出来損ないたちの塔
昨日更新したかったけど、オープンキャンパス行って疲れて眠りこけてました。
あと、一回パソコン開きはしたんですけど、「今ここ読むには心の準備できてないから無理!」となり。
六章を読む前に精神統一の時間が必要なんですよね。
ここら辺は、キツすぎていっつも「全員うるせえ!!」ってなりながら読んでます。
アニメ化楽しみー
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『何をそんなに狼狽えているの。ラムは問うた。答えるのがバルス……いいえ、あなたの役目よ』
『──偽物、そう言われて反論がないわね。自分でも、自分の不出来な演技に自覚があった証拠かしら。扮する相手の下調べが足りない。不勉強にも限度があるでしょうに。よっぽど余裕のない人間以外、その不自然さに目をつむることなんてありえないわ。それこそ、ユリウスやアナスタシア様……エキドナぐらいでもなければ』
『何も、誰にも見られていないつもりでも、地竜はあなたの不審な行動をちゃんと見ていた。そして、ラムも同じようにそれを『視て』いたわ』
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「スバル……」
何もかもが、最悪な方向に転んでいる気がする。
今のスバルに、ラムの遠慮のない言葉はあまりに痛すぎる。
エミリアだって、ラムの言葉が必要なものであると理解はしているけれど。
「……覚えてないから、たぶん、この世界でもスバルは死んじゃう……」
スバルの頭の中では、不信感が渦を巻いている。
目の前にいるラムを殺そうとも考えているから、それはもう取り返しがつかないくらいに。
「……スバル」
何とかなるのだろうか。
スバルは、どうやって前を向いたのか。
エミリアには分からない。
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『――あのお姉さんだけどお、きっとコンディションが悪いせいねえ。左の重心、バランスが悪いわあ。相手の左側から踏み込んで、壁に頭から叩き付ける。それだけでいいわあ』
『言葉に詰まれば暴力に訴える。野蛮で退屈な結論だわ。――そんな野蛮な男のところに、か弱いラムが一人で挑むとでも思ったの?』
『な……っ、こ、氷……!?嘘だろ……ッ。これが、まさか、魔法……!?』
『――全部、ラムの勘違いだったらよかったのに』
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「──当然と言えば、当然の結果なのよ。ベティーたちが生きた世界では起こらなかったけれど、ラムならこれを思いつくし、エミリアも、こういうに決まっているかしら」
ベアトリスが、酷く険しい顔のままそうつぶやく。
スバルの頭の中にいるメィリィがああ言わなければ、スバルもあんなことはしなかったのではないかと、そう思ってしまう。
「──考えても仕方ないのよ。過去にはもう戻れないかしら」
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『この場面で、軽薄さも装えなければ根拠のない大口を叩くわけでもない。演者として、二流どころか三流以下としか言いようがないわね。そんな演技じゃ、よほど余裕がない人間以外は騙せない。それなら、ラムたちの中で誰が一番精神的にタフだったか、考えるまでもないことでしょう』
『──スバル、こんな時間に何をしようとしてたの?ちゃんと、部屋で休んでてくれるはずじゃなかったの?』
『エミリア様、聞いたところで無駄ですよ。それがこちらの質問にまともに答えるとは思えません。バルスであると、そう扱うことにも疑問を感じます』
『でも、スバルはスバルだわ。ラムにも、それはわかるでしょう?』
『あくまで、見た目が同じなだけの粗悪品……ラムはそう判断しています』
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「粗悪品……むしろ、ここまでの映像を見させられた今では、ラムたちが知っているバルスの方が人間としてはおかしいんじゃないかと思えてきたわ。このバルスの方が、幾分か人間らしいもの」
どれだけの痛みを伴おうとも、スバルはエミリアやレムを助けようと躍起になる。
エミリアに手を振りほどかれようとも、レムはあんなことをされたにも関わらずだ。
スバルのお人好し加減にはラムも辟易とするが、このスバルを見るに、自分を殺したかもしれない人間を疑えるのは、人としてはきちんとしている。
記憶を取り戻したスバルは、きちんと仲間を疑えるだろうか。
「──考えても仕方がないわね。バルスはバルスで、ラムの妹であるレムを救うために奔走している。それで十分だわ」
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『エミリア様のおかげで、こうして被害なく取り押さえられた。少し痛い目を見れば、ラムたちの聞きたいことを話す気になるかしら?』
『――待って。痛めつけるだなんてダメよ。そんなことさせない』
『……エミリア様は、ラムに賛同してくださったのでは?』
『スバルが変だと思ったから、話が聞きたいって意見には賛成したの。それに、こうなるかもしれないって思って……だから、私がここにいなくちゃダメだと思ったのよ』
『こうなることが嫌だったから、ベアトリス様にはユリウスたちの相手を頼んだのに。エミリア様まで聞き分けがない……考えが、甘すぎるのよ』
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「──なるほど、この状態でもエミリア様は彼を庇うのか」
エミリアのスバルに対する愛を見て、ロズワールは静かに頷く。
ロズワールがこの場にいたならどうしたであろうか。
結論は出ないが、エミリアがスバルであると判断したのは見た目だけでは無いはずだ。
スバルがエミリアに無償の愛を注ぐように、エミリアもスバルにそれを向けているのなら、ロズワールにとっては都合がいい。
「まーぁ、友情の範疇であっても、支障はないけれどーぉね」
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『それは、明らかに本来のバルスにあるべき点が欠けすぎています。水門都市……プリステラでの話はお聞きしました。そこに、姿を変える大罪司教がいたそうですね』
『……ええ。その大罪司教に、違う姿に変えられてしまった人たちを元に戻すのも、ここにやってきた理由だもの』
『それなら、その大罪司教がラムたちの誰かに化けている可能性は?大罪司教本人でなくても、自由に姿形を変えられるなら外見は当てにならない。普段の振る舞いと、話してみた感触と、それがここまで違えば……』
『そんな極端な話、ラムらしくないわ!そんな、上から封じ込めるみたいな言い方!』
『ないと言い切れますか?その、後ろの男を前にして……今すぐ、口を割らせるべきです!本物のバルスと、メィリィの居場所を聞くために』
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「──ラムさんの言い分を封じ込めるだけの材料がないのが痛いですね」
ラムの言い分は、エミリアの言うように極端すぎる。
が、この状況で、どうやってスバルが本物であると証明する?
大罪司教の権能は不透明であり、ラムの危惧する可能性がない訳では無いのだ。
何より、人間を構成する半分以上は記憶であると、オットーは思う。
育ってきた環境、そこから学んだ生き方、スバルの場合は異世界の記憶がまるまる消えたのだ。
オットーたちの知るスバルとは差異が出て当然だ。
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『本物、偽物って、そんな決めつけちゃダメよ!だって、ここにいるスバルは……』
『――俺は、記憶喪失だ!!』
『は……?この期に及んで、何をふざけたことを……!』
『ラム!スバルはこう言ってるわ!やっぱり、理由があるのよ!』
『本気なの、エミリア様!?こんなの、信じる価値もない……!』
『信じる価値はあるわ!それが、これまでの私たちの時間でしょう!?ラム、一緒にスバルの話を……』
『――レムは、どうなるの?邪魔を、しないで!』
『きゃあっ!』
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ラムとエミリアの舌戦が苛烈を窮め、ラムはエミリアを突き飛ばす。
ラムの思考は冷静ではなく、レムを思う気持ちと、状況への怒りでスバルの元へと走る。
「記憶喪失ッの証明なんざ、出来るわけねェ……」
ガーフィールが痛ましく険しい顔をする。
頭の中を覗ける魔法でもあれば別だが、記憶の有無など、本人以外にとっては戯言に過ぎない。
ガーフィールならエミリアと同じように信じるが、ラムが疑うのもわかるのだ。
ラムやオットーのように賢く疑り深い人間なら、絶対に信じない。
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『忘れたと、もう一度言ってみなさい』
『そ、うじゃ、なくて……』
『その顔と、声で。レムを忘れたなんて、もう一度でも……』
『ダメよ、ラム!やめて!!』
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エミリアがラムを止めようと動く。
が、それよりも早く、ラムがスバルを攻撃する。
スバルの意識は落ち、スクリーンが暗転する。
「仲間同士でだなんて……惨い話ですわ」
フレデリカが瞳に影を落として呟く。
エミリアの言い分もわかるし、ラムの言い分もわかる。
どちらが正しいなんて話ではなく、二人では大切にしているものが違うのだ。
ラムにとってはレムが一番であり、エミリアにとってはスバルの言い分を聞いてあげたいと、優先するべきものが違ったのだろう。
だから、どちらが悪い訳でもない。
もちろん、スバルにも非はない。
「──救われませんわ」
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『――づ、ぁ!?痛ッ!?痛ぇ、痛い、痛い痛い、なんだ、なんだこれ……?これ、肩が外れてんのか……?脱臼?したことねぇぞ……』
『――エミリアと、ラムはどこにいった?』
部屋を見渡す。
『ナツキ・スバル参上』
『ナツキ・スバル参上』『ナツキ・スバル参上』
『ナツキ・スバル参上』『ナツキ・スバル参上』『ナツキ・スバル参上』
『ナツキ・スバル参上』『ナツキ・スバル参上』『ナツキ・スバル参上』『ナツキ・スバル参上』『ナツキ・スバル参上』『ナツキ・スバル参上』『ナツキ・スバル参上』『ナツキ・スバル参上』『ナツキ・スバル参上』『ナツキ・スバル参上』『ナツキ・スバル参上』『ナツキ・スバル参上』『ナツキ・スバル参上』『ナツキ・スバル参上』『ナツキ・スバル参上』『ナツキ・スバル参上』『ナツキ・スバル参上』『ナツキ・スバル参上』『ナツキ・スバル参上』『ナツキ・スバル参上』『ナツキ・スバル参上』『ナツキ・スバル参上』『ナツキ・スバル参上』『ナツキ・スバル参上』『ナツキ・スバル参上』『ナツキ・スバル参上』『ナツキ・スバル参上』『ナツキ・スバル参上』『ナツキ・スバル参上』『ナツキ・スバル参上』『ナツキ・スバル参上』『ナツキ・スバル参上』『ナツキ・スバル参上』『ナツキ・スバル参上』『ナツキ・スバル参上』『ナツキ・スバル参上』『ナツキ・スバル参上』『ナツキ・スバル参上』『ナツキ・スバル参上』『ナツキ・スバル参上』『ナツキ・スバル参上』『ナツキ・スバル参上』『ナツキ・スバル参上』『ナツキ・スバル参上』『ナツキ・スバル参上』『ナツキ・スバル参上』『ナツキ・スバル参上』『ナツキ・スバル参上』『ナツキ・スバル参上』『ナツキ・スバル参上』『ナツキ・スバル参上』『ナツキ・スバル参上』『ナツキ・スバル参上』――。
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びっしりと、部屋を埋め尽くすように刻まれた文字。
「なん、だ……これは。これを刻めるほどの長時間、意識を落としていたと?」
ユリウスが顔を顰める。
趣味が悪いだなんて話じゃない。
一目見ただけで異常だとわかる部屋。
模様だと錯覚するほどに、無数にそれは刻まれていた。
ユリウスからすれば、その文字は解読ができないが、スバルが口に出したから、そう書いてあるのだと理解した。
「おかしいな……スバルしか知らない文字を、どうしてスバルが眠っている間に書かれているんだろう」
ラインハルトが不思議そうに首を捻る。
フェリスとクルシュも驚きと畏怖を混ぜた表情でスクリーンを見つめる。
「あかん、怖ぁなってくるわ。なんやこれ」
アナスタシアがやや青い顔でそうつぶやくので、ユリウスは静かに頷く。
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『――あぁン?なンだこりゃ、気持ち悪ぃ部屋だな、オイ。なンだってこンな気持ち悪ぃ飾り付けしてンだ、オメエ。オメエ、こンなとこでボケっと何してやがンだよ、稚魚。群れからはぐれた稚魚なンざ、でけえ魚の餌食になンのがお約束だろうが、オメエ』
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「──この人」
菜穂子が瞳を見開く。
そして、今から起こる惨劇を思い、顔を青くする。
「この人が出てきた……?どうして?それに、さっきから昴の眠ってる間にどうして変なことが起きるの?分からない……」
頭を抑え、混乱を紐解くように考える。
が、答えは出ないままだ。
ただ、分かることは、
「大変な時にこの人の相手もしなきゃいけないの……?」
それが、酷く難しいということだ。