秋

    少し色が変わるかもしれませんが、ifが上映されていく中でミマガウも見てみたいです… スバルちゃんがレウに拷問されるシーンなど、本編とはまた違った痛々しさがあって大変素晴らしいので いつも応援しております

    October 17, 2025
  • ta

    個人的にレイドは三上さんかなって思ってます

    October 5, 2025
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