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歩いてきた道は消えない/Novel by 春風

歩いてきた道は消えない

5,372 character(s)10 mins

続きを全裸待機されたら書くしかないと思い書いた
ちゃんと服は着て

今書籍版大人買いしようか迷ってんだけどどう思いますか?
バイトクビになったんで金ないんですけど!!

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『うぁ!?』
『――『不完全E・M・T』なのよ!!』

『……君を、測りかねるようなことをしないでくれ』
『知、るか……! とっさなんだよ……!』
『その答えは……ナツキくんにも思えるけど、ね!』

『君は……君は、いったい、なんなんだ? 何がしたくて、どこに拠って立つ?』
『細かい、ことはわからねぇよ。言っただろ。何が起きて、どうなってるのか、何もわからないのは俺も同じだ。だって俺は……』
『――記憶喪失』

​───────​───────​─────

「──たぶん、全部スバルのままなのに、私がスバルに見ているものも、エキドナが見ているものも、みんな違うから……」

 スバルの全てを理解できているのか、エミリアには分からない。この映像を見てもなお、多分、エミリアはスバルを100%わかることは出来ない。それはきっと全員がそうで、みんなスバルの何かを理解していて、何かを理解できていない。きっとそれを全てわかってあげられるのは、この世界ではなく──、

「──ほんとに、ここから出たら、スバルに聞きたいことと……言ってあげたいことがたくさんあるんだからね」

 エミリアはその豊満な胸を白く長い手で覆う。きっと、胸を暖かく染めあげる感情が、今のエミリアを支えている。

​───────​───────​──────

『檻からはどうやって?』
『……気付いたら、肩が外れて檻の外に倒れてた』
『……どうして、今、ボクを助けたんだい? 君が手を差し伸べなければ、間違いなくボクは死んでいた。アナの体ごと、ひどく無念の死を遂げただろうね』
『……とっさだったんだ、わからねぇよ。なんにでも理由があるわけじゃないだろ? いきなりだった。全部、いきなりだった。だから俺は……』
『――。それが、君という人間の本質なのかもしれないな』

​───────​───────​─────

「────」

 オットーは考える。スバルの心根は変わらない、本人の心が砕けて道を過つことの無い限り。ただ、これからもずっと彼の優しさに甘えてしまうのだろうか。少なくとも、オットーはその立場には落ちないと、そう誓いたい。
 理解者としてではなく、友人として、彼を支えていくことがオットーにとって大切なことだからだ。

「──オットー兄ィ、なんッか怖い顔してんなァ……」
「元からあんな顔よ、可哀想に」
「聞こえてますからね!?」
「聞こえるように言ったから当たり前ね」

 オットーの考えが重い方に行く前に引き戻したラムは、本当にいい女だ。

​───────​───────​─────

『ベティーを、連れ出してくれたことも覚えてないかしら』
『……ご、めん。お前が、何を言ってるのか、俺には』
『──いいのよ。スバルが忘れたとしても、ベティーの中に残ってる。スバルが刻んでくれたものが、ベティーの中で色褪せることはないかしら。だから、今はいいのよ』
『ベアトリス……』
『たとえスバルが忘れても、ベティーが忘れない。ずっと覚えてる。そして、スバルにも思い出させてみせるかしら。そのためにできることは、何でもやってのけるのよ』

​───────​───────​─────

「──スバルが忘れたのはたった一回、ベティーたちのほうがずっとずっと忘れてしまっていたかしら。だから、一回忘れられたくらいでベティーは怒ったりしないのよ。それに、スバルの世話を焼くのは嫌いじゃないかしら」

 ふふん、と可愛らしい声で得意げに笑う。
 ベアトリスにとって、何よりも大切な指針。それは、もう無くすことも見失うことも無いもの。歩くべき道を見つけられたなら、ベアトリスが迷う理由などもう既にないのだから。

「──でも、スバルがまた痛い思いをするのを見なきゃいけないのは少し嫌なのよ……」

​───────​───────​─────

『──べあ、』

床に落ちたサソリのしっぽがビクリと震える。そして、それは眩い光を発し──、

『ナツキ、くん……もう、十分、だよ……』
『十分じゃねぇ! 何一つ、十分じゃねぇよ!』
『……ボクの、ことより、ベアトリス、だろう?』
『……っ』
『……そう、か。あの子は、本当に、損な子だ』

​───────​───────​─────

「ベアトリス!」

 エミリアが声を張り上げて、不安そうに顔をしかめる。
 自分がここにいたならどうする? どんな決断をとる? 考えても仕方がないが、何もせずにスバルたちを死なせる自分を見るのは嫌だ。なにか役に立てることをしていたならいいが。

「──血も流れてない……全部、体の外に出ちゃったから」

 口に出して、そのおぞましさに体が震える。エキドナが感じた痛みは、エミリアが体験したことの無いものだ。レグルスに首を絞められたときよりも、ずっとずっと痛くて苦しいもの。

「──酷い……」

​───────​───────​─────

『痛い……ああ、痛い、な。本当に、人の体は、痛い……』
『わ、悪い……ごめん、ごめん……違っ、そんなじゃなくて、俺は……』
『律儀に、謝るなよ、ナツキくん。それに……もう、アナに合わせる顔が一つもないボクだけど……この痛みは、唯一の、アナへの恩返しだ』
『おん、がえし……?』
『だって、そうだろう? 今、アナに体を返せば……アナは、この世の終わりかと思うほどの痛みと、死の恐怖を味わうことに、なる。……こんなの、地獄だよ。味わうのは、ボクでいい』
『あ、う……』
『アナのために体も返せず、ユリウスを手助けすることもできない。……ボクは、こうして地獄に落ちるのがお似合いだ』
『ま……っ』
『楽にしよう、なんて……思わないで、くれよ? ボクは、うん、これでいい……』

​───────​───────​─────

「──はあ、ほんとに嫌やね。こんなこと言わせてしもうたんを見るんも、あの子やったらこういうってわかるんも……」

 アナスタシアがその可愛らしい顔いっぱいに悔恨を浮かべる。自分の顔をした存在が死ぬのを見るのも辛いが、結局辛いのはそこだ。仕方の無いこと、今更何を思っても仕方が無いのだと知っていても。

「──ほんま、フリューゲルさんって人は性格最悪やね」

 こうなることを予見した上で試練を用意していたなら、性格最悪なんてものじゃない。

​───────​───────​─────

『石で人の頭を割るなんて、わたしもやったことないわあ』
『……ナツキくん』
『俺、は……』
『介錯の、ために、君は……石も、握れないんだ……疑って、悪かったね』

 そのまま、スバルの心が希死念慮と自己嫌悪に塗りつぶされたまま、エキドナは唇を緩めて絶命した。
 絶望が、ナツキ・スバルの心を蹂躙する。

​───────​───────​─────

 ──けたたましいほどの心声が空間を塗りつぶす。

「──昴、」

 瞳が揺らぐ。スピーカーから声が発せられる前兆に鼓膜が揺れ、菜穂子は顔を顰める。

『動けない。動く資格がない。動いたところで、碌なことにならない。それを証明した。ナツキ・スバルは自らの無能を――否、無能であればまだ可愛げがあった。そうではなく、それ以上の疫病神であることを、証明したのだ。』

「──そんなことない」

 そう、消え入りそうな声で囁く。
 とうとうと途切れることなく昴の声は響く。聞くものの心に傷をつけながら、それ以上の傷を自らにつけて。

『絶望が胸に巣食えば、心を殺せば、命よりも先に魂が蝕まれる。そうなれば、立ち上がることなどできない。誰にも、抗うことなどできない。自分自身が正真正銘の害悪なのだと、開き直ることもできずに思い知れば、当然の帰結だ。』

「違うわ、待って! そんなことない、昴がそんなふうに思う必要なんてない!」

 菜穂子の声ですら遮れない。本人すら自覚していたのか判断のつかない心声──それは、紛れもなく昴の本心であり、甘えの代償であった。
 あまりに多くの要素が、あの子に容赦をしなかった。あの子の優しさに甘え続けた。その結果がこれだ。自らの与り知らぬところであの子が恨まれ、傷つけられることを、誰がどうして看過できようか。害悪だと自らを卑下するあの子に、まだ世界は容赦をしてくれないのか。

『消えたい。消えてなくなってしまいたい。もっと早く、決断しておくべきだった。異世界で、こんなことになる前に。異世界なんて場所にくる前に、わかっていたはずではなかったか。』

「────」

 息をのみ、思わず押し黙る。
 言わせてしまった。最も言って欲しくない言葉を。嗚呼、どうしてだろう。あの子はこんなに優しいのに、全てがあの子を傷つける。きっと、自分自身がかけた言葉も、無意識にあの子を追い詰めた。あの子は本当に、優しいから。

「──昴……」

 そう、低い声が響く。菜穂子の隣で、青い顔をしたまま、考え込むように押し黙る。
 ──どうしたら、なんて在り来りなことは思わない。ただ、大切な子の張り裂けそうなほどの自己嫌悪を聞けば、胸は痛くなる。それだけは、もう、覆らない。

『何故、存在するだけで、お前は他者の心を煩わせるのだ。他人の心の一部を、ほんのわずかな部分だけでも、占有する資格がお前にあるものか。薄汚い壁の染みめ。部屋の隅に溜まった埃、生ゴミにたかる蛆虫、決して消えることなく痕跡として残り続ける、目につく位置に残った傷跡のような存在め。』

「──やめて、そんなこと、言わないで……」

「──菜穂子さん、」

 エミリアが菜穂子に駆け寄り、心配そうに覗き込む。エミリアも、正直言葉が耳に入る度に頭がぐらりと揺らぐ感覚を覚えている。スバルが発する声は、いつだってエミリアに暖かくて柔らかい言葉を与えてくれた。だからこそ、それがこんなに冷たく鋭い言葉になるなんて、エミリアには──、

「ごめんなさいエミリアちゃん、もう大丈夫」

「──無理は、しないでくださいね」

 エミリアでさえ辛いのだ。目の前にいるこの人の持つつらさは、きっとその比じゃない。

『ナツキ・スバル、何故死なない。死んでも、やり直すだけ? 誰がそんなことを決めた。誰が、それが永遠に続くなどと確かめた。一度で足りないなら、十回でも百回でも、千回でも死ねよ。消えてなくなるまで死ねよ。誰の記憶からも消えてなくなって、何にも影響を与えなくなるようになるまで、誰の心にもお前の名前が、お前の存在が、お前の痕跡が、残らなくなるまで死ねよ。』

「スバル……」

 ベアトリスが目を見開き、顔を青く染める。オットーやガーフィールも苦々しい顔のまま絶句して。

「スバル、君はそんなことを思って……」

 ラインハルトの青い双眸が僅かに揺らぐ。何を言ったらいいのか分からない。ただ、ラインハルトにとっては、スバルはそんなふうに卑下される人間ではなかった。それだけは、確かに胸を張って言えることだ。

『死にたい。消えたい。粉々になりたい。痕跡も残したくない。いなかったものになりたい。存在を消したい。歴史から消えたい。記憶から消えたい。思い出から消えたい。忘れないと言ってくれた少女からも消えたい。何の価値もない。何の意味もない。何も残せない。何も残すべきじゃない。何もかも、全て、この世界から、消えて、なくなれ。』

 『災厄』が愛を囁くのを疎ましげに扱いながら、彼はそう毒を吐く。それは、彼の腕に刻まれたものよりもずっと深いものを、聞くものの胸に突き立てながら。

「──些か、自罰的すぎる気はするけれどね」

「スバル殿……あなたは、それほどの思いを」

 スバルがそれほどに思い詰めることは無いだろうに、彼は思い詰めてしまうのだ。訪れる不幸の原因を全て自分自身に押付けている。それはなんて痛々しく、傲慢で、そして──悲しいことだろう。

『心を絶望が支配して、周囲の世界も何もかもが黒い影に覆われて、とめどなく垂れ流される虚ろな愛の告白が、蹲る人の形をしたゴミの処分に迫ってくる。あの中に呑まれれば、消えてなくなれるだろうか。死よりも遠い、虚無の中へ沈めてくれるだろうか。誰の目にも届かない、暗黒空間みたいな、そんな都合のいい、何もない場所へ捨ててくれるだろうか。そこで、死ねるなら、俺は――。俺は――、ナツキ・スバルは、その全てを塗り潰すような、絶望の中へ――、』

 声は止まらない。ずっとずっと、スクリーンは死にそうな顔をしたまま佇むスバルと、スピーカーからは悲しい声が聞こえる。

「待って、昴──」

 そして、いつだって、雲に隠れる星を照らすのは、月の光だ。

​───────​───────​─────

『──そこまでよ』

 ――声が、した。

 この世の終わりを否定する、銀鈴を思わせる、声が、した。

​───────​───────​─────

「──私だ」

 それに幾ばくかの感激を受ける他の人間を他所に、エミリアは、そう不思議そうな顔をしていた。

Comments

  • レイラ
    Apr 3rd
  • Nina

    今回も非常に良かったです!ところで全裸で待機してたら更新していただけるってマジですか!?全裸ブリッジで待機しますね!

    September 19, 2025
  • でんじねずみ

    まだ書籍でここまで読んでないのに、読んでしまっている自分がいる....

    September 16, 2025
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